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【35】武家の嗜み の履歴(No.1)


武家の嗜み

たつおか




 この作品には以下の要素が含まれます。


【登場ポケモン】  
カルボウ(♂)
【ジャンル】    
歴史物・小姓・ショタ・BL・同性愛・乱交
【カップリング】  
少年主人公(♂)×カルボウ(♂)二体
【話のノリ】    
ノーマル






目次




第1話・書院の児戯



 イサ家の一子チカマルが10歳の砌──後のイサ家当主となる彼はこの時、パートナーであるカルボウと共に山陰の寺院に在った。

 客人として丁重にこの寺へ迎え入れられていたチカマルではあったが、その実彼の役割とは『人質』に他ならない。
 チカマルの父であるアザフネはこの時、重大な運命の岐路に立たされていた。
 主家の滅亡を前にこのまま主と共に滅びるか、あるいはそれを見限って新たなる時代の覇者傘下へと下るかの選択を迫られていたのである。

 結果として父は後者を選び、その約束の証として幼きチカマルを次なる宗主国へと差し出すに至る。
 しかしながら激化する戦況の最中、訪れるはずであった国への入国が難しくなってしまい、さりとて戻るわけにもいかなくなってしまったチカマルはその折衷案として、中立国に在るこの山寺へと身を落ち着ける運びになった。

 そうしてこの寺に居を構えてから既に半年以上になるが、チカマルがここでの生活に不満を覚えたことは無かった。
 丁重に持て成されていたことも然ることながら、もとよりこの手の孤独には慣れていた身でもある。

 群衆割拠とも称される昨今、武人であるところの父が家に落ち着いていたことなどはまず無く、チカマルはその声はおろか顔の記憶ですらおぼろげであった。
 母に至っても、実質的な教育と世話に関しては乳母が全てを執り行っていたことからもその謁見は時節の挨拶に際して顔を合わせる程度のものであり、斯様な両親との別居に際しても、さしてチカマルには感じ入るところは無かった。

 何よりもこの時のチカマルには、常日頃から自分を支えてくれるカルボウがそばに居てくれた。
 彼こそはチカマルの家来として父より下賜されたポケモンではあったが、幼い彼にとってのカルボウは、唯一無二の親友であった。
 このことはカルボウもまた然りであるらしく、まだ主従の何たるかの理解は及ばずとも、カルボウは誰よりもチカマルのことを大切に思ってはもはや、血縁以上の親愛さを以て互いの友情をはぐくんでいた。

 加えてこの寺に来てからは、そんな二人に新たな友人もまた出来た。
 数奇なる巡り合わせか、この寺においても『カゲチヨ』と名付けられたカルボウが小坊主として雑事に従事しており、ほぼ同年代であるところの三人は常に行動を共にしてはチカマルに寂しい想いなどはさせなかった。

 斯様にして暮らすチカマルはしかし──この年の初夏に思わぬものを目撃することとなる。

 その日は朝からカゲチヨの姿が見えなかった。
 当然チカマルとカルボウも彼の姿を探すのだが、この時カゲチヨは思いもよらぬ場所において思いもよらぬ児戯に興じていたのである。

 渡り廊下を経て本堂から遠く離れた書院の一室にたどり着くと、四方の障子戸が開け放たれた部屋の中央にカゲチヨと寺の僧正とがいるのをカルボウが発見した。
 その瞬間は午前の務めを行っているものだと思ったチカマルとカルボウは、軽々しく声など掛けるマネはせず、渡り廊下から外へと降り、架木(ほこぎ)の隙間から頭など出しては密かに二人を見守った。

 しかしながら見守る僧正とカゲチヨの様子はいつにない不審な素振りを見せていた。
 僧正が腰元ほどのカゲチヨへと身を屈めると、カゲチヨもまた抱き着く様に両手を僧正の両方へ添えては口づけをした。
 その行為にまずは、見守るチカマルとカルボウは度肝は抜かれる。

 性に対する知識など皆無の二人にとって、食事や会話に使う口唇同士を触れ合わせるなどといった行為は、ある種の不浄にすら思える禁忌感があった。
 それにも拘らず視線の先のカゲチヨはといえば、さらにそこから伸ばした舌同士も絡ませては互いの唾液まで行き来させている有様である。

 かくして一頻りその口づけを堪能すると、僧正は屈めていた背を伸ばしカゲチヨはそんな僧正の股間に鼻先を埋めた。
 そして法衣をかき分け、下袴の帯も解いて股間を露にさせると──そこから外部へと零れ落ちてきた僧正のペニスをカゲチヨは手に取った。
 死んだ蛇のよう鎌首を垂らしたそれへ両手を添え、表皮を前後させるよう刺激を与えていくと……たちどころに僧正のペニスには血が巡り、硬く肥大化したそれをそそり立たせた。
 そしてあろうことかカゲチヨは──そんな僧正のペニスを一切の躊躇もなく、口の中へと咥え込んでみせたのである。

 以降は口中において、唾液を介しながらそれの口取りを始めるカゲチヨ──撹拌される粘着音が霊験あらたかな深山のしじまへと響き渡る。
 そしてチカマルとカルボウは、依然として圧倒されながらも一連の行為に釘付けとなっては目を離せずにいた。
 目の前で繰り広げられる行為は何から何までが、今日までの二人の常識覆すものであった。
 従来の見識に照らし合わせるならばそれは、嫌悪以外の何物でもないというのに……それでも二人はそれに魅せられては、息をするのすら忘れて見入っていた。

 やがて僧正が苦し気にくぐもった呻きを上げた。
 その直後、カゲチヨの頭をワシ掴んでは強制的に口取りを外させると後はその鼻先に目掛け、黄ばんだ精液を無遠慮に射精しては浴びせかけるのだった。

 己へと射出されるそれを動じること無く顔面で受け止めるカゲチヨ──鼻頭を元として、さながら扇でも広げるよう放射状に僧正の精液は浴びせかけられた。

 やがてはその噴流も収まると、カゲチヨは大きくため息をついては、事後処理とばかりにまだ精液の残滓が珠となって残る鈴口へと唇を吸い付かせ、尿道に残されているであろう残りのそれらもまた吸い上げた。

