注意事項
幾分平和な状況が続くある日、ゴウカザルは誰もいない時間帯を見計らって鍛錬室で筋トレの真っ最中。隊長でありながら自身も積極的に戦うスタイルを貫くため、種々の鍛錬は今も欠かせない。この日のメニューを終え、汗だくになって隆々とした筋肉を臭わせながら隣接するシャワールームへ足を運ぼうとした。
「おう、遊撃隊長」
現れたのは救護隊長のドクロッグ。何事かと怪訝そうにすると、オレの部屋に来てくれとゴウカザルを半ば強引に連れて行く。困惑を滲ませながらも、素直について行った。
ドクロッグの部屋に入るなり甘い匂いを捉える。どことなく癖になりそうな、そんな雰囲気。救護隊らしく、治療等に使うような薬品が並べられている所もあった。
ゴウカザルは突如、背中に軽い衝撃を覚える。そしてそこから、何かがじわっと広がっていくような感覚。ゴウカザルの意識は、次第にぼんやりしてきた。そしてドクロッグは、ゴウカザルを仰向けに押し倒した。
「き、救護隊長……!?」
朦朧としながらも突然の事態に仰天を隠せないゴウカザル。
「今は救護隊長と呼ぶな。ドクロッグと呼べ。この中ではオレもキミも対等だから敬語も禁止。コレは先輩兵士としての命令だ」
ゴウカザルを上回る大きな肉体は時に威圧感を齎すが、現在それは鳴りを潜めていた。その代わりに顔立ちは火照ったように赤く、呼吸も荒い。
「ど、どうしたんだドクロッグ……?」
困惑するゴウカザルに触れたドクロッグの手は、普段装着している手袋がなかった。手指が触れる度に何かが濡れた毛皮伝いに皮膚から浸透していくのを感じ、それは鼠径部付近で顕著だった。いい頃合いかと、馴染みの手袋をはめた。ゴウカザルは起き上がろうとするも、筋肉の浮き立つ太い手足に力が入らない。
「お前まさか、俺に毒を……!」
「隊長にしちゃあ判断が遅いぜ、ゴウカザル」
彼は稀有な特性、どくしゅだった。不気味なにやけ顔で、白い毛に覆われた胸や腹の筋肉を揉み始める。マッサージを施術してもらう事は多々あったが、それよりもねっとり絡み付くような手つきに、ゴウカザルの身は反射的にぴくりと跳ね始める。入隊時に比べ身長、体重共に増え、筋肉も大きく張り出して一層くっきりと大柄な身を彩る。ドクロッグが顔を近づけると、多量の汗を含んだ毛皮から、戦う雄の強い臭いを発している。
「うおー……筋肉モリモリでめっちゃクサぁ……」
ドクロッグはこれまで見せた事のない陶酔に浸り、ゴウカザルを困惑させる。体を形作る筋肉は、普段は少し柔らかめなのに対し、力が入ると岩のように硬く、そしてよりくっきりと盛り上がる。されるがままに弄ばれていると、次第に体が熱く、脈が速まってきた。
「いってえ何を仕込みやがった……なんでムラムラしてきやがる……!」
「オレの魔術で、淫毒に変えたのさ」
とドクロッグはしたり顔。魔術とは即ち、超能力や魔法といった類の中で、ポケモンの技に当てはまらない物を指す。彼は格闘タイプでありながら武術のみならず独学で習得した魔術にも長け、それを利用した治療法が効果を上げた功績から救護隊のトップに上り詰めたのである。
ドクロッグの手が、茶色い毛の股間に伸ばされる。ゴウカザルは困惑を露にした。彼の最も雄たる部分、それは太々しく鼠径部に横たわり、皮被りでも兜のような形状が浮き立ち、縦に走った尿道が顔を出している。そしてだらりと伸び切った黒ずむ玉袋は、茶色の産毛を纏って中に収まる二個の大玉の形を浮き上がらせている。
