ポケモン小説wiki
食欲暴走学校生活 始まりのパート の変更点


part3掲載と共に今までのpartをすべてまとめたページ作成は終了しました。
ページを未完成のままあげてしまってすみませんでした…。
初作品という事で色々と酷いです。



作者 [[フィッチ]]



#contents

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*part1 [#je4ae38c]
「恋愛? なにそれおいしいの?」
 ボクがそう言った時、クラス中のみんなが固まったんだ。


キーンコーンカーンコーン……
 ここはとある町の中心部にある「The Final Evolution High School(要するに最終進化高校)」。
 響きがすごい感じだけど実際は小、中学校を過ごした結果最終進化したポケモン達が通う高校なんだ! 勿論進化しないで高校に進むポケモンもいるけど、進化すると力関係が危ないからね。あ、ボクはトルテ! 今日からこの学校に入学するんだ!



 退屈な入学式が終わってやっとHRの時間に入ったよ……。やった、これで今日は終わりだ! お昼何食べようかな?
「新入生のお前ら、まずは入学おめでとう! 俺はこのクラスの担任のディゴだ! 種族名はバンギラス、自称熱血教師! よし、お前らさっそく自己紹介だ! これからの青春を共に過ごしていく仲間だからな! 名簿忘れてきたからすまないが適当に当てるからいきなり来ても覚悟しとけ! じゃあまずはそこのサザンドラからだ!」
 あ、いきなりボクだ。えーと……やっぱりたくさんのポケモンの前で話すのは緊張するね。
「ボクはトルテ! 種族名は先生の言った通りサザンドラだよ! これからよろしくねっ♪」
これでいいよね?さて席に……。
「待ったぁ! ただそんな自己紹介をするなんてつまらねぇ! そこで紹介してる奴に1つ質問し、答えなきゃならないというルールにするぞ!」
 え……まだやるの? 結構地獄だよこれ……。ディゴ先生はひどい先生だね。
「はいはいはーい! じゃあ俺が質問するぜ!」
 一匹のオノノクスが質問することになった。変な質問はやだなぁ……
「じゃあいくぜ……! このクラス内に好きなポケモンはいるかっ!!」
 クラスのみんなが騒ぎ始めた。「おいおい、聞いちゃまずいだろ」とか「恥ずかしくて言えるわけないでしょ」とか……。
「え、好きなポケモン? そう言われても今日会ったばかりだし……」
「おいおい、パッと見でいいんだよ! 恋愛関係は把握しておかないといけねーからな!」
「恋愛? なにそれおいしいの?」



「え……?」
「ねえ、恋愛ってどんな食べ物? どんな味なの?」

 しばらく流れる沈黙。もしかして、恋愛って食べ物じゃなかったのかな?
「じ……冗談はよせよ。知ってるだろ?」
「ううん、初めて聞いたよ。で、恋愛って何?」
「……じゃあ、質問を変える。趣味と特技は?」
 あ、これなら答えられる! 
「ボクの趣味は食べることだよ! 特技も食べることだよ!」


 ……。ん? どうしたのかな? また沈黙が。するとディゴ先生が、
「……えーと、こいつは食べることが好きみたいだ。じゃあ、次は質問したオノノクス、お前だ」
 ふう、緊張した。なんか一気に空気変わったね。何でだろう? 席について……と。
 それにしてもお腹空いたなぁ。早く終わらないかな……。
「俺はオノノクスのレックス! よろしくな! よし、質問こい!」
「はーい、趣味と特技はなんですか?あと、このクラスで好きなポケモンいますか?」
「おいおい、質問は1つだけだぞ」
「心配しなくていいぜ先生、答えてやるよ。まず、特技は野球。中学校から野球部だ。そして趣味は……、エロい事を考えることだっ!!」

 
 ん?またクラス中が固まった。変な答えだったかな?ところでエロい事って……何?
「あ、ほんの冗談だ。もちろん趣味の一つに入るがな。ゲームとかネットで遊ぶことだな。、クラス内の好きなポケモンだが……、お前らに教える訳ねーだろっ!」
「おいいいいいいいい! 答えてねーじゃねーか! 嘘ついたなぁ!」
「うるせー! 好きなやつ答えるのやっぱ恥ずかしいだろが! お前ら答えられるのかよ!」
 あ……。なんかクラスが盛り上がり始めた。盛り上がる要素あったかな? それよりお腹空いた……。


「よし、じゃあ最後に……」
 お腹が空きすぎて何も考えられない……。やっと終わりだよ。なるべく最後のポケモン、早く終わらせてよ……。早くご飯が食べたい……
「ミミロップ、締めは君だ!」


「おおおおおお!! 入学式で一際目立つ可愛さの持ち主の女の子! 好きだぁ!!」
「レックス! お前好きなポケモン自分で教えたじゃねーか! だが彼女は俺がもらうからな!」
「いいや俺だ」「おいらだよ!」「いや俺が」
「……あの、自己紹介しますので静かにしてもらえないでしょうか?」
「………………………………」


 お祭りでもやったの? て言う位の男子達の騒ぎ……、でも彼女の一言で急に黙った。この高校のみんな、おかしすぎるよ! ていうかもう空腹が限界に近いんだから早く終わらしてよ! あ……あのミミロップがおいしそうな肉の塊に見えてきた。やばい……。
「私はミミロップのシフォンといいます。よろしくお願いします……」
「よし、誰か質問を」
「俺がする! 彼氏いますかっ!? あと今まで何回コクられましたかっ!!」
レックス君って言ったっけ、変な質問いいから早く終わらせてよ……
「あの……、質問は1つだけですよね? でも一応言いますと、今まで何回も男の人に告白されました。でも全部断ってきています」
「うおおおおおっ!! キタ!! じゃあこの中で彼氏考えてますかっ!」
「すみません、私は恋愛とかそういうことは考えていないので……」
あのさあ、クソ男子のことはどうでもいいんだよ、シフォンさんって言ったっけ、さっさと終わらせて席に戻りやがれ! ん? 今思考が……。あ、もう空腹で頭が狂ってきやがった……。
「うーん、これは厳しいかな?」
「ふん、最初はこうでもだんだん恋愛の魅力に気付くようになる。そして彼女が気付いた時、それが俺の初体験になるのだ!」
 うるせーまずそうな肉共が、俺様はもう腹ペコなんだ! 黙って終わらせろ! つーか先公、この騒ぎ収めやがれ!
「レックス、お前は本当に変態みたいだな……。よし、エロ男子のために1つ話をしてやろう!」
「ナイス先生! 先生俺達と分かり合えそうだぜ!」「あ、俺も聞きたい!」
「ちょっと先生、メスの私たちもいるのよ! 放課後にしてよ!」
「あれは俺が新任になりたての頃……」
 ほう、先公は終わらせない気だな……。つまり奴は肉と血の塊になる覚悟はできているのか。ところでさっきHR終了の鐘がなった。これ以上延ばすというのならもう我慢ならん。
「あの、鐘がなったのですが」
「あ、すまないシフォンさん! では質問は終わりということで、今日は解散にしよう」
良くやった最もおいしそうな食肉よ! 奴を最初に味わおうと思っていたがこれで俺様が過ちを犯すことは……。

「あ、シフォンちゃん最後に1つだけいい? 好きなタイプは何?
 あ、タイプはポケモンのタイプじゃなくて性格とか顔とか……。」
「俺も聞きたい!」「おいらも!」「私も! 何? 何?」
「好きなタイプですか? あの……理想のタイプと思うものならありますけどそれd」


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!」



 あれ? 知らない天井が見える……。ここはどこ?
「おおトルテ、気がついたな! ここは保健室だ」
 あ、ディゴ先生。あとレックス君と知らないウィンディもいる。薬瓶を手に持ったハピナスが保健室の先生かな? そうなんだ。でもなんで保健室なんかにいるんだろう? 状況を整理すると……。

 まずHRが長くてお腹が空きすぎて……。あれ、限界に達してから意識がない。いや、よく思い出すと……。所々で何かが壊れる音とか、悲鳴とか聞こえたような……。これってまさか……

「いやーしかしいきなり発狂してシフォンちゃんをいきなり襲うとはかなり溜まってるな! やっぱり恋愛知らないとか嘘だろ?」
「レックスさん、起きたばっかりのポケモンにそんなこと言うのは良くないと思いますが」
「ごめん……。何があったか説明してくれない?」
 レックス君の話を聞く限りいやな予感がするなぁ……。でも聞いとかないと。
「わかった、先生が説明しよう」



