ポケモンの通訳士
目次
ポケモン通訳士──という仕事がある。
読んで字のごとく、人とポケモンとの仲介をしてくれる存在ではあるのだが、これがなかなかに興味深い。
その仕事内容としてはポケモン・トレーナー間の橋渡しは元より、さらには医療現場における診察や手術のサポートに至るまでその資格者の仕事は多岐に及ぶ。
昨今では専門の翻訳機やアプリによる言語の解読も進んだが、それら機械のする翻訳は所詮単語の直訳に過ぎず、やはり専門家が直に通訳をしてくれる柔軟性には遠く及ばなかった。
そして今回、俺はとあるヤミラミとの商談に望むべく通訳士の手配をする。
専門の仲介サイトに登録されていた『彼女』は中々に有能そうでサイト内での評価も高かった。
加えて過去の依頼者からのメモには彼女の容姿を『可愛い』と評するものが多く、俺の期待は否応なしにも高まってしまう。
ネット上ではあるが契約も交わし、そしていざ顔合わせとなった当日──改めて『彼女』と対峙した俺は驚愕と、そして口コミに書かれていたあれら評価の意味を知るのである。
今、俺の目の前にいるのは……
『こんチにわ。ツウヤクのパーモット、です。ヨロシク、です』
そこには人語を話すパーモットが──紛う方なき『ポケモン』そのものが流暢に俺へ挨拶をしていた。
その身の丈は俺の腰元ほどで、円らな瞳と頬に見られる大きな電気袋の様相は確かに『可愛い』の一語に尽きた。……俺の求めるベクレルとはだいぶ違ったが。
しかしながら何よりも驚いたのは、通訳士がポケモンそのものであるという事実だ。
有名な都市伝説として『人語を駆使するニャース』というのはよく聞く話ではあるが、俺にとってはまさにその荒唐無稽な話(オカルト)がいま目の前に現れているに他ならない。
そのショックから抜け出せずに挨拶も忘れて彼女へ見入っていると、
『ドシタノ? ダンナさん?』
再度パーモットから小首など傾げられ俺も我に返る。
よくよく考えれば、女の子を斡旋してもらうことが目的じゃない。驚きこそあったが、彼女が有能であるというのならそれに越したことはない。
「な、なんでもないよ。しばらく付き合ってもらうけど、よろしく頼む」
『ハイヨ♡ ヨロシク、です。ダンナさん♡』
差し出す俺の握手に反応して両手で握り返してくれるパーモットの朗らかな笑顔に癒されると同時、俺は今回の仕事が無事に終えられるのか不安にもなる。
今回、通訳士を用意したのには商談以外にも理由がある。
それは件のヤミラミのいる洞窟に向かうまでの行程の険しさにあった。
大小の森や山々を越えた山岳地帯に居を構えるヤミラミ達ではあるが、徒歩で辿らねばならぬその道中は特殊な磁場によって一切の電波や通信の類がシャットアウトされてしまうのだった。
その険しさもあって今日までヤミラミとの商業ルートを築けた者は皆無であり、それゆえにヤミラミの宝石はその希少性が高かった。
そんな場所であるからこそ、そこの踏破には現地ポケモン達の協力が必須となる。
元よりそこにいる原住ポケモンと交流をし、ルート開拓をしながら進むしかない一連の行程には、そんな彼らと情報交換をする為の通訳士は必要不可欠と言えた。
かくして煩雑な下準備を整えるや、俺達の険しい旅は始まる。
件のヤミラミの洞窟がある山の麓には広大な樹海が広がっており、交通機関を介して辿り着けるのはこの入り口までであった。
そこからは徒歩により道無き樹海を進んでいく。
過酷なキャラバンの道すがら、幾人かのポケモン達と遭遇しては彼らからルートの確認や、あるいは食糧や水場の確保といった情報を得ながら俺達は進んだ。
その途中で行うキャンプにおいて俺とパーモットは共同生活を共にする訳ではあるが、話好きで性格の温和な彼女との会話が、この過酷な旅においてどれだけ俺を慰めてくれたか知れない。
むしろ同種の人間と一緒にいる時よりもリラックスしていることにも気付いては驚きを禁じ得ないほどであった。
そんな数日目のキャンプの中、お互いの事などを話していた時に、パーモットは思わぬ話を聞かせてくれた。
『ウチね、オス探してルの。カレシ欲しンダ』
ポケモンとコイバナを交わすなどという思わぬ展開に俺の興味もそそられる──食後に焚火など囲みながらコーヒーをすすっていた時の話だ。
「ポケモンでもそんなことするのかい? なんかこう、自然といつの間にかくっついちゃうイメージあるけど」
『それもソウだけど、自分で選ビタイかな。好きじゃナイ人と一緒にイタクナイもん』
パーモットの言葉に、言われてみれば自然界の動物達だってパートナー探しにはこれ以上に無い吟味を重ねていることを思い出して納得したりもする。
何も人だけが特別なわけではないのだ。
「それじゃ、パーモットは今フリーなんだ? モテそうな気もするけど」
『ウン、いないノ……ナンカ、ピンとこなくテ。でもネ、今は気にナッテル人がいるヨ』
「へぇー、誰だい?」
何気ない俺の相槌に対し、パーモットは一度噤んだ口の中に答えを溜めてからはにかんだ様子で微笑み……
『えへへ……ダンナさん。ダンナさん、好きぃ……♡』
上目遣いに俺へ告白して彼女は頬の電気袋を赤く発光させた。
そんな、人間のような仕草を見せてくる彼女とその思わぬ言葉を受け止めては、思わず俺もすすりかけていたコーヒーを吹き出してしまう。
「お、俺だってぇ? 俺、人間だぞ?」
『ウチ、アンマリ気にしない。好きなヒトが好き♡』
そう言ってさも嬉しそうに笑う彼女を前に、俺は例の紹介サイトでこのパーモットが人気であった訳を悟る。
本業の有能さも然ることながら、なるほど彼女は『接待』というものを心得ている。
見た目の愛らしさをこれ以上になく発揮しながらこう『好き』などと言われれば、大抵の客は彼女に好印象を抱くことだろう。事実、今の俺からしてもまんざらじゃない気分だ。
しかしながら俺とても、生き馬の目を抜く業界の商売人だ。
この程度のトークで落とされるほど安くはない。
「それじゃ特別ボーナスはキスでいいかい? 分割と一括、どちらでも対応可能だけど」
そう彼女に合わせたジョークを返す俺ではあったがしかし、
『いいのッ!? キスでイイヨ! ダンナさんとキスしたイ!』
その返事に身を乗り出してきては、パーモットは有無を言わせずに畳み掛けてきた。
最初は彼女もこのジョークに対して、更にそれを返してきたと思ったから俺も笑って両腕を広げる。
「OK、成立だ。どこでもいいぞ? 頬でも額でも」
しかしながら……この時俺はもっと慎重に、そして真摯に彼女の言葉を受け止めるべきであった。
パーモットはそわそわと立ち上がり、依然として胡坐に座り続ける俺の前に立つ。
そして俺の頬へ両手を添えてしばし見つめてきたかと思うと次の瞬間──彼女は言葉通りのキスを以て俺の唇を塞いだ。
一方で慌てふためいたのは俺である。
まさか本当にやるとは思ってもいなかったなど、今となってはもう言い訳にもなりはしない。
パーモットは依然として唇同士を触れ合わせたたまま、幾度も小首を傾げてはより濃厚に互いの鼻先同士をすり合わせていく。
加えて口中に暖かく滑らかな彼女の舌先が侵入してくるのもまた感じると……
──しかもディープかよ………!
