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筆記用具と机が擦れる小気味よい音が淡々と響いている。文章題や計算問題と違って、ひたすら用語を書き連ねていく暗記作業は手が止まることが少ない。
出題範囲の重要な用語と意味を、プリント用紙の裏に殴り書きして頭に叩き込んでいく。ただ見るだけよりも手で書いた方が覚えやすいであろうという作戦だった。
進めていくうちに手が疲れてくるのはちょっとした難点ではあるが、最初は真っ白だった紙の上がだんだんと自分の字で埋まっていくのは何だか達成感もある。
机に向かってから大体三十分ほど。用紙の半分くらいが文字で覆われた辺りで、背後から白い頭が覗き込んできた。
「あーもう。そんなに見張らなくてもちゃんとやってるって」
「……どうかしら」
すん、と紺色の鼻先を鳴らして、眉をひそめるトリミアン。瞼も同じく紺色で顔と毛の色が違うため、目線から怪しまれているというのがとてもよく分かる。
彼女が人間が書く文字をどこまで理解できているかは不明だったが、とりあえず信用はされていないようだ。
少なくともイヅキが怠けていれば容赦なく叱責が飛んでくるくらいには、机に向かって学習する姿勢がどんなものなのか把握しているようだった。
現在彼の学校は絶賛試験期間中であり、放課後は部活動などもなくすぐに帰宅して試験に向けた勉学に励むことが推奨されている。
当然イヅキも普段より下校が早く、その間両親は仕事中であるためどちらかが帰ってくるまではしばらくは家で一人の状態になる。
それ故、誰も見てないとさぼるのではと母親に危惧された結果が背後で目を光らせているトリミアンのアリエスであった。
彼女はイヅキの家で飼われているポケモンで、基本的にはボールに入ることはなく家の中を自由に動き回れる状態になっている。
家族の共有ポケモンという立ち位置ではあるが、厳密に言うと母親の手持ちであるらしかった。ちなみに寒がりなので毛はカットせずあるがままの姿を保っている。
とはいえ、長い毛が絡まらないように適度にブラッシングはされているようで、野性味は感じさせずに立ち振る舞いも上品な家庭用トリミアンなのであった。
もっとも今は家庭用ではなく、監視用トリミアンと言った方が正しい。こう見えて彼女が怒ったときの唸り声はなかなかに迫力があって恐ろしいのである。
さぼっていたと両親に報告されるのも嫌だったが、どちらかというと直接アリエスから叱責されることをイヅキは回避したいと思っていた。
やれやれと心の中でため息をついてからイヅキは再びペンを片手に用紙に向かう。こんなに明るいうちから机にがんじがらめにされるなんて。
とりあえず父親か母親が帰ってくるまでは、寝たり漫画を読んだりテレビや動画を見たりして悠々自適な午後を過ごすつもりだったのに。
すぐ後ろにいる監視役のおかげでその計画は台無しだ。マットレスの上で優雅に前足を組んで、腰を下ろしてくつろいでいるのが余計に腹が立つ。
ただ、試験期間に勉強をするのは筋が通っているので何も言い返せず。この状況に憤慨している時点で、イヅキの母親の読みは正しかったことが証明されているのである。
夕方、というには遮光カーテンから届く光が強かった。喫茶店で紅茶を楽しめるくらいには太陽はまだまだ眩しそうである。
大事な試験期間だし次の日に支障が出ないように、と理由をつけて普段より早く寝るにしても残された時間は有り余っている。
さすがに教科書も見ないままぼうっとしていると文句を言われそうなので、それとなく休憩したくなったときは目を落として内容を考えているふりをしてやりすごす。
まあ、一時間くらい経った後なら一息入れてもアリエスも許してくれそうな気はするが。机の時計に目をやると、自分が思っていたよりも時間が経過していた。
