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1人と7匹の物語 番外超短編作品2 の変更点


 <登場キャラクター・簡易版>
バリョウ(21)・リクソンの友人、医者一家の4男。白い眉毛が特徴の俊才。

エーフィ(19)・リクソンの家で暮らす7匹のうちの1匹。高い知能を生かし、超能力を自在に操り相手を倒す。
 

 リクソンの家で暮らすエーフィは、バリョウの家によく遊びに来る。バリョウとは、感性が近いのか、両者はとても仲がいい。最近の出来事のせいもあるが、そうでなくとも、平日は大学内でよく顔を合わせる。
「なんていうかさ・・・、その・・・、まぁ、バリョウさんの人柄と聡明さに惹かれたっていうかさ・・・」
 エーフィの主人であるリクソンとて、決して無教養なわけではないが、彼の聡明さは誰もが認めるところだったので、リクソンは何も言わなかった。
 今日も、エーフィがバリョウの家にやってきた。バリョウは5人兄弟の4男。だが、両親は仕事でほとんど帰ってこず、兄たちは自立しているので、実質弟のバショクと二人で暮らしているようなものだった。
 インターホンの音が鳴る。
「あ、来たかな」
 ドアを開ける。が、誰もいない。目の前には。
「あれ?」
「バリョウさーん。ここだよー」
 目の前にはいなかったが、真上にいた。
「え?と、飛んでる・・・」
「ま、正確には、浮いてる。と言ったほうが正しいかな」
「これも、超能力?」
「そーだよ」
 エーフィはちょっと、誇らしげに答えた。
 家の中に入る。バリョウの部屋は質素だった。部屋の片隅には、六段式の大きな本棚が置いてある。本やノート、論文が丁寧に収められている。ノートを開くと、板書がきれいに書かれていた。見やすく、字も丁寧。彼の性格を表わしているといえるだろう。
「あ、とどく?」
 バリョウは、気を使って、そう聞いたが
「あ、気を使わなくても・・・」
 エーフィは、目星をつけた一冊の本を「サイコキネシス」を使い、自分の手元に引き寄せた。
「すごい・・・」
 エスパータイプのポケモンとて、全種類が超能力を使いこなせる訳ではない。が、これは上手いとか下手というレベルのものではないだろう。それすら論じるのもはばかられる、超越したところにきてしまっている。そうバリョウは感じていた。エーフィは読み終わると、丁寧に本棚に戻した。
「あ、そうだ。そろそろお昼ご飯にしないと・・・。どっか、食べに行こうか?」
「バリョウさんが、良ければ・・・」
 ちなみに、この時バショクは出かけていたので、きっちりと戸締りをして、家を出た。
 行った先は、喫茶店「モウトク」。
「ここの、ピラフとコーヒーは絶品だよ」
「へー、そうなんだ」
 食事代は、合計750ルピー。まぁまぁの値段である。
「おいしかったでしょ?」
「うん。でも、悪いね。ご馳走になっちゃって」
「いいって。いいって」
 店を出てしばらく歩く。
「あ、そうだ。バリョウさん。リクソンの家によっていってよ。リクソンに言って、お茶ぐらい出させるから」
 どうせ、バショクのやつは夕方まで帰ってこないだろう。そう思い、
「じゃ、お言葉に甘えて」
 と、言った。が、これが間違いのもとであった。
 リクソンの家まで、あと5分ほどのところまで来たときに、二人に声がかかった。その声は、低くどすの利いたものだった。
「よぉ、久しぶりだなぁ。あん時は世話になった」
「え?」
 ニドキング・・・。もしかして、あの時の?
「今日は、1匹しか連れてないのか?まぁいい。逆に好都合だ」
 げっ、こいつ、リクソンのポケモンたちを自分のだと勘違いしてやがる・・・。が、どうする、変なことを口走れば、リクソンに被害が及ぶのは確実・・・。
「まぁ、条件次第では助けてやらんでもないが・・・。」
「何・・・」
「まぁ、まずは氷づけにされたやつらの敵討ちをしなければな。まず、お前の家に連れて行け。そして、その場でグレイシアを殺して、俺に差し出せばこの場は見逃してやる」