なおさらに俺は、自身の軽はずみを悔いずにはいられないのだった。
樹海を抜けると途端に周囲の環境は岩場の雪景色に一変した。
ルート開拓の先駆者もおらず、電子機器等の通信にも頼れない状況も相成っては、ここでもパーモットの通訳能力がいかんなく発揮された。
一見厳しい環境ではあるが、そんな地にも原住ポケモンは多い。
その道すがらで出会うポケモン達から得られる情報は単なる目的地までの道順に限らず、キャンプ設営に適した洞窟や雨風を凌げる倒木の隙間などもまた教えてもらえたりと、この極限の環境においてはまさに俺達の命を繋ぐ生きた情報と言えた。
そして斯様な通訳をしてくれるパーモットの仕事ぶりもまた充実していた。
出会った頃以上に意欲的に仕事をこなしてくれるその理由こそは……
『ダンナさん♡ ボーナスちょうらい。きょうノお手当♡』
他でもない俺からの『特別ボーナス』にある。
一日終わりのキャンプにおいて、パーモットは俺と『極めて親密に』過ごすことを求めた。
俺の膝の上に陣取ると、そこから幾度となく口や頬を問わぬキスを繰り返す……ことさら食後のペッティングを彼女は好み、特にコーヒーを飲んだ直後のディープキスを殊更に求めた。
『コーシーのあじ、好き……♡ いい匂イ……これ好きぃ♡』
あまりに激しく舌同士を絡めるあまり、もはや俺の口中に残るコーヒーの残滓を直に吸い上げてくるようなその濃厚さに、ならば直接にコーヒーなど飲んでみてはとも勧めたが、コーヒー自体はあまり気に召さないようだった。
あくまでこの『キス』の際に残り香を感じられるのが良いようである。
一方の俺はと言えば、そんなパーモットからの求めに対し、未だに戸惑いを拭えずにいる。
それまでの俺にとって、ポケモンとは一動物でしかなかった。
せいぜいが賢い犬程度の認識であった存在がしかし……今現在俺と彼女の関係たるや、もはやビジネスパートナーの枠をとうに超越した男女のそれへと昇華しつつある。
そして俺がこの現状において一番に危惧することそれこそは、この関係を俺自身もまんざらになく思い始めていることにあった。
有り体に言わせてもらうならばこの時──俺もまたパーモット(ポケモン)に恋愛感情を抱き始めていたのだ。
しかし同時に、彼女を一個人として認めつつもまだ、心の何処かでパーモットを『ポケモン』として一段下の存在に見下しているだろう己の心の内に、心底俺は自己嫌悪にも陥るのだった。
そんな戸惑いもまた胸に抱き続けたまま、いつしか俺達の旅は佳境へと差し掛かっていった。
遂に当初目指していたヤミラミの山へと辿り着き、俺達はそこにある洞窟の一角において最後のキャンプを張る。
入り組んだ構造の洞窟内は、内部へ入り込むことで完全に風雪から免れることが出来た。
とはいえしかし、氷点下を下回る環境はそれでも過酷の一語に尽きた。
食後は少しでも体力の消費を抑えるべくすぐに就寝に着いた俺達ではあったが……今度はその寒さゆえに眠れない状況へと陥る。
幾度となく寝返りを打ち、いつまでも眠りにつけない感覚に苛立つ俺はふと傍らで身を丸めるパーモットへと視線を投げた。
毛布にくるまってうつ伏せに身を縮こませているパーモットもまた眠りには至れていないようで、その眉元に深く皺を刻み込んでは震えていた。
ただ寒さに反応してか頬の電気袋が暖色に赤く発光している眺めはなんとも心が落ち着いて、俺はいつまでもその柔らかい輝きを見つめ続けた。
そんな中、不意にパーモットもまた片瞼を開くとそこにおいて俺と視線を交わす。
極限状態もあってか、こんな状況で目が合う俺達はつい微笑み合ってしまう。
「パーモットも眠れないのか?」
『ウン……寒いの、ニガテ……寝れないミタイ……』
応えながらもぞもぞと体を蠢かしては寝相を変える彼女を前に、つい俺も後先を考えない思い付きを提案してしまう。
それこそは、
「なあ、こっちに来ないか? ふたりで抱きあえば少しは暖かいかもしれない……」
同衾を誘う言葉だった。
この提案は俺自身にしても以外で、発してから自分が何を口走っているものかと自問したほどである。
しかしながら一方でそれを受け止めるパーモットの反応は明るいものであった。
その提案を聞くなり表情を輝かせるや、
『ウン! 一緒に寝ル! ダンナさんと、おなじオフトンで寝るッ』
互いに一メートルも無い距離だというのに、パーモットは飛び跳ねるように起き出してはその勢いのままに俺の寝袋へと頭を潜り込ませた。
そうして完全に寝袋の中へ納まってしまうと、その中で互い違いになっていた体位を忙しなく変えて俺と向き合う様に調整をする。
入り込まれた瞬間こそは冷えた体毛に冷気を感じたが、それでも正面から抱き合って前面を密着させ合うと、すぐに互いの体温が溶け出してはじんわりと熱が染み入ってくるのが感じられた。
一人寝の時はあれほどに寒かったにもかかわらず、こうして誰かと抱き合うだけで今まで苛まされていた寒さが途端に気にならなくなるのが不思議だった。
しかしながらこれは俺だけが受けている恩恵なのではないかと申し訳なくなり、俺は懐のパーモットも見下ろす。
「パーモットは寒くないか?」
『ウウン、ヘイキッ。すっごくあったかいヨ♡ ダンナさん、いいニオイ♡』
俺の胸元へ横顔を押し付けながら瞼を細めるその表情に緊張した様子は見られず、彼女もまた俺から暖を取れている様子に安堵する。