通常のゴウカザルよりも大きな体躯に相応しい立派さを見せるその部分は、囚われた日に皇帝直々に気持ちいい快楽の施しに導かれ、初めて胎内で大きく膨らんでパワフルに遺伝子を搾り取られる形で一皮剥けた雄となった、彼にとって自慢の誇らしい性器。ついこの間もその時の追体験で、当時よりも立派になった肉体を震わせて悶え、経験済みの雄柱が高貴な胎内に囚われて性感に膨らまされながら肉襞を押し退け、あの日と同様唆されるままに皇帝と背徳的な仔作りを遂げていた。幸か不幸か雄同士のため、世継ぎは生まれないのだが……。
大方の事情を知るドクロッグは、強い雄の悪臭を放つ雄猿の性器を弄びながら皇帝直々の褒賞を心の中で羨む。彼からの刺激と淫毒の作用で雄棒は成長を遂げて真っすぐ伸びつつ皮が剥け、兜状の亀頭が空気にどんどん晒される。対して伸び切った陰嚢は徐々に縮み上がって股間にたわわな丸みを作り出した。
「なんで、こんなことをっ……うぅ」
「そりゃあ、あのときからずっと、ず~っとキミに夢中だったからさ」
ドクロッグは臍を大きく越えた完全勃起と凹凸著しく逞しい筋肉を、両手で弄び始める。
「くうっ……お前がそんなこと思ってたなんて……!」
思いもよらない情欲を向けられていた戸惑いを覚えながらも、鍛錬に汚れた肉体を更に汚そうとする刺激に
「けど俺はっ……その気持ちに、応えられない……うぅっ!」
性感に声を震わせつつ、罪悪感を孕んだ言葉を返した。彼からすればあくまでドクロッグは尊敬する先輩……。
「悪い。でも今のキミに拒否権はないからな」
ドクロッグは表情を変える事なく、ゴウカザルを責め続ける。
肉兜の薄い皮膚が張って赤銅色の鈍い輝きを放ちながら、ドクロッグに扱かれる臭い火柱は絶えず受け続ける性感に汚れたがってじわりと膨らみ、不意に力を込めて筋張りと艶めきを強める雄々しい搾りの瞬間は、未だ乾いた柱を膨らませて病み付きの快感を若い遊撃隊長に齎す。その凛々しい顔立ちは既に歪み、鋭い牙を剥き出して善がる所も、ドクロッグには雄らしい魅力として映り、一層愛らしさが増す。
「うぅぅ!」
ナイスバルクを曝け出しながら股間のバルクが卑猥にビルドアップした瞬間、鈴口が透明な粘液でねっとり汚れる。長く糸を引かせてゴウカザルに見せ付けると、顔を赤くして意図せぬ仔作りの準備運動に悶え、火柱は力強い姿で更に性感に耐えられなくなっていく徴たる臭く透明な強い粘りを断続的に漏らして、臍から胸板の間に聳える六つの高まりの谷間に染みていく。体温の上昇に伴うゴウカザルの発汗は噎せ返る程の強い雄臭を放ち、濃厚な発情フェロモンを分泌する雄の兵士らしさを自覚する。ドクロッグは炎タイプ特有の強い粘り気を、漏らした火柱にぬちぬちと塗りたくる。ゴウカザルはそれを見て
「コレでバッチリだな」
満遍なくぬめって輝くゴウカザルの卑猥な怒張を凝視して、不気味な口元を更に吊り上げた。そしてゴウカザルを跨いで佇む。股間の白い模様の境目に沿って横方向に割れ、そこからねっとりした汁が溢れて滴る。白い模様の上側から青い下腹部にかけて、異国風の模様が描かれている。
「え、お前まさか陛下と同じで……」
「おうよ、オレも『ない』族だぜ」
にやつきながら自身の手で股間を開く。体に対する喉袋の大きさからドクロッグが偽りなき雄である事は間違いないが、確かにゴウカザルのような立派なモノはなく、その代わり鮮やかな紅色の肉のうねりと潤いが覗く禁断の穴の様相を見せていた。皇帝を始め、連絡隊、諜報隊に多い鳥ポケモンの雄がこのような構造の性器である事は入隊してから知ったが、もっと身近な存在がこのタイプの性器だった事実はあまりに衝撃的だった。