 更には再び茎全体を咥えこみ、緩やかに口取りをするその最中──ふいに視線を泳がせたカゲチヨは、その先において自分達の行為を一心不乱に見つめているチカマルとカルボウを見つけては目を剥いた。
 しかし──そんな驚きの表情も一時で、二人を見つめる表情はすぐに弛緩した。

 依然として僧正のペニスを咥え続けるカゲチヨの頬元は上気し、細めた下瞼を上ずらせては、おおよそ稚児が見せるものとは思えぬ淫靡な笑みをそこに浮かべる。


 かくして他者の精液に穢れたその顔を以て、更に見せつけるかのよう音を立ててはペニスをしゃぶりつくすカゲチヨ……そんな友の恥態を前に、ついぞチカマル達は未知の興奮に囚われたまま目を離すことが出来なかった。




第2話・秘密のレクチャー



 僧正から解放されるなりカゲチヨは欄干を跨いでは外へと降り、そこにてチカマル達を捜した。

 しかしながら見渡すそこに彼らを発見することが叶わないと、カゲチヨは即座に山中の杉林へと駆けだす。
 寺の裏手となる山林には一ヶ所だけ開けた場所があり、そこはチカマル達と自分だけの秘密の会合場所であった。

 そうして瞬く間に木立の合間を駆け抜けてそこへ至ると──案の定、そこにて所在なげに立ち尽くしている二人を発見した。
 先方もカゲチヨの登場に驚いたらしく、はちわせたその瞬間には目を見開いて両肩をすくめたものの、

「カゲチヨ、さっきの何だったんだ!?」

 いざ面と向かうや、開口一番にチカマルとカルボウはカゲチヨの身を案じてはその言葉と共に身を寄せた。
 先の、住職へと施していたフェラチオによる奉仕……それをよりにもよって親友の二人に目撃されてしまった事に、カゲチヨはどこかはにかむよう愛想笑いなど浮かべてみせる。
 そうしてその理由を説明しようとして──はたとカゲチヨもまた、自分がなぜあんなことをさせられていたのか分からないことに気付いては腕組みをした。

 この寺に落ち着いてから数年、気付けばカゲチヨは数々の性技を僧正から仕込まれていた。
 ヒトと接したこと自体あの僧正が初めてだったことは元より、他人と暮らす集団生活の中に身を置いたことですら初めてであったカゲチヨは、今日まであの行為の意味合いや歪さに気付くことなく過ごしてきた。
 ただ漠然とではあるが、あの行為が秘匿すべきものであり、軽々に人前で披露することは憚られるものであることは認識していた為、いざその意味合いを尋ねられた時、幼いカゲチヨはその答えに窮してしまったのである。

 故にカゲチヨが次に取った行動は──傍らのカルボウへと、それを実践してみせるというものだった。
 カルボウの腰元に屈みこむと、その股間へとカゲチヨは掌を置いた。
 そこから押し付けるようにして旋回してくる手の動きに、カルボウもまた驚いては思わず腰を引く。
 しかしながら……徐々にカゲチヨの体温が肌に馴染んでは、意識してペニスに彼の掌の凹凸が感じられるようになると、その未知の快感にカルボウもまた己から腰を突き出させては彼からの愛撫を受け止めていた。

 湿らせた吐息を弾ませながら、僅かに開けた口唇からの垂涎も意に介さずカゲチヨの愛撫を受け続けていると、やがて次なる変化がカルボウの体には現れる。
 押し付けていたカゲチヨの右手が徐々に外へと押し出されてくると、いつしかその掌の下では完全に勃起したカルボウのペニスが、押し付ける手の平の中央に腺液を滲ませていた。

 そこまで刺激して、カゲチヨは一旦右手を放す。
 掌の中央に漏れだしていた腺液がペニスとの間に糸を引いて滴る様に、いつしかカゲチヨの傍らで屈みこんでは眺めていたチカマルも感嘆の声を上げた。
 一方でそれを施したカゲチヨなどは手慣れたもので、掌に残る斯様なカルボウの腺液へ躊躇なく舌を這わせては舐め上げてしまう。

 そうして僧正以外では初めて味わう他者のペニスの味わいに表情を明るくさせると次の瞬間には──カゲチヨはカルボウのペニスを口中に咥え込んでしまうのだった。

 それを受け、突如としてペニス全体を包み込んでくる粘膜の滑りと体温に驚いてカルボウも声を上げる。
 海綿体に血液が充満した状態のペニスはその根元に至るまで感覚が鋭敏になっており、そこに生じたカゲチヨの口唇による刺激は、未知の衝撃を以てカルボウを感覚の荒波の中へと連れ去っていた。

 そんなカルボウの敏感過ぎる反応に気遣ってか、カゲチヨもまた僧正へと奉仕していた時の様な激しい動きは抑えつつ、徐々に口中において幼いペニスを責めだしていく。
 その先端がよじれては、さやのように余り皮が閉じ合わさってしまっている包皮の隙間へとカゲチヨは舌先を侵入させた。
 途端に舌上に恥垢から来る鋭い塩辛さが感じられたが、友人のその味わいをカゲチヨは不快に思うことは無かった。

 むしろその味をもっと堪能しようと、先端の隙間から舌を侵入させては直にカルボウの亀頭へと舌先を這わせる。
 カゲチヨの唾液と口中の熱によって、今日までの数年間癒着していた亀頭と包皮とが剥されていく痛痒感に、カルボウは頭を振り上げては声を上げた。
 しかしながらその感覚も痛み一辺倒ではない。
 ひりつくような痛みの中においても、そこにはカルボウの『オス』を刺激せずにはいられない快感が確かに存在していた。

 斯様にして『子供』から『オス』へと変貌していくカルボウのその様が面白くて、カゲチヨの奉仕にもさらに力が入る。
 存分に包皮の中へと唾液を送り込むと、カゲチヨはその中へ舌全体を滑り込ませては存分にそこへ溜まった恥垢を刮ぎ、そして唾液に溶けたそれを吸い上げた。

