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新世代・闇を浄化する者達2(1st) の変更点


by[[メタル狩り]]
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&color(blue){『ついに'''&ruby(ダークブレイカーズ){闇を浄化する者達};'''が動き始めたようですね…。』};

&color(red){『ツイニ'''ダークブレイカーズ''' ガ、ウゴキダシタヨウダナ…。』};

&color(blue){『奴が目覚める前にどうか…。間に合ってください…。』};

&color(red){『ワタシガメザメルマエニ、ヤミニオチテイルガイイ…。』};

&color(blue){『彼らに英雄達のご加護があらんことを…っ!』};

&color(red){『ヤツラニ、ヤミノセイサイヲッ!!!』};

''子孫達の旅は、始まったばかりだ…。''

#contents

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*~新世代・闇を浄化する者達~ [#w78e7e1a]

**――1章―― 【道を塞がれた少女】 [#a02c7742]

***''&size(18){1.};'' [#tbc2c6d0]


…時は、太陽が天高く上がっている真昼。
強い日差しが、辺りの草原を強く照らし、
鮮やかな緑色を、より一層引き立てている。
ただっぴろく広がる緑色の世界に、とある雑木林から伸びた
一筋の地面。たった一つだけある長い道。
太陽が照り、何もない道に影を2つ作り上げていた。

…雑木林からずっと歩き続けている二人のポケモン。
一方は雄のピカチュウで、もう一方は雄のリオル。
…お分かりかと思う。アルスとレンであった。

「…レン…。」

「…なんですか、アル?」

「…僕達さ…、出発してからどれくらい歩いた…?」

「出発したのは朝ごろでしたから…。
 丸一日は費やしたと思いますよ?」

「…歩いてるから疲れはしないんだけどさ。レン…。
 …一つ言っていい?」

「なんでしょう?」

アルスは絶望してるといわんばかりに顔が暗い。

「……めっっっ…っちゃ腹減った…。」

レンは目をつぶった。この台詞を聞くのは4回目だ。
それにしても、「っ」をいくつ付けたのか…。
まぁ、それほど空腹なのだろう。

「…頼みますから我慢してくださいよ…。」

話は、アルスが1回目にこの台詞を言った頃に&ruby(さかのぼ){ 遡 };る…。

――――アルスがこの台詞を言ったときは、出発した日の昼過ぎだった。

「なぁレン…。僕朝から何も食ってないんだが…。
 腹が減ってきた。…食い物はどうすんの?」

「あああああぁぁぁぁぁっ!!!!」

レンがアルスの台詞を聞いて叫んだ。
彼の頬に、一粒の汗が滴る。

「…どしたレン?」

「…ごめん。アル…。忘れてました…。」

「忘れたって何を…?」

「…食料…。」

…アルスが白目になってる。ショックを受けている様子だ。
レンは申し訳なさそうに、俯いていた。

「…レン、僕の腹は虫が大量にいること…知ってるよね?
 …どうすんのさ。」

「面目ないです…。本当に御免なさい…。」

アルスが言った「僕の腹は虫が大量にいる」というのは、
ある例えである。…そのまんまの意味だったら怖すぎる。

ピチューの頃から食欲旺盛だった彼だが、
進化したせいか、それがさらに旺盛に…というか、
ここまでなると「悪化した」とも言えるかもしれない…。


***''&size(18){2.};'' [#m1064943]

…という訳で、アルスが文句を4回垂れて今に至る。

「…レン、かなり辛くなってきた。いっその事殺してくれ。
 天国で美味しいものを、たらふく食いたい…。」

アルスが危ない台詞を呟いた。
それほど追い詰められているのか。

「…それじゃアル、しばらく寝ててください。
 俺がおぶってますから。空腹のことは忘れてください…。」

レンとアルスは1回立ち止まった。
アルスはレンにおぶってもらう事になった。

「それじゃ遠慮なく…ていうか遠慮すると倒れそうな気がする。」

「しっかりしてくださいよアルっ!街についたらちゃんと食料を
 確保しますからっ!」

レンはおぶった状態でアルスに向かって叫んだ。
彼の天敵は他でもない、「飢え」だ。
空腹感に対して弱すぎる。彼の胃の様子を、
レントゲンで撮って見てみたいものだ。

「えっと…。父さん達の持ち金を持ってきてましたが…。
 大丈夫でしょうか…。…泥棒とかになりませんよね…?」

レンは&ruby(ふところ){ 懐 };から財布を片手で取り出し、
中身を確認した。結構多めに&ruby(ポケ){P};が入っていた。
…レンは勝手に財布を持ってきたことを後ろめていた。
まぁ、親が死んだら普通は親の物は大抵、子にいくものだ。問題はない。