「やっとこのときが来る……!」
ドクロッグは舌なめずりしながら左手をゴウカザルのぬめった腹筋に着き、右手は股下に潜り込ませて熱い柱を掴みながら股を開いて腰を下ろす。
「お、おい、マジかよぉ……!?」
淫毒で体の自由を奪われて意志とは関係なく発情させられたゴウカザルは、突然の展開に動揺する。赤銅の肉兜と紅色の蛙穴の距離が縮まり、穴から垂れた愛液が肉兜に付着して、初めて性器同士で接点が生まれる。
「や、やめてくれ! 俺はお前とこんなこと……!」
拒否の意思こそ見せるが、身の自由を奪われて抵抗すらままならない。
そして柱が穴に押し当てられ、ひんやりした感触と同時に圧による亀頭の変形を経て肉穴を抉じ開けさせられ、ゴウカザルは望まぬ開削の摩擦にぴくりと震えた。
ドクロッグは更に股を開き、皇帝の寵愛を受けて胎内でお世継ぎを作りかねない大いなる瞬間を何度も迎えた、熱く卑しい種柱を徐々に飲み込む。最前線で開削させられ続ける、ぷりっと肉感の強い亀頭は持ち主の意志など関係なく刺激に喜び、飲み込まれていない部分が刹那に太くなって、初めてゴウカザルの新鮮な体液が立派な種柱からドクロッグの体内に漏れたのを気持ちよく実感させられる。
ドクロッグも飲み込む突出から敏感な肉襞に伝わる熱に炎タイプの生命の息吹を感じ、内を押し広げられる仄かな痛みを伴う快感にすっかり息を荒げる。そしてとうとう鼠径部が密着し、彼らは完全に結ばれる。
「どうだぁ、オレの、ナカはよぉ……?」
「こんなのっ、望んでねぇ……うぅっ!」
ゴウカザルはせめてもの抵抗で首を横に振り、頭の炎を揺らした。それでも確実にドクロッグの肉壁からの刺激は否応なしに昂らせる。ゴウカザルからすれば、胎内の気持ちよさは皇帝の方が上回っていたが、尊敬する先輩でさえなければ身近な存在として交わるには十二分にいい具合だった。そう、ドクロッグでさえなければ……。
ゴウカザルからは結合部が見え、横に開いた割れ目から覗く紅色の肉穴は雄を飲み込んで盛り上がり、その上に描かれた模様が彩りを添える。性感に耐えて漏らした彼らの仔作りが進む濃厚な汁を和合させて溢れ出し、種柱を流れ下って雄猿の鼠径部と柱の両脇から覗く大きな猿玉を汚す。汚れて猿玉が艶めいた事で、迫り来る命の爆発に硬く丸く締まって、柱のみならず性器全体が気持ちいいのを気付かされてしまい、勝手に胎内にドプンと漏らしては、ドクロッグから齎される快楽に振り回され、仔作りに励まされる雄として更に汚れ、立派に膨れ上がった性器を卑猥に輝かせて目立たせる。
「そしたらオレが……存分に、搾り取って、やっからなァ!」
ドクロッグはゴウカザルの胸板に両手を着き、筋肉の分厚さを掌に感じながら上下に動き出す。少し厳つくも勇ましく凛々しいゴウカザルの顔立ちが快感と嫌悪感でくしゃりとなるのを、より間近で観察出来る。
「う、うああっ! やめろっ! チンポ、やべぇっ!」
「んおぉ! ナカ! ゴリゴリするぅ!」
圧迫に加えて摩擦の刺激が、交わる二匹を善がらせる。胎内に分布する大小の襞は、ゴウカザルの亀頭のエラと引っ掛かって強い快楽を齎すのみならず、柱の表面に浮き立った血管や太い筋とも擦れて絡まり、予測不能な刺激として襲い掛かる。
「う、ぐうぅ! ちくしょう!」
汗だくマッチョの遊撃隊長が、救護隊長に一方的に犯される受け入れ難い快楽に雄々しく悶えながら、父親になろうとして発せられる強い雄の臭いを発して部屋の空気を遊撃隊長に変えていく。ゴウカザル自身もその臭いで更に力強い仔作りへと唆され、ドクロッグは胎内で支配する力強い雄柱の大きさと熱に善がりつつ、粘液で清潔な皮膚粘膜に、兼ねてより想い続けてきた雄の臭いが染み付く事を期待していた。