彼女の頬と、そして両掌に存在する電気袋がまるで熱線さながらに熱を帯びては俺を温めてくれる。
その熱源は彼女が顔を押し付けてくる胸元とそしてしがみ付くよう両腕を回す背中に感じられた。
一方で斯様な電気袋など持っていない俺も、少しでもパーモットを温めてやれればと包み込むようにその背を両腕で抱き包んでさすってやる。
左腕を背に回してやり右腕で尻を抱えるようにして抱き込むと、より一層に俺達の密着度は増した。
こうして体を押し付け合っていると、俺の胸元にはパーモットの肉付きが直に感じられる。
普段は体毛に覆われている球体然な彼女の体も、実際は中々の存在感を思わせる乳房の膨らみがそこに感じられた。
その重量感は尻にしても然りで、肉付きの良い臀部の質感が手に心地いい俺は、無意識にそこを揉みしだく動きを見せていた。
期せずして愛撫のように彼女へマッサージを施していると、パーモット側の動きにも変化が現れる。
押し付けていた頬の電気袋を身悶えるように左右に擦り付けては俺の胸元を広範囲に熱くさせる。
そして背に回されていた両手の熱源にもまた変化が生じたかと思うと──彼女の両手は徐々にその位置を背中から下降させ始めた。
熱源は背を下りてやがては俺の尻を抱えるよう移動していく。
やがて右手のそれが腰元へ添えられたかと思うと次の瞬間、その熱は俺の股間一点において熱く咲いた。
言わずもがなそれは、故意に彼女の手の平が俺の性器へと触れてきた瞬間でもあった。
一方で俺もまた彼女の尻を揉みしだく動きに力と変化とを持たせる。
緩急織り交ぜながら臀部そこを握りしめては解放するを繰り返す俺の右手は遂に、その中指の先端をそんな尻のクレバスへと潜らせてしまう。
同時に、指先にはぬるりとしと粘膜による潤滑の感触が広がった瞬間──パーモットは何とも獣めいた呻き声を漏らした。
普段聞く、あの軽やかな声の響きとは違う明らかなポケモンの発声にもしかし……彼女の発情を如実に感じ取った俺も興奮の度合いを深めていく。
いつしか俺達は寒さすら感じなくなっていた。
それどころかこの瞬間には倫理観すら失われていたように思う。
もはや種を越えてまぐわろうとしているその禁忌を互い危ぶみつつもしかし、今や俺達は激情に流されるままその一線を越えようとしていた。
そして更なる刺激を与えようと彼女を抱き直したその瞬間──俺は不意に枕元で生じたその気配に気付いては我に返る。
砂利を踏みしめるその音は明らかな第三者の存在を知らせるものであり、同様にそれに気付き頭を上げたパーモット共々俺達は……目の前に広がるその光景に慄いては息を飲むのだった。
つい先ほどまで一面を暗闇に覆われていた天井には、夜空の如きに無数のきらめきが灯されては俺達を照らしていた。
同時、そしてその光の照射が単なる光源でないことにもすぐ気付くこととなる。
枕元に立つその者を含め、この空間の各所から俺達を捉えていた光とは、爛々と輝く大量のヤミラミ達による視線に他ならなかった。
俺達はいつの間にか──彼等のテリトリー内に囲われていたのだった。
ヤミラミ達に伴われ、俺達は洞窟の奥へと連行されていた。
別段暴力的な仕打ちを受けた訳ではなかったが、あの人数で立つことを促されてはもはや、その圧には抗うことなど出来なかった。
しかも驚くべきことにそんなヤミラミ達の数たるや、斯様に俺達を迎えに来た人数だけに留まらない。
洞窟内を進むほどにその道中や天井には新しいヤミラミ達が控えていて、その前を通る度に彼らもまた列に加わりと、いつしか狭い洞窟内はヤミラミ達でひしめき合う状態と化していた。
その最中で気付けばパーモットも消えていた。
彼女あるいは俺だけが個別に連れ去られたというよりは、このひしめくヤミラミの波に飲み込まれて引き離された感がある。
俺としてもそんな彼女とは離れたくなかったが、如何せん前に進み続ける行進の波には抗いがたく、結果俺は誘われるままに歩き続けているといった有り様だった。
しばし洞窟内を進むと途端に視界が開け、見上げられるほどの広場へと出た。
さながらドーム状となった広大なそこは周囲がうすぼんやりと照らされては、辛うじて互いの顔を確認する程度の光量で満たされていた。
しかしそれというのも全ては、さらに此処に居た無数のヤミラミ達から放たれている瞳の光であることが察せられる。
見上げる天井は元より見渡す広場のいたる所にその輝きがあることからも、相当数のヤミラミ達が此処に居ることが確認できた。
その中に放り込まれてはもはや、俺に逃げる隙や暇などあろうはずもない。
異様とも取れるその大量の光景に気圧されながら、なおも俺は促されるままに進んだ。
やがて広場の突き当りまで進むと、ようやくにその行進は止まる。
いつしか先頭に立たされていた俺はそこにて──規格外に巨大なヤミラミと対峙することを余儀なくされた。
通常は50センチほどが平均のヤミラミに対し、目の前のそれは優に2メートル近い上背と身幅を誇ってはそこに鎮座していた。
いわゆるこれはヤミラミのオヤブン化であり、そして文字通りにこれがこの巣のボスであろうことは言われずとも察することが出来た。
その異様に圧倒されるあまり、見下ろしてくるそれと視線を合わせたまま固まる俺へと……かのボスは呻きともつかない声を発してきた。