 ディゴ先生によると、まずボクはいきなりハイパーボイスに近い大声を上げ、シフォンさんに真っ先に襲いかかった。そして……。
「きゃあ! い、一体何なのですか!?」
「肉……。食わせろ……。食わせろ……クワセロオオオオオオッ!!!」
「嫌ああああああっ! た、助けてっ!」
「おいトルテどうした! やめろっ!」
「シフォンちゃんが危ない! うおおおおお!」
「邪魔する奴は……ブッコワス……!」
ドオオオオン!!
「ぐわ……、っ!」
 今にもシフォンさんを食べようとしたボクをレックス君が止めようとしたらしいんだ。でもボクの竜の波動を食らって倒れたって……。それから、
「くっ、奴は暴走している! 血迷った生徒を止めるのも先生の役目だ! ストーンエッジ!」「シフォンちゃんを守れっ!」「えーと、じゃあ10万ボルト!」
ディゴ先生達もボクを止めようとしたけど……
「ジャマヲ……スルナァァァ!!」
 ……教室が地獄絵図になったとか。破壊される机。吹き飛ぶ窓。ボクの攻撃を受けて倒れる生徒たち……。
「クワセロォォォォオオオ!!」
「ひゃああああああっ!」
シフォンさんがまさに食べられそうになった時、アーシュ君(今この部屋にいるウィンディのことだよ)が、
「インファイトです! これでどうですか!」
ドガガガガガッ!! ものすごい打撃が叩き込まれて、
「ギャアアアアアアアア!!」
こうしてボクはようやく倒れた。変わり果てた教室、泣き続けるシフォンさん、怪我をした生徒たち……


「まただあああああ! うわああああん!! これでボクは退学だぁ!」
「お、落ち着けトルテ! ヒーリア先生、原因を!」
 ディゴ先生にヒーリアと呼ばれたハピナスは説明し始めた。本当は説明いらないけど……。
「はい、今回トルテさんが暴走したのは空腹によるものです。体に異常は見られなかったので。あ、さっき木の実をペーストしたものをたくさん口に入れて食べさせましたから今は大丈夫です」
「うん、空腹が原因なのは知ってるよ」
 ヒーリア先生の判断が正しくて良かった。食べさせていなかったら、起きた時も……。
「腹が減ってあんなに発狂するか普通? ていうかトルテ、知ってるってどういうことなんだよ? あとまただっていうのもな」
「レックス君……怒ってないの?」
「暴走してたんじゃしょうがないだろ。まずは話してくれ。今までどんな生活をしてきたんだ?」
「うん、分かったよ」



 ボクは昔から……、モノズだった頃からたくさん食べてきたんだ。ほかのことには一切興味を示さずにね。まあ目が見えなかったのもあるし。それでも周りのみんなは優しくしてくれたよ。勉強が全然駄目で馬鹿にされたりもしたけど。ジヘッドに進化してもそれは変わらなかった。いや、むしろ悪くなったかな? 食べることしか考えられなくて、起きてる間2時間おきに何かを食べてたんだ。それ以上食べない時間が続くとイライラして……。そしてあの事件が起こったんだ。
 それは中学3年に進級して先生が変わった時のことだったよ。とても厳しい先生で、ボクにこう言ったんだ。
「トルテ、お前学校の特例で休み時間中食べてるらしいな。だが私はそういうことは断じて許さん。この学校は食べ物の持ち込みは禁止だ。よってこれから食べ物の持ち込みは禁止する。他の先生方にも伝えておく。いいな?」
「でも先生、ボクは食べないと」
「言い訳は認めん。少しくらい我慢できないのか? 第一この学校が甘いんだ……。こんな見えきった嘘、もっと厳しく……」

 次の日、相変わらず食べ物を持ってきたボク。だけど持ち物検査で、
「トルテ、昨日私が言ったことをを忘れたのか? これは没収だ」
「先生、お願い食べさせてよ! じゃないとボクは」
「駄目と言ったら駄目だ! 腹が減ったくらいじゃ死なないだろう! 空腹をまぎわらしたかったら授業に集中しろ!」
 この日、結局間食ができなかったんだ。2時間目は耐えた。でも……3時間目で恐れていたことが起こってそして……


「今回みたいになったのか……」
「もっと酷かったよ。教室が崩壊、大怪我した生徒もたくさん……。ボクは病院で検査してもらったんだ。そしたらある障害があるって言われて……」
「障害?」
「うん、超過食暴走障害って診断されて……」
 えーと、やっぱり分からないよね。ヒーリア先生も初耳って顔だし。一般的に知られてないみたいだから、説明しようっと。


「超過食暴走障害は、一定時間空腹が続くと混乱状態になって暴走するらしいんだ。治療法は無いんだって。あと、食べること以外の興味がすべて無関心になるんだって! あ、この障害が本格的に出たのは中学校に入ったころかな? そこまで覚えたことは大丈夫だけどそこから興味がないなって思ったことは一回覚えてもだんだん忘れていくってさ!」
「…………」
「危ないからってその事件以来学校に行けなくなって……。近所に噂も広まって誰もボクに近づかなくなったんだ。まあもとから友達作る気無いからいいんだけどね!」
 説明終わり! あれ、レックス君とアーシュ君、なぜか泣いてる。
「そ、そうか……。あれ、俺なんか泣けてきた……」
「私もです……。世の中にそのような障害があるとは……」
「なんで泣くの? ボクは障害とかもう治らないから気にしないで生きていこうと思ってるんだ! あ……でも退学になるんだった。どうしよう……」
 あれだけのことしたら退学だよね……。はぁ……。
「いや、実はさっき職員会議で話し合ったが、退学どころか処罰は1つもないということに決まった」
 え、ディゴ先生、本当!? でもどうして……。
「この学校のポケモン達は最終進化形。当然力が強い。だから無意識の破壊行為は1度までなら許されているんだ」
やったぁ! 良かったぁ!
「ただしシフォンさんには一言謝るんだ。今日はもう帰れ。明日クラスのみんなにこのことは説明する。なに、あいつらなら理解してくれるはずだ!」
「ディゴ先生ありがとう! じゃあ帰るね!」
「どうでもいいがお前、先生は敬語だろ? まあ俺は許すがな、ほかの先生は気をつけろよ」
「先生、俺たちも帰るわ」
「おう、お前ら帰り道気をつけろよ!」


 校門を出て気が付いたらもう夕方になってる。軽くお腹空いたな……。
「なぁトルテ、思ったことがあるんだが、1ついいか?」
 ん? レックス君また聞くの? 
「お前、ついひと月前まで学校に行ってなかったんだろ? 何してたんだよ? ていうか何でこの学校に入る気になったんだ? つーかよく入れたな?」
「私も聞きたいです」
 確かに気になるよね。うん、答えるよ!
「ひと月前まで家でずーっと食べてたよ! 障害を持ったポケモンってことでお金が毎日もらえるんだ! 高いものは食べられないけどね!」
「確かに暴走しては大変ですもんね。量もあるし食事代を出さざるを得ないでしょう」
「でもある日思ったんだ。このまま食べて暮らすのもいいけど何か別の面白いことがしたいって。そのことをあるポケモンに言ったらこの学校に行っていいって言われたんだ!」
「あるポケモンって誰だよ?」
「えーと、どこかの偉いポケモンだったと思うよ。お金をくれるって言ったのもそうだし。名前は忘れたけど、確か種族名はレシラムって言ったかな?」


 ん? 驚いた顔なんかしてどうしたの? 何か問題あること言った?
「トルテ、お前レシラムって相当有名だぞ!! 名だたる財閥の会長って聞いたことがあるぜ! スゲーなお前!」
 へーっ! そうなんだ! まあ別に会長とかどうでもいいよ。お金さえもらえればね!
「とにかく、この学校で頑張って卒業しようって思ってるんだ! 初日の今日いきなりやらかしちゃったけど……。まあなんとかなったし、これから暴走しないよう過ごしていくよ!」

「お、俺は……今日初めて見たときは変な奴と思ってたが話を聞いて考えが変わった! よし、俺が友達になってやる! 学校生活を楽しく過ごすためには友達が必要だろ? いろいろお前にはフォローも必要だからな!」
「では、私も友達として仲間に入れてください。彼ではトルテさんは止められないでしょうから」
「なんだとアーシュ! あれは油断したんだよ! 勿論お前も友達に加えてやるがな!」
 あれ、2匹ともボクの友達になるの?でも……。
「いいの? 今日あんなことしたボクなんかと……。これからも危害を加えるかもしれないし……」
「心配すんな、その時は俺たちが止めてやるよ! これから青春を共に楽しんでいこうぜ! よろしくな!」
「またきついインファイトをするかもしれませんが、私を嫌いにならないでくださいね。では、よろしくお願いします」
 ……。二匹とも本当に友達になるって言うんだね。昔何があっても友達になるってボクに言ったポケモンがいたけど、1ヶ月ももたなかったな。まあいいや。今度はいつまで続くんだろう? 気にしないけどさ。
「うん、よろしくね! 一緒に楽しんでいこうねっ♪」
「おう!」「はい!」


「俺達は寮で暮らしてるんだ。お前は……、聞かなくてもわかる。じゃあまた明日な!」
「うん! じゃあねー♪」


 あー、お腹空いた! 早く家に帰って食べようっと! でもそのまえに食材買わなきゃ!
「い、嫌です!」
「まあまあいいじゃん。俺達暇なんだ。一緒に遊ぼうぜ!」
 ん? 誰かの話し声が……。この先の角を曲がった先かな? えーと、なんか危なそうな会話のような気がしたから、こっそり行ったほうがいいのかな? 羽音を出さずそーっと……。あ、あれはシフォンさん! それに知らない3匹のポケモンが……絡んでるっていうんだっけ? ああいう場面見たことないから。ええと、絡んでるのはヨノワールとリングマ、それにフライゴンだね。3匹ともオスみたい。
「ほらほら、金は出すからさぁ、夜を楽しくエンジョイしようぜ!」
「お金を出すって言われても私は……」
「おっと、断っちゃ駄目だぜ? ここで痛い目に遇いたくなかったらな。まあ数が多いから暴れても無駄だからな」
 あれ? 話を聞く限りシフォンさん良さそうな話断ってない? なんか楽しめる上にお金が貰えるって……。でもシフォンさんなぜか嫌がってる。よく分からないけど助けようっと!