 唾液と腺液とを絡めたそれらが、カゲチヨの口中で撹拌されては粘着質な吸水音を静寂の杉林に響かせる。
 しかしながらカゲチヨからのフェラチオを受け続けるカルボウにおいては、矮小な己の体と脳内に渦巻く衝撃に晒されて幾度となく体を震わせては頭もまた旋回させた。

 もはや痛みとも快感ともつかない感覚の中、いつしかカルボウのペニスはカゲチヨの口中においてすっかりその包皮を剥かれ、幼くして亀頭の全体をさらけ出していた。
 もはやそんな亀頭を舐め尽くしては、そこに一切の穢れが無い状態にまで磨き上げると、カゲチヨは焦らすよう存分にそれを吸い上げながらカルボウのペニスを口中から引き抜いていく。
 やがては柔らか気なカゲチヨの唇からも解き放たれると、ペニスは硬直の反動から大きくその身をしならせて外部に跳ね上がるや、外気を纏う刺激を感じ取ってはカルボウもまた仔犬のように悲痛な鳴き声を上げた。

 そうして屹立してはすっかり変貌を遂げたカルボウのペニスを、カゲチヨは我がことのよう自慢げにチカマルへと晒した。
 包皮が剥かれたことで真っ赤に充血したカルボウの亀頭は、はち切れんばかりの膨張と様々な体液にぬらついては、もはや宝石さながらの光沢をチカマルの目に返していた。

 その光景を前に、チカマルは強い喉の渇きを覚えては生唾を飲み下す。
 そして誰に教わるでもなく、それを前にチカマルもまた恐々と小さく口唇を開くと──……


 次の瞬間には、戸惑うことなく眼前のペニスを咥え込んだ。
 カルボウの一際高い嬌声が、山林の静謐にこだました。



第3話・性の目覚め



 ペニスを経て脳へと到来する未知の感覚──その衝撃のあまり、カルボウは一連の感覚を当初『快感』としては受け取ることが出来なかった。

 しかしながら著しく情緒をかき乱される中においても、一際に意識が鮮明とされる瞬間が幾度かあった。
 それこそはチカマルを意識するその一瞬一瞬だ。

 自分の痴態がチカマルに見られているということ……事実、こんな自分を食い入るように見つめているチカマルを確認するだけでカルボウはまだ経験したことのない射精を予期しては、なおさらに強い興奮から意識を朦朧とさせた。

 いつしかカルボウは、この行為へのチカマルの介入を強く望むようになる。
 今カゲチヨがしてくれているような口取りをチカマルがしてくれたのならばと思うと、その妄想だけでカルボウは達してしまいそうになるのだった。

 そして僥倖にもその願いは叶えられることとなる。
 存分にしゃぶりつくしたカルボウのペニスをカゲチヨが解放し、腰元に屈みこんではそれを見つめていたチカマルが……不意に鼻先のそれを咥え込んだのだ。

 その瞬間、抑えきれない排泄感がへその下に込み上がり、さらには肛門が胃に吸い込まれるのではないかと思われるほどに収縮しては肉体全体を痙攣させると同時──カゲチヨは咥え込むチカマルの口中において人生初となる射精を果たしていた。
 カゲチヨにしゃぶられていた時には微塵として湧きおこらなかった射精の衝動は、ただ一口チカマルに咥えられただけでここに達成されてしまったのだ。

 放尿とは明らかに違う、何か固形物がその形のままに尿道から排出されていく感触にもしかし、カルボウは未知の感覚に慄くよりもただそこから得られる快感に忘我した。
 それは今日までの人生において比較するべきものが見当たらない部類の快感でありその衝撃は計り知れなかったが、今カルボウの心身を満たしているそれは他でもない『チカマルの中においてそれを果たせた』ことへの幸福感が大半を占めていた。

 一方で……

「ッッ……んんんぅ~……ッ!」

 突如として口中に湧き上がったそれを受けて衝撃に見舞われたのはチカマルだ。
 元よりペニスについては排泄器官であることしか印象の無いチカマルにとって、いま咥え込んだそこからの射精など『口中において排尿をされている』事実と変わらない。
 しかもそれは従来の尿とは違い酷く粘着質で、初夏に感じる草木の匂いにも似た噎せ返る生臭さをそこに湛えてもいた。
 それら感触とも併せ、お世辞にも美味いとは思えぬそれではあったが……驚きこそはすれど、不思議とチカマルはそれに嫌悪を感じることは無かった。

 むしろ口中において、その小振りの身を必死に跳ね上がらせながら精を撃ち出しているカルボウのペニスには愛らしさすら感じたほどだ。
 そしてその想いはチカマルの行動にも反映され、あらかた射精し尽くしたペニスがその動きを緩やかにさせると、チカマルは頬を窄めては能動的に尿道に残る残滓を吸い上げるなどしてやった。

 そんなチカマルからの奉仕に、カルボウは絶頂直後の鋭敏となった肉体の痛痒感と、さらにはそれを施してくれるチカマルの想いもまた感じとってはもはや、泣きじゃくるかのようなか細い声を絞り出す。

 やがてはカルボウのペニスからも怒張が解け、収縮したそれが最後にチカマルの艶やかな唇を通り抜けて引き抜かれると──後には彼の精液を頬一杯に貯め込んだチカマルが残された。

 その段になり、ようやく我に返ったカルボウは慌ててチカマルの正面に屈みこむと、口の中の不浄を吐き出すよう謝罪ながらに伝えた。
 一方で当のチカマルはといえば、こうして額を突きわせた泣き顔のカルボウと、それを興奮と期待に満ちた表情で見守るカゲチヨを交互に見やると、やがて両手の小指を合わせては掌の杯を作り、そこへと口中の精液を吐き出していった。

 数年を掛け体内の中で練り上げられてきたカルボウの初精はどこまでも純白で輝くかのような艶やかさをそこに湛えていた。
 粘質も固形を見紛わんばかりの濃度であり、先に盗み見た僧正の物とは比べ物にならないほど無垢なものである事は、その知識のないチカマルにおいてでさえ分かるような気がした。

