作者:[[ぽーにょ]]
前回は[[こちら>看板の無い喫茶店~バクフーンとブースターの場合~]]から。
第二弾です
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さて、今日は誰が来るだろうな・・・
昨日は自分を抑えられないバクフーンと暇が欲しいブースターがここに来たな・・・ん?二人なら2階で寝てるさ、そろそろ起きると思うが・・・
さて、注文は何にするかい?
~~看板の無い喫茶店~~
バシャーモとフローゼルの場合
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バシャーモとムウマージ、エルレイドが店に入って来た。
「ふう、寒い寒い・・・客も多いしなかなか洒落た店じゃないかマスター!」
ムウマージか・・・いらっしゃい、何かいるか?
「そうだな・・・ホットコーヒーを貰おうかな、エスプレッソで。」
今は冬だ、寒いことだし熱めにしておいた・・・火傷するなよ?
「ありがと。」
立ちのぼる湯気を息で吹き飛ばしながらコーヒーを飲むムウマージの隣に、バシャーモが座った。
「ふう、寒い寒い・・・此処は・・・温かそうだな。・・・すまないがマスター、ホットチョコレートを頼む・・・なるべく心が温まるヤツを・・・な」
心が温まる、ね・・・
・・・何かあったのか?まぁ、何も無いならいいが・・・話したければ話してみるといい・・・
バシャーモは差し出されたホットチョコレートのカップを持ち、少し俯いた。
「いや、な・・・最近になってイジメが酷くなってきたんだ・・・家族からのイジメが・・・
縛り付けられたも同然の状態を何年も我慢してきたけど・・・もう・・・っ限界なんだ・・・!」
バシャーモは大粒の涙をぼろぼろと流しながらも、手に取ったホットチョコレートを一気に飲む。
「あちち・・・あったかいじゃないか・・・」
熱くしすぎたかな?まあその笑顔ならいくらか大丈夫だろうな・・・
それにしても・・・家族からのいじめか。
・・・それは辛いな・・・例えばどんな事されてきたんだ?
バシャーモは少しためらったが、意を決して口を開く。
「もう8年前位・・・俺がまだワカシャモだった頃からかな・・・?」
バシャーモの悩み:「家族からの虐待」
「最初は単純に殴ったり蹴ったりするだけの暴力だった・・・
午前3時位に殴り起こして部屋にある物全部破壊する事もざらじゃなかったさ。
けど・・・4年前からはいわゆる金銭的な所に標的が移ったんだ」
カップを握るバシャーモの手が怒りで震える。
「月々に理由も無く給料の30%を払わされ、払わないと干される状況、『働いてないから』という理由で兄や妹に比べ小遣いは半額にさせられ、
いざ働き始めると『働いているから』という理由で働いているはずの兄や妹には無償だった高額の教習代が自腹になったりもした・・・
あとは現在まで共通なのはプライバシーが全く保護されて無い所だな。
身分証は全て親が持ち、勝手に日記や携帯の利用料明細を覗いてはそれについて責め立てる始末・・・
おなじ家族なのに兄や妹とは何が違うんだっ!くそ・・・っ!」
バシャーモは拳を握りしめカウンターを叩こうとしたが、落ち着いたのか力を緩める。
近くのテーブルにいたエルレイドも心配そうな顔でバシャーモの隣に座った。
「話聞いてたけど、うーん酷いなぁ・・・いじめと言うより虐待じゃないか。」
・・・ほんとに酷い話だな、俺でもむかついてくる程だ・・・
ただ、そういうやつは一回痛い目みないと分からないだろうからな・・・
「ふふ・・・でもいいんだ・・・
物事が解決するしない以前に、こうやって溜め込んでた事を他人に話せること自体が
俺にとっては至極有り難い・・・」
涙は流しながらも、バシャーモの笑顔は輝いている。
「マスター、みんな・・・ありがとうな!
そろそろ時間だ・・・また、来てもいいかい?」
もちろん、来てくれていいぞ。
来るものは拒まず、それがこの喫茶だ・・・
「世話になったなマスター・・・みんなもこんな愚痴でも聞いてくれてとても感謝しているぞ・・・
バシャーモは何かを決心した顔で立ち上がる。
「よし、では行ってくるぞ!」
と、走ってドアを駆け抜けて行った・・・
・・・行っちまったか・・・
だが、何かをする気力がわいたのはいいことだ・・・
さて、次はどんな客がくるんだろうな・・・・・・
バタン!
と、大きな音を立ててドアが乱暴に開き、フローゼルがカウンターに突撃する。
「ちくしょー!!あの野郎!
うあああああああぁぁぁぁ!!