「そんなこと・・・」
(できるはずがない!!。バリョウさん。ここはぼくに任せてっ)
 バリョウの頭の中に言葉が響く。
(え?これって、精神感応?)
「そんなこと、首を縦に振るとでも思ったの?」
「何いっ。お前、そんなに死にたいのか?」
「ははは、まぁ、首を縦に三回振れたら、考えてやってもいいけどね。できるわけがないよねー。首がないんだもん。やったらやったで、顔面をぶって自滅するだけだしね」
(僕だ。僕のせいだ。変な情で、殺すには忍びないと思って半殺しにしかしなかったから、バリョウさんがこんな目に。この前のブラッキーみたいに跡形もなく消し去ることもできたのに、何でしなかったんだ。この思い、いま断ち切るッ!天よ、この正義の行動、どうぞご覧あれ)
「てめぇ、ひねり潰す!!」
 ニドキングが猛烈な勢いで襲い掛かってきた。
「太陽の力、ここに示すッ!!!!!」
 エーフィの額の玉が、光ったかと思うと、強烈な光と熱があたりを襲った。
「エーフィ、これは、一体?」
「瞬殺しないと、バリョウさんに被害が及ぶかもしれなかったから、『陽の力』を借りて、『サイケ光線』の威力を極限まで高めたというわけ」
「なるほど・・・」
 が、安心したのもつかの間だった。
「う・・・」
 全身に大火傷を負い、皮膚はボロボロに爛れてしまっていたが、ニドキングはまだ生きていた。
「た、助けてくれ・・・」
 が、バリョウはこう言い放った。
「今まで、多くのポケモンや人々を困らせておいて、自分だけは助かりたい、だと?ふざけたことをぬかすなッ」
 バリョウは、ボールからウィンディを出すとさっさとその場を離れた。
 すぐに、リクソンの家に着いた。
「やぁ、いらっしゃい」
 と、リクソンは、出迎え、紅茶を出したが、バリョウはうかない顔をし、言葉少なだった。
 リクソンは気になったが、聞いてはいけないようなオーラが出ているので何も聞けなかった。
(オレは、何て事を言ってしまったんだろう。いかに相手が悪人だろうと、命の重さには違いはない。患者が連続殺人犯だったときに、何人も殺しといて自分は助かりたい?ふざけるなっ、と言って手術を拒否するようなものだ。そんな気持ちを抱くようでは、自分に医者たる資格などない・・・。)
(でも、あれは正当防衛でしょ?ああしなければ、自分たちがあぶなかったんだよ?)
 エーフィは、口に出せないので精神感応でメッセージをを送った。が、バリョウはうつむいたままだった。
 バリョウは、紅茶を飲み干すとそそくさと帰ってしまった。
「あ、あのさ、リクソン」
「ん?」
「ちょっと、疲れたから晩御飯まで起こさないでもらえる?」
「?? わかった・・・」
 エーフィは部屋に駆け込んだ。そして扉を閉めた。
(何も、あんなことしなくても・・・、もっと穏やかに相手を倒す方法があったはず。なのに・・・。正義という大義名分を振りかざした、ぼくの暴走でバリョウさんに邪心と迷いを抱かせてしまった。ぼくは、バリョウさんをリクソンと同じぐらい慕っていた。優しいし、謙虚だし真面目で。・・・他の人のポケモンなのに、ここまで、優しくしてくれる人がいるだろうか?ぼくは、バリョウさんに医者になって欲しかった。今まで順調だったのに・・・。自分のせいで・・・)
 エーフィにとってバリョウが何を考えているか読み取るのは、造作もないこと。だから、一層、申し訳なくなった。
(ああ、バリョウさん、ごめんなさい・・・)
 バリョウに対する詫びの言葉を考えているうちに、涙が出てきて止まらなくなった。あまり、感情を表に出さないエーフィだったが、このときばかりは、我を忘れて、大声で泣いた。
      
            1人と7匹の物語・番外超短編作品2・終わり

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