 そしてそんな精液を見つめるチカマルは、それを前に次なる衝動へと駆られ、さらに肉体は脳からの意思決定を待つことなくその欲望を行動へと移す。
 チカマルは手の上にあるカルボウの精液へ鼻先を近づけると……その一角を唇の先で咥え込んでは小さくすすり上げた。

 思いもよらぬチカマルの行動に対しあからさまな迄に驚愕と羞恥の表情を見せるカルボウをよそに傍らのカゲチヨもまたそこへ鼻先を寄せると、チカマルの手の上から同じくにそこに盛られた精液を啜った。

 改めて吟味するカルボウの精液は多少の生臭さはあってもどこか清涼感を後味に感じさせる味わいであり、舌先で撹拌しながら唾液と共に転がしていると、いつしかチカマルは口中のそれを自然と飲み下してしまうのだった。
 そしてもっとそれを欲して再び手の平を見下ろせば、そこには顎を預けてきては横から精液を啜るカゲチヨと、さらには混乱と羞恥に耐えかねては自分でそれを回収しようと舌先を這わせるカルボウ達の顔が伺えた。

 その中にチカマルもまた額を突き合わせると、三人は掌の精液をそれぞれに貪った。
 伸ばされる舌先同士が小さなチカマルの掌において触れ合うと、いつか三人は自然と互いの唇を舐め合う行為へと移行していく。

 誰のものとも区別せず舌先に触れたそれを口中へと引き込んでは蛇の交尾のよう絡み合わせ、互いの中にある精の残滓を絡めた唾液と交換をする。
 いつしか三人は互いの額と鼻先を突きつけ合わせながらの口付けを、ファーストキスであることの感慨もなく粘着質に繰り返すのであった。


 この日を境に、三人の遊び方とその関係性はより濃厚に、そして親密となっていく……──。
 
 それこそは性の目覚めであると同時に、多様なる世界の在り方を幼き者達へ自覚させるにも至るのだった。



第4話・物見遊山



 先の一件以来、チカマル達の遊び方は一変してしまった。

 もはや互いのペニスそこを不浄と思う事が無くなったことにより、誰かしら相手がいる時は絶えずそれを弄ぶことが三人の常態となった。
 寝起きの朝勃ちから始まり排尿の前後に至るまで、こと生活の中において互いの性を意識しては、いずれかがそこへ触れることが半ば挨拶のように繰り交わされた。

 特にカルボウなどは前以上にチカマルに執着し、最近では精液に留まらず口中で排尿を受け止めることですら厭わなかった。
 さすがにそれに関してはチカマルも抵抗があり、毎回とは言わずとも数回に一度はそれに応じる訳であるが、便器よろしくに開いた口角に排泄されるチカマルからのそれを受ける時、実にカルボウは恍惚とした表情を見せた。
 しまいには自ずから身を乗り出させては打ち付けられるそれを額から受けて尿まみれになるなど、その執着はもはや常軌を逸している感すらある。

 一方でこの状況を愉しんでいるのはカゲチヨも同様であると言えた。
 こちらは今日まで僧正に教え込まれてきた性技の数々を披露しては、実に丁寧にそれらをチカマル達へと教えた。
 曰くそれはアナルのほぐし方であったり、同箇所における挿入後の力の抜き方や締めつけ方など、文字通り手取り足取り教授しては、時に僧正との行為を密かに覗かせるまでしてそれをレクチャーするのである。

 自然とチカマル達の行為も段階を重ねていき、遂にはチカマルもまたカルボウのアナルへ挿入を果たすと、二人は初となるセックスもまた体験した。
 さらに数日を掛けてチカマルもまた肉体を熟(こな)させるやカルボウのペニスもまた受け入れてと、もはや三人は幼い欲情とそして想像力の赴くままに互いを求め合ってはやまなかったのである。

 そうして遊び惚けていたある時、チカマルは僧正に呼び出されると市井へ遊びに出ることを進められる。
 気分転換は元より、武家の生まれたるチカマルにはこうした俗世と交わる機会も無かったことから、この際にそれへ触れることも勉強になるのではないかと僧正は申し出てくれたのだった。
 それに関してはチカマルも異議はない。むしろ新しい世界に触れられることに胸の高まりを抑えられなかった。

 とはいえしかし見るからに武家の総領と分かる姿でうろついてしまっては、万が一にも敵対国の刺客に狙われるやも分からない。
 これよりチカマルが赴こうとしている場所とはこの国の国境沿いに在る町であり、そこには同盟敵対を問わぬ第三国人達が自由に出入りもしている場所であるのだ。
 故に当然の配慮として市井の人間に変装してそこへ紛れ込むことが提案され、チカマル達は一枚の小袖を僧正から送られる。

 浅葱に染め抜かれた小袖はなるほど地味な印象で、そこに手甲脚絆をはめ込んで手ぬぐいなど被ると、チカマルなどはその目鼻立ちの中性さも手伝っては婦女子の如き外見となった。
 同じくにカルボウとカゲチヨも同様の装備に身を包むと、さながら一同は町娘の集まりといった仕上がりとなる。

 そうして町の案内は定期的にそこへ下りているカゲチヨが先導することとなり、晴れて翌日には──三人は町中へと紛れることとなった。
 規模としては行商人が集まる中規模程度のものであったが、これほどに多種多様な人間が一か所に集められた場所など初めてのチカマルには、まるで別世界へと迷い込んだかのような心地がした。

 先に述べた商人達を始め、元より此処で生活を営んでいるだろう町人や、更に複数の家々の武士達などが入り混じるこの町は、まさに人種の坩堝だ。
 今回の下山にあたり僧正からいくらかのこづかいもまた貰い受けていたチカマル達は、それにて食事や菓子の食べ歩きなどをして町を満喫をしていたが……如何せん世間知らず武家の子供であることに加え、金銭感覚においても無頓着であるチカマル達はあっという間に手持ちを使い果たしてしまった。

 まだまだ町の出店には興味が尽かないというのにただ指をくわえて眺めるばかりの現状となった時、カゲチヨが思わぬ『小遣い稼ぎ』を提案する。
 とはいえチカマル達には肉体労働に従事する体力も無ければ、着ている服以外には売るものすらも持ち合わせてはいない。いったい彼が何を企んでいるのか見守っていると、カゲチヨは2人を裏路地へと誘い込んだ。