「オレたちの、キモチイイトコっ……見たいだろっ?」
ドクロッグは上半身を倒した事で視界を塞ぐ喉の大きな毒袋を縮め、ゴウカザルの視界に結合部が映るようになる。これで図らずもドクロッグの見た目は雌の姿に近づく。結合部は水音を立てながら鼠径部の着いて離れてを繰り返して糸を引き、一切の主導権のない種柱はより危険な粘りに塗れて、常に蛙膣に弄ばれて読めない仔作りの準備運動にドクンと膨らまされ、膣を押し退けながらどんどん濃い物を搾り出される度に、準備運動前よりも大きくなっているのを感じたゴウカザルは、お目見えした太さに自身の雄のエロスを否が応でも自覚させられる。
「んくぅ! お前の、中にっ! ガキぃ、漏らしたか、ねぇよぉ!」
屈強な大猿は涙を浮かべながら鋭い牙を剥き出し、被虐的な交尾で雄々しく導かれる事を嫌がり続ける。それでも胎内で容赦なく肉兜に熱が集まり、膨れてエラが張り出し、開いた鈴口が奥の肉に当たり出す。
「あぁぁ! チンポ、でっかぁ! もっと、欲しいっ!」
ドクロッグは煽情的な腰つきで、屈強な大雄が奥に強く当たるのを喜びながら仔作りへと導こうとする。
「クソぉ! 金玉、ムズムズしやがるっ! やだっ、やだぁ!」
子種の本流が硬くなった雄の果実から種柱へと移って行く。それに合わせて頻りに脈動するようになり、性感に徐々に耐えられずに太い尿道内に溜まった、仔作りの可能性を孕んだ粘度の高い分泌物をドクロッグの胎内に搾り出す。巨大な肉兜はドクロッグの奥の分厚い肉壁をいよいよ気持ちよく抉じ開けようとする。
「やめっ、俺、パパにっ、なっちまうっ! 抜け! 抜けぇ!」
ゴウカザルは一頻り喚いてから歯を食いしばり、膣を抉じ開ける太さにさせられて雄の体液に満たされた空間の強い圧迫感に抗って漏らすまいと踏ん張る。だがそれでも前立腺に容赦なく屈強な兵士の遺伝子は流れ込み続ける。
「ぐおおぉっ! チンポ! 抜いてっ、くれぇ!! ぃぎいっ!?」
前立腺が満たされようとした瞬間、必死の訴え空しくドクロッグの胎内に犯され続けてきた雄柱はズンと硬く大きく隆々と聳えさせられ、奥の障壁を突き破る。
「キミの、熱いのぉ! ナカにっ、出してくれぇ……!」
ドクロッグは自ら仕立て上げてきた巨雄にスイートスポットを刺激され、喜びに腰を浮かせる。仔作り寸前の極太柱が、熟れて盛り上がる蛙の淫肉から徐々に大量の危険な体液を纏って露出する。決壊寸前の太い雄の脈動に、ゴウカザルは曝け出された尻穴をきゅっと締め、唸りながら耐えようとする。そしてドクロッグは止めと言わんばかりに腰を落として淫肉に呑み込ませ、粘液塗れの鼠径部を密着させた。
「あぁぁっ! 漏れっ!! ぐうおおぉぉぉぉぉ!!!」
屈強な雄臭い遊撃隊長が、突出の持たない胎内に主導権を握られ続けた種付けに雄々しく突出させられ、頭の炎を轟々と燃やして力強く屈する。隆々として駆け上がる子種に尿道を膨らませる種柱を勝ち誇ったように蛙膣が捕らえる。奥に突き抜けた亀頭の開き切った鈴口から、気持ちよさに我慢出来ず分泌した物を押し出して、白い命のジェルが顔を出した途端、ドクロッグの胎内で新たな生命が炸裂する。
「んほ~げろげ~ろぉぉぉぉぉぉ~~~~~♥♥♥」
突き破られた最奥に痛い程の勢いで噴き上がった。その衝撃にドクロッグは歓喜の痙攣を発し、膣圧を強めて果てる。溶岩の如き熱く濃厚な雄猿の息吹が、秘する空間を満たしていく。
