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作・[[スープ]]
神経統一だ…集中するんだ…。目指すは一筋の光、小さな光だ。
どんなに小さな幸せでも今のボクには必要なんだ…。一瞬でも光っていたいんだ…。
一撃で…一発で…決める!
「くらえ!………」
でも、どんな技を出せばいいんだろう…。
あの木のみが食べたいのに。
深い森の中、悲しそうな眼をしたブラッキーが、まだ背の低い木を見上げていた。
彼の名前はソルナ。元、人間に育てられたポケモンだ。二日前、この森に捨てられた。
人間に育てられたポケモンとあって、その辺のポケモンには負けないのだが、彼には弱点があった。
覚えている技が
どくどく あやしいひかり つきのひかり いやなおと
と、相手に直接ダメージを与えるものがない。
つまり「だっぴ」する敵には弱いのと―――
(今日も木の実が食べられなかった…どうしようか…)
―――その技がバトルにしか向いていないのだ。
「はぁ…」
小さく溜息を洩らす。
ボクはもうだめかもしれない。あぁ、このまま干乾びちゃうのかなぁ…。きっと白骨になるんだろうなぁ…。
たまに太い根っこに躓きながら、暗い気分で森をさまようブラッキー。
ホントにお腹すいた…。お腹の虫が鳴きやまないよ。
どーしたらいーものか。
・・・
…………出来れば、やりたくなかったんだけどな…。
「お、おいこら!そこの、は、ハネッコ!」
「へ?は、はい!」
うわぁ…何て緊張するんだ…。やりたくないなぁ、他のポケモンから木のみ奪うなんて…。
「えーっと…ぼ…オレにその木のみをくだ…よこせ!さもないと、えーっと………痛い目見るぞ!」
うぅ…かみかみかもしれない…。何て言えばいいのか分からないよ…。
えっと…ハネッコさん、がくがくしながら木のみ差し出してきたけど…これはとっていいのかな?
ん、でも、悪党って取った後になんか台詞があったような……なかったような…。
あ!そうだ!
「最初からそうすればいいんだ!あばよ!」
といってひたすらBダッシュで逃げる。なんか違ったような気もしたけど…、木のみもらえたからいいや!
一応、差し出した木の実の半分ぐらいしかとってないけど…もうちょっと残しておくべきだったかなぁ。
それより、これからどうしよう…。毎回毎回この取り方してたらいずれこの森から追い出されそうだし、その前にボクより強い奴が来ちゃって負ける気もするなぁ。やっぱり苦労して取るべきかなぁ…。そう考えると、あのハネッコさん可哀想に思えてきた…。なんかおっきな罪、犯した気がするなぁ。どうしよう、何か食べる気が失せちゃった。返しに行こうかな…言いづらいけど、やっぱり返しに行こう!
といってひたすらBダッシュで戻る。なんかこの世界を生きていけるか心配になってきちゃった。
あ、いたいた。ボクがとっちゃって残り少ない木の実を抱えながら…。なんか心痛くなってきた。
「ちょっと待ってください」
「ひ……」
その場に木の実を落として、がたがたと震える。
うわぁ、ボクは何て事したんだろう。おびえてる…。ボクが悪党なんだ。
また、木の実を差し出す気かなぁ…。
「えーっと…ハネッコさん」
「嫌だぞ…」
「え?」
ハネッコの身体が震えている。しかし、その震えは恐怖じゃなかった。決しておびえてたわけじゃなかった。
「木の実は…あげないぞ……僕にだって家族がいるんだ…お母さんは病気だし、お父さんも死んじゃった。でも、それでも僕の家族なんだ!この木の実は、お母さんの命をつなぐ、大事な大事な物なんだ!もう、お前になんか木の実はやんないぞ!」
そう言って堅く目をつぶるハネッコ。
そうか、ボクのほかにもいるんだよね、命をつなぐために食料を取る人たちが。本当に悪い事をしてたんだ。なんか、何にも言えないなぁ…。ボクって弱いなぁ…。
ブラッキーはその場に木の実を置いて、立ち去ることしかできなかった。ハネッコは驚いたように彼の背を見ていたが、やがて彼のおいて行った木の実も、自分の家まで運んで行った。
それで、どうすればいいのだろう。
もう手段としては、野生のポケモンの家にでもお邪魔するか、あるいはトレーナーを倒して…あれ?お金ってもらえるのかな。
やっぱりお邪魔になるしかないかなぁ。さっきのちょっと探しに行ってみようか。
いや、今日は野宿でいいや。
また明日。また明日森を歩いていればいいことがあるかもしれない。もしかしたら木の実だって落ちているかもしれないし。
今日は寝ようか。また明日にしよう。
しかしその夜、ブラッキーは眠れなかった。
とくに心に引っかかるものはなかったが、なぜか眠気がない。夜の森は眠りについていてとても静かだが、それでも眠れる気がしなかった。
そして朝を迎えた。
「おはよう、ボク」
いつもの挨拶。孤独を紛らす物。と言ってもボクは孤独じゃない。だって今日落ちているいい事を考えると心が躍るもの。
誰かと友達になるかもしれない。
何かが落ちているかもしれない。
もしかしたら時渡りでも見れるかも。
昨日何があったかなんて忘れちゃった。今日は希望にあふれてる。明日も明後日も明々後日も。
という事で今日も元気にいくぞ~。ちょっと眠いけど。
「ん、珍しいな、ブラッキーか」
「あ、こんにちは」
ほーら、ね。いい事あった。
木の上にいたライチュウさん。ライチュウさんも珍しい気がしますが…。
「ところでブラッキー、いつこの森に来た?」
「えーっと、一、二週間前くらいです。たぶん」
何かもっと立ってる気もするような、しないような。突然野生に放されるとよく分からないなぁ。
「うむ。気を付けな。最近森が怒ってる気がする。っと、悪い、妻に木の実とってやってる所でな。ではまた」
ああ、その木の実をボクにも分けていただきたかった。が彼はこの森を駆けるのが得意なようで気付いた時には居なかった。
それより、森が怒っている、かぁ。
うん。さっぱり意味が分からない。そんな事は時間がたてば分かるのだ!と旧主人が言っていた。
気がする。
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IP:125.13.222.135 TIME:"2012-07-19 (木) 17:14:42" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E8%BF%B7%E3%81%84%E6%98%9F" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"