…財布を中身を確認している間、レンはアルスを
片手でおぶってる。「はっけい」の打ち込み練習で、
腕力などは相当に鍛えられていることが分かる。中々すごい腕力だ…。
&br;
&br;
&size(30){(グウウウゥゥゥ~~ッ……!!!)};
&br;
&br;
「ひゃあっ!!??」

突然鳴り響いた轟音に、レンは飛び上がった。
その轟音は、レンの体に直接響いてきた。
…轟音の正体は、アルスの腹の虫であった。

「…ピンポイントで''コレ''ですからね…。
 心臓に悪いですよ…もうっ…。」

レンは涙目になってアルスの方を向いた。
…既にぐっすりと眠っているようである。
街につくまでにずっと眠っていることを祈る。

「はぁ…。アルをこれ以上飢えさせるのも酷ですね…。
 早く街につかないと…っ!」

レンはアルスをおぶって、駆け足で一筋に伸びる道を通り抜けていった…。


***''&size(18){3.};'' [#ocedaa38]

…時は、太陽がほんのり傾き、眩しさがなくなり
辺りをほどよく照らす、午後の昼下がりとなっていた。
――――たくさんの通行人で、にぎわっているとある街。
ここは「サーズンシティ」。真っ白な住宅街であった。

住宅街の対面には出店が立ち並び、
人だかりの街をさらに活気づけていた。
道には白いタイルが敷き詰められており、
ちょこちょこと空けられた場所には、噴水やら花壇やら…。
とても印象の良い街だった。

「つ…つきましたぁ~~~っ!!!」

何人かの通行人が、街の出入り口に目を向ける。
そこには、表情に満面の悦を浮かばせたレンが立っていた。

「ムニャ……。あれ、レン…やっと街についたの…?ファア~…。」

レンの歓声に、背中で寝ていたアルスが目を覚ました。

「そうですよ。やっと街についたんです。えーっと…。
 ここはサーズンシティっていうところらしいですね。」

レンは入り口に立てられた看板に目をやりながら言った。
その時、看板の文字をよけてこそいるが、やたらと描かれ放題に
落書きをされていることに気がついた。
       俺様の未来の縄張り  俺の彼女募集!
             ―――ここは サーズンシティ 
                        しろくてきれいな とかいのまち――
     白すぎて手抜き漫画のようだw    商人の吹き溜まり乙(笑)

「…なんか看板がやたらと荒らされてますね…。こんなに綺麗な街だと
 いうのに…。無法者でもふらついてるんでしょうか?」

「そっか…。とりあえずもう大丈夫だから、一回降ろして…。」

アルスはそんなことは気にしていなかった。今気にしているのは、
空腹を思い出したことだ。
とりあえず、もうレンの後ろで寝るつもりはないようだ。

「そうですか?んじゃとりあえず…。」

レンは背中からアルスを降ろした…途端に、

「あら…あらららら…。」

アルスは千鳥足のまま、家の壁にもたれかかって座り込んでしまった。

「アル大丈夫ですか?…まずは食べ物ですね。すぐに買ってきますから、
 とりあえずアルは、ここで待っていてください。」

レンはそう言って、街の通りを走っていった…。
出店を何軒か回ってくるようだ。アルスはとりあえず待つことにした…。

通り過ぎる何人かのポケモン達が、一人座り込む彼に
不審な目を向けている者がいたが、アルスは気にしなかった。

「あ~…、腹が減りすぎて痛い…。レーン、早くカームバーック…。」

まだレンが飛び出していってから数分しか経っていないのにも関わらず
アルスはそう嘆いていた。だが、空腹でさすがに涙を見せるのには、
抵抗があった。という分けで、泣きたい気持ちを押し殺している。

「なあ兄貴、いつになったらこの街が俺達の物になるんだ?」

「まあそう急かすなって…。何ぃ!?俺の彼女募集スレに
 誰一人書きこんでねぇじゃねえかっ!!」

(…ん?何だ?)