 3人がいま往く小道は、行商人や武人達が各々の詰所や問屋から表通りへと出る為に通行する裏道であり、建物の影となるそこは昼ですらなお薄暗い雰囲気を醸していた。
 そんな路傍には既に数名の男女が蹲ったり、あるいは所在なげに立ち尽くしては道行く武士や行商人達へ何やら声掛けをしている。

 その一角にカゲチヨ達もまた陣取ると、チカマルを中心に横一列に並んでは大道芸人さながらに三人は通りに対して面向かった。
 建物の壁を背にし、前方には代金を入れる為であろう茶碗だけが一つ置かれた状態を前に、何の芸事もこなせない自分はどう振る舞ったらよいものか思案にくれたその時──チカマルは思いもよらぬ展開に到っては度肝を抜かれることとなる。

 しばし立ち尽くしていると、ふと通りかかった町人然とした男がカゲチヨへと声を掛けた。
 なにやら二言三言交わしながら交渉をしているようだが、やがて銭を一枚茶碗へと放ると腰紐を解いて立ち小便さながらにペニスを晒した。
 それを前にカゲチヨも慌てる様子もなく上背を屈め……そのまま一切の躊躇もなく、男のペニスを咥え込んでしまうのだった。

 以降は激しく頭を前後させてはそれを口取りする様子にようやくチカマル達は自分が何を売るのかを理解する。

 それこそはこの体を──性的なサービスを提供してその対価を得ようとする商売に他ならなかった。
 そして気付けば自分の目の前にも何者かの影が差す。
 それに気付き恐る恐るにそこへ視線を転ずれば──……

 目の前には巨躯のスリープが一体、鼻息も荒くチカマルを見下ろす下瞼を邪な期待に上ずらせていた。



第5話・春をひさぐ



 カルボウのものでもなければカゲチヨのものでもない、見知らぬ第三者のペニスを前にチカマルは生唾を飲み下す。

 身内以外とこうした行為を交わしてしまうことの拒否感や倫理の逸脱を危惧する思いとが瞬間脳裏をよぎったが、それでも最終的には好奇心が勝った。
 ホースさながらに長く伸びたスリーパーのペニスを両手で掴むや、チカマルは包皮でさや状になったその先端に舌先を這わせる。

 途端に想像だにしなかった塩気を憶えては舌を放してしまう。
 ペニスそこに覚えるこの味わいはカルボウのものを咥えた時にも感じたものではあったが、いま口にしているスリーパーのそれは更にえぐみがきつい。
 もはやそれは完全に汚物の域に達した下手物ではあったがしかし……さんざんに食いつくした友人達のものとは明らかに味わいの違うそのペニスに対し、たちどころにチカマルは魅了された。

 今度は僅かに包皮を剥き、その間口から現れる真っ白な恥垢のこびり付いた鈴口に舌先を這わせる。
 もはや不浄の爆心地ともいうべき臭気と味わいは先の包皮越しに舐めた時以上の衝撃を以て苛んだが、いつしかチカマルはそこを舐め尽くす行為に夢中となっていた。

 頭は視界が白くぼやけるほどに興奮しては、いま自分のしている行動を冷静にチカマルへと振り返らせていた。
 それこそは自分が下賤と見做すポケモン以下の存在に落ちてしまったことの自覚であると同時、それこそはカルボウとカゲチヨを裏切る不貞に他ならないのだと思うと、なおさらにそんな自分の浅ましさに幼い情欲は燃え盛ってしまうのだった。

 一方でスリーパーのペニスはといえば高質化することはなく、ただひたすらに肥大していった。
 やがて包皮越しに亀頭の陰影が浮かび上がり、血流の充填と併せてこのペニスなりの勃起を果たすと──チカマルの口中において亀頭は完全に剥きだされてそのカリ首を前歯の裏側へと引っかけた。

 もはやチカマルのキャパシティには収まりきるものではないサイズゆえ、咥え込んでいると亀頭表面の形が歪むほどに前歯の先が亀頭に食い込んだ。
 当のスリーパーもまたそれなりに痛みもまた感じているのだろうがしかし、その痛痒感を帯びた感覚が快感らしく、そのまま腰を前後させては激しくチカマルの口唇を犯しにかかる。

 ペニスの味わいも未知のものならば、そこから滲む腺液の味もまた独特であった。
 苦みが強く前面に押し出されたその味わいたるや路傍の草を噛み潰したかの如くではあるのたが、その尿とは明らかに違う舌触りにチカマルはこの先に待ち受けているスリーパーの精液の味もまた期待してはなおさらにそれを貪る行為を止められなかった。

 いつしか左手で茎の包皮を扱き上げる動きの傍ら、無意識にチカマルは被服越しに自身のペニスにもまた右手を触れていた。
 こちらも完全に勃起した先端を掌で揉みしだくなどしながら夢中でスリーパーのペニスをしゃぶり続けていると、その幕引きはあっけないほど急激に訪れた。

 ふいにスリーパーが牛の如くに低い声を呻り上げたかと思うと次の瞬間──加えていた鈴口からは灼熱の奔流が湧き上がり、チカマルの口中において射精を果たした。
 肥大化こそすれ一向に硬質化しないペニスの様子に油断していたチカマルは、折り悪く最も深く咥え込んでいた最中(さなか)にその奔流を受けてはたちどころに呼吸器を塞がれた。
 一方スリーパーのペニスはといえば依然として射精を続けながらチカマルの咽頭において蛇の如くにのたうち回る。
 そうして行き場を失った精液は鼻腔からも逆流すると、目頭の奥に感じる突きさすような痛みと呼吸困難から来る苦しみに……チカマルの端正な顔は立ちどころ涙と精液に汚れた。

 かくして射精を終えペニスが引き抜かれた後も、呼吸器の粘膜やはたまた気道に張り付いた粘着質な精液にチカマルは咳き込みながら苦しみの余韻に苛まれる。
 呼吸困難に咥え、鼻腔や脳内には腐った魚貝を思わせる精液の匂いが充満する中においてもしかし……この時のチカマルは激しく勃起していた。
 他者に道具然として扱われること、さらには身内のものではない精液を味わうことの興奮は、密かにチカマルの肉体を昂らせつつあった。