「ねえフライゴン達、なんかよく分からないけど彼女嫌がってるみたいだし、やめてあげたらどう?」
「あ、トルテ君!」
「ん? なんだ貴様は? 彼氏か?」
「…………違う……ようだが……」
「ギャハハハ!! 可愛いコを助けて付き合おうとかとんだ無鉄砲だな! というかそういうのは古いんだよ! 今なら見逃してやるから立ち去りな! それとも金で解決する気か?」
 うーん……。どうしようかな? お金で追い払えるみたい。だけどこれから食べないといけないから使えないな……。じゃあやっぱり……。
「バトルだよ! ボクが勝ったらもうやめてねっ!」
「ケッ、3匹相手にバトルとか本当に無鉄砲だな。いいだろう……、後悔させてやるぜっ!!」
 3匹同時にボクに向かってきた! さて、早く終わらせようっと!
「トルテ君、逃げてっ!」


「ガハッ……、ゆ、油断した……!」
「…………不利な状況だ…………」
「くそ、お前ら引くぞ! 覚えてろ!」
 ふう、流星群でまとめて攻撃! ボクの必殺技だよ! 3匹とも逃げて行って、はい終了!
「シフォンさん、大丈夫?」
「……トルテ君、強いのですね。ありがとうございます。おかげで無事です」
 あー良かった! さーて、助けたことだし行こう……、あ、そうだ襲った件についてシフォンさんに謝らなきゃ!
「シフォンさん、あのときは怖い思いさせてごめんねっ!」
「あ……。いえ、もう気にしていませんので。ところであの行動は何だったのですか?」
「うん、実はねボク……」
「ここで立ち話はあれなのでレストランで話しませんか? 助けてくれたお礼に奢りますね」
「え、いいの!? じゃあ早く行こう! 流星群打ったらさらにお腹空いちゃって!」



 ふぅ、ごちそーさま♪たっぷり食べて今幸せな気分♪
 奢ってもらえたし、助けて本当に良かったよ!
「……あの、パスタ5人前は多すぎです。さすがに奢ることは……」
「あ、最初の一皿だけでいーよっ♪これで寝る前の夜食代が浮いたしね!」
 基本ボクの食事は正気を保つためのは1人前でいいんだけど、普通の朝、昼、夜の3食は最低5人前必要なんだ。体の調子が悪くなるからね。
「でも、あなたも大変ですね。結構怖い障害じゃないですか。毎日辛くないのですか?」
「全然辛くないから大丈夫だよ! ところでシフォンさんも何でこんな時間に帰ってるの?」
「私は勉強していました。良い成績をとっておかないと大学に行けませんので」
「へー、大学目指してるんだ、大変だね! ボクは将来の予定とか考えたこと一度もないんだ! まあ何とかなるしねっ!」
「……気楽で良いですね。では、そろそろ家に戻ります」
 ボクとシフォンさんは会計を済ませてレストランを出た。外は真っ暗! 話し込みすぎたかな? この暗さは女性が1匹で帰るのは危ないかな? さっきの3匹がまだうろついてるかもしれないしね。
「えーと、危ないから家まで送っていい? ボクが飛べばすぐ着くよ!」
「そうですね、では……お願いします」


 ミミロップって結構重いね……。ボク、ポケモンを乗せて飛ぶことあまりしないからさ。
「あ、そこです、赤い屋根の家です」
 到着! あ、ここってボクの家とも近いじゃん!
「では、今日はありがとうございました!」
「うん、じゃあまた明日ねっ!」
 シフォンさんが家に入っていったのを確認してボクは家に帰ったんだ。
 さて、あとは夜食を食べて寝るだけ! あ、お風呂にも入らなくちゃ!汚いと嫌われるからね。
 それにしても今日はいろいろあったなぁ……。でも何も問題なく1日が過ごせて良かったよ! 暴走しちゃったのはまずかったけど。
 ボクの学校生活これからどうなっていくのかな? レックス君とアーシュ君って友達ができたけど関係終わるのも多分時間の問題だし……。また1人で過ごしていくことになるのかな? 今までみたいに。あとシフォンさんを助けたときのあの3匹、なんかまた会いそうな気がするな……。そういえばあのフライゴン入学式で見たような……。


 まあ先のことなんか考えても仕方ない! それよりも明日何食べるかだよ! 和食に洋食に中華……、どうしようかな? 考えただけでよだれが止まらないや!
 明日も充実した生活ができるといいなっ♪

*part2 [#eb63ad71]

「何ぃ!? トルテ……、昨日俺達と別れた後不良に絡まれてたシフォンちゃんを助けただと!?」

 ボクが入学して次の日の朝。教室で昨日のシフォンさんのことを話したらレックス君がすごく話に食いついてきて……。
「うん! 困ってるポケモンを助けるのは当たり前でしょ?」
「ま、まあな。それで……、助けた後何したんだ? 教えてくれ!」
「昨日は助けた後2人でレストランに行ったんだ! パスタ一皿奢ってもらえたんだ♪
 その後シフォンさんを家まで送っていったよ!」

「ちょ、お前! 何海千山千のチャンスを逃してんだよ!!」
 え、レックス君どうしたの? 海と山が千?
「千載一隅の間違いだと思いますよ。滅多にないチャンスのことです。こういう知ったかぶりをしても何の役にも立ちませんよ」
 アーシュ君ありがとう! でも、チャンスなんてあったかな? そもそも何のチャンス?
「アーシュ、間違いくらい誰にでもあるだろ! いいかトルテ、可愛いメスを助けて送ったなら、少し君の家で休ませてくれって言うんだ!」
 え? それは迷惑じゃ……。
「いいんだよ、大体パスタ一皿奢ってもらっただけじゃお礼として釣り合わない。シフォンさんなら喜んで休ませてくれるはずだ! 俺なら絶対そうするぜ! そして彼女の隙をついて押し倒して唇を奪う。そこから」
「トルテさん、今日は放課後どうしますか?」
 うーん、どうしようかな……。部活に入ろうなんて全く思ってないしなぁ……。疲れるし。
「アーシュ君は部活に入るの?」
「いえ、私は入りませんよ。トルテさんは……、恐らく入らないですね。食べ物関係の部活はこの高校にないですから。ところでレックスさんは中学校まで野球部だったといっていましたが、やはり入部しますか?」
「ああ、勿論入部する……、っておいぃ!! なんで俺の話を割って別の話題に変えたんだよ!」
「下衆な話なんて聞いても無駄に等しいですから」
「なんだと!? 貴様今全国のエロに生きるもの達を全員敵に回したぞ!! エロを下衆というな! エロは文化なんだ!」
「私は異性との付き合いは不浄なものと思っていますので。それより自身の将来について考えたらどうですか?」
「なんだとアーシュ! 優等生&健全ぶりやがって! ならバトルでエロへの俺の気持ちを証明させてやる! おめーみたいな考えの奴に絶対負けないからな!」
「成程……、いいでしょう。あなたの強さを図る良い機会です」
 えーと、2匹共ボクを忘れてない? バトルすることになったらしいけど……、この高校ってバトル禁止なんじゃ……。
「おいおい、校内でのバトルは禁止だぞ。やるなら放課後別の場所でな!」
 あ、ディゴ先生! もうHR始めるんだ! 席に着こうっと!