依然としてこちらを見据えながらに紡がれるそれは、明らかに何らかの言語と思しきものではあったが、あいにくにも俺はその言葉が理解できない。
こんな時にこそパーモットがいてくれればと臍を嚙みながら、頼りなくも俺は一応スマホにDLしていた翻訳機のアプリを立ち上げる。
そうして再度ボスからの言葉に耳を傾けようとしたその瞬間──
『──ダンナさんッ!』
何処からか響いてきたパーモットの声に俺達は顔を上げた。
そうして声の響いてきた背後を見遣ると、そこに息せき切らせて駆け寄ってくるパーモットの姿を確認し──
「パーモット!」
俺は心そこから安堵しては深いため息をついた。
やがては辿り着く彼女と俺は無意識に抱き合う。
『ゴメン、ゴメンネ……ヤミラミが多クテ、追いツケなかったノ』
「大丈夫だよ、それよりもパーモットは無事か? 変なことされてないか?」
『ウン、ヘイキだヨ。ダンナさんも無事ナンだよね?』
互いの身を心配し合う俺達は、もはや『人とポケモン』などという他人行儀な間柄ではなくなっていた。
それこそ離れ離れになった相棒……というか恋人と再会出来たかのような安堵と喜びが俺の胸には満ちていた。
そしてそれはパーモットも同じであったようで、俺達は周囲で見守るヤミラミ達にもお構いなしに幾度となくキスを交わす。
しばしして我に返った俺は改めてこの状況を手短に説明する。
パーモットもまた件のボスへ向き直ると、その迫力に圧倒されては一瞬身を強張らせた。
それでもしかしすぐに気を奮い起こすと、彼女はさっそくボスとの対話を試みる。
幸いにも先方に危害を加えようという気配は窺えず、その会話内容は知れずとも言葉を交わし合うパーモットからは自然と緊張が解けつつある様子も見受けられた。
やがては一通りの対話を終えるや、パーモットは神妙な顔つきで俺へと振り返る。
「ど、どうだった? 彼らは何て言ってるんだ?」
『あ、アノネ………』
緊張した面持ちで尋ねてくる俺に対し、それを上目に見つめ返してくるパーモットは所在なげに身を捩じらせたり足の踏み位置を変えながらと、もじもじした様子でその返事を応えあぐねていた。
やがては意を決したのか、彼女は恐るべき対話の内容を俺へと明かす。
それこそは……──
『ソノネ……ヤミラミ達、ウチとダンナさんの『コービ(交尾)』が見たいンだって……』
恥ずかしさに眉元を強張らせながらも、その視線がどこか期待を帯びて嬉しげに見えるのは俺の気のせいだろうか?
そんな彼女とは対照的に一方の俺はその瞬間、そのあまり馬鹿馬鹿しさに放心しては表情を失くした。
しばししてその内容を頭が理解すると、
「な、なに言ってるんだ!? こんな時に!?」
当然のごとき反応を返しては声を高くさせる。
以降彼女の話を纏めるに、この土地のヤミラミは娯楽に飢えているという事だった。
そこに期せずして現れた客人の来訪を目の当たりとし、自分達とは違うその生物性に強い興味を抱いたのだという。
『言うコト聞かなナイト、ドウナッチャウか分からナイヨ? ね、ダンナさん』
「し、しかしだなぁ……」
『………ダンナさん、ウチのコト嫌イ?』
涙目で尋ねてくるパーモットにその瞬間、俺は周囲の異常事態も忘れて強く胸が脈打つのを感じた。
極限状態という事も相成ってかこの時俺は……たまらなく彼女を愛しく思ってしまったのだ。
そう心が定まると途端に俺は、肉体に熱が帯びてくるのを感じた。
この時、俺の心は決まったと言ってもいい。
「……パーモットこそ、俺でいいのかい?」
おずおずとその最後確認をする俺に対し、
『イイヨ! ダンナさんじゃないとヤダ! ダンナさんがイイ♡ ダンナさんの赤ちゃん産ミタイッ♡』
次の瞬間、パーモットは飛びついてくるや俺の唇を奪った。
事ここに至ってはもう『なるようになれ』とばかり、俺もまた彼女を強く抱き返すとその抱擁に応える。
斯様な俺達の行動を前に、見守るヤミラミ達の間からもざわめきが起こり、やがてそれらはこの広間を埋め尽くす他の仲間達にも伝わっては波の様に伝播していった。
そんな公衆面前のもと──俺達の交尾ショーは始められたのだった。
『ダンナさんッ、ちんちん舐めさせテ♡ ダンナさんの、ちんちん舐めタイ♡』
腰元へ抱き着いてくるなり、パーモットは俺の股間へと激しく頬ずりをした。
前後のキスで完全に発情のスイッチが入ってしまったらしく、彼女のその直接的な振る舞いはまさに人語を話す獣以外の何物でもなかった。
「ち、ちょっとまってくれ……それはさすがに」
一方でそれを躊躇したのは俺だ。
もはやこの状況に至っては彼女とのセックスも辞さないと覚悟を決めた俺であっても、素直にはその行為は受け入れられない理由があった。
それこそは……
『ドシテ? なんでダメなの……?』
「単純に汚れてるからだよ……もうどれくらい風呂入ってないと思ってるんだ?」
言葉の通り、それは体の汚れを着にしたからに他ならない。
思えばここまでの二週間、キャンプを繋ぎながら渡り歩く俺達が風呂に入るなど不可能であった。
加えてこの厳寒地方とあっては体を拭くことすらままならない。
そんな状況に加え、男性生殖器(ペニス)は排泄の役割も担っているのだ。そんな汚物然としたものをポケモンとはいえ異性の口に含ませるなど、さすがに抵抗を覚えずにはいられなかった。