「ぐうぅ~~~っくしょぉ……♥」
制御不能の噴火たる射精に、ゴウカザルは野太く揺らめく嬌声を発してしまう。ドクロッグとの望まぬ仔作りで、これまで皇帝にしか曝け出さなかった、限界まで膨れ上がって爆発する瞬間の無防備な様相を、彼にも見せる羽目になった。
一定の間隔で太く脈打つ種柱に、咥え込む淫口から溢れた白濁が流れ下る。粘度の低く毒々しい刺激臭を放つドクロッグの精が先んじ、遅れて所々ゼリー状の獣臭いゴウカザルの精が押し流す。
「あぁ……出しちまった……」
しつこく発せられ続ける射精の快感に浮かされながら、ゴウカザルは苦々しく噛み締めた。
「キミの、熱いモノが……いっぱい……!」
一方で内を支配する膨満感と熱感に、ドクロッグは夢中になって陶酔していた。
精を吐き切った雄の象徴が、淫蛙の中で縮み出す。すっかり満たされたドクロッグは、徐に腰を上げてゴウカザルを解放した。べちょっと音を立てて鼠径部に横たわる汚れた猿茎に、溢れ出した白濁がボタボタ滴り落ちる。
「俺……純粋に、先輩として尊敬してたから……マジでこんなこと、したくなかった……」
未だ毒の作用で手足が動かないままのゴウカザルが、大粒の涙を零した。部屋の甘い匂いに混じる刺激的な雄臭も手伝い、高揚していた脳を覚まして冷静な思考状態へと引き摺り込んでいく。手袋をはめた大きな手が、涙に濡れた頬を撫でた。
「悪い……。でも、こうでもしなきゃ、オレの体は鎮まらなかったんだ……」
自身を律せられない毒に対する歯がゆさを、顔に滲ませた。一時の過ちとは言え、これ以上何と声を掛けるべきか、ドクロッグは迷いつつ、ゴウカザルの横に座り込む。
「……なあ、ドクロッグ」
しばしの沈黙を破ったのはゴウカザルだった。
「こんなこと、もうこれっきりにするって、約束できるか?」
「……どういうコトだ?」
思わず聞き返したドクロッグ。約束しろと命令すれば簡単なのに、回りくどく疑問形にした事が意に介せないでいた。ゴウカザルは小さく溜息を零す。
「俺はこれからずっと、お前と気まずいままでいたくねぇ。けど、お前の気持ちも根っから否定したくねぇ。俺はただ……今までどおりの関係を、続けていきてぇだけなんだ。俺のことを好きなお前にはきついかもしれねえけど……」
ドクロッグの下腹部が、僅かに疼く。確かに彼からすれば、酷な願いである事に相違なかった。城に仕える異性はおろか一部同性からも色目で見られながら、想いは皇帝にしか向いていないであろう猛々しい美青年を、恐らくは皆がこのまま放っておく訳がない。ならばと立場の近さを利用して我が物にしようとした企みは、見事潰えてしまった事を意中のゴウカザル本人から突き付けられる事になるのだから。
……それでもドクロッグは、ゆっくりと頷いた。
「わかった。キミがそれを望むなら、オレはそれに応える。もうあんなマネはしないと、心から誓う」
ゴウカザルに対し、胸に手を当てて畏まる。そのあまりに美しい所作に、切れ長の眼は丸くなり、潤み出す。
「……すまねぇ」
「バカ言うな、謝るのはオレの方だ」
ばつが悪そうにする想いびとをきっぱり諫めた。青い手指によって引き立つ黄色い毛並みの手の甲に、そっと唇を触れる。
「一つだけ、わがままさせてくれ」
そう零すなり、ドクロッグはゴウカザルを抱き上げ、口を重ねる。突拍子のない行為だったが、先と異なり、ゴウカザルは拒む姿勢を見せなかった。それどころか自ら舌を絡めて応じた。ドクロッグの舌はあまりに大きかった。味やにおい、粘り気、温度それぞれが異なる唾液が、口付けによって混ざり合う。叶うなら、このまま時が止まってほしい。そんな儚い願いを心の奥に押し込める。絡み合う舌が、強まる塩気を捉えた。