「えーとまず、昨日のトルテがいきなり暴走したことについてだが……」
 みんなが騒ぎ始めた。ついでにボクを見て、
「あいつあんだけやったのに来てるぞ。処罰されなかったのか?」
「怖かった……。またあんなことされたら、今度は私が食べられるんじゃ……」
とかいろいろ言ってる。まあ当然印象は悪くなってるよね。
「トルテ、説明してくれ。ついでに謝れ」
 ええ!? 昨日先生「このことは俺からクラス全員に説明する」って言ったんじゃないの!? やだよ、またクラスのみんなの前で話すの!
「ん? どうしたトルテ、浮かない顔をして」
「先生、昨日言ったこと忘れたの?」
「ん? えーと……あ、俺が説明するって確かに言ったな。だが、俺昨日のあの話半分位忘れてな。悪い!」
 はぁ……、分かったよ。長い話になるからお腹空いちゃうよ……。

 念のためもう一回説明しておくと、ボクは「超過食暴走障害」ていう障害を持ってるんだ。この障害はお腹が空きやすくなって、すぐにお腹が空くうえ空腹状態が2時間以上続くとだんだん理性が飛んで行って暴走しちゃうんだ。ボクもそれは普通に怖いと思うよ。でも、食べること以外の物が全て無関心になって覚えてもすぐ忘れるっていう作用がとっても怖いってみんな言うんだ。何でだろう? ボクはそれほど怖くないと思うんだけど。


「……という訳なんだ! みんな昨日はごめんねっ!」
 ふう、説明終わり。ほら、お腹空いてきた。授業前に、持ってきた木の実食べよっと。
「お前ら、そういうことだ。トルテも反省している。許してくれるだろ?」
「…………」
 教室が静かになった。しばらくして、
「えーと、全然反省してるように見えないよ……。終始反省してる顔じゃなかったし敬語じゃないし、最後の言葉とか特に……」
あ……、この口調と顔は直せないみたいなんだ。これも障害の影響で……。
「やっぱり無理! 反省してなさそうでいつ暴走しちゃうかわからないから!」
「大丈夫だ! 腹が減った時いつでも食べれるようにするから!」
「つーか障害持ちとか学校に来るなよ!」
「ていうか自己紹介の時から思ったけど彼精神的にバカなんでしょ? あたしそんなポケモンと一緒に授業受けたくない!」
「そうだ! アイツはただのバカで破壊行動しかしない危険なやつだ! 何で学校はこんな奴の入学認めたんだよ!」
「来るな! 今すぐ帰れ! 食われたくない!」
「俺も食われたくない! さっさと帰って2度と来るな!」
「私もよ! 餌になって死ぬのは嫌! 帰って!」
「来るな! 来るな! 来るな!」

 クラスがすごくうるさい……。隣のクラスに迷惑だよ? でもよく聞いてみると、ボクを危険ポケモンとか食われたくないとかクラスに来るなとか……。やっぱりボクが学校生活するのは無理だったかな? 先生もしばらく黙ってたけどさすがに耐えられないみたい。怒ってるのが見てわかるよ。
「お前らいい加減に……」
「トルテ君を悪く言うのはやめてください!!」
このみんなが騒いでいた教室で最も大きい声でこう叫んだのは……、シフォンさん! クラスが一気に静まったよ。
「トルテ君を悪く言うのはやめてください! 確かに彼は食べることしか考えてなくて話題とか流行も分からないポケモンです! それにお腹が空きすぎると暴走もします! でも彼は悪くありません! 彼の持った障害が悪いんです! 彼だって障害を気にせず周りに嫌われても一生懸命生きているんです! それをバカにするなんて、ポケモンとして最低の行為です!」
 うん、大体合ってる。でも一生懸命は言いすぎかな?
「う……、確かにシフォンちゃんの言うことは間違ってない。だけど何でシフォンちゃんがそんなこと言うんだよ? 昨日一番ひどい目に遇ってただろ?」
「……確かに暴走していた時のトルテさんは怖かったです。あの時の私は彼を凶暴で危ないポケモンと思っていました。でも私が家に帰る途中……、悪いポケモン達に絡まれていた所を彼が危険を顧みずに助けてくれました!」

「えええええ!? マ、マジかよ!?」
「そんな……、いいなぁ……じゃなかった、本当なの!? トルテ、シフォンちゃんの言った通り助けたの?」
 みんな驚いてる。レックス君の言った通り、滅多にないチャンスだったみたい。
「うん、シフォンさんの言ってることは本当だよ! その後レストランでパスタ一皿奢ってもらったんだ! で、道が暗くて危なそうだったから家まで乗せて送っていったよ!」
「な……、奢ってもらえた上彼女を送っただと!? 羨ましすぎる! その後どうしたんだよ!」
「え? それで終わりだよ」
 あれ、レックス君と同じように送った後のこと聞いてきた。みんな何考えてるんだろう? あとそんなに羨ましいかな?
「お前ら……、恋愛という言葉すら知らないこいつがアレをすると思ったか? まあ俺も初めて聞いたとき期待してたけどな」
「レックスさんと男子たち、そんな下衆な考えなんか……」
「アーシュお前ここでそれを話すな! 別の問題で教室うるさくなるぞ! お前ボス戦前に揚々とセーブしないで突っ込んでいく勇者なのか!? 蘇生めんどくせーぞ!」
「あの……まだ話が途中なのですが……」
「おっとすまないシフォンちゃん! 続きどうぞ!」
「私はトルテさんが助けてくれなかったら今頃……。レストランで彼のこれまでのことと障害について詳しく聞きました。彼はとっても良いポケモンです。貴方たちは私が絡まれていた時一人で向かおうと思いますか? それも相手は強そうで、3匹もいたんですよ!」
「……………………」
 途中でレックス君が変なこと言ってたけど、みんなボクに対する考え変わったかな?
「俺は……無理だな、そんな危険なこと……」
「おいらも。シフォンちゃんには悪いけど……」
「トルテ君、3匹も悪いポケモンを倒すなんて、強いのね! ひどいこと言ってごめん! あなたがいなかったらシフォンはひどい目に遇ってたわ!」
「ただの無鉄砲なのかもしれないが、俺達じゃ無理なことだ。悪いトルテ、見直したぜ」
「ごめんねトルテ! シフォンちゃんを救ってくれてありがとう!」
 あ、みんな分かってくれたみたい! 良かった!
「お前らなら分かってくれるって先生は信じてたぜ! さあ、トルテも俺の自慢の生徒だ! 勿論お前らもな! 力を合わせて最高のクラスにしていこうぜ!」
「おう!」「はい、先生!」

 こうしてディゴ先生が無事締め、長いHRは終わったんだ。みんなボクをクラスの一員として認めてくれるみたい! 良かった! さて、お腹空いたから木の実を……
「じゃあ授業始めるぞ! 教科書だせ!」
 え……、そのまま授業入っちゃうの? 食べたいんだけど……。
「先生、木の実食べていい? 授業前に食べようと思ってたけど……」
「おう、食べろ食べろ! 今日は長引いたからな! ただし次は授業前にちゃんと食えよ!」
「うん、先生、分かってるよ!」
 話の分かる先生で良かった! いただきまーす!


キーンコーンカーンコーン…………
「ねえレックス君、3時間目少し遅れるって先生に伝えてくれない?」
「いいけどよ……、何でだよ?」
「クラスのみんなにもっと誠意をこめたお詫びをしたいんだ! その準備だよ!」
「ん? 何をする気だ?」
「まあすぐに分かるから! レックス君とアーシュ君も楽しみにしててね♪」


「お待たせー! あ、ディゴ先生! 遅れてごめん!」
「……もう授業始まって25分過ぎてるぞ。少しどころじゃないだろ。しかもなんだその大荷物は?」
「まあまあ! すぐ分かるし危険なものじゃないから! ボクに気にしないで授業続けてね!」
 さーて、準備に取り掛かろうっと! まずエプロンに三角巾! 料理の基本だね♪
 次に包丁、まな板に野菜と肉! あと皮むき器! 鍋も取り出して、料理開始!
 ついでに雰囲気出すために音楽スタート!


たららったったったった♪
たららったったったった♪
たららららららららららららららったっらったっ♪
たら
「おいいいいい!!! 何授業中に3分クッキング始めてんだぁ!! つーか鍋料理は3分で作れないだろ!!」
 あ、ディゴ先生突っ込みうまいね! ボクもたまにはボケないとね♪
「教室で料理を作るなぁ!! 家庭科室で作ってこい!」
「先生、突っ込みそこじゃねーだろ!! トルテ、お詫びって料理のことか!?」
「そうだよレックス君! これからシチュー作るんだ! 昼休み前にはできるから楽しみにしててね!」
 ボクは料理が得意なんだ! これならみんなに誠意をこめてお詫びができると思って!
「彼の考えは分かりませんね……。まあ私は彼のシチューを頂きたいですが」
 アーシュ君、楽しみにしてるんだ! えーと、他のみんなは……。
「教室で、しかも授業中にシチュー作りとか、前代未聞だろ……」
「でもシチューか……。食べたいなぁ……」
「おいらも。今日お昼何にしようか考えてなくて……」
「彼のシチュー大丈夫なの? みんなの分作るみたいだけど変な味だったら……」
 えーと、まあ苦情とか来てないね。味について不満とか言ってるけど、ボクは自分でおいしい料理が作れるって思ってるから大丈夫だよ。小さい頃から何年も料理してるから。多分。
「えーとトルテ、お前のその意味不明な行動は普通の教師からみればただのバカだ。だが俺は許すぜ! お前がクラスのためを思って作るのならな! だが……授業の邪魔になるから家庭科室で作ってこい。皿と食器も必要だろ? いいか、昼休み前までに絶対作っとけよ! 後俺も食べたいからな!」
「うん! 先生分かったよ! 先生の分もあるからね!」
 早速家庭科室に……。
「あ、私もトルテ君を手伝っていいですか? 彼一人では大変そうですし……。それに私も料理ができますし」
 え、シフォンさん! 手伝ってくれるの? 
「シフォンちゃんが行くなら俺も手伝うぜ!」
「シフォンちゃんが行かなくてもいいよ! おいらが行くから!」
「シフォン、分かった手伝ってやれ。だがほかの奴は駄目だ!」
 シフォンさんが手伝ってくれるなんて嬉しいや! 実は切る野菜とお肉の量多すぎて大変だって思ってたんだ! 
「ありがとう! じゃあ早く行こう!」
「はいっ!」
 みんな楽しみにしてるから早く作らないと! ところでボク達が教室を出る時、クラスの男子達から殺気みたいなものを感じたんだ。何でかな?
 