定期的に巡回してくる監視役のおかげで、今日手を付けた科目の出題範囲は一通り完了した。用語の暗記という単純作業の繰り返しとも言える内容だったため、予想していたよりは早く終わったように思える。
自分で読解しながら進めていくとなるとおそらく今日のようにはいかないだろう。途中からはイヅキも集中していたらしく、アリエスの気配もあまり気にならなくなってきていた。
ふと、後ろを振り返るとマットレスの上でうずくまって静かに寝息を立てているアリエスの姿が。おいおい、お前が居眠りしてちゃ母に怒られるぞ。
いっそ途中で寝ていたと母親に次げ口してやろうかとイヅキの頭を過ったが、そんなことをすると後が恐ろしいので考えるだけにしておいた。
まあ、監視しっぱなしというのも楽ではないだろうし疲れが出てきているのかもしれない。休憩がてらアリエスを起こして、自分も何か飲み物でも取ってくるかな、と。
椅子から立とうとしたイヅキだったが、冷静に今の状況を考え直してしまったのだ。何しろ今ならアリエスの目が届かないのだから。彼女を起こさない範囲でなら自由の身である。
寝転がって漫画を読んだりテレビを見たり大胆な行動は出来ないが、この机に向かったままでも可能なことはある。机の引き出しからおもむろにタブレットを取り出す。
ちなみにこれは家族共有のもの。帰ってきたときにイヅキはこっそり自分の机の引き出しへと拝借しておいたのだった。
画面を起動させて動画視聴の時間である。本来なら両親が帰ってくるまでの時間の大半はこれに費やされてしまっていたはずだったのだ。
ずっと試験と向き合っていては息苦しくなってしまう。息抜きも大事だと言い聞かせながら、イヅキは音を消して動画サイトの再生ボタンを押す。
タブレットの画面には洋風の室内が映し出されて、そこにはイヅキより少し年上と思しき女性が奥から歩いてくる。
屋内だというのに女性は上下に分かれた布面積の少ない水着を着用しており、ふくよかな胸が谷間を強調させて露わになっている。
イヅキが見ているのはいわゆるグラビアアイドルの動画であった。彼も思春期の男子。自身の股間をざわつかせる内容にもちろん興味はある。
タブレットで検索すればもっと過激な内容も出てきそうなものだが、あなたは十八歳以上ですかの質問には引っかかってしまう。
それに、家族共有のタブレットで視聴するのはあまりにもリスクが高すぎる。視聴履歴は毎回削除はしているが、何かの拍子にばれてしまう可能性も否めない。
というわけで、イヅキが楽しむのは水着姿のアイドル止まりにしているというわけだった。撮影されている女性は軒並み整った顔立ちでたわわな胸を携えている。
大事な部分は水着でしっかりカバーされているとはいえ、露出の激しい衣装だったり胸元を強調するポーズだったりでなかなかに刺激的で――――。
「何のお勉強でしょう?」
「うぁおっ」
危うくタブレットを落としそうになった。壊してしまったら閲覧履歴がばれてしまうどころの騒ぎではない。寝返りもしないで気配もなくいきなり起きるのはやめてほしい。
「ええっと、女性の体の勉強だよ」
「まったく、少し目を離すとこれなんですから」
ため息交じりに呟くアリエス。もちろん、こんな苦し紛れの言い訳で彼女が納得してくれるとは思っていない。ここは、居眠りしてたアリエスもお互い様ということで穏便に。
「うっかり寝てしまった私にも非はありますが、仮にも異性の前で……デリカシーに欠けますよ?」
「んー、異性ってもアリエスはポケモンだし。一緒にされても」
一瞬、むっとした表情になるアリエス。確かに彼女は雌のトリミアンだけど。四足歩行だし毛でもじゃもじゃだし、人間の女性との共通点を探す方が難しいように思える。
「もちろん姿形は違いますが、私も雌ですから。その辺りは考慮していただけます?」