が、しかし──
『じゃあキレイにしなキャ♡ ウチの口で、おソウジしてあげるね♡』
その気遣いはパーモットには伝わらない。
むしろ断る理由がその程度の物だったのかと安堵した彼女は、器用に防寒着のジッパーを下ろしそこから俺のペニスを取り出してしまうのだった。
いざ外部へと引き出されて寒気に触れると、半ばまで肥大の進んでいた俺のペニスはびくりとその身を跳ね上げさせ。
おおよその予想通り、股間そこから醸される異臭は立ち尽くす俺の鼻先にまで臭ってきては、その塩辛い臭いに表情をしかめてしまう。
しかしながら一方で、同じそれに晒されているパーモットの反応は違った。
その目を丸く見開いて、驚く様に口唇を開く彼女の顔は……
『んおぉ……スゴいぃ……すっごく、クサいよぉ………イイ匂いぃ……♡』
俺のペニスからの香りに中てられては、恍惚とその表情を惚けさせた。
そして激しく鼻息を立てながらペニスの鈴口へと鼻先を近づけさせ、その匂いの発生元へ鼻孔を触れ合わせた瞬間──パーモットは甲高く形容しがたい咆哮を発しては身を仰け反らせる。
性に疎い俺であっても、彼女がこのペニスの匂いそれだけで絶頂したことは明らかだった。
依然として鼻頭にペニスを押し付けたまま身を硬直させていた彼女ではあったが次の瞬間には、一切の躊躇もなくパーモットは亀頭の先端をその口中に咥え込んでいた。
「うおッ………お手柔らかに頼むぜッ」
そこから始まる出鱈目な彼女のフェラチオに晒されては思わず俺も呻きを上げる。
彼女から施されるそれには人間のする作法に則ったものではなかった。
パーモットのフェラチオに特徴とは、いかにしてこのペニスを味わうかに集約された。
口の中で甲や舌全体に隙間なく吸い付けさせてはしゃぶり尽くし、更に頭を前後させるに至っては亀頭を中心に歯牙を食い込ませて恥垢を削ぎ取り、そしてすすり上げるという荒々しさ……その様たるや、性というよりも食に通じる気配が強くうかがえる。
あまりにも激しく貪ってくるそんなパーモットを目下にとらえながらもしかし、
「はぁはぁ……俺のチンポはそんなに旨いのか?」
いつしかその刺激に発奮させられ俺もまた、無意識にそんな声掛けなどしては彼女を煽ってしまう。
それに反応し、依然として俺のペニスを深く咥え込んだままのパーモットは視線をこちらへと投げた。
その愛らしい鼻先が歪むほどに口先を吸い付けさせながら上目に窺い見てくる表情を目の当たりにした瞬間──俺の限界は即座に脳と肉体とを直結させた。
そして同時に、
「うおぉ……ゴメンッ、間に合わない……!」
俺は一切の堪えも無く、彼女の口中へと射精を果たしてしまうのだった。
突然のそれを受け、見上げる瞳が見開かれる。
見る間に彼女の頬が膨らんで電気袋が赤く発熱する様からは、この時の彼女の驚きとそして興奮とが手に取れるように窺い知れた。
依然として射精を続けるペニスは幾度となくパーモットの小さな口の中で跳ね上がっては彼女の頭を揺らせた。
今日に至るまでの禁欲生活と、更には彼女に対する興奮も手伝ってはいつも以上の量を吐き出している感触が尿道越しにハッキリ分かる。
もはやパーモット程度の小さな口中(キャパシティ)とあっては全てを受け止めきれないだろうと、射精中の快感に晒されながらぼんやり考える俺であったが──予想に反し、彼女の口からそれらが溢れ出ることは無かった。
見ればペニスが跳ね上がるごとに送られる精の奔流に合わせ、彼女の小さな喉も絶えず隆起しているのが窺えた。
パーモットは俺の精を不浄とは捉えず、その一滴に至るまで余さずと全てを飲み込んでくれていたのだ。
そんな彼女の献身と愛情深さを知ると、その感動に比例しては更に俺からの射精量は増えてしまう。
得も言えぬ興奮と快感に肉体を支配されたまま大量の送精を行っていた俺のペニスはやがて……その全てを吐き出し尽くしてはようやくに蠕動を止めた。
そうして射精が止んでもなお、
『んんぅ~………♡』
パーモットは依然として咥え込んだまま口を離すことは無かった。
それどころか尿道のさらに奥底にもっと精液が残ってないものかと、ストローさながらに吸引してきては絶頂直後の俺を苦しめさせたりもする。
やがては強く口唇を吸い付けさせたままゆっくりと筒身を引き抜いていき、そして最後は軽快に空気を弾けさせるような音を立ててペニスを解放すると──ようやくにパーモットも大きくため息をついては下唇を舐めた。
彼女の口中から解放されてそそり立ったペニスは、これを始める前の汚れてくすんだ様子が嘘のよう亀頭を赤く艶やかに充血させては、外気に対して濛々と湯気を立たせている。
穢れらしい穢れは全てパーモットの口中において磨かれて、今まさに入浴から上がったばかりであるかのような様相ですらあった。
そんなペニスの裏筋へパーモットはさも愛し気に深く口づけなどししてくると、
『ちんちん、好きィ……♡ ダンナさんのちんちん、すっごく美味シかッたぁ……種も大好きィ……毎日飲ミたいよお……♡』
後戯の愛撫など施しながら、その全体に顔を擦り付けては恍惚とその表情を緩めさせて朗らかに微笑む。
そんな彼女のいじらしいほどに健気な様子に俺は、射精直後だというのに再び肉体と、そして脳内に興奮の血潮が巡るのを感じた。