ゴウカザルは頭を動かし始め、これ以上の口付けを拒む。離れた口から銀糸が伸び、無情に時が進む悲しみが、ドクロッグの頬に流れ落ちた。
「ほんとに、すまねぇ……でもこれ以上は、日報書く時間が……」
隊長の職務の一つである日報の提出。ドクロッグ自身も隊長であるため、尚の事心が痛んだ。
「……だよな。ちょっと待て」
再度寝かせてからゆっくり立ち上がり、薬棚へ向かう足の運びは見るからに重い。液状の薬を小皿に注ぎ、戻って来るなり唾液で汚れたゴウカザルの口へと運ぶ。
「マズいだろうが、吐くなよ」
小さく頷いたゴウカザルの口に、薬を注ぎ込む。途端に咳き込み、激しく
「しばらくしたら手足が動くようになるからな」
ドクロッグの言う通り、時間の経過に従って徐々に指が動くようになり、次第に手足に力が戻ってくる。ようやく上半身を起こせるまで回復するが、先の交わりによる雄の汚れと強い臭いに、赤い太眉を顰めた。
「は? こんな模様いつの間に……!」
目を点にしたゴウカザル。精液で汚れても分かりづらい白毛の鼠径部に、謎の模様が施されていた。それはドクロッグに描かれているそれと似ているようで少し違う。
「へへ、オシャレでエロいなと思って描いちゃったぜ。でもすぐ消えるから安心しろ」
「お、おう……」
自らその模様に触れるも何も起こらず、手に付着した精液に不快感を露にする。シャワー使えよ、と場所を指差す。今いる部屋から続く細い廊下の奥だった。足も段々動くようになってきて、軽く動きを確認してから、隆々とした筋肉を膨らませて体重を支え、よろけつつも起き上がる。咄嗟に肩を貸したドクロッグ。身に感じる濡れた毛皮と硬い筋肉の感触、炎タイプらしく熱い体温、汚れた雄獣の臭いに、下腹部が切なく疼く。何歩か歩いてから、もう大丈夫だと独りで歩き出す。マッチョな後ろ姿が細い廊下に差し掛かり、頭の炎を揺らめかせつつ振り向いた。
「これからもよろしくお願いします、
揺れる炎に陰った笑顔に、再度疼いた下腹部。ドクロッグは手を触れてしまう。
「……あれ、その模様光りませんでした?」
ドクロッグが目を遣るも、特に変わった様子はない。気のせいじゃないかと首を傾げると、そうですね、と再度歩き出して浴室に吸い込まれて行った。奥から響く水音に耳を傾けつつ、触れたままの手は円を描いて謎の模様の目立つ下腹部を擦り続けた。
あれから数日後。日報の提出を終えて就寝の準備をしていたのはドクロッグ。用を済ませて体を洗い、部屋の灯りを落として薄暗くする。
「失礼するぞ」
外から声が聞こえるなり、扉が開いて誰かが入って来た。その姿に吃驚を隠せない。
「へ、陛下!」
ドクロッグは即座に畏まる。お供として連れ立つ護衛隊の兵士を後ろに、佇む皇帝のれいとうビームたる視線は、背筋に寒気を覚える。
「お前、『奇術』を使っただろう。我々はとうに把握している」
「……はっ! 弁解の余地も、ございません……」
ドクロッグはすんなり、禁忌たる奇術の使用を認めた。魔術の中でも特に生命倫理が問われる物、言うなれば即死魔法や蘇生術のような、生命を自由に操れるような効果の魔術は全て奇術となる。一部例外を除いて使用は禁止され、背いた者は重罪が課せられた。
「……裁きを受ける覚悟は、できております」
その裁きが何を意味するかは、魔術を以て貢献するドクロッグには言わずもがな。声こそ震えながらも、皇帝に両手を差し出した。