「そういわれてもなあ」
慌てて停止ボタンを押した動画に残っている女性と、アリエスを見比べてみても。同じだと認識するのは難しい。
発言している最中のアリエスの眉がぴくりと上がっていたのが分かった。雌扱いされていなかったことがそんなに癪に障ったのだろうか。
「だってアリエスは四本足で歩くし、胸もないしさあ」
「あら、私にも胸があることご存じない?」
「え」
そんな話は初耳だった。この家でアリエスとは結構長く一緒に過ごしてきたつもりだったけど、胸があるだなんて。適当なことを言ってからかってるんじゃないだろうな。
「まあ、柔らかさとは無縁ですがちゃんとあるにはあるんですよ」
「そう……なの?」
あんまりポケモンと胸を結び付けて考えたことがなかったイヅキからすれば、目から鱗である。試験の出題範囲がもう十ページ分広がったと後から聞かされても、こんな表情にはならないだろう。
「露骨に興味ある顔に変わりましたね」
アリエスが少し嬉しそうなのは気のせいだろうか。そんな意味ありげに言われると、余計に気になっちゃうじゃないか。
何だかにやにやしながらマットレスの上に再び乗っかるアリエス。そしてそのまま仰向けに寝転がって、お腹を見せてくれた。いわゆる服従のポーズだ。
まあこれは人間が四足歩行のポケモンの行動に対して勝手に名付けているだけで、別にあなたに服従しているわけじゃないですよとアリエスなら言いそうだった。
「少々恥ずかしいですが。特別ですよ、イヅキ」
寝転がったアリエスが前脚でお腹よりもやや上の部分を指し示す。この辺り、ということなんだろうか。イヅキは恐る恐る手で触れてみる。
毛をカットしていない状態でもきちんと手入れされているアリエスの毛並みは手触りが良かった。頭や首元を撫でたりすることは結構あったけれど、内側はなかったな。
草むらに落ちたボールを探すときの状況に似ているかもしれない。しばらくの間、ごそごそと探りを入れていると何やら小さなでっぱりに指先が引っかかった。
一瞬の沈黙。時間が止まったような感覚。どうすればいい、とイヅキが視線を送ると無言で頷くアリエス。指先でゆっくりとかき分けると、乳首が確かにあった。
これだけ長い毛に覆われていれば普段は全く分からないし、風呂で洗う時でさえ隠れてしまって気が付かない。でも、ピンク色をしていて思っていたよりも綺麗だった。
「ね、あるでしょう?」
「う……うん」
そんな自慢げに言われても。何に感心すればよいのやら。でも、水着で隠されていない無修正の雌の乳首である。
もちろんグラビアアイドルのような膨らみはないにしても、色に関してなら。年齢制限付きの媒体で見たものよりも、良いかもしれないと思ってしまった。
初めてみるアリエスの乳首に妙な胸の高鳴りを覚えてしまい、イヅキの指先は自然とその小さな突起に吸い寄せられていたのだ。
「あ、ちょっと……そこまでは許可して、んっ」
指先でさわさわと優しく表面を撫でると、ぴくりと体を震わせて甘い声を漏らすアリエス。口では抵抗する態度を取っても、前脚でイヅキの手を振り払ったりはしていない。
ついでに左手でもう片方の乳首も探り当てて、両手で無心に弄り始めると面白いようにぴくぴくと反応を示してくれた。器用な人間の指先で摘ままれる感覚はアリエスだけでは味わえないだろう。
「そんなに嫌がってないだろ」
「……ばれましたか。正直、けっこう気持ちよかったです」
やや荒くなった息を抑えながら、とろりとした目線で見上げられると。今までに感じたことのない高揚感がイヅキの体に湧き上がる。
いつも澄ました顔で家の廊下を歩いていたり母親にブラッシングされて目を細めていたりした、自分の知っているアリエスの顔つきではなかった。
「私も雌、ですからね。イヅキも意識はしてくれたみたいですし」
「んおっ」