グツグツグツグツ……
 煮込まれたシチューからいい香りが漂ってきた……。ダメだ、今すぐ食べたくなるよ。お腹も空きすぎて……。1時間前に食べたから暴走の心配はないけど。
「トルテ君、駄目です。みんなと一緒に食べましょうね」
 分かってるよシフォンさん。えーと、昼休みまであと10分……。じ、地獄だ……。何か話でもしようかな? あ、そうだシフォンさんには朝ボクが散々悪く言われてた時彼女の言ったことでみんなに分かってもらえたんだ。お礼言おうっと!
「シフォンさん、朝はどうもありがとう!」
「いえ……トルテ君は悪いポケモンってみんな言っていることが私には耐えられなくて言っただけです。でも、あの謝り方ではみんなに悪いことをして反省していると伝わりませんよ?」
「うん……、あの話し方と表情は、誰が相手でも変えられないんだ。気を付けようって思っても思ってからすぐに無くなっちゃって……。だから誠意をみんなに伝えるためにシチューを作ったんだ!」
「貴方の考えって本当にすごいですね……。普通シチュー作ったらすぐ処罰されますよ? ディゴ先生が優しい先生だったから良かったですが……」
「そう? 中学校でも作ったけど大好評だったよ! 先生達にびっしり怒られたけど」
 そう話しているうちに、廊下からがやがや話し声が聞こえてきた。みんな来た!

「うおおおお!! 旨そうなシチューじゃねーか!」
「いい匂い! 変なシチューにならなくて良かった!」
「先生、早く食べようぜ! 我慢できねぇ!」
「野菜や肉もちゃんと細かく切れてる! おいらが行かなくて良かったよ。実は料理した事が無いんだ……」
 みんな美味しそうって言ってくれてる! うん、今日のシチューはいい出来だよ! ディゴ先生、早く食べたいからいただきますして!
「よし、全員自分のシチューが目の前にあるな? トルテが謝るために作ったんだ! 絶対に残すなよ! いただきますっ!」
「いただきまーす!」
やっと食べれる! 早速パクッ♪もぐもぐもぐ……。うん、味は大丈夫!
「!! なあトルテ、お前……」
 ん? 一口目を食べたレックス君が何か言ってきた。美味しくなかった?
「もしかして……このシチュー、駄目だった?」
「いや違う! むしろ最高に旨い! 旨すぎる! お前これはプロ級の腕だぞ!」
 本当!? するとアーシュ君も、
「はい、モーモーミルクの分量、味付けの仕方も上手くできていますね。私が食べてきた中で2番目に美味しいシチューです。あ、一番目は母の作ったシチューです。すみませんが……」
 アーシュ君、嬉しい言葉だよ! 確かにみんなのママが作るシチューは特別な愛情とかいうのが入ってるらしくて特別美味しいって聞いたことがあるからね! 愛情をボクも入れようと前から思ってたけど、どうやら食べ物じゃないみたいなんだ……。仕方ないね。
「なあクラスのみんな、トルテの作ったシチューものすごく旨いだろ!!」
 レックス君がみんなに質問した。どうかな?
「ああ、プロ級に旨いぞ」
「とっても美味しいわ! 彼のお詫びの心も伝わってくる!」
「くっ、こんなに旨いとは、先生も作らせて良かったと思う! ありがとなトルテ!」
 クラスのみんな喜んで食べてくれてる! うん、今回のシチューでのお詫びは大成功だね!! やったぁ♪


 こうしてシチューをみんなで楽しく食べてたんだ。だけど突然、
「おい、旨そうな匂いしてるじゃねーか。俺様にも食わせてくれよ」
 いきなり1匹のフライゴンが入ってきた。えーと、このクラスじゃないよね。隣のクラスかな?
「ん? 隣のクラスの奴か?」
「ああ、この近くを通りかかったら旨そうな匂いが漂ってきてな。まだいっぱいあるんだろ?」
 シチュー食べたいんだ! ボクは鍋を確認した。もう空っぽ。最初はまだ残ってたけど、ボクやクラスもみんなで全部取っちゃったみたい。
「確認したけどもうないんだ。ごめんねっ!」
「あ? 俺様をなめてるのかこのサザ……ん?」
 フライゴンは話すのを途中でやめて考え始めた。何か思い出してるようにも見えるけど……。で、しばらく考え込んだあと、急に驚いた顔して、
「あああああっ!! お前……昨日のサザンドラじゃねーか!」
 ん? 昨日のサザンドラ? ボクの事知ってるの? えーと、昨日このフライゴンに会ったことは……、あれ、思い出せない。まあいいや!
「トルテ君、忘れてるみたいな顔してますね……。私が話します!」
 シフォンさんは知ってるみたい。
「うおお! お前もあの時のミミロップ! まさか2匹ともこのクラスなのかよ!」
「ん? シフォンちゃん、あのフライゴン知ってるのか?」
「レックス君……、知ってるも何も、このフライゴンが昨日私に絡んできた内の1匹です!」
「何いいいいい!?」
 クラスが一気にざわめいた。そういえば……、昨日の3匹の中にフライゴン、確かにいたね。

「ふん、ミミロップ……いや、シフォンちゃんのいう通りだ。俺様の名はライバーン! 可愛いコに目がないイケメンなフライゴンだぜ!」
「女好き……レックスさんと気が合いそうですね」
「黙れアーシュ! おいライバーン! よくも昨日シフォンちゃんをひどい目にさせようとしてたな! そんなことは俺が許さねぇぞ!」
「おいらも許さない! シフォンちゃんの純潔は守る!」
「俺もだ!」「私もよ!」「クラスの一員に不浄なことをさせようなんて許せません!」
 うーん……。昨日の事を説明した方がいいかな? みんなの言ってることは少し間違ってるよ……。
「ねぇクラスのみんな! ライバーン君のした事はひどいことじゃないと思うんだ! 話によると楽しいことができるみたいでお金も貰えるんだって! シフォンさんが嫌がってた理由は分からないけど……、悪く言うのはやめようよ!」


 あれ、ライバーン君共々みんな固まった。ボクの言うことは固まらせる力でもあるのかな? 
「えーと、このサザンドラはバカなのか? こんな奴に俺様は負けたのか?」
「……悪い、ライバーン。こいつは食べることしか考えてなくてな。俺も最初はそう思った」
「マジかよ!? くそっ! おいサザンドラ! 俺様とバトルしろ! 昨日は油断したからな、今度は瀕死にさせてやる!」
「ふん、トルテがすることは無いぜ! この俺、レックスがお前を叩きのめして二度とシフォンちゃんに近づかない様にさせてやるよ!!」
「トルテっていうのか……。俺様はトルテと戦いたいんだ。そんなに憎いなら、俺様と一緒に絡んでた他の2匹を叩き潰してろ。あいつらも俺様と同じく隣のクラスにいる。そうだ、こうしないか? 俺達3匹とお前らのクラスの中から3匹……いや、もう俺様はトルテとバトルすることは決まってるから他の奴を2匹決め、1匹ずつバトルするんだ。勝利数が多かった方が1つ好きなことを決めて負けた方はそれに従わなきゃならない! 面白いだろ?」

 えーと、話がめんどくさい方向に向かってるよ。何かボクが勝手にライバーン君とバトルする事に決まってるし。疲れてお腹空くからやだなぁ……。レックス君そんな話断ってよ……。
「うおおお! 上等だぁ! 俺の力を見せてやるよ! 心配するなシフォンちゃん! 俺はシフォンちゃんに絡むような奴らなんかに絶対負けねーからな!」
「いいぞレックス! アイツとその仲間を叩き潰せ!」
「がんばってー!」「おいらも応援するよ!」
 え……。レックス君賛成しちゃったし、クラスのみんなもやれって言ってる……。ていうかボクの意見は?
「おいおい、燃える展開になってきてるがな、お前ら勝手に決めるなって! シフォンとトルテの意見も聞かねーと!」
 ディゴ先生、さすが分かってるね! 勿論ボクは反対するよ!
「私は……、あまりこのような事は好きではないですし、もし負けたら私はどうなるのですか? 反対します……」
 あ、シフォンさんも反対だって! そうだよ! 負けたらシフォンさんに何か悪いよ! 
「心配しないでっ! トルテ君の強さはもうみんな知ってることでしょ? だから大丈夫よ! 絶対負けないから!」
「そうだよ! トルテは強いから!」
 いやみんな、何ボクに期待してるの? ボクいうほど強くないしまずバトルしたくないんだけど。
「シフォンちゃんだってアイツに二度と絡まれたくないだろ? 俺とトルテで2勝すれば大丈夫だって! な!」
「は……はい……」
 ちょっとー!! シフォンさんみんなの言ってることに乗らないでよ! こうなったらボクがバトルしたくないから反対って言うしかない!
「シフォンは賛成か。トルテは?」
 来た! よーし!
「そんなのボクは当然「よし! トルテも当然賛成だってよ! これで決まりだ!」