それに比例するよう僅かに萎縮し始めていたペニスは再びそこ一点に血流を漲らせると、依然として見上げている彼女の鼻先でそそり立ってはその顔に陰影を落とす。
そんな俺の変化を前にして、誰よりも喜んだのは、誰でもないパーモットであった。
口角を上げ、下瞼を上ずらせてはおおよそポケモンとは思しき妖艶な笑みをそこれ浮かばせるや──
『うわぁ♡ 嬉しイ♡ 大好キぃ♡ ダンナさぁん……今度は、ウチのオマタにちんちん入れテぇ♡』
パーモットはこちらへ背を向けて四つん這いに体位を取るや、後ろ足をつま先立ちに突っ張らせては尻を高く突きつけてくる。
丸く短いしっぽが跳ね上げられたその下は、毛並みの色が変わるほどに濡れそぼったパーモットの局部が露にされていた。
控えめに穿たれた薄紅色の肛門の下には、熱で蒸されて周囲の盛り上がった恥丘に咲く陰唇の膣口が窺えていた。
俺同様に、この長旅ですっかり汚れたそこは潮の香りを凝縮させたかのような饐えた異臭を放ちつつもしかり──その芳しい香りは俺の中のオスを刺激してやまない。
そして斯様してその小振りな尻を物欲しげに左右させながら挑発してくるパーモットを前に俺はその尻の両房をワシ掴むや次の瞬間──
「この小さなマンコが無事で済むと思うなよ……生意気パーモットが!」
一息に根元まで──彼女の下腹がペニスの陰影を以て突き上がるほどの勢いで、俺はそのあどけない膣を貫通してしまうのだった。
一息で根元までブチ込み、亀頭の先端がその深部で子宮口をひしゃげさせた瞬間──パーモットは断末魔ともつかない悲鳴を上げた。
つま先立ちに尻を突き上げていた両脚は針金のように伸び切っては硬直し、膣からは同時に激しい放尿が噴出しては勢いもすさまじく地を打ち穿つ。
その硬直は膣壁にも著しく現れ、全体で搾り上げるようにして収縮するそれに晒されては危うく俺も達しそうになる。
一方のパーモットはと言えばこの一突きで完全に絶頂へと導かれたようで、今も人語とポケモン語の入り混じった独特の言語で意味不明の譫言を漏らし続けていた。
頭をうなだれては身を痙攣させるそんな彼女に、さしもの俺もさすがにやりすぎたかとその様子を窺うも……
『おッ……♡ ga、あcapぉ……ッ♡♡ ちいん、ちッ……ンcoooo……ッパ……♡♡』
覗き込んだ彼女の貌は哂っていた。
眉元を強(こわ)め深い皺を刻み込んだ面相はそこだけ見たならばこれ以上にも無い苦悶のそれではあるが、その下に続く上ずった両眼とそして脱力し切った口角を吊り上げて舌を垂らす面相は、おおよそ自然界のポケモンには絶対に見られないであろう表情であった。
それを確認する俺の胸中にはこれ以上に無い興奮と苛立ちという、自分でも受け入れ難いサディスティックな感情が湧き上がる。
このスケベな獣(ポケモン)を懲らしめてやりたいという、身勝手を通りこしてはもはや狂気にすらこの時の俺はとらわれていた。
それこそはまさに、今の歪なパーモットの感情が伝播したのかもしれなかった。
そしてその感情に心駆られるままに俺は、
「ほら、パーモット……お前がレイプされてるところをみんなにも見て貰えよ」
背後から彼女の両腿を抱えて身を起こすと、一連のまぐわいを興味深げに観察しているヤミラミ達の前へと、俺は結合した彼女の前面を晒すように持ち上げた。
煌めきを発するヤミラミ達の視線が一か所に集まってパーモットを照らすと、好奇の照明に晒された彼女はより一層に膣壁を収縮させては内包したペニスを締めつける。
恥じ入るあまり表情を隠すよう目頭に両手を当てる彼女ではあるが、その掌の下の口元が興奮で歪んでいるのを俺は見逃さない。
ならばその本性をいよいよ以て曝け出してやろうと、俺は背後からのピストンを開始した。
そもそも繁殖に根差した『性欲』は、ありとあらゆる動物に備わる本能である──それにしてもしかし、パーモットのそれは異常とも言えた。
いかにヤミラミ達から請われたとはいえ、今現在の彼女の乱れ様は生半なものではない。
いつしかを覆っていた両手も外し、上目を剥いて窄ませた口唇を突き出すという滑稽にも程がある表情を作っては、彼女は子宮を突かれる振動に合わせて軽快に喘ぎ声を上げた。
その一見したならばセックスとは無縁にすら思える滑稽な仕草に見守るヤミラミ達からは明らかな蔑みの嘲笑が上がり、それに晒されたびにパーモットの膣壁は収縮してその興奮を俺へ伝える。
やがて彼女の暴挙はそれのみに共まらず、なにやらポケモン語でオーディエンスに語り掛けては、そこから戻されるレスポンスを受けてさらにまた絶頂するなどという、もはや人間ですら顔負けの変態性を露呈してはこの行為を存分に楽しむのだった。
そして斯様に歪なショーにも遂に幕引きの瞬間が訪れる。
俺自身にも限界が訪れたのだ。
「くぅ……パーモット、俺もイキそうだ………」
『あぐぅ……ッ♡ ダンナ、さんも、イクのッ? また、種、デルのッ?』
後背位に抱えられたその状態から、首を振り返らせては煽り見てくるパーモットに俺も頷く。
今こうして言葉を交わしている瞬間にも、快感を伴ったむず痒さに駆られては俺からのピストンも速度を増していた。
そんなオス側からの変化をメスの肉体もまた機敏に察知してはより強力な締め付けと、更には膣の奥底において子宮口を開口させるなど最後の変化が現れだした。