後ろ足でこつん、と軽く股間に触れられて。いつの間にやらズボンの上からでも膨らみが分かるくらいには硬くなっていた。これは、アリエス相手に興奮してしまったのか。
動画を見ていた間もそれなりに反応はしていたのだが、それは今の比ではない。やはり画面上と実物を目の当たりにするのでは雲泥の差があるようだ。
「な、なあ、アリエス」
「ふふ。試験の範囲外でしょうけど『実技』もやってみます?」
皆まで言わずとも伝わったようだ。イヅキもアリエスの言葉が何を指しているのか、何となく雰囲気で感じ取った。
「……意外と乗り気だな」
「ずっと監視というのも退屈なのです。ちょうど刺激が欲しかったところですし」
本音が出ている。確かに、家の子供がちゃんと机に向かっているかどうかを見張り続けるのも味気ない内容ではある。
イヅキが刺激を求めてタブレットに手を伸ばしたのと、行動原理はそんなに差がないのかもしれなかった。何事にも息抜きは必要だ。
「母さんに怒られるぞ」
「それは、お互い様。でしょう?」
違いない。苦笑しながらイヅキはアリエスの後ろ足の方へ手を伸ばす。尻尾の付け根よりはやや上の辺り。アリエスの雌の部分なんて意識したことなかったけど。
今はどうなっているのかものすごく興味を惹かれる。さわさわと彼女の毛をまさぐっていくのは埋められている宝物を探し当てるような気分だった。
探りを入れていくうちに、おそらくここだろうという場所の見当はついた。他の部分よりも柔らかくて縦にすっと筋が入っている。イヅキは人差し指を縁に宛がうと、軽く右に引っ張って広げてみた。
「お、おお……」
アリエスの中は湿っていて、広げた部分の粘膜が僅かながら糸を引っ張っている。想像していたよりもずっと迫力があって、ひくひくと蠢いていて。やはり無修正はすごい。
「場所はお分かりいただけましたか。怖気づいた、なんて言わないですよね?」
「……誰が」
正直、少し圧倒されてしまった面はある。それを悟られまいとイヅキはいそいそと履いていたズボンとパンツを下ろす。
ぼろんと顔を覗かせた若い雄の象徴は、ぴんと張りがあって元気いっぱいだった。仰向けで見上げていたアリエスの瞳が僅かに見開かれたような気がした。
アリエスの前に下半身を晒すのは何年振りだろう。最後に一緒に風呂に入ったのはもう十年以上前かもしれない。その時よりは間違いなく成長しているはずだ。
「悪くはなさそうですね」
「んんっ」
すっと体を起こしたアリエスは躊躇なくイヅキの雄をぱくりと咥える。もちろん歯を立てたりはされていないので痛くはなかったが。
いきなりの行動だったのでイヅキも心の準備が出来ておらず、別の意味で少しどきどきしてしまった。
これが原因で怪我をしてしまったら恥ずかしいやら情けないやらで。理由をどう説明していいかが分からなくなる。
アリエスの長い口吻ですっぽりと覆われたイヅキの肉棒は舌を絡ませられながら、ゆっくりと時間を掛けて愛撫されていく。
立ったままというのが地味にきつい。油断すると足の力が抜けて、がっくりと膝を付いてしまいそうになる。妙に手馴れている感じだが、アリエスはどこで覚えたんだろう。
「これくらい慣らせば大丈夫ですか」
言いながら口を離すとアリエスはイヅキの背後に回って、鼻先で背中をつんつんと押して促した。どうやら寝転がれ、ということらしい。
てきぱきと動く彼女にされるがまま、イヅキはマットレスの上に仰向けになる。もちろん股間の一物も上を向いたままであった。
彼に続いてマットレスの上に飛び乗ると、イヅキを跨いで覆いかぶさるような姿勢を取るアリエス。その赤い瞳は確実に獲物を追い詰める捕食者の色をしていた。
ぎらぎらしていて野性味溢れる彼女も意外とありかもしれない。優雅な姿に忘れられがちだが、口を開ければ尖った牙を携えており、本来トリミアンは肉食系なのである。