***''&size(18){4.};'' [#za0a44c3]

アルスは突然叫んだポケモンに目をやる…
そこにいたのは、ヘルガーとデルビルの兄弟だった。
どちらも意地の悪そうな目つきをしている…。
うん…。さっきの言葉使いといい、多分悪者と見ていいね…。
なんかさっきレンが言っていた、荒らされた看板を見て
怒っている。「俺の」ってことはコイツらが犯人か…。

「ていうか兄貴、ここに書き込んでるのは兄貴だけだぜ?
 募集とかすんだったら張り紙とかしてみるのはどうよ?」

「あぁなるほど…って、そこまで恥ずかしいことはしたくねえっ!」

いやいや。看板に落書きとか十分恥ずかしいことでしょ。
どういう感覚してんだこのヘルガーは…。

「…ん、兄貴。そこに変なピカチュウが居座ってんぞ?」

(僕のことか…。ていうか「変な」って何だよ。変なって…)

デルビルに変人扱いされてアルスは苛立った。
といっても、その苛立ちは心の中で抑えておく。
空腹感に耐えていて、こんな奴らに関わっている元気なんかない。

「お、こいつか…。けっ。腐った顔してるぜ。
 弱ってるとこを見ると、どっかの死に損ないか何かだな。」

(ムカムカ…。)

アルスの頭に血が上りかけ…ようとしてたが、
平常心をすぐに取り戻した。
頼む。これ以上僕を苛立たせないでくれ。
…空腹なんかじゃなければこんな奴ら瞬殺なんだがな…。

(あぁ~…。レンは今頃どうしてんだ…。食い物が恋しい…。)

一方、レンの方はと言うと―――…。

「…あ、おじさん。このクラボの実とフィラの実とそれから…。」

どっかの出店のカクレオンと話している。
アルスの好きな、辛い木の実を買い占めているとこだった。

「あいよっと…。あーすまんなぁ。辛い木の実はこれしかねぇな。
 …あいにく在庫切れだ。他に欲しけりゃ別の店もあたってくれ。」

カクレオンはすまなそうに言う。
レンは三つ四つ木の実を、袋に包んでもらって受け取った。

「あ、分かりました…。これだけじゃアルは満足しませんね…。
 他のところも探してみますか。」

レンはさらに奥の店へと走っていった…。

―――そんでもって、アルスの方は…。
今まさに、アルスは絶望していた。
彼からしてあまりにも酷い状況であった。
相変わらず空腹で苦しみ、しかもさっきの犬兄弟…。
ヘルガーとデルビルが、アルスより少し離れた街道で
&ruby(たむろ){屯};している。
…さっきから二人ともアルスの方をチラ見しては、
ニヤニヤと嫌味ったらしい笑みを…。

(何この状況…。僕なんか罰当たりな事したかな…。)

アルスはただひたすら、レン(と食い物)の帰りを祈っていた…。

***''&size(18){5.};'' [#e19284c7]

&color(blue){(とあるポケモン視点)};

「ふぅ…。今日はいい天気だから、シーツが早く乾きそう…。」

私は洗濯物を干している途中だった。家から出る洗い物といっても、
いつも私が使っているベッドの布団やシーツ。
あとは手拭とかで使うタオルや、台布巾ぐらい…。あまりない。
まぁ一人暮らしだからだし、洗濯物が少ないのも楽でいいから…。

「えっと…、家事は殆ど終わったかな。次は手紙っと。」

私は自分の部屋に戻った。
居間から1枚の封筒と紙と、一本のペンを持ってきて。
私は四足歩行のポケモンの割には、手先は器用な方だ。
だからペンを使うことくらいは朝飯前♪…自慢にはならないと思うけど。
自慢できるのは、料理ができることかな。四足歩行の手先で
料理できるのは自慢になると思う。自慢する相手なんていないけど…。