 依然として滂沱にして苦しみ喘ぎつつも右手は自然と自身の股間へと伸びては小袖越しにそこを刺激しては慰めようとする。
 そんなチカマルの行動に対し、

『オイ……お前、もしかして男か?』

 事を見守っていた武士の一人がチカマルの行動に気付く。
 その声に未だ意識の定まらぬまま呆けた視線を返すチカマルの両手を取り吊るし上げるよう掲げさせると、武士はアンコウの解体さながらにチカマルの小袖を剥いでいく。
 かくして着物の前がはだけさせられると──その下から現れた褌と、そしてその前面を腺液に濡らしては大きく張り詰めさせた股間の様子に、他のギャラリー一同も感嘆の声を上げた。

 春を売りひさぐ町娘の正体が男であるなど本来ならば激しく非難されても致し方の無いことではあるのだろうが……幸か不幸か今この場に介している人間やポケモン達は皆、武士やそれに準ずる士分の者達が大半であった。
 いつの時代もそうであるよう、戦場という非日常に身を置く彼らには自然と同性愛に対する忌避や嫌悪というものが薄れる者も多い。
 
 その中において幼くとも武家の嫡男であるところのチカマルには無意識にもその立ち居振る舞いの中に『武家』の気配が醸されており、そんな彼の存在に荒くれや武士達の情欲は著しく刺激されてならなかった。

『よぉし坊主、お前を買わせてもらうぞ。ほれ、壁に手ェついてケツを向けろ』

 吊り上げていた武士は言いながらにチカマルを下ろすや、その尻を一叩きしては自身の股間もまたまさぐる。
 そうして直垂の隙間から取り出した恥垢まみれの一物は──既に鉱物と見紛わんばかりに勃起してはその亀頭を天に向けてそそり立たせていた。

 同時に取り出した銭二枚を茶碗に放ると、いよいよ以て武士はチカマルの臀部をワシ掴んでは左右へと展開させた。
 皮下脂肪の多い子供とはいえ、男子たるチカマルの尻は骨格を反映させた臀部の角が立っており、その奥底に鎮座しては収縮を繰り返すアナルの下には、さらに睾丸までを繋ぐ会陰のふくよかな膨らみがあった。
 女ならば本来膣口があるはずのそこには睾丸の裏筋と繋がった皺が一本走っていて、その下で餅菓子の様に無毛のふぐり袋が縮み上がっている様は、女体からはけっして得られない魅力と妖艶さとが満ち満ちていた。

『いいケツだ……男が妊娠できぬものか試してやるぞ』

 言いながら武士は、既に腺液が駄々洩れとなった亀頭の先端をチカマルのアナルへと押し当てる。
 肛門越しに感じる武士の粘膜とさらにはその体温にチカマルは息を飲んだ。
 遂には他者の……しかも自分よりも遥かに強靭な大人のペニスを受け入れる期待と恐怖にもはや、失心寸前の体で興奮の極みに達するチカマルではあったがしかし──瞬きの後には、一息にしてそれは非常な現実世界へと引き戻される。

 次の瞬間、武士のペニスは一切の解しや感慨も無く一息で根元まで挿入された。
 規格外の一物はその一突きで直腸の歪みを直伸に矯正し、さらには体内においてS字結腸すらをも貫通するや、下腹の表皮を内部から突き上げて亀頭の陰影をそこに露とした。


 斯様な衝撃に一瞬チカマルは息を詰まらせた。
 そして次いで訪れる、括約筋を分断させる衝撃と消化器を掻き回すただならぬその深刻な痛みに──……チカマルは声の限りの絶叫をそこに響かせるのだった。



第6話・刺客



 壁に両手を突いて並べられた3人の少年とポケモン達──チカマルを中央に、そしてその左右にカゲチヨとカルボウという並びに配された3人は男達の慰み物としてその体を酷使されていた。

『うぉ、イクぞッ……孕めぇぇ……!』
「へああぁぁぁ……もうらめぇ…‥…ッ♡」

 一際深く腰打ち付けては直腸の奥深くへと射精される灼熱感に、この日数度目の絶頂を迎えてはチカマルも嬌声の語尾をだらしなく伸ばす。
 しばしの直腸射精の後、そこから勢いをつけて乱暴にペニスが引き抜かれると、もはや空洞に広がりを見せたまま戻らなくなった肛門の淵からは今しがた撃ち込まれたばかりの精液がしとどと滴り落ちる。

 絶頂も含んだ肉体の痙攣に合わせ、時折り泡を立てては体外へと排泄される精液にもしかし、そんなチカマルの緩み切った穴へと次に控えていた武士が間髪いれずにまた、深々と己のペニスを挿入した。

「んぎぃッ♡ もうダメぇ! 休ませてぇ……ッ」

 先ほどまで埋められていたペニスとはまた径も角度も違うペニスの亀頭に腸壁を擦り上げられては、その感覚に連続した絶頂を迎えてしまうチカマル。
 小振りな彼のペニスもまた跳ね上がっては、両手を突く前面の壁へと射精した精液を打ち付けるのであった。

 こうして犯され続ける3人の少年達の尻には五画一文字の記号が、武士達がその肉体を愉しんだ毎に一画ずつ書き加えられていく。
 この記号と画数を数えることにより、今現在チカマル達が何人の男やポケモン達を相手にしたのかは一目瞭然で、実にこの時チカマルが8人・カゲチヨが5人、そしてカルボウに至っては既に16人のオス達によってアナルを犯され、そして各種の精液を胎内へと打ち込まれていた。

 ことカルボウ人気の理由は、何よりもそのリアクションにあった。
 人一倍敏感のカルボウは、痛みは元より快感に対しても実に良い声で哭いた。
 その嬌声と身をよじり痙攣させる反応は大いにオス達の加虐心を刺激し、なおさらに悲鳴上げさせようとオス達はカルボウを責め苛ませる行為に躍起となる。
 開いた両脚の真下となる3人の足元は、直腸から滴り降りてきた精液が山となって盛り上がっては足の踏み場もないほどに濡れていた訳ではあるが、斯様なカルボウのそこにおいてはもはや、彼の両足が精液の中へ埋まるほどに汚れ果てているのだった。