「何か仰りたそうですね」
「……何もございませんとも」
ここは大人しく従っておいた方がよさそうだと長年の勘が告げる。イヅキを横にさせたのはたぶん、自分が下になるのは気に食わないとかそういった理由だろう。
家族から大事に扱われているという自覚がある分、アリエスはプライドが高い面がある。変に威張り散らしたりはしないので、お互いに仲良くはやれているが。
別に下になることに不服はないし、彼女にリードしてもらった方が不慣れなイヅキとしては安心できるところもある。今は彼女に任せておくことにする。
「そうですか。では、行きますよ……イヅキ」
「お、おう」
こうなれば基本的にはアリエスのペースだ。少し待ってほしいと言っても聞き入れてくれなさそうな空気があった。焦らされるのはあまり得意ではないはず。
イヅキの肉棒の先端を自身の雌にぴたりと密着させると、アリエスはそのままずぶりと腰を沈めていく。自分の雄が、他の誰かの体内に包まれる感覚。初めてだった。
慣らしているとはいえ、いくらアリエスでも急に腰を落としたりはしなかった。ゆっくりと慎重に。それでも確実に。じわりじわりとアリエスはイヅキを飲み込んでいく。
「あ、アリエス……」
「だめです」
「まだ何も言ってない」
「耐えてくださいな」
ばれてたか。まだ根元まで来ていないというのに、イヅキの感覚としていい具合になってしまっている。やはり人間とポケモンでは耐久性がそもそも違うのだろうか。
もちろんイヅキが経験不足で刺激に慣れていないから、という可能性も十分に考えられるのだが。自分が早漏であるとはなかなか認めがたいものなのである。
耐えられなかったら謝ろうと思っていたのに、先に釘を刺されてしまったのではどうしようもない。果ててしまったら果ててしまったときだ。
どちらにしてもアリエスが上になっているのだから、イヅキに主導権はなかった。そうしている間にも彼女は腰を落とし続けて、ついに。
「ふうっ、全部、入りましたね」
大きく息を吐いて、満足げにこちらを見下ろすアリエスの表情をしっかり確認する余裕がイヅキにはない。
変に喋ろうとすると、思わず体が動いたときに余計な刺激が襲い掛かってきそうだ。出来るだけむやみな動きは控えておきたい。今の彼はそういう状況にあった。
「じゃあ、動かします」
待ちませんから。と無言で伝えられたような気がした。アリエスは完全に腰を下ろした状態から、少し浮かせて再びずん、と沈める。
ぎゅっと締め付けているイヅキの雄を、さらに撫で上げる非情な行為。ただこれは本来の実技の一例であり、そこまで常軌を逸脱した行動ではない。
これだけで打ちのめされているようでは、アリエスからの実技試験はまだイヅキには時期早々だったのかもしれない。
「んっ、あぉぅっ!」
二、三度彼女に腰を上下されられただけで、あっという間に彼の肉棒は決壊してしまった。裏返った変な喘ぎ声と共に、びくびくと自分の体から何かが出ていくのを感じる。
自分で処理していたときとはまるで感覚が違っていた。こんな気が遠くなってしまうような快感を得たのは初めてだ。アリエスってすごかったんだな。
目の前の彼女の顔がぼうっと霞んで焦点が合わなくなって。今どんな情けない顔をしているのか、あんまり見ないでほしいなあという気持ちが頭の中でぐるぐるとしていた。
頬をべろべろと舐められていることに気が付いた辺りで、大分イヅキも意識がしっかりしてきた。何度かまばたきをすると、すぐ前にアリエスの顔が。
「不合格」
「……ほら、無勉だったし」
「この結果では追試が必要かと」
「い、今は……勘弁してよ」
「冗談ですよ」
第二ラウンドに挑めるほどの体力も技量もイヅキにあるはずもなく。それを承知の上の言葉だったらしく、アリエスはくすくすといたずらっぽく笑った。
おしまい