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魂のエンカウント の履歴(No.1)


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「おう、久しぶりに来たな!」

 バトルコート上で腕を組み、パーモットは現れたモトトカゲに声を掛ける。その背後には欄干の下、広大な海へと断崖が続いている。太陽に照らされて輝かしい波間、観光客であればそれだけでも楽しめそうな景色。地元で暮らす彼らにとってはもう見飽きたものでもあり、関心は目の前のバトルコートにばかり注がれているが。

「今日こそは一本取らせてもらうわ!」
「まだまだだな。まあ、この前言った事をやってきたか見せてもらうぜ?」

 周りには既にパーモットが相手をしたのがわかるポケモンたちが休んでいる。二度も進化を重ねただけの強さとは裏腹に、どこか年相応の幼さを残す瞳。バトルぶりを見なければ、挑戦してきたモトトカゲとも齢は変わらないように思える。年上の大人たちを相手にし続けても疲れ一つ見せない、それは天性とすら感じさせるものがある。

「始め!」

 ジャッジに立ったフタチマルの合図とともに、モトトカゲは大きく息を吸い込む。その目は真っ直ぐにパーモットを捉え、着実に詰めようとしている間合いに入られないように横に飛び退きながら。モトトカゲは動きが早い種族であるし、コートも狭くはない。だがパーモットの動きは更に速く、見る見るうちに両者の距離は近付いていく。

「やぁあああっ!」

 竜の波動。刹那、パーモットへと迸る衝撃波。竜のエネルギーは空間の色を変え、モトトカゲである彼女と比べるとどうしても小柄になってしまうパーモットの影を消し去る。躱そうとする様子も無く、正面から。渾身の一撃であるのを見ての行動だとは思えないであろうが。

「なっ!」

 衝撃波を突き破り飛び出したパーモット。拳や頭の毛先は派手に乱れたが、痛痒を感じさせるほどではなく。渾身の一撃であった衝撃波があっさりと消し飛ばされ、二発目を撃とうとするも間に合わない状態。モトトカゲの得意技は距離があっても戦える一方、半歩も無い距離は今度はパーモットの間合いである。着地で屈んだ動きを反動にそのまま体のバネで拳を突き出す。

「決まりだ!」

 パーモットの拳は真っ直ぐにモトトカゲの顔面に向かっており、身を反らし躱そうとするも間に合わない。捉えることもできない速度の拳がモトトカゲに刺さる、その瞬間。パーモットはその速度の拳を止めた。

「えっ? えっ?」

 拳が止まったのを見て、モトトカゲも身を反らす動きを止めた。寸止め。その拳を眺めた時間は、しかし傍から見ると一秒にも満たない。その刺さっていない拳はしかしモトトカゲの闘志を打ち砕き。一度止まった後はその場で力無く両手をつく。

「勝負あり!」

 フタチマルの声と共に、周りの大人たちは一様に声を漏らす。やっぱり勝利を見せてくれる安心感と、誰も勝てないことをまたも見せ付けられた無力感と。パーモットはへたり込んだモトトカゲに手を伸ばすと。

「『竜の波動』の重みに間合いの足捌き、俺が言った事以上にやって来たのが見えたな」

 モトトカゲはパーモットの手を取って立ち上がると、その余裕の顔を苦々しく見る。自分の動きを的確に分析する称賛は、しかし実力の差を明白に感じさせるばかりだ。一応タイプ相性が不利として圧し掛かってはいるが、それを越えたとしても勝てる気がしない相手。

「うーん……。私が近付いたと思っていた以上に進んでいるな……」

 全力をぶつけたモトトカゲに対し、パーモットの方も連戦でそろそろ休もうと思っていたのだろう。特段の意思疎通は無かったが、おもむろにコート脇の木陰へと寄る。木の根元で双り腰掛けると、周りの大人たちも悦に浸り軽く吹き出したりしている。パーモットの方は首を傾げてよくわからないといった様子であるが、モトトカゲは顔の鱗を少々逆立てている。もう一歩踏み込めていないが、その先に進めばお似合いだろうなと誰もが微笑む関係。バトルとは打って変わって穏やかな一瞬。