 代金を入れるべき茶碗も完全にその要領を越えては銭が溢れては、飛散したオス達の体液まみれとなっている。
 そして期せずして3人を犯していた武士とポケモン達が同時に射精を果たし、そしてチカマル達もまた同時に絶頂を迎えると──ようやくにこの商いにも一段落がついた。
 3人のアナルそこから同時にペニスが引き抜かれるや、一斉に並んだアナルからは手水場の蛇口よろしくに吹き出した精液が弧を描いて噴出された。

 その息を合わせたかの如き逆流に見守っていた一同からも嘲笑めいた歓声が上がっては場違いに和やかな気配が満ちる。
 しかしながらその中において……斯様な弛緩した雰囲気にはそぐわない意志を持った者がいた。
 人ごみの隙間から、依然ガニ股に佇んでは絶頂の余韻から子豚のような声を小刻みに上げるチカマルただ一点をその男は注視する。
 
 この男こそは他国の間者(スパイ)であり、同時にチカマルの命を狙う者であった。
 予てよりチカマルを追っていたこの男は、彼の誘拐かあるいは叶わぬのであればその暗殺を密命されてこの国に潜んでいた。
 例の寺に匿われていた時分には手出しが出来なかったものの、その標的がこうして下山をし、さらには何を考えているものか不特定多数の慰み物となっている状況はこの上なく男の任務を果たさせるのに誂え向きの状況といえた。

 故に懐に仕込んだ小刀の柄を握りしめたまま、男は次の客を装ってはチカマルの背後へと近づく。
 そして精液にまみれては痙攣を続けるその白い尻を眼前にすると同時、男は逆手に握りしめた小型を抜き放つやそれをチカマルの背に目掛け振り下ろした。

 あまりに刹那の出来事に取り囲む一同ですら男の動きに反応出来た者などはいなかった。
 そして男自身もこの暗殺の達成を確信したその瞬間──振り下ろした刃の切っ先は、塩粒ひとつ分チカマルの肌に届かぬ場所で静止した。
 その予想外の展開に困惑しつつ己の握る刃そこへと視線を転ずれば──そこには左右から伸びた二本の黒い指先が刃の鎬を挟み込むようにして押し止めていた。
 さらに男の目がそれを制した者の正体を探るべくに展開されれば目の前には……チカマルの左右に控えていたカゲチヨとカルボウとが、それぞれに左右から腕(かいな)を伸ばしては鏡に映したが如く正確無比に男の凶刃を抑えていたのである。

 さらにはそのポケモン二人から向けられる視線に男は戦慄を覚える。
 つい今しがたまで娼夫に身を窶しては浅ましく喘いでいた淫獣の面影などは微塵も無い、殺気に満ちた冷徹な眼が金縛り然として男を射竦めるのだった。

 そしてさらに予想外には直後、男は背後から何者かによりその両腕を捕縛された。
 瞬間にして身の自由を奪われたことに狼狽しながら振り返れば、いつの間に擦り寄って来たか、ギャラリーと思っていた武士の数人が男の両腕を始めとする肉体を抱きすくめては緊縛していたのである。

 その段に至り、ようやく場には一連の異常事態を察して不穏な声が上がり始める。
 そんな中、九死に一生を得た事すら理解していないチカマルは遂に力尽きては足元に蹲ってしまう。
 それを前にして挟み込んでいた刺客の凶刃など頬り捨てると、両脇のカルボウとカゲチヨもまたチカマルの元へ屈みこむ。
そうして二人がチカマルの背を撫ぜたり額や髪に飛び散った精液を舐め拭いながら労わる中──

『上々の守備ですな、チカマル様』

 喧騒の場から歩み出して声を掛けてきたのは、誰でもない山寺の僧正であった。
 その登場に一切の事情が分からず、ただ疲労に蕩けた視線を向けるばかりのチカマルに対し、僧正はこの修羅場には似つかわしくないほど好々爺然とした微笑みを向ける。

『まずはここより立ち去りましょう。詳しい話は寺にはお話し申す』


 振り返れば場は、先に取り押さえられた刺客の男が何やら喚き立て、そしてそれに発奮させられた武士達がどさくさまみれにそれを殴りつけるという地獄のような光景が繰り広げられていた。
 かくしてチカマル達は町を後にし、寺へと帰ることとなる。
そしてそこにおいて、何故に自分達が僧正の元へ預けられたかの理由もまた知ることとなるのだった。



エピローグ



 寺へと戻り、湯あみ後に一息ついてからチカマルは僧正に謁見した。
 まずは町での災難を労われた後に僧正は、思いもしなかった事実をチカマルへと告げていく。

『貴方様は将来的に、天下の将軍になられるお方です』

 この言葉の真意は以下の通りである。
 チカマルの父でアザフネ、ひいてはイサ家が新たな首領として仰いだクザン家はこの度の大戦(おおいくさ)によって勝利し、天下の大勢を決定した。
 これにより、その戦いにおいて功を上げたアザフネは直参として取り上げられることとなり、諸藩の大名達を差し置いて上大名に序列されることとなった。

 そして斯様に栄華たるイサ家の一子チカマルもまた、将来は父の地盤を継ぐ大大名としてのキャリアが約束された訳である。
 とはいえこうして口頭で伝えられるだけの父の武勲と己の身分など、何も持たない子供のチカマルにはその自覚も実感も一切として湧かなかった。
 しかしながらその周囲は……時代は必ずしもチカマルをそうは見ない。

 いつかは天下に名高いイサ家の次期党首になるであろうチカマルの身を確保しようと、それぞれの勢力が独自に動き出した。
 上策としてはチカマルを保護し、半ば人質として手元においてはイサ家やクザン家への牽制にしようというもの。そして下策としては……確保が叶わぬ場合には、後の禍根ともなるべきチカマルを始末してしまおうと算段であったのだ。