 ち、ちょっとレックス君! 話終わってないから!
「へへへ……。うまくいったな。俺様の仲間の2匹には伝えておく。お前らの中から2匹決まったら、放課後学校近くの大きな森の入り口に来い。来なかったら勿論負けだ。分かったな?」 
「おう! お前らこそ逃げるなよ!」
「じゃあ、放課後にな。トルテ、お前が昨日楽に追い払ったからってこんな気楽にできるのも放課後までだ。本気の俺様の力、見せてやるぜ! 覚悟してな!」
 いや、ボクはバトルなんか……


 ライバーン君が出て行って、今はみんなでシチューの食器や皿を片づけてる最中。
「という訳だトルテ! お前なら俺と一緒に勝てる! 期待してるぜ!」
 レックス君、何であの時話をよく聞かなかったのかな? 泣いていい?
「つーかお前が負けたらシフォンちゃんは確実に奴らの思うざまだ! 絶対負けるなよ!」
「そうだよ負けないでよ! シフォンちゃんのために!」
 うう……。どうしてこうなったんだろう。何かものすごい責任重大みたい……。
 はあ、こうなるんだったらシフォンさん助けなきゃよかった……。
「あの……、成り行きでこうなりましたが、絶対に勝ってくださいね」
 シフォンさんが申し訳なさそうに言ってきた。分かったよ! やればいいんでしょ!
 ところでボク以外の2匹はどうするの?
「トルテ以外の2匹どうするんだ? バトルが強い奴いるか?」
「俺が宣言通りバトルするから1匹だ! 俺は強いって自分で思ってるぜ!」
 レックス君がすごいやる気だ。あと1匹は……。
「レックスと、あと誰がバトルするの? 重要な役だよ? おいらはやらないからね!」
「俺も無理! 負ける気しかしない!」
「あたしだって!」「俺も……パスだ」

「では、私が引き受けましょう」
 長い沈黙からそう言ったのはアーシュ君!
「アーシュ、お前強いのか?」
「誰もやらなくて不戦敗になるよりマシでしょう。それに暴走した彼を止めたのは私ですよ。その位の力ならあります」
 うん、ボクもアーシュ君がいいな! 頭もいいし強いしね!
「よし、レックスとアーシュ、お前らに任せた!」
「絶対勝ってこいよ!」
「おう! 俺とアーシュが2連勝すりゃオーケーだぜ!」
「いえ、私が勝たなければあなたのせいでシフォンさんが汚れてしまうので」
「アーシュ、俺が負けると思ってるのかぁ!? ふざけるなぁ!」
「ここで暴れるな! まだ片付けの最中だろ!」


という訳で、ライバーン君率いる隣クラスとのバトルは、(いやいや)ボクとレックス君とアーシュ君に決まったんだ! 勝てなかったらどうしよう……。めんどくさいし疲れるしお腹も空くからボクバトルしたくないや……。レックス君とアーシュ君が2連勝して終わってほしいなぁ。

*part3 [#ifdcc539]

 放課後になったから、ボク達は早速森の入り口に向かってるんだ。
 メンバーはボクとレックス君、それにアーシュ君。それに……
「いやー、シフォンちゃんも来てくれるとは思ってなかったぜ! シフォンちゃん、俺の勝利した瞬間、絶対見てくれよ!」
「はい、結果はすぐ見ておかないと夜不安で眠れなくなってしまうので……」
 シフォンさんもいっしょに来た。
「夜心配なら私が連絡しますよ。来ない方がよかったと思いますが……。もし仮に私達が負けた場合、あなたはすぐに連れていかれ純潔を奪われてしまいますよ」
「…………確かに……」
 うん、純潔とかボクはよく分からないけど、帰った方がいいんじゃないかな。また帰り道暗くなるよ? また送ることになるの?
「シフォンちゃん心配するな! あくまで仮にだ! 2連勝ですぐ終わりにしてやるよ! それにトルテ、お前も強いからな!」

「はぁ……」
「ん、どうしたトルテ?」
「なんでこうなったんだろうって……。ボク、本当はバトルなんかしたくないんだよ……」
「おいおい、平和主義なのか? もう決まったことなんだから仕方ないだろ?」
「うん……。だけど、バトルとかもうめんどくさくて……。技使うのとかお腹空くしダメージくらうとか痛いしさ、そんなに面白いものとは思えないんだけど……。別にバトルするのは悪いことじゃないよ。バトルだけを生き甲斐にするポケモンだっているからね」
「……。そうだ、お前今まで何回バトルしたんだ? というか最近バトルしたか?」
「10回もしてないかな? 最後にしたのは……、中学2年の頃だったよ。あ、そういえば昨日流星群打ったのあの時以来だ! 今思い出すと本当に上手くできて良かった!」

「なあアーシュ……、俺達が勝たないとマジでやばくないか?」
「そうですね。最悪なことになったら……、別のシフォンさんを助ける方法を考えましょう」
「わ、私……、大丈夫なのでしょうか……。うう……」
 あれ、雰囲気が暗くなった。ボク達勝てるのかなぁ?


「へへへ……、逃げずに来たようだな。お、シフォンちゃんも一緒なのか! 家まで勝利を報告して夜の街に連れて行く手間が省けたってもんだ」
 入り口にはもうライバーン君と、昨日の2匹が来てる。
「なんだ、弱そうな奴らじゃねーか! 俺の力でひと捻りだな! 1勝確定!」
「………油断禁物……………」
「よし、ついて来い。バトルステージはこっちだ!」
 え、ここじゃないの? まだ移動するの? 学校からここまで来るのに結構時間がかかって、お腹空いたんだけど……。


ふう……。もう10分も進んでるのにまだ着かないの? この森周りを見る限り木の実のならない種類の木しかないよ……。道も暗いし……。あ、先が明るい。
「よし、ここだ! ここでバトルを行う!」
 ここは森の中にある開けた草原。まず感じたことはやっぱり木の実が無い! もうこんな森、次から2度と来ないからね!

「ところで、昼言った勝利した方が1つ決めて負けた方が必ず従うルールだが、勿論俺達は勝ったらシフォンちゃんを連れて行くぜ。たっぷり可愛がってやるよ!」
「させるかよ! いいかライバーン、俺達が勝ったらお前らは2度とシフォンちゃんを強引に誘おうとするんじゃねーぞ!! いいな!」
 一気に緊迫した状況に……。ボクこういうの嫌いなんだよね。それより早くバトルして終わらせようよ……。
「さて、お前ら1番手は誰だ? 俺達はノアが一番手だ。ノア、頼んだぜ!」
 ヨノワールが前に出てきた。あのヨノワール、ノアっていうみたい。
「…………相手は……一体誰か…………」
 えーと、見た目はゴーストタイプ特有の不気味さを放ってる。それにあの話し方が一層不気味感を増してるね。強いのか弱いのか分からないな……。
「よし!! 俺がぶっ倒してくる!!」
 あ、レックス君が行くのかな? 絶対勝ってよ!!
「レックス君、頑張ってくださいね! 私のためにも!」
「レックスさん、相手のヨノワールはゴーストタイプです。変幻自在な戦法を得意とするタイプです。力で押すのならくれぐれも注意してください」
「任せろ! アーシュ、一撃でぶっ倒すから忠告なんていらないぜ!! よし、いくぜ!!」
 
レックス君がノアと対峙した。
「さて、ノアって言ったな。お前の犯した罪分かってるだろうな?」
「……ライバーンに…………誘われた……。別に…………襲うとは……考えていない……」
 え、そうなの? じゃあノアは全然悪くないじゃん! 何ライバーン君、他人を巻き込んでるの!?
「まあいい、シフォンちゃんに絡んだのを加担したってことで倒させてもらうぜ!」
「…………負けない……では……開始だ……」
 いよいよバトル開始だ! どうなるんだろう? とりあえずボクはお腹が空いたから持ってきた木の実を食べながら見ようっと! もぐもぐもぐ…… 
「よっしゃあ、まずは俺からだぁ!!」