「ん?」

 その一瞬は放送のスピーカーから流れたチャイムの音で途切れた。何があったのかと大人たちも目を丸め顔を見合わせたりしていると。

『岬街区にて、強盗発生。犯人のポケモンが逃走中。周辺にいる方々は身の安全を第一に……』

 一転して場を覆う、緊張と当惑。一番最初に動いたのは、やはりパーモットだった。急いで立ち上がり欄干に寄りかかると、遠目で強盗の姿を確かに確認する。欄干から下へと続く急斜面の断崖は、舗装された道路で海からは区切られている。強盗はその道を、右手の街区から左手の船着き場に向けて疾走している。船着き場にある船を奪って逃走を図るつもりであろうか。正面真南には太陽が燦然としており、こんな白昼堂々と強盗を働くとは大した度胸である。

「足止めくらいは……できるか?」
「あっ!」

 大人たちが止めるよりも早く、パーモットは欄干から急斜面へと飛び降りる。あとはもう、下の道路まで滑り降りるまで止まらない。放送では「身の安全を第一に」と言われたその場だというのに、自ら強盗の、しかもタイプ相性の悪い相手の前に飛び込もうとするパーモットの蛮勇。

「私も……行くしかない!」
「ああ、もう!」

 放っておけず後に続くモトトカゲを見て、こういうところは子供だと呆れるフタチマルであった。



 船着き場に停めてあった船を奪い、そのまま逃走を図ろうとしていた二人組の強盗。苦戦はしたが、パーモットとモトトカゲの活躍で何とか取り押さえた。無茶な行動を反省するモトトカゲの隣で、パーモットは得意げである。

「やったぜ! 俺の力、遂に役に立った!」
「船の動力のことは俺の方で謝っておくが……お前のような子供が、無茶するんじゃない」

 強盗たちは一旦係留ロープを外し、あと一歩で船が加速しきり逃げられるところまでいっていた。それをパーモットの電撃で動力を破壊し、その後はモトトカゲの遠距離攻撃で殴り続けた。船の方の破損もただでは済んでいないが、見す見す強盗たちに持って行かれるよりはマシであるということはフタチマルも理解していた。

「言いたいことは分かるけど、折角持っている力なんだから、使わないなんてわけにもいかないじゃないか」
「心掛けは良いけど、もう少し周りを見てからにしろよ」

 強盗たちにはパーモット一人では手出しが叶わず、追いついてきたモトトカゲや他の大人たちの協力が不可欠であった。勿論彼らが追い付いてくるまでの足止めは成し遂げたのであるが、一歩間違えれば撃ち殺されたり捕まって人質にされたりしかねなかったのだ。フタチマルは離岸しつつあった船を係留ロープで留め直しながら、パーモットの軽率をたしなめる。

「私も、もう少し慎重に行動した方が良かったと思う。私たちが逃がしても誰も責めないんだからさ」
「そうかよ……まあ、そうだけどな」

 モトトカゲの攻撃が終わり、飛び乗った船で最後の抵抗を試みた強盗たちを制圧した瞬間。パーモットはもっと絶賛されるのではないかともふっと思った。流石にそれは邪な感情であると振り払ったが、こうも注意を受けまくると不満がもたげてくる。係留を終えると、フタチマルは船の破損状況を記録するために、ホタチの下からスマホを取り出しカメラを起動した。

「ん? 写真撮るの?」

 それを見るやパーモットは船首の方へと向かい、腕を掲げてポーズをとる。通常であれば無断で船に乗ることはできないため、折角の機会だからと言わんばかりに。その様子を見て、モトトカゲとフタチマルは深くため息を吐く。

「お前な……」
「何枚かだけでいいから!」

 掲げた腕を下げ、今度は手を合わせて。生意気でもあるが故のこの可愛らしさに加えて、バトルが強いにもかかわらず周りを見下すことは無い態度。フタチマルをはじめとする大人たちは今までもついつい甘やかしてしまってきていた。フタチマルは仕方なさそうに、既に何度目かもわからない「もうこれっきり」を心中で呟きながらスマホのレンズを向ける。