う・・・・・・今日はやけ酒だぁぁぁぅぅぅぅぅぅ・・・・・・グス
ま、マスター、酒を・・・・・・キツいのでいいや・・・グス・・・・・・溺れてしまいたい」
まったく・・・ドアはもう少し静かに閉めろ・・・それにしても酷い荒れようだな。・・・何があった?
おっと、ウイスキーだがいいか?・・・バランタインファイネスト、アルコール度数は40くらいだ・・・
ストレートにしておいたぞ
「ううぅ・・・ウイスキー?・・・ありがたい・・・・・・」
フローゼルはグラスを取ると、勢いよく飲む。
「んぐ、んぐ、ぷはっ!
いや、その・・・・・・まあ、フラれたのさ。半年の短い付き合いだったけど。」
フローゼルの悩み:「失恋による傷心」
「いっちまえば、ふつーの喧嘩別れだったんだけどなぁ・・・今まで色んなガールフレンド渡り歩いて来たけれど、今回はやけにこたえる・・・・・・グス
女心って難しいな・・・こっちが何も問題なく普通に付き合ってるつもりでも、あっちはどうのこうのと」
と、コーヒーを飲んでいたムウマージが口を開く。
「隣に居なくなってこたえるのはその人を本当に大切に思えていた証拠。
今から愚痴で純粋な思いを汚すよりも、 綺麗に取っておいて新しい人にその思いを伝えればいいのよ ・・・
空を見ろよ、女なんてあの空の星の数ほどいるぜ?
あなたの最高のパートナーはきっと見つかる、人生前向きが一番だよ?」
・・・言ってくれる・・・やるな、ムウマージ
そうだな・・・大切な人だって自覚があったなら、俺はいい恋をしたんだと思うぞ
そもそも女心なんて複雑なもん、男には絶対分からない難題だ・・・
解こうと思っても解けやしない・・・だが、解くことは出来なくても考えてやることは出来る。
だからこそ、今のお前に必要なのは愚痴じゃないとおもうぞ?
フローゼルはカウンターテーブルに崩れる。
「うん、確かに大切なヒトではあったな・・・・・・今まで付き合ってきた人とは違う何かが、な・・・
今までは何となく手ェ繋いで食事して、遊び回って・・・って付き合いだったのに、今回はただ、側に居るって事だけで嬉しかったし、それで十分だった。」
フローゼルは遠い目で淡々と語る。
グラスの氷が溶けて、カランと透き通った音を立てる。
「彼女も何も要求しなかったしな。朝起きて、バイト先で彼女と会って、二人でまかない飯食って、仕事終わったらさよなら。
たま~に一緒に散歩。そんな循環が二人とも楽しかったのさ。
まぁ、俺の独りよがりかもしれないけどな・・・・・・
前向き・・・・・・にならなきゃってのはわかってるさ。
だけど、これ以上の恋愛が出来るかどうか、フラれた理由も分からない俺には一歩踏み出す自信がないのさ・・・」
すっかり意気消沈してしまったフローゼルはカウンターに突っ伏したままだ。
・・・きっぱり分かれる、また仲直りしてつきあう、それ以外・・・・・・
何にしろ、お前の人生だ。一度しかない、な・・・
考え抜いてお前が一番いいと思った答え、それを選んで実行すればいいだけだ。
・・・後悔しないように・・・何もしないで沈んじまうのはかっこ悪いから・・・な
フローゼルは顔を上げ、グラスを見つめる。
「確かに俺はフローゼルだしな・・・そのくせに沈んじまうなんて情けねえ・・・」
と、おもむろに顔を上げ、立ち上がる。
「うん、俺、もう一回彼女に会いに行ってくる。ダメ元でもいいから、アタックしてみるよ!
今日はつまらない愚痴につきあってくれてありがとな、今度はいいニュースの報告ができるように頑張ってみるさ。」
「がんばれ~!陰ながら応援するよ!」
テーブル席にいるエルレイドもフローゼルを応援する。
「じゃ、ここにお代置いておくな・・・」
と、走ってドアを開け、そのままアクアジェットで駆け抜けて行った・・・
流石フローゼル、行動が速いな・・・
そういえばあの二人はどうしたんだか・・・少し様子見に行って来るか
俺は階段を上がり、一室を覗く。
おそらくブースターのだろう・・・布団が綺麗に畳まれてお礼の書き置きが残された隣で、バクフーンはだらし無くいびきをかく。
俺は苦笑いしながら彼に布団を被せる・・・
店に戻った時には、エルレイドの姿はなく、代金が代わりに置いてあった。
そろそろ閉店の時間だが・・・ムウマージ、丁度一人分空いたところだ。
・・・泊まってくかい?
「んー、んじゃ、お世話になろっかな?」
ムウマージは階段をふよふよと昇って行った。
バシャーモとフローゼル・・・上手くやってくれるといいがな。楽しみにしておくか・・・
【CLOSED】
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