「くらえ! 俺の必殺! 竜神裂傷牙!!!」
「…………」
竜神裂傷牙!? な、何それ? そんな技あったっけ? すると、レックス君の爪が鋭く光り、ノアに向かって……切り裂いた! あ、あれって……!
「ただの……ドラゴンクローですね」
「うん、そうだねアーシュ君。何かレックス君、竜神れ……えーと、何かすごそうな感じで言ってたけど、威力でも変わるの?」
「いいえ、彼がダサく見えるだけです」
 へー、成程。あ、木の実食べ終わった。うーん、終わるまで持つかな?
「なんだオメーら!! 別にいいだろかっこいいし! それにノアにもダメージを与えただろ!」
 うーん……。普通に見るとそれ程受けてないと思うんだけど……。分かりやすく表現すると、まだ緑ゲージ位?
「へへへ、ノアにはそんなチンケな攻撃は効かないぜ! ヨノワールは防御力が高いからな!」
「……効かない…………」
 ライバーン君達は余裕の表情してる。レックス君負けるんじゃないかな?
「まだだぁ! 連続攻撃で沈めてやるよ!」
 レックス君が素早く動いた! またドラゴンクローをするみたい! ノアは攻撃を受けとめようと守りの態勢に入ってる。
「うおおおおお!! くらえっ!!」
「…………」
「なんて前からただ突っ込むと思ったら大間違いだぜ!!」
 レックス君の攻撃が……ってアレ!? 
「狙うのは……無防備な横だぁ!!」
 ノアの横にレックス君が大きな尻尾をフルスイング!! 前からの攻撃を受けとめようとしたノアは横からの攻撃には無防備だ!! やったぁ! 大きく弾き飛ばしたよ!
「見たか! これが俺のもう一つの必殺、怒羅魂照威流(ドラゴンテール)!!」
「ねぇ、今の何語? 難しすぎて分からなかったけど」
「トルテさんは気にしなくて結構ですよ。あれは自身をさっきのようにカッコつけようと為に起きた痛い当て字ですから」
「何だとレックス! いいじゃねーか、勝ったんだしよ! 見ろ、ノアの奴は戦闘不能だ!」
 どれ? あ、弾き飛ばされたノアはそのまま倒れて動かない。
「今の攻撃は効きましたね。確かに戦闘不能と言えます」
「まずは1勝ですね! レックス君、勝利の瞬間はしっかりと見ましたよ!」
「うおおお!! 見てくれたかシフォンちゃん! 俺ってやっぱカッコいいだろ!!」
 あれ、勝ったのかな? それはそれで嬉しいけど、ライバーン君達は何も言ってこない。もしかしてまだ終わってないんじゃ……。ライバーン君達を見ると……、ちょっとぉ! ニヤニヤしてこっち見てるよ! つまり……。


「レックス君、まだ終わってないよ!」
「何だと? 奴は俺の攻撃で戦闘ふ……。 グッ!? な、何だ!? 急に力がっ……」
 レックス君が急に苦しみだした!? どういう事? 振り返ってノアを見ると……ええ!? 立って、しかも傷が回復してる!!
「……ここからが始まりだ…………」
「ああ、その通りだ。へへへ、残念だったな。お前らを油断させるためにノアはわざと攻撃を受けてたのさ!」
「そういうことだったのですか……。私たちは最初から彼……ノアの策略にかかっていたようです」
「策略!? アーシュ君どういう事なの! 後何でレックス君は何もされてないのにあんなダメージくらってるの!?」
 レックス君は体力が半分位減ってる……かな? 一体何で……
「トルテさん、あれは痛み分けという技です。痛み分けはお互いの体力を均一にする技……つまり体力の少ない場合に使用した時、使用側は回復でき、さらに相手にダメージも与えられるのです。これを活かすためにノアは限界まで耐えたのです。私たちを油断させるとともに技の効果を最大限に発揮できるよう……!」
 そ、そんな……。
「グッ……ふ、ふざけるなぁ! 俺はまだ負けてねぇ、体力が半分位減っただけだ! 回復した所でまたダメージを与えれば……」
「…………こちらの番です…………」
 ノアが何か不気味な炎を放った! レックス君に命中! ……あれ、この雰囲気、なんか危なくない?
「熱う!! くそ、鬼火とかなめてるだろ!」
 そうだ、あれは鬼火……! 確かくらった相手を火傷させる技だっけ。
「まずいです……。ノアは持久戦に持ち込んで倒すようです……!」
 アーシュ君は声を落としてそう言った。
「くそおおおおお!!」
 レックス君のドラゴンクロー!! あ、ダメだ、全然効いてない! 
「クソ……火傷で力が……! くっ、ダメージもきついぜ……」
 レックス君の体力が無くなってきた! ええ、もう負け確定でしょ! 何やってるの!!
「レックス君、何か他に技は!?」
「無理だ! あとハサミギロチンとギガインパクトしか技が……ぐっ……」

 えーと、語るのもめんどくさいし、レックス君の負けが決まってるから省略するね。

「へへへ……まずは軽く1勝! ノア、お疲れ! 次はグラ、さくっと勝って今夜は楽しもうぜ!」
 という訳でノアの勝ち。次は、アーシュ君とグラって呼ばれたリングマだね。
「悪いシフォンちゃん……俺は……弱かったんだな……」
「レックス君、気に留めないでください……。十分頑張りましたよ。次はアーシュ君、絶対勝ってくださいね!」
「分かっています。貴方の純潔は守りますから。ですね、トルテさん」

 はぁ……結局ボクもライバーン君とバトルすることになったよ……。やっぱりめんどくさい……。あー、何か疲れないで楽に倒せる方法無いかなぁ……。あ、そうだ! いいものがあった!!
「ねぇライバーン君、ちょっと取りに行きたいものがあるんだ! 行っていい?」
「何だよ? そう言って逃げる気か?」
「違うよ、すぐに戻るから待っててね!」


 ふー、取りに行くのに時間かかっちゃった! 15分位かかったかな? 多分アーシュ君のバトルも終わってる頃だね。
 ところで、ボク移動中にある事に気付いたんだ。アーシュ君が負けたら、ボクが戦う必要がないってことに。まあもうボクが準備しちゃったから結果はどうなってもいいんだけどね。……え? シフォンさん? 別に負けても彼女死ぬ事はないでしょ?

「おまたせー! アーシュ君どうだった?」
 結果は……ってあれ? アーシュ君もグラ君もバトルした様子がない。
「トルテさんを待ってから始めようという事になりまして。……さて、グラさん、始めましょうか」
「よっしゃぁ! あの犬っころ、ボコボコにしてやらぁ!」
 え……別に待たなくてもよかったのに……。時間かかるとボクまた暴走しちゃうよ? 食べ物もう持ってないから。

 まだ4月だからもう辺りが薄暗くなってきた。早く終わらせてくれないかな?
「うおおおおお、いくぜ!!」
「どうぞ、先行は譲りますよ」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! 気合溜めだああああああああああ!!!」
 す、凄い!! グラ君からものすごい気合が! 炎のようにメラメラと……。ってあれ、熱いんだけど。あれって……。
「うわあああああああああああああああああ!!! 燃えすぎたあああああああああ!!」
…………。えーと、グラ君が勝手に火だるまになってる。
「熱ちぃーーーー!! だ、誰か水ーーーー!!」
「ギャハハハハハ!! アイツ気合見せつけてアーシュをビビらそうとしたが自爆してるぜぇ!! あれほどのバカ、漫画にしかいないと思ってたが、まさかマジでいたとはな!」 
「グラ君がバカで良かった……。これで2連敗は無くなりました……ホッ」
 レックス君笑いすぎだって! ドザッ!! あ、グラ君が燃えながら倒れた。倒木みたい。負けは確定かな? ……って早く火を消さないと!! このままじゃグラ君が炭になっちゃうよ!! 早く水を……ってあれ、行こうとしたらアーシュ君の手が掴んだ。
「アーシュ君、何で止めるの!! グラ君が炭になっちゃうでしょ!!」
「いいえトルテさん、彼は炭になっていません、まだまだ半焼き……といったところでしょうか」
 え? 半焼きってどういうこと? ボクは半焼きでもおいしく頂けるけど、リングマは食べないよ?
「……さてグラさん、芝居はもうお終いにしませんか? ずっとその状態では熱いでしょうし」
 し、芝居? それって……
「ど、どういう事なんだ!?」
 レックス君も笑うのをやめて聞いてきた。すると……
「クク……俺の芝居によく気付いたな」
 ええ!? 火だるま状態のグラ君が起き上がった!? 
「見せてやるぜ!! これが俺の最強と呼ばれし力だぁ!!」
 最強と呼ばれし力!? 一体どんな…………。


……………………。あれ、何も変わらない。
「おーいライバーン、水持ってきてくれ、何とか耐えてるがやっぱ自力で炎消せないわ」
「お前消す方法考えてなかったのかよ!! 何で実行したんだよ!!」
「いや、アニメを真似てみようと思ってな。でもやっぱ無理だから早く水持ってきてくれ」
「このアホがーーーーー!!」
 今のはライバーン君だけじゃなくてレックス君も突っ込みいれてたよ。