斯様にして肉体の整ったパーモットと、そしてここまで交尾に付き合ってきた俺が望むフィニッシュはもはや完全に一致する。
それこそは……──
「中に、出すぞ!」
『中に、出してぇぇぇぇッッ♡♡』
生殖の完全遂行──一際強く、そして陰茎全体を彼女の中へと突き入れ、その下腹が亀頭の形に陰影を浮き上がらせて子宮口を貫いた瞬間、俺はパーモットの肉体の最奥へと射精を果たした。
体の中心で起こされる爆発さながらの熱と衝撃に彼女自身もまた本日最大級となる絶頂を迎えては金切声を上げた。
同時何事かをポケモン語を以て見守るヤミラミ達へと伝えるパーモット。
後に聞いた話では、この時パーモットは自分がいま種付けをされ公衆面前で妊娠したことを宣言したのだそうな。
そしてそれを受け、広場に犇めいたヤミラミ達からも大歓声が上がるにあたり、彼らも存外にノリが良いポケモンだという事が窺える。
かくして俺は、先の射精の時以上の量となる精液をパーモットの小さな子宮内へと打ち込んでいた。
彼女の肉体も亀頭全体をその子宮内へと迎え入れ、膣道においては陰茎を刺激する蠕動と、そして子宮内においては腹部の表皮が窪むほどに強い吸着を施してはペニスからの精液を文字通り搾取した。
しばしそうして送精を繰り返した後、やがては勃起も治まり、自然と萎縮したペニスはパーモットの膣から抜け落ちた。
同時、そこからは今吐き出されたばかりの精液がしとどに溢れ出すとともに、彼女は失禁もまた果たす。
黒目がちの円らな瞳を白目部分が覗くほどに剥いて絶頂後の余韻に震えさせる彼女の表情たるや、もはやポケモンが見せて良いような貌ではなかった。
斯様にして意識が失われているかとも思われたのその矢先、もはや無意識かとも思われる仕草で彼女は自身の膣のクレバスに両手を添える。
依然として背後から俺に支えられた、女児が小用を促されるような姿勢のまま陰唇の両淵を摘まみ上げると──今しがた酷使されたばかりの膣口を完全に開いてはその内部を見守るヤミラミ達へと晒すのだった。
開口によって空気が流入することで、膣からは湯の沸くような粘着音と共に奥底に溜まった精液が流れ落ちてくる。
そうしてそれら全てが膣内から吐き出されたその後には無惨なほどに間口の広げられた子宮口が一同の前に晒され、これによりこの子宮が孕まされたことの悦びと、さらには自分が俺の所有物に成り下がった証とをパーモットはヤミラミ達に知らしめるのだった。
その最後のパフォーマンスに再び、場からは大きな声が波となって返ってくる。
それは斯様なパーモットを湛えるものであると同時……
『あッ……おca、…お、ダンナ、さん……ヤミラミが……モット、だってぇ……♡』
「はぁはぁ……も、もっとぉ? それはどういう……」
『モット……もっと、ウチとダンナさんのォ、子作り、見タイって……♡♡』
更なる交尾ショーのアンコールであった。
その言葉にこの面前でもう一度……再度のパーモットへの種付けを考えた瞬間──俺の肉体もまた自然と反応していた。
事もあろう俺は、再び勃起を果たしていたのだった。
『あん♡ 嬉シイ……ダンナさん、大好キ♡ 大好きダンナさん♡ モット、ウチのアソコで赤ちゃん作っテェ……♡♡』
仕切り直しに彼女を下ろすとすぐさまパーモットは俺のペニスを咥え込んでは激しくしゃぶり始める。
かくして一晩を通して俺達は、ヤミラミ達へと交尾ショーを提供うることとなった。
そして斯様な彼女の献身とその甲斐もあってか──念願であった俺の商談もまた後日纏まるに至るのである。
ヤミラミ達との商談は恙無く成立した。
今後、彼らとは樹海の指定されたポイントで落ち合うこととなり、こちら側からも彼らの望む外界の鉱石・貴金属を交換することで取引は成立したのだ。
これにより俺達は過酷な山岳地域へと出向く必要もなくなり、また樹海内にも取引場所へ直通するルートを原住ポケモンのガイドの下で確立したことから、此処にヤミラミの商業ルート開拓は達成されたと良かった。
今回の取引において、その成功に貢献してくれたのは誰でもないパーモットであった。
今も樹海の帰路につきながら、先頭を歩く彼女の背中をぼんやり眺めては改めてヤミラミの洞窟で過ごした三日間を俺は振り返る。
滞在中、その間も俺達は交渉の傍らで毎夜彼らに交尾ショーを提供する生活を送った。
はたしてこの行為と交渉に何の関係があるものか疑わしい点もあったが、結果として成立するに至った今回の取引において、この一事が功を奏してくれたのであろうと信じるしかない。……性交だけに。
そうして当初の目的を果たした俺達は今こうして帰路についている。
ヤミラミ達の洞窟を発ってからまた数日を掛けてここまで戻ってきたわけではあるが、その間彼女が以前のように俺を求めることはなくなった。
けっして態度がよそよそしくなったり、不仲が生じてしまったという訳でもないが、彼女が求めてこない以上こちらからアプローチを仕掛けてしまうのも躊躇われ、俺達は目立った進展もないままここに至っている。
初めて彼女とキスを交わした時には『ポケモンとなんて』と差別意識も甚だしかった俺であったのに、いざその一切が無くなってしまうと今度は何とも心寂しい気持ちになっていた。
同時にふと、
──彼女自身は何も感じていないんだろうか……?