「あのさぁ……」
「よっしゃ!」

 モトトカゲが呆れて何を突っ込むかも決められない内に、パーモットは再びさっきのポーズで船首に立つ。ぱしゃり。その音を聞いた瞬間にへりに立ち、フタチマルの方を向く。飛び込む気か。パーモットは泳ぐことも可能な種族であるため、今更その程度は止めずにフタチマルは船の脇のへりに身を乗り出し撮影体勢に入る。まず跳び上がった瞬間。空中で半回転し、そのまま頭の先に手を伸ばして着水するその瞬間。連続撮影で収めると。

「えっ?」
「どうしました?」

 唐突に声を上げ、スマホを見ながら愕然とするフタチマル。何事かと覗き込んだモトトカゲは、一緒に戦慄した。最後のパーモットが着水する瞬間の一枚。パーモットの周りには無数のドラメシヤが飛び交っているのが移っていた。肉眼では見えない、機械だから写し込めた霊体。すぐさま我に返り二人はパーモットが飛び込んだ場所に向けて声を掛けるが、いくら名前を呼んでも彼が顔を出すことは無かった。



 一週間が過ぎた。既に生存は絶望的であったが、せめて遺体だけでもと懸命の捜索が続いた。人気者の突然の喪失に、村は一転して意気消沈となっていた。半ば八つ当たり気味に強盗たちに「仲間がいたのか」と尋問するものもいたが、強盗たちも身に覚えがないとのことであった。ただ「縄目につかせてくれた仕返しに、死体に唾でも吐き掛けたい」とへらへらと言い放った姿には呆れられたが。

「今日の捜索場所は、難破船のエリアらしい」
「はい……」
「もう到着している頃だが、恐らくダンジョンに入ることになれば遅くなると思う」
「はい……」

 警備隊の詰め所で、今日もモトトカゲは立ち尽くしている。他にすることが無い、喪失感からできることが無さすぎるのだ。ただただ黙ってパーモットの発見の報をこうして一週間詰め所で立ち尽くし待っているだけだった。フタチマルがこうして声を掛けてもずっと上の空なのである。そこに警備隊のリーダーである壮年のウェーニバルが近寄ってくる。

「あー、お嬢さん。行方不明の少年が、見つかったみたいですよ」
「はい……」
「反応それだけか? 衰弱しきっているが、命に別状はないらしいです」
「はい……」
「……聞いてないだろ?」
「はい……」

 相変わらず身を震わせて上の空のままのモトトカゲ。届いた報告にどんな反応を示すのかと思ったら、これにも相変わらず上の空であった。或いはフタチマルやウェーニバルが励ましに来ることがこの一週間で何度もあり、そちらには既に慣れてしまったが故なのかもしれないが。フタチマルとウェーニバルは顔を見合わせると、左右からモトトカゲの肩を叩く。

「聞けよ!」
「きゃっ! 聞いてますよ!」
「直前になんて言われたか言ってみろ」
「えっ?」

 言われてみて、確かに思い出せなかった自分に気付くモトトカゲ。俯いた姿を見て、フタチマルとウェーニバルはふっと笑う。

「例の少年が無事見つかったそうだ」
「無事……でももう……」
「いや、衰弱しきっているが、命に別状は無いらしい」
「えっ……?」

 ウェーニバルの言葉を聞いて、モトトカゲは目を丸める。一週間という日数はモトトカゲは数えていなかったが、とにかく随分と長い時間が経過したような感覚だけはあった。時折すれ違う大人たちはモトトカゲに気を遣って隠していたが、それでも生存は絶望的であるという様子だけは嫌でも感じ取れていた。だというのに、まさか生きて帰ってくるとは。

「あの辺は潮の流れが集中して難破船が集まるようになっているから、あの少年もそれに捕まったんだろう。折り重なって海上に顔を出している部分にいたから、無駄に体力を消費しないで済んだのだろうな」

 ウェーニバルは頷きながらも説明する。アクシデントはあったが、それでも最悪を避けるために打てるだけの手を打ったのだろうと感心しているのが分かる。但しフタチマルの方はこのアクシデントに巻き込まれた状況をその目で見ていたため、一概に褒められるものではないと苦笑しつつ。

「そう言えば、写真に写っていたドラメシヤたちは?」
「ドラメシヤの方は一匹も見当たらなかったらしい。ドラメシヤたちを振り払った後に潮に飲まれた、と言ったところだろうか?」