「って何、語り口調で変なこと考えてるんだろ私…。」

私は机の前に座って、上に置いた紙に字を書き始めた。
もう分かると思う。私は手紙を書くつもりだ。
私はもう何年くらいかこの街で一人暮らしを続けている。

理由は…。一人暮らしに憧れてたから。小さい頃、こんな
素敵な街で一人暮らしをしてみたかったんだ。
お母さんは、別の遠い街で暮らしている。お父さんも一緒だ。

そして私は、お母さん達に度々元気でやっていることを伝えないといけない。
そのために日課となっているのが、この手紙という訳。

「えーっと、今日は何て書こうかな…。最近デバルさんが
 ピリピリしてる事でも書こうかな…。でも変に心配かけちゃうかも
 知れないし…。ん~。」

私は机に突っ伏した。3日に1回くらいは書くネタに困っちゃう。
こうなると手紙を書くのにえらく時間がかかっちゃうんだよね…。
あ、ちなみに「デバルさん」というのは、近所に住むニドキングのこと。
…最近あの人、何だかトンがっているのよね。見た目じゃなくて機嫌が。
例えばこの前なんか…。

~ 一昨日 ~

「今日は思ったより大量だったな♪
 こんなに沢山の木の実が買えちゃった…♪」

私はこの日、買い物帰りはかなり上機嫌だった。
いつもなら木の実は品切れが多く、買えるのはそれなりに限られていた。
しかし今日は、いつもより多く木の実が残っていた。
という訳で、ちょっと奮発して多めに買ってしまった。
夕飯はちょっと豪華にでもしようかな…なんて考えながら帰ってたら…。

&size(16){(ドンッ!)};

「きゃあっ!」

…私は何かにぶつかって吹っ飛んでしまった。
辺りには袋から零れ落ちた大量の木の実が…。

「あー!木の実が…。ちょっと!何するの…」

私はそこまで言いかけて言葉を止めた。
…目の前には、ものすごい形相して此方を睨むデバルさんが…。

「そっちが余所見してたんだろうがぁ!!
 イチャモンつけてると張り倒すぞごるぁ!!!!」

「す、すみませんでした――っ!!!」

私はすぐさまその場を通り抜け、急いで自宅に帰った。
…散らばった木の実を拾うことも忘れて…。

***''&size(18){6.};'' [#q70c11b6]

「あの時は最悪だった…。何で私が怒られたのだろう…。
 上機嫌だったとはいえ、余所見なんかしてなかったし、
 ぶつかってきたのはあっちじゃないのよ…っ!」

彼女は頬を膨らませながら昨日の被害を思い出していた。

「そういえばあの時の木の実もったいなかったなぁ…。
 一体いくつの木の実を落としたことやら…。」

彼女はそこまで言って、ため息を一つついた。
彼女が次の日、ゲバルとぶつかった現場に行ってみれば、
木の実は一つ残らず綺麗に掃除されていた。
掃除されたというより、誰かにお持ち帰りされたのだと思うが。
ちなみに彼女はその日、自宅に戻った後悔し涙を流したという。