 で、グラ君の炎がようやく消されて、バトル再開。なんでこのバトル思ったよりこんな時間かかるの? 
「さて、自分で炎が消せなかったのは痛ましい事故だか……」
「素直に自爆って認めたらどうですか? 私は燃えたところから演技と分かっていましたが、そこまでは予想できていませんでした。トルテさんといい勝負です」
「何だとぉ! あのバカと同じにするな! よし……俺がわざと燃えたわけ、それを教えてやろう!! おらあああああ!!」
 巨大な爪を光らせてグラ君がアーシュ君に突っ込んでいく! 
「切り裂く攻撃くらえやあああああ!!」
 腕を勢いよく振りまわした! 危ない!!
「遅いですね」
 アーシュ君余裕の表情でかわした! 良かったぁ……って何、この凄い音!! 
ええ!? アーシュ君のかわすまでいた所の地面、すごくえぐれてる!! グラ君の切り裂く攻撃でこうなったの!? す、凄いパワー……
「さすが根性、これほどの威力とは思っていませんでした」 
「どうだビビっただろ!! これが俺の特性、根性の力だ!!」
 特性根性? えーと、何だっけ? 
「根性は状態異常で攻撃力が上昇する特性。どんな方法を使ったのかは分かりませんが自ら火傷状態になり、高い攻撃力を手に入れる。リングマのありきたりな戦法ですね」
 あ、そうだった。あれ、でも火傷ってさっきのレックス君みたいに、時間ごとにダメージくらうんじゃ……
「その通り。アーシュって言ったな……なかなか頭がいいな。火傷になるとさっきのオノノクスみたいにダメージが来る、危険な戦法だ。だからこの戦法は短時間で相手を倒す必要がある。……そこで俺はさらに、大ダメージを与える方法を考えたぜ!」
「分かっています、気合だめで技を急所に当てやすくして、さらに技自体急所に当たりやすい切り裂く攻撃を使うことで、ほぼ一撃で相手を倒す……という事ですね」
「なっ……! そこまで分かっただと!? なら仕方ねぇ! 一思いに倒してやるぜ!」
 えーと、今の会話ボクは半分以上分からなかったよ。とりあえずグラ君はさっさとアーシュ君を倒すって事かな? まあいいと思うよ、ボク早く帰りたいし。
「倒せるといいですね。しかしまず、攻撃を当てることが先決ですよ」
「何だと……って、こ、これは!!」

 アーシュ君が言い終えた瞬間たくさん増えた!! えーと、なんていったっけ? か……カレー分身だっけ?
「影分身だと!? 卑怯な手を使いやがって!!」
「卑怯ですか? これは立派な技ですよ。それより私たちを欺こうと芝居をした貴方の方が断然卑怯ですよ」
 あ、そうそう影分身だ。へー、アーシュ君こんな技が使えたんだ! え、ボク? そんな習得するのめんどくさい技使わないよ。早く倒してご飯食べたいから今まで攻撃技しか使ってないんだ!
「くそっ!! しらみつぶしに倒してやる! おらあああああ!!」
 グラ君はたくさんのアーシュ君に次々と切り裂いていく。でもみんなはずれみたい。でも分身を消していくスピードが速い!! あ、もう本体のアーシュ君しかいない!
「ハァ……ハァ……本物は……お前だぁ!!」
 ドガアアアアアア!!!! ああっ! 切り裂く攻撃がクリーンヒットしちゃった!
「アーシュ!!」
「アーシュ君!!」
「よっしゃあ!! これでシフォンちゃんは俺達が頂いたぜ!!」
 アーシュ君がゆっくり倒……ってあれ? アーシュ君何も言わない。しかも表情も変わってない。何より倒れ方が不自然なような……。何かおかしくない? そう思った瞬間……消えた!?
「なっ……どういう事だ!? 確かに手応えが……」
「あれは身代わりですよ。ダメージを受けたら消滅します」
 バッ!! アーシュ君が急に地面から飛び出してグラ君の後ろに! そして……。
「終わりにしましょう……! インファイト!!」
 ドガガガガガッ!! ま、またボクみたいな一撃が……。ノーマルタイプのリングマに効果は抜群だよ!
「ぐ、ぐあああああああああ!!!!」
 大きな音を立ててグラ君は倒れた。今度こそ本当に……。
「ふぅ……。皆さん、私の勝ちですよ」

「いよっしゃああああああああ!! ナイスだアーシュ!! お前メチャクチャ強いじゃねーか!!」
「うわーーーん!! ありがとうアーシュ君!! 私、身代わりが切り裂かれたとき、もう私の純潔が終わったって思って……。ほ、本当に勝って良かった……うう……」
 レックス君が笑いながら、シフォンさんが泣きながら戻ってきたアーシュ君に駆け寄る。うん、いいバトルだったよ! ボクの判断だけど。
「ふふ、貴方たちも私の策略にかかったようですね。彼の動きと切り裂く音に紛れ身代わりを作り、穴を掘って地中からチャンスをうかがう。彼も頭が切れていなくて良かったです。さあシフォンさん、もう泣くのはやめましょう。トルテさんの最後の戦いです」
 あ、いよいよボクだ。準備は出来てるから大丈夫!
「グッ……、すまないライバーン、アーシュは強すぎる……!」
「ああ、後は俺様に任せろ!! トルテ、1勝1敗! 決着をつけようぜ! 最後の戦いだぁ!」
「うん、分かってるよライバーン君!」
 さーて、これで終わり! 早く終わらせて帰ろうっと!

「で、トルテ、お前大丈夫か?」
 レックス君がすごく心配そうに聞いてきた。
「不安です……。せっかくアーシュ君が勝ってくれたのですから……、負けないでください……」
 シフォンさんも。そんなにボクの心配しなくてもいいのに。
「大丈夫だよ! すぐに終わるから! まあボクが負けてもシフォンさんは別に死ぬ事ないからいいでしょ?」
「……トルテ、だんだん関心失せてないか?」
「……ひ、ひどい……」
 ちょっと、シフォンさんまた泣いてるよ。泣き虫なのかなぁ?
「トルテさん、乙女心というものを……といっても分かる訳ありませんよね……」
「乙女心? 新しい和菓子屋の名前? どこにあるの?」
 アーシュ君は大きなため息をついた。和菓子屋じゃなかったんだ。じゃあ洋菓子屋さんかな?

「さて、さっきのアーシュのバトルはとても見事なバトルだった。俺様も奴を見習って正々堂々とバトルする! トルテ、お前も汚い手を使うなよ!」
「うん、分かったよ! 早く始めよう!」
 ボクとライバーン君が向かい合った。うーん、緊張するね!
「頼んだトルテ! アイツに絶対勝ってシフォンちゃんの純潔を守るんだ!」
「勝ってください! お願いします!」
「トルテ君、絶対勝ってください!」
「…………最高潮…………!」
「ライバーン、カッコよく締めろよ!! 絶対負けるんじゃねーぞ!!」
 みんなの声援が草原に響く。こういう展開ってドキドキするよね!
「よし、行くぜトルテ! うおおおおおおお!!」
「いっくよーーーーーー!! くらえーーーっ!!」










トルテはいちげきのたまを使った!
一撃必殺!
ライバーンは倒れた。










 目の前には黒く焼け焦げたライバーン君。気を失ってるみたい。ボクの勝ちだね!
「終わりーーー! じゃあみんな、帰ろっか♪」
……あれ、みんなポカーンってしてる。どうしたの? ボク勝ったよ?


「おいトルテ、今のなんなんだよ……」
「え、今の? 一撃の玉っていう、使えば一撃で……」
「違ああああああああああああああああああう!!! なんでこんなクライマックスな雰囲気で一撃の玉なんか使ったんだぁ!!」
「いや、普通にバトルしたら疲れるし……」
「おいいいいいい!!! そこは普通にバトルしろよ!! つーか何汚い手普通に使ってんだよ!! ライバーンと約束しただろ!!」
「え、ボクが使ったのは手じゃなくて玉だよ? それじゃ、お腹空いたからボク帰るね! あ、シフォンさん、また送っていく?」
「……いや、いいです……。あの、グラ君……、私、純潔は失いたくありませんが貴方達とご一緒したくなりました……。あまりにも……展開が……」
「……ああ、いいぜ……。そうだ、アーシュとそこのオノノクスも来るか? この気分、一緒にカラオケで発散させようぜ……」
「……おう、まずはライバーンを何とかしないとな」
「夜は長くなりそうですね……」
「……予想外すぎる…………展開…………」
 あれ、レックス君達素直に喜ばないの? もういいや! 早く食べたいし家にレッツゴー!!
 今日は疲れたなー! たくさん食べて明日に備えよーっと! まだ学校生活は始まったばかり! これからどんなことになっていくのか楽しみだよ! 



 ……え? 主人公としての威厳? なにそれおいしいの?

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*後書き、コメント欄 [#uaafc5c8]
今更ながら、作者ページの宣言通り1つのページにまとめて大丈夫だったのでしょうか…。不安感が…
part3についての後書きです。
オチについてですが…、あれは…トルテの超天然さがやらかしてしまいました。彼の行動は予測不可能です…。
トルテはpart4以降も色々やらかしていくと思われます…
見ての通りサザンドラ、トルテが色々やらかしています。wiki内で最も危ないサザンドラと思われます(知能的に)
最後のオチはポケダンからとりました。瞬殺されてかわいそうなライバーン…。
トルテはpart4以降も色々やらかしていくと思われます…。

遠慮なくコメントどうぞ。
#pcomment()

IP:114.49.17.246 TIME:"2013-01-05 (土) 08:40:10" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E9%A3%9F%E6%AC%B2%E6%9A%B4%E8%B5%B0%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E6%B4%BB%E3%80%80%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%81%AE%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%88" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"

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