 これに関してはウェーニバルも渋い顔をしている。強盗たちのような意思を持った存在であれ、ダンジョンから迷い出た意思の無い存在であれ、このようなことをする存在を取り押さえられなかったのは先の不安が残る。だが相手はゴーストタイプである。壁の中も透過できるのだから当然海中も縦横無尽である。周辺の海域だけでも十二分に広い中で逃げて隠れているのだろうから、これ以上捜索のしようもない。

「隊長、戻りました!」
「お疲れ様! ほら、行ってやりな」

 そんなことを話している間に、波止場の方が騒がしくなっていた。パーモットを乗せた船が帰ってきたらしい。捜索に当たった班のリーダーのエンペルトは、その平たい手を胸に当てて畏まりながら報告をする。ウェーニバルもモトトカゲが待ちに待ったことはずっと見ていたので、早く会いに行くことを促す。

「はい! ありがとうございます!」

 お礼もそこそこに、モトトカゲは四つ足でエンペルトの脇を通り抜ける。裏口から出ると丁度その時点で、船から担架が運び出されているところであった。その上には変わらない色の、どこか懐かしいとすら思えてしまう毛並み。モトトカゲが呼ぶパーモットの名前は、思いっきり涙に掠れていた。その声に反応して、おもむろに顔を向けるパーモット。びっくりするくらいやつれていたが、反応ができる状態であるのが嬉しい。担架を運ぶ大人たちの邪魔にはならないように気を付けながらも、できる限り脇に近づくモトトカゲ。

「ぁぁ……ごめん……」
「無理に喋らなくてもいいから」

 パーモットの方も声は掠れており、僅かに漏らした一言だけが聞き取れた。恐らく声を出すのもやっとやっとだったのだろう。何はともあれ生きている。モトトカゲにはそれだけで十二分であった。パーモットが救急車の中に入っていくのを見送ると、モトトカゲはその場で押し寄せる感情のままに泣き崩れた。



 更に一週間が経過した。パーモットは衰弱こそしていたものの特段病気等もなかったため、退院は早い段階ですることができた。だが、家に帰るとそのまま部屋に閉じこもり、既に何日も外に出ていなかった。

「おばさん、こんにちは。様子の方はどうですか?」
「ずっと籠りっきりね。部屋の前にご飯を置いておくとちゃんと食べてはいるんだけどね……」

 出てこない息子のことを心配げに語る母親は、まだパモットである。バトルという気質ではなかったため、態々進化のための修行に出ようとはしてこなかったのである。母親をはじめ家族は打って変わって引き籠っているパーモットを心配してはいる。だがあれだけのことがあったのだから、これも仕方ないのかもしれないとも思っていた。

「でも、話くらいはしてますよね?」
「それが、部屋の鍵を掛けたままで手を出せなくて」

 母親はため息を吐きながら、パーモットの部屋の扉を指差す。建てた時から個室には鍵を付けてあげていたのだが、流石に今回の状況になられると失敗だったのかもしれないと感じ始めている。ちなみに今時の建物の場合、壁は霊体の透過が難しい材質を使われるため、恐らくドラメシヤが中に入り込んでいることは無いと思われる。

「鍵、開けないんですか?」
「合鍵もそれぞれに持たせてあるからね。ドアを壊そうかとも考えたけど、時々苦しそうな声が聞こえるから手出ししづらくて」
「そうじゃなくて……」

 言いながらモトトカゲは、喉元の円盤状の肉垂の隙間から小さいポーチを取り出す。それを開いて取り出したのは、金属製の円形であった。10ポケ硬貨。それをパーモットの部屋のドアノブに向けると、母親は唖然とする。

「まさか、それで開くの?」
「前に二人で試して……ぅふふふふふふっ!」

 その時のやり取りがどんなものだったのかは知らないが、余程楽しいものだったらしく妙な笑い方をするモトトカゲ。家の主が知らない内に何をやっているのだと思わずにはいられない。