「ドクロッグを捕らえて引き立てよ。くれぐれも隠密にな」
「はっ!」
護衛隊によって即座に捕らわれ、静まり返った夜の城内を通って牢へと連れて行かれる。だがその行き先は、何度か目にした事のある複数名を収容可能な牢ではなく、完全に周囲から隔離された独居房であった。空間を隔てる檻の鍵が閉められ、必要最低限の物しかない
「こんなコトになるなんてな……」
ドクロッグは硬く冷たい床に座り込み、腹を撫でながら長い溜息を零した。しばらくして、独居房に緩慢な足音が近づく。その正体は皇帝だった。即座に畏まるドクロッグ。皇帝は檻越しに話し掛けた。
「お前も重々知っての通り、城内に於ける奇術の使用は極刑にもなり兼ねない重罪だ。その事を承知の上で、用いたのだな?」
「さようで、ございます……」
大
「本来ならば極刑も視野に入れねばならん事態ではある。だがお前の魔術によって調合、治療の技術が飛躍した救護隊の現状を鑑みるに、大きな声では言えぬが、あまりよろしくはない。故に、この私に力添えする事を条件に、刑を免じようと考えている」
「わ、わたくしめには身に余るお言葉……! いったい何を致せばよろしゅうございますか?」
このまま散る事も覚悟していた身にとって、皇帝直々の願ってもないチャンス。藁にも縋る思いで食らい付いた。
皇帝の口から明かされる、力添えの内容。それを耳にするなり、ドクロッグは腹に手を当て、俯いて表情に影を落とした。
敵対勢力が奇襲を仕掛け、その対応でゴウカザル率いる遊撃隊も出動。敵勢の規模はそこそこ多数であったが、進撃隊を始めとした各部隊と連携しての波状攻撃に加わり、特にゴウカザルの非の付け所のない采配による兵力の配分が奏功して撃退するに止まらず、敵勢の領地の一部をも報復と銘打って獲得し、領地拡大を成した。
戦いで負傷した兵士達は救護隊による手厚い治療を受け、体調不良による一月の城外休養を経て復帰したばかりのドクロッグが早々に活躍を見せた。
勿論皇帝もこの戦績を大いに評価し、力を発揮した兵士達に褒賞を賜る事を宣言した。兵士達は城内の宿舎に戻るなり、歓喜を爆発させた。
そんなある日の夜、期待と緊張の入り混じる面持ちで、案内された皇帝の部屋の前に佇むゴウカザル。立派な扉をノックすると、向こうから耳に届く皇帝の低い声。
「ただ今、参りました」
世話役が開けた扉の向こうに、豪華に装飾された椅子に座る皇帝の姿。
「近う寄れ」
ゆっくりした足取りで皇帝の許へ歩み寄る。畏まるなり皇帝は立ち上がり、広く立派な遊撃隊長の肩に鋼の翼をそっと乗せる。
「あの時兵士としてお前を迎え入れたのは間違いではなかったと、心から噛み締めている。お前の活躍は、我が事のように嬉しいぞ」
「はっ。身に余るお言葉、大変恐縮にございます!」
言葉では謙譲しながらも、皇帝に対する想いは熱く燃え上がっていた。早速ゴウカザルを奥の寝室へと連れて行く。どこかで嗅いだような甘い香りの漂う豪華な装飾の空間で、皇帝はゴウカザルを気持ちよく施す。それに反応した屈強な美青年は力強く勃起して、その雄々しさを皇帝に披露した。
「この時を楽しみに待っていたのだ……」
すっかり上気して鋼の身を熱くする皇帝。その鼠径部には、異国風の模様が描かれている。そしてゴウカザルにも、あの模様が徐々に浮かび始めていた。
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コメントはありません。 Comments/兵士として大成した大柄なゴウカザルが尊敬する先輩兵士に手を出されるお話 ?