そんなことも考える。
何よりもあの触れ合いを一番に求めてきたのはパーモット自身であったはずだ。
その当事者がこうも淡白である理由こそは、所詮人間とポケモンの価値観は相成れない故か……と、またしても差別的な思考に傾いていることに気付き、俺は自己嫌悪に陥る。
そんな折り、永らくポケットにしまい続けていたスマホが小さな電子音を奏でた。
なんて事の無い通信の復帰を知らせる通知音であり、それはこの樹海から間もなく抜け出せることと、更には今回の旅の終わりもまた知らせるものであった。
特殊な磁場で通信が遮断されていた旅の最中はロクに確認もしなかったことを思い出し、俺は何気なくに画面を指先で手繰る。
数十件以上の各種SNSの通知を知らせる内容と一緒に、ポケモン通訳アプリの過去ログも表示されて思わずそこに目を見張った。
こんなアプリなどいつ起動したものかと記憶を辿る俺は、そう言えばヤミラミの洞窟においてボスと遭遇した際に立ち上げたことを思い出す。
結局すぐにパーモットが駆けつけてくれたこともあって使わずじまいになったが、それ以降もこれはポケットの中で起動したままになっていたらしい。
すぐにそれも消してしまおうと再び指先を画面へと押し付けた俺はしかし──そのパネル上において指を止めた。
同時に俺の目は画面へと吸い付けられ、そこに表示された文言を目で追っていく。
10-26・21:43──
[ やあ旅行者。こんなところまでよく来ました。外は吹雪で大変だったでしょう。ゆっくりしていってください。 ]
通訳結果となるログは堅苦しい直訳文章ではあったが、その内容はあの時にパーモットから通訳してもらった内容とは明らかな違いが見られた。
あの時のパーモットの通訳ではもっと猜疑心もたっぷりにこちらを値踏みするような雰囲気であったが、存外に通訳機の中のボスヤミラミは当初から好意的に接してくれていた様子だった。
そしてそのログを読み進むうちに、そこには更なる事実が浮き上がる……以降、その内容を意訳するに──
[ なんだコイツら? 勝手に後尾始めたぞ? ]
[ なんてことだ。外のポケモンと人間はこれを見せつけることが好きなのか? ]
[ でも面白いな。もっとやれー! ]
ヤミラミ達から強制的に求められた筈の交尾はむしろ、彼らこそが俺達による『突然の奇行』へ戸惑う様子が残されていた。
それでもしかし娯楽の少ない彼らは徐々に目の前の行為を面白がり始めては、俺達の一挙手一投足に夢中となっていく。
その中でそんな彼らの言葉とは明らかに異質となる文言が混じり始まる。
それこそは行為中にパーモットが口にした声を翻訳機が拾ったものだった。
そしてそこに書かれていたその言葉を、彼女の想いを見つるに……歩き続けていた俺は思わず足を止めた。
[ 大好き! ダンナさん、大好き! 愛してる! ]
それはその告白から始まり……
[ みんな、聞いて! ウチ、この人と番(つがい)になりたい! この仕事が終わっても、ずっと一緒に居たい! この人の、赤ちゃん産みたいよーッ!]
そんな彼女の悲痛とも取れる心からの叫びに対し、ヤミラミ達からはそれを励ます大声援が返されていた。
あの日、まぐわいの最中においてパーモットが掛けた言葉と、そしてヤミラミ達からのレスポンスはこんなやりとりがされていたのだ。
それを確認した瞬間、
「ッ──、パーモット!」
俺は彼女を呼び止めていた。
その突然の声の響きに驚いては振り返るパーモットと視線を合わせて……俺は固まった。
呼び止めたからといって後の言葉が続かなかった。
それこそは俺もまた彼女を求めている証を伝えなければならない。これからも一緒に居てほしいと……そして今ようやくに、俺もまた彼女を愛していることに気付いたのだという事を。
『ドシタの? ダンナさん?』
完全に立ち止まって振り返るパーモットは、依然として小首を傾げては不思議そうに俺を見ていた。
此処が正念場だ。
この旅の終わりに際して一切の性的なコミュニケーションを絶ったのは、別れの悲しみを少しでも無くす為だ。
後腐れなく、この旅と関係を終えさせるための彼女の気遣いこそがここに現れていた。
ここで引き止めなければ、パーモットとの関係は終わってしまう──そんなこと、俺は望んでいない。
そしてそれは彼女もまた然りであるはずだ。
やがて遂になんの言葉も思い浮かばなくなった俺は……ふと右手にしていた翻訳アプリを口元に運んだ。
そうして言葉少なくそこへ囁きを入力すると、それを彼女の前へと掲げる。
そして俺の気持ちが翻訳されたポケモン語が、スマホスピーカーを通してそこから流された瞬間──パーモットは目を見開いて両手を口元に添えた。
「……返事は、いつでもいいんだ。前向きに考えてもらえれば……──」
期せずして訪れた沈黙に耐えかねてはどこか言い訳がましく言葉を紡ぐ俺の口をしかし──次の瞬間、彼女は勢い良く抱き着いてくるや熱い口づけで塞いだ。
数日来我慢していたこともあり、そんな彼女からのキスを確認するや俺もまた強く抱きしめてはそれに応える。
しばしそうして抱きしめ合った後、再び互いを見つめ合うや、
『オーケーだよ、ダンナさん! ……幸せに、シテネ……ッ』
パーモットは強く俺の首筋を抱きしめて抱擁を交わす。
俺もまた感無量に抱き返してやると、手からは握りしめていたスマホが零れてその液晶を上に地へ転がる。
太陽が過ぎ去るよう、そして季節が移りゆくよう、世の科学は加速度的に進展しては人とポケモンとの垣根をなくしつつある……。
それでもしかし機械なんかじゃけっして翻訳しきれない言葉があり、そして機械などに頼らずとも通じ合わせることの出来る気持ちがある。
それこそは幾星霜と、人とポケモン達が連綿と交わり合わせてきたものだ。
愛している──その言葉と気持ちは未来永劫もきっと変わることの無い真実として紡がれ続けることだろう。
人とポケモンがある限り、男と女がいる限り……そして俺とパーモットがいる限り、それはきっと変わらないのだ。
【 ポケモンの通訳士・完 】
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