「はぁ。…お腹空いてきちゃったな。そういえばもうお昼か…。」

彼女は時計に目をやった。時刻は既に2時頃となっていた。
昼飯を食うとなると妥当な時間だ。

「…よし。手紙をとりあえず後にして、昼ごはんでも買ってくるか。
 …昨日の悔しさ分も平らげてやるんだからっ!」

彼女はそう意気込んで、財布を取り出して、家の外へと飛び出していった…。

―――……。

「おじさんっ!残ってる木の実たくさんください!」

彼女はカクレオンのおじさんの出店から立ち寄っていた。

「あいよっ。適当に見繕っていいね…。セレナちゃんの買いっぷりには
 嬉しいねぇ。商売繁盛の一環だよ♪」

そういいながらカクレオンのおじさんは木の実を袋に詰めていく。
…セレナと呼ばれた雌のイーブイは、頬を膨らませながら
カクレオンに愚痴を叩く。

「だって!一昨日せっかく大量だった木の実がデバルさんのせいで
 だいなしになっちゃったんですよっ!?悔しい事上ないですよっ!」

カクレオンのおじさんは困ったようにその愚痴を聞いていた。
そして愚痴を聞いた後、相槌に付け加えすまなそうにこう言った。

「ん~。さいきんデバルの旦那、気が荒れてるというか…。
 あ、悪いなセレナちゃん。辛い木の実だけがあいにく切れてて。」

「あ、別にいいですよ。私好き嫌いとかないし…。
 けどなんで辛い木の実だけ?」

セレナは首を傾げながら聞いた。

「いやぁ~さっきリオルが辛い木の実だけ買い占めていってね…。
 けど量が足りないとか行って、またどっか別の店に
 跳んで行っちゃったよ。あの様子だと別の店のも買い占めてるんじゃ?」

「そっかぁ…。んじゃ今日は辛い木の実は買えないかもね。
 …ところで、この辺りにリオルがいる家族なんていました?」

「んー?俺の記憶だと、この街の者じゃないはずだぞ。
 セレナもその様子だと知らんようだし…。多分どっか別のとこからの
 お客様だろう。いやぁ~。この街も有名になったもんだなぁ♪
 商売繁盛が楽しみだぜ!」

なんかカクレオンはそう語りながら悦に入っていた。
有名になったかどうかは知らないが…。どうやらそのリオルは、
別のとこから来た放浪者らしい…。まぁ気にすることではない。

「んじゃ、別のとこの木の実も見てきます。おじさん、ありがと~♪」

セレナは手を振りながら、別の店へと足を運んだ。
…二人のポケモンの厭らしい視線に気づかずに…。

***''&size(18){7.};'' [#va939362]

「あれ…。何だろう…?」

セレナは、あちこちを買い物して回り、たくさんの木の実を
買い集めたところだった。さっきは気づかなかったが…。
セレナが入り口の方の近くまで来た時だった。
何やら入り口のとこに、一人のピカチュウが座り込んでいるのが
目に入ったのだ。見ただけで弱っている様子がよく分かる。

「どうしたのかな、あのピカチュウ。ぐったりしちゃって…。
 …あの人も見かけない人ね。あの人も放浪者かな?」

最近放浪者も増えてるものなんだな。と、セレナは不思議そうに思った。
それにしてもあのピカチュウ。大丈夫なんだろうか。
セレナは心配して駆け寄ろうとした…のだが。

「よお姉ちゃん。ちょっくら暇つぶしに付き合ってくれねえかぁ?」

「っ!?」

突如、見知らぬヘルガーに捕まってしまった。
腰から押さえつけられて身動きが取れない…。

「ちょっと!?いきなり何するのよっ!?」

「だから言っただろ?暇つぶしに付き合ってくれりゃあいいって…。」

「おい兄貴、こいつ兄貴より年下臭いぞ。…兄貴ロリコンだっけ、ぐはっ!?」

デルビルに軽いだましうちが炸裂する。
何てやり取りしてるうちに、セレナは今の現状を把握した。

(こいつら…最近出没してるっていうならず者ね…。)

最近この街で噂にもなっていたのだ。看板を荒らしたり、
街の女性達が馴れ馴れしくナンパされたり…。
今は自分が被害者か…。セレナはそう考えていた。

「ちょっとアンタた…ひゃあっ!?」

抑えられたまま、セレナは下から腹を撫でられた。
薄気味が悪い…。

「へへっ…お前俺好みのスタイルだな。''美味しそうだぜ…。''」

その言葉を聞いて、セレナは青ざめた。

(私を食べようっていうの!?いくらなんでもヤバいって…っ!!)

