[[呂蒙]] 暖かい春の日差し。だんだんと濃くなっていく緑。そして何よりも大型連休がもうすぐである。 大学教授、諸葛恪は実家が外国にあるため、帰省するとなると飛行機のチケットの手配などをしなければならない。面倒だったが、こればかりは仕方がなかった。学校の仕事用のパソコンでインターネット予約をしてもいいのだけど、何だか仕事をさぼっているようでやるのは躊躇われた。仕方ないので、授業がない間に近くの代理店で航空チケットを予約した。あとは、荷づくりだが、これは出発の前の日でいいだろう。今する必要もあるまい。それなりにすることは増えるのだけれど、やはりもうすぐ連休である。いくつになっても何日が休めるのはうれしいことだ。 一方、ものすごく忙しくて、そんなことを考える暇すら与えられない人もいる。大学教授にして上院議員の法孝直は、休み前の最後の議会に向けて資料をまとめているところであった。しかし、大学の教授室ではなくラウンジでその作業をやっていたのである。つまり場所が悪かったのだ。だが、部屋に閉じこもって作業というのも好きではなかった。 ここで作業をしていると、当然生徒から声をかけられる。このレポートの参考文献は何が良いかとか、レポートの下書きを見てほしいといったものである。むろん、大学にいる間はこれが仕事だから、そんなの知るかと答えるのはもってのほかである。が、そうしている間にも少しずつ作業が遅れていく。 (はああぁ、いくつ体があっても足りないなぁ。早く休みにならないかなあ……) 大人には大人の事情がある。では学生はどうだろうか? 大学生リクソン=ハクゲンは、7匹のポケモンと日々を過ごしている。もともと、リクソンは家に閉じこもっているのがあまり好きではなかった。どこかに出かけるのが好きというのもある。しかし、ほかにも理由はある。土曜日や日曜日に家の床でごろごろしていると、かなりの確率でリクソンとサンダースのこんなやり取りがある。 「ぐえっ」 リクソンの苦しそうな声が聞こえる。すると、サンダースは悪びれた様子もなく、謝る。要するに言葉だけということだ。 「あ、悪ぃ悪ぃ、踏んじまったか」 「踏んじまったじゃないだろ、げほっ、苦しい……。腹を踏まれた」 「お大事に」 そう言ってサンダースはどこかへ行ってしまった。追いかけたかったが、足の速さでサンダースにかなうわけがない。リクソンは咳こみながら、二階の自分の部屋へ行き、ベッドに身を横たえる。 (ああ、痛かったっていうかまだ痛い、武器になるぐらいだからなぁ) 春の陽光がリクソンを照らす。陽が直接当たって暖かいので、リクソンは服を脱いで下着姿になった。これで丁度いいぐらいだ。リクソンはだんだんと眠くなってきた。さて、昼寝でもしようかなと思ったときに部屋の戸が開く。別に部屋には勝手に入っていいと言ってあるので、7匹は自由に出入りしている。入ってきたのはグレイシアだった。7匹のうち一番年上でしっかりしている。リクソンからしてみればほっといても平気なので、自分のことは自分でさせるようにしている。グレイシアも何も言わなかったし、彼女にしてみれば子供扱いされる方が嫌だというので、リクソンにとっては楽でいい。 「リクソンさん」 「どうしたのグレイシア?」 「お昼寝?」 「そうだけど?」 「私も一緒に寝ていい?」 「いいけど、狭いよ1人用のベッドだし」 「べつにいいわよ。それじゃ遠慮なく」 グレイシアはベッドに飛び乗り、布団の中に入ってきた。さすがに氷タイプがそばにいると、ちょっと寒い。リクソンは毛布をもう一枚持ってきて、それをかけた。 横を見ると、グレイシアは眠ってしまっていた。まだあどけなさが残る妹のリーフィアと比べると、グレイシアには大人の魅力を感じさせるようなものがあった。 (か、かわいい、というか綺麗だ) そう思いながら、リクソンもひと眠りすることにした。 リクソンが目を覚ますと、グレイシアの姿が見えない。きっと先に目を覚ましたのだろう。時計を見ると時間はもう夕刻になっていた。 (おいおい、こんなに寝ちまったよ。御飯の準備をしないと) 飛び起きると、何か違和感が。股の所に目をやると、濡れていた。 (グレイシアがあまりにも綺麗だから、まさか、変なことを考えて夢精を……。い、いや、とにかく飯の準備だ) 下着を変えたリクソンは大急ぎで、食材を購入し、夕飯の支度を始めた。 すると、台所にグレイシアがやってきた。 「ね、リクソンさん。今夜も、ね?」 「は? ああ」 グレイシアの言っていることが分からなかったので、適当に返事をすると、グレイシアはうれしそうに去っていった。何となく寒気がしたのは気のせいだろうか。 グレイシアは、他のポケモンたちとテレビを見ていた。そしてこんなことを考えていた。 (うふふ、連休中はリクソンさんと……。リーフィアにべったりだったから、これくらいはしてもいいわよね?) とにもかくにも早く連休になってほしいを願う人々はたくさんいるわけである。もっとも何をするかは千差万別だけれど。 終わり #pcomment(大型連休のこめろぐ,5,)