「にわかには信じがたいって言うか、これ、業者にクレームものじゃ?」

 子供がありふれた硬貨で開けられる鍵など、あってないようなものである。母親があんまりな展開に呆れるのを尻目に、モトトカゲは硬貨をドアノブの前にかざすと。

「ぅふふふふふふっ!」
「……やるなら早くして」

 もう一度口を押えての含み笑い。傍から見ると気持ち悪いなんてものではない。そんな無駄な一瞬はあったが、次の瞬間にはかちりと鍵が開いたことを示す金属音が聞こえてくる。鍵としてそんなでいいのかと呆れる母親に対して、モトトカゲはなおもにやけた状態でドアノブに手を掛ける。

「それじゃあ、ご対面!」

 思えばパーモットと会うのは数日前の退院以来であった。苦しい状態でやつれているか、それとも動かずに太ったか。いずれであれ元気ではないであろう。慰めのために抱きしめてしまおうかとちょっとした下心も持ちながらドアを開くと、現れたのは。

「あうあっ!」

 白濁の噴水。ベッドに仰向けになるパーモットは性器を握りしめ、狙ったかのようなタイミングで精を噴き上げる。パーモットの腹にはこの一度だけとは到底思えない量の白いぬめりが飛び散っており、部屋の空気も異様な生臭さで染まり切っていた。快楽に悶え荒い息をし続けること数秒。パーモットはようやく突然の来客に気が付く。

「ぁ……」

 モトトカゲも母親も、彼の変わり果てた姿には硬直するほかなかった。精液まみれの乱れ切った毛並みだけではない。品性に欠ける大人から猥談を振られた時も、恥ずかしそうに流すだけで逃げていたパーモット。そんな純粋な少年の姿はそこには無く、ただ性欲に狂う獣の姿だけが存在していた。全員が黙りこくり、時は流れたようで止まったようで。

「あの……何が……」

 ようやく沈黙を破ろうとしたモトトカゲだが、上手く言葉が出てこない。こんな行為に狂うなんて、何があったのか。相変わらず息が荒いままのパーモットだが、数秒の後にあのエンカウントを語り始めた。



 飛び込みの瞬間。既にパーモットの周りには大量のドラメシヤが飛び交っていた。彼らは一斉に引っ付くと、そのまま潮の流れを利用して瞬く間に沖合の難破船に連れてこられていた。噂には聞いていたが見るのは初めてという感動など全く無く、まずは暫し止められていた呼吸を戻すことに終始していた。

「活キのイイ、タマシイ……」

 ドラメシヤのものとは思えない、太く重い声。慌てて起き上がり臨戦態勢を取ろうとするも、ドラメシヤたちに押さえつけられ遅れた一瞬。床を抜けて現れたドラパルトはそのままパーモットを抱きかかえ。

「な、何なんだ、お前は!」
「キミのタマシイ、活キが良クて美味シそう」

 舌なめずりをするドラパルトに、パーモットの背筋が凍る。だが、もう状況は変えられない。ドラパルトの技のエネルギーで作り出されるドラメシヤたちは、パーモットの足搔きで打ち砕かれても次が現れる。

「くっ! 食い殺す気か!」
「ソレではタマシイがスグに無クなってしまうからな。セイエキを啜リ続ケた方がイイかもシれないと試シてみようと」
「は? 精液? ひっ!」

 パーモットがその言葉の意味を理解する頃には、一匹のドラメシヤがその細長い体をパーモットの股の間に捩り込ませていた。即座に擦られる性器。いくら普段恥ずかしがっていても、こうされてしまうと否応なく反応してしまう体。

「むー。コレは小サいカ」
「う、うるさい! ひゃっ!」

 こういった事の経験が皆無のパーモットは、瞬く間に出来上がってしまう。しかしまだドラパルトの小さな手にも十二分に収まるほどの状態だというのに、怒張の限界であると震え始めるそれ。指摘された悔しさに怒鳴る間もなく、いつの間にか股間の前に位置取っていたドラパルトの口の中に吸い込まれる。

「やぁあああんっ!」

 次の瞬間には裏返った嬌声を上げ、達していた。夢精すらしたことのない少年には刺激が強すぎたフェラチオ。吐き出した精は、彼のものには見合わない大きい口がしかしこれでもかと言う程丁寧に吸い上げていく。