セレナは「食べる」の意味が二つあることを知っていた。
だが、どちらの「食べる」にしたって、
セレナが危険な状況であることは変わりがなかった。

「だ…誰がアンタみたいな&ruby(けだもの){ 獣 };に付き合うって言うのよ!?」

「別に付き合わなくなっていいんだぜ?力ずくって手もあるんだからな…。」

「嫌ぁっ!!!」

セレナは必死で抵抗を試みる。だが、体格差がありすぎるため、
抜けようにも抜けられなかった。
大きなヘルガーの体が小さなセレナの体をより強く押さえつける…。

「逃がしやしねぇよ…。こんだけの上玉を逃がす奴も珍しい…。」


&size(30){「…おい。」};

突如、ヘルガーの後ろからすっごいドスのかかった声が聞こえてきた。

「ん?おい兄貴、死にぞこないのピカチュウだぜ?」

「あぁん?」

デルビルの知らせでヘルガーが振り向こうとしたが…遅かった。
アルスは既に、上体を反らすモーションに入ってる。

「どぉりゃあ!!!」

&size(30){(ドガッ!)};&size(10){グチャ};

***''&size(18){8.};'' [#qc1d9a96]

今日も綺麗に晴れ渡る青空。午後の昼下がりの最中…。
街の中で、ヘルガーが白目を向き、涎と涙を流しながら倒れていた。

「ずつき」という技こそ覚えていない。単純なヘッドバッド。
アルスはヘルガーの「下半身」に狙ってぶちかました。
きゅうしょにあたった。
ノーマルタイプの技のはずなのだが、効果は抜群にも見えた。
きっとかくとうタイプの技だったんだろう。「ずつき」とは違うから。


「あ、兄貴ぃーっ!?」

デルビルが傍らで崩れ落ちるヘルガーに駆け寄る。

「おい、そこのデルビル。」

「は、はいぃっ!?」

アルスはデルビルの頬を両手でつかみ、ものすごい形相で言った。

「さっきから黙ってみてたけど…もう我慢ならない。
 僕はお前らみたいなマナー無視の奴が嫌いなんだよ…。
 僕の故郷ではお前らみたいな奴はいなかったからね…。
 初めてみたよ。レンが言っていた無法者って、
 あんたらの事を言うんだね…。」

アルスの電気袋から、電気が漏れ出していた。

「ひぃっ!?」

「電撃でも喰らって改心しろーっ!!!!」

街の中に、10まんボルトの電圧と、1匹のポケモンの悲鳴が
響き渡る…。

「ん?」

「おやっ?どうしたんだい?別の木の実にするのかい?」

「あ、いえ、このマトマの実で…。さっき何か聞こえたような…。」

…レンはまだ辛い木の実を買い占めていた。

ざわ…「「お、なんだなんだ?」」ざわ…

3,4人のポケモン達が、先ほどの騒ぎを聞いて駆けつけてきた。
現場には、「タマ」を潰されて失神しているヘルガーと、
感電ショックで失神しているデルビル、二人のポケモンが…。

「す、すごい…。」

現場の隅には、一人のイーブイが唖然としていた。
目の前には、自分を助け出してくれた一人のピカチュウが…。

よく見て気づいたが、イーブイ(セレナ)とピカチュウ(アルス)は
同じ年くらいだった。それでこの電撃力である。驚くのも無理はない。

(…あれ?でもさっきまで弱っていたよね?このピカチュウ…。)

セレナが不思議そうにしているとこに、アルスが近寄ってきた。

「えっと…怪我とかはしてないかな?大丈夫?」

「え、あっ、うん。大丈夫。あの…。」

「ん?」

セレナはさっきまでのピカチュウの様子を聞こうと思ったが、
先に感謝しようと思った。

「あ…ありがとう…。…助かったわ。」

「うん。大丈夫ならいい…ありゃ…あっ…。」

アルスの足が再び千鳥足になる。

「あ、だ、大丈夫!?」

「だ、駄目だ…。腹が減ってたの無視して電気使ったから…。」

(バタリ…)

***''&size(18){9.};'' [#ka0b97bf]

''(お父さん、お母さん、あの世で元気にしていますか?''
 ''僕は女の子に好き勝手する奴らをこらしめました。''
 ''空腹で倒れていたけど、我慢できなかったんだ。''
 ''こんな飢えに弱い息子で御免なさい。もうすぐそっちに逝きます…。)''
 
「………………。」

アルスは、真っ暗な闇の空間を&ruby(さまよ){彷徨};っていた。
周りには、光一つない。完全な暗闇。

「あれ?僕、死んじゃったのかな…。ここって天国?
 にしては暗いし…。どこだろ此処?」

とりあえずアルスは真っ直ぐ進み始めた。といっても、
なんか足元がフワフワしておぼつかない。真っ暗闇の中だから
床があるかどうかさえ分からない。

「ん?何か見えてきたな。」

アルスは真っ暗闇の中で、何かを見つけた…。
山のように積まれた木の実だった。

「おおおぉぉぉ!?木の実だあああぁぁぁ!!!
 誰のだ!?えぇい、有無を聞いてなんかいられない!
 ''いただきます!!!''」

アルスは手始めに手前にあったマトマの実に手をつける。
そして一気にかぶりつこうとほおばったら…。

「きゃあっ!?」

「…あれ?」

アルスはそこで目を覚ました。アルスは、知らないところにいた。
壁は町並みに似て白いが、床や家具は木造で調和の取れた茶色い色彩。
アルスは部屋のシーツのないベッドで横になっていた。
そして目の前には、手(前足)を此方に差し伸べているセレナが…。

「ん?僕は何を食べて…。」

さっきマトマの実を口に入れたはずだったのだが、感触が違う…。
よく見てみたら、それはセレナが差し伸べていた前足だった。
…セレナの前足を口に頬張っていた。

「ちょっと…。何やってるのっ!!!」

セレナはもう片方の前足でアルスの顔面を「はたく」。
イーブイが覚えるはずのない技だが、気にしないでおこう。
はたかれた拍子で、アルスの口からセレナの前足が抜ける。

「ぬぁ!?」

アルスが突然何が起きたか分からず、パニック状態になっていた。
というか、ここはどこだ?

「ここはどこ?僕は誰?…あ、僕の名前はアルスか…。」

「…大丈夫?」

アルスが一度落ちついたところで、セレナが聞いてくる。
…心なしか、セレナの顔がほんのり&color(red){赤い};。
さっきのアルスの行為のせいだろう。しかしアルスは自覚せず、
質問の方に応答した。

「ん?あぁ、大丈夫…ってあれ?さっき僕が助けたはずなのに…。」

アルスが訳の分からないように頭を抱える。

「貴方、私を助けてくれた後、気絶しちゃったのよ?
 さっき街の入り口で弱ってるところ見てたけど…。お腹すいてるの?」

「な、何で分かったの?」

「だって倒れる前に空腹って何か呟いてたし…。
 それに、ここに連れて来る前にすっごいお腹の音が鳴ってたよ?」

「………。」

アルスの顔が赤くなる。現場には公衆の者達が集まっていたのだ。
ということは、みんなに聞かれたはず…。
アルスは顔を俯かせたままセレナの言葉にうなずいた。

「…良かったら、私がご馳走してあげようか?
 助けてくれたお礼もしたいし…。」

***''&size(18){10.};'' [#m35788d1]

「アルーッ!遅くなりましたーっ!!!…って、あれ?
 アルがいませんっ!?まさか空腹の末に蒸発しちゃいました!?」

入り口で何やら&ruby(わめ){喚};いている一人のリオルが。
…レンだった。腕には買い物袋に詰められた沢山の辛い木の実が。

「あれ?何かあったんでしょうか?人が集まってます…。」

入り口の隅から少し離れた街道で、通行人達数名が
固まっていた。何かを取り囲んでるようだが…。

「なんですかなんですか?…アルもいますかね?」

レンは観客達を通り抜け、現地を確認してみた。

「…多分、というより…絶対アルですね。
 電撃の後が残っているのが確かな証拠です。」

真ん中には、タマ潰したグラエナと電気ショックで(以下略)

「でも空腹で動けなかったはずですけど…。あ、おじさん。
 ちょっと聞きたい事が…。っ!!」

レンが声をかけたのは、&ruby(いか){厳};つい形相したニドキング。
最近特にトンがっている事で噂されている、デバルさんだった…。

「…ん?悪いな。話なんかしたくねぇ。他をあたってくれ。」

「悪いな」と言ってるその形相は他からみても、
思いっきり迷惑していそうな顔つきだ。オマケに睨みをきかせていた。
レンはたまったもんじゃない。恐怖で一瞬凍りついていた。