 クザン家が実質的な天下人となってまだ数日と経ってはいない。
 謂わば戦後直後のどさくさに紛れては件の計画を実行しようとチカマルが匿われる所領には実に数多くの間者が跳梁することとなる。
 斯様なチカマルを守る立場としては、この寺に引きこもり守りを固めるべきではあろうが……ここで僧正は一計を案じる。

 いつ攻めてくるやもしれぬ輩に気を揉むよりも、いっそ禍根ともいうべきその者達を捉えてしまえばいい。
 その一網打尽の企みの為に餌とされたのが……──

「私……だったのですか?」
『えぇ。いい役者ぶりでしたよ』

 後は知っての通り、町において衆目を集めたチカマルの元へと間者達は集まり、首尾よく僧正の配した家臣団によってそれらは一網打尽とされたのである。
 彼らの身柄を確保するという事は、それを命じた他家に対し動かぬ証拠を突き付けることに等しい。
 もっとも相手としても頬被りに否定もしようがそれでも反対勢力の特定と、さらには以降そこ家に対しての牽制が行えるというのであれば、この度の企みは上々の結果をもたらせたと言えた。

『貴方様を囮に使ってしまった非礼は重ねてお詫び申し上げます。しかしながら……よもや、ああまでも『お好き』であったとは』

 僧正からの詫びにもしかしチカマルは顔から火が出る思いで俯いた。
 しかし直後には、一歩違えればチカマルも自身の命が無かったことに気付き、改めて戦慄を憶えた。
 事が穏便に済んだが故に一笑にも伏せられるものではあるが、実に際どい橋を渡らされていた訳である。
 羞恥により赤くゆで上がっていた面相が一変して白く青褪める様子にしかし、僧正もまた小さく鼻を鳴らすと、

『いささか破天荒な企てではありましたが、貴方様の身の安全に関しましては私は一切の不安もありませんでしたよ』
「そ、そうなのですか?」
『はい。あらかじめ手配の者達を周囲に侍らせていたことも然ることながら、何よりも貴方様の両隣には誰よりも便りになる侍衛達がついておりますれば……』

 その言葉にチカマルもまたはっとして頭を上げた。
 言うでもなくそれはカルボウと、そして誰でもないカゲチヨのことである。
 聞くところによれば、町での乱痴気騒ぎの最中においてチカマルへと迫った刺客の手より彼を守ったのは誰でもないこのカルボウとカゲチヨであると聞いた。

 チカマルにとってカルボウは幼き頃よりそばに使えていたポケモンであり、おおよそ『友人』以上の彼のことなどは何も知らないことに気付いた時、僧正はそれについてもチカマルに教えてくれた。
 曰くあのカルボウは、古今東西にも比類ない強さを誇るポケモンであるという事実──実際の話として、一族の総領たるチカマルに仕えるべきポケモンが単なる愛玩相手であるはずもない。
 カルボウの配置には、それ相応の理由があった訳である。

『そして我が寺のカゲチヨもまた、かのヒナタマルには引けを取らぬ手合いだと自負しております』

 ここで僧正に言う『ヒナタマル』とは、カルボウの呼称である。
 そして僧正は同時に、カゲチヨもまたそんなカルボウに並び立つ豪の者であることを伝えてもいた。
 それこそはチカマルが賊の凶刃に狙われた瞬間の仕草を見れば、それが何よりもの証となることだろう。

 幸いにもチカマルは、常にこの二体のポケモンに守られていた訳である。
 遠く故郷からここへ至る道中も、そしてこの寺に着いてからもチカマルは知らずのうちにカルボウ達によってその身の安全が保障されていたのだ。
 そしておそらくはチカマルの生涯においても最大の幸運となろう出来事はこの後にもたらされる。

『どうでしょうチカマル様……我が寺のカゲチヨもまた、ご陣営に末席に加えていただきたく思うのですが』

 斯様な僧正からの申し出にその瞬間、チカマルは背筋を伸ばしては告げられる事実の反芻をした。
 それこそは、

「えっと、その……それは、カゲチヨを私にくださるという事ですか?」

 それを訊ねるチカマルに対し、僧正はただ一言『左様』と答えては好々爺然として頷いた。
 あれだけの豪の者であるのだからチカマルとしても異存はないが、それでもそれを手放そうという僧正の思惑を測りかねては即座に返事が出来ずにいた。
 それを見測り僧正もまた、

『これにより以降も、イサ家と我が寺の縁故が保たれるのであればこれ以上に喜ばしいこともございません。それにあの者には武家の嗜みもまた仕込んでございます。戦場に置かれましても、貴方様を煩わせることもありますまい』

 しみじみと大きく頷くや、僧正は顔を上げてその視線をチカマルの背後にある襖へと転じた。

『これ、カゲチヨ。ここへきて新たなる主に挨拶をしないか』

 その言葉が投げ掛けられるや襖は勢いよく開け放たれて、そこにカルボウの上に重なったカゲチヨ達の姿を露とさせた。
 どうやら一連のチカマルと僧正のやり取りを盗み聞きしていたらしい。
 そして小走りにカルボウと二人駆け寄るや、カゲチヨはチカマルの隣へと腰を下ろし改めてその顔を正面から見つめた。
 
 光彩の大きい瞳の奥底には、宵明けの地平を思わせるような深い藍が湛えられては、喜びの心中を投影したかのような輝きでチカマルを見つめていた。
 そして次の瞬間には深く抱き着いたかと思うと、チカマルの頬へと痺れるくらいに熱烈な抱擁を交わす。
 一方でそれを目の当たりにしたカルボウもまた憤慨するかのような声を上げると、その正反対からチカマルを抱きしめては同じようなキスをする。

 そんな二人の親愛すべきにパートナーをチカマルもまた苦笑い気に両腕に抱いた。
 

 これこそが後に語り継がれるチカマルこと、イサ・アカツキの武勇譚における枕となる。
 後に所領を父より継承し、一国の主となったアカツキは以降も事身出世を重ね──その果てには時の大将軍となってはこの国をも手中に収めることとなる。
 
 そんなアカツキの両隣には常に天下無双と謳われたグレンアルマとソウブレイズが付き従っては、終生彼の元を離れることは無かった。


 





【 武家の嗜み・完 】


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