「タマシイに相応シいセイエキ、美味」

 恍惚。視界が明滅と暗転を繰り返す中、彼方から聞こえてきた声。ゴーストタイプの種族の中には、生体ではなく精神霊魂を食する者もいるとは聞いたことがある。自分がゴーストタイプにとって活きのいい魂の持ち主であると思ったことは無いが、大人顔負けの腕前を持つにはそれだけの魂が必要なのかもしれないと思った矢先。

「ひゃんっ!」

 精液を一通り味わったドラパルトが、再びパーモットのそれを咥える。見下ろすその目線は、濃厚な精液への期待で既に狂っていた。精液は生命として全てを賭けた繁殖のためのものであり、生体から精神からその個体のあらゆる部分に通じている。一瞬で食い尽くして死亡させるよりも、こうして少しずつ吸うことで長く栄養となってもらうというのがドラパルトの考えたことなのである。

「あああああああっ!」

 既にパーモットの思考は回らず、ただ堰を切ったようにドラパルトの口内に精を吐き出すだけとなっていた。瓦解するがごとき快楽は、全てを打ち捨てられる苦悶と一体となっており。遠のくことも許されない意識の中で、死ぬまで延々と吸い続けられるのだという絶望だけが鎮座していた。



 一週間が過ぎた。ドラパルトはパーモットが気絶するまで精を吸い続け、意識を失っている間にそばにあるダンジョンで野生のポケモンを狩って来て食事として与えていた。だが、パーモットの方は既に自身が生きているか死んでいるかの確証すら得られなかった。射精と食事にのみ終始する日々なのだ、仕方のないことである。

「フフッ、いよいよオ別レね」
「……」
「違ウわよ。捜索がココに入ルから、貴方を帰シてアゲるだけよ」

 パーモットは何一つ言葉も吐けなかった。いきなり連れてこられてこんなことをされて、だというのに恨みすら抱く気力もなかった。一方のドラパルトは、この一週間でどこか気力が前よりも満ちている様子が見て取れた。それなりの効果があったのだろうか。

「貴方のタマシイ、涸レ果テてる。今食ベ尽クしても大シたことナい。帰ッてタマシイを癒シて、マタ次を楽シみにしてる」

 パーモットの抵抗する気力が無くなった時点で、ドラメシヤは一匹も残らず消え去っていた。どうやら全て「ドラゴンアロー」の技のエネルギーで作った機体だったらしい。これだけ多くの「ドラゴンアロー」をここまで自由に扱える相手に抵抗したところで勝てるはずが無いと、どこかで悟ってしまったのだ。最後にドラパルトも消え去り、完全に独りとなったパーモット。この一週間で身に染み付かされた感覚は、急に消えてもなおその余波が響き続けており。



「入院中は見られるからずっと我慢してたんだけど、出てきた時にはもう頭がおかしくなりそうになってて……」

 そこまで話したところで、パーモットの目から涙一つ。軽率に悪乗りをした自分への後悔、延々と与え続けられた屈辱、何よりも自身が壊れてしまった事……語る中で全てを理解したのだ。だが、体の感覚は待ってくれない。パーモットが意識するよりも前に、性器は再び鎌首をもたげ始めていた。あの快楽塗れの時間を忘れられず、もう一度という欲望がしがみ付いてしまっていたのである。

「……」

 モトトカゲはパーモットの性器を眺めること暫し。語られた内容も飛び出しているそれも理解を何処か頭が拒んでいる。だというのに。気付いた時には、モトトカゲはパーモットの性器にしゃぶりついていた。

「えっ? ちょっ! ひゃあああっ!」

 口内の湿り気に舌の柔らかさ、何よりも自分の感覚とは繋がってないものが纏わりついている。ドラパルトのとは比べるべくもないのだが、それでも出来得る最大の丁寧さで愛撫してくるそれにパーモットが耐えきれる間も無く。

「あ゛ああああああっ!」

 愕然として手を出せないまま見ているだけの母親の存在など、最早無かった。パーモットはモトトカゲの口の中にドラパルトの時のように精を放つ。

「ぅ……」

 モトトカゲはパーモットの精を丁寧に舐め取り、飲み下す。口を離すと性器はまた力無く垂れ下がる。快楽に喘ぐパーモットの姿を前に、次の瞬間にはどうしてこうなってしまったのかと涙を零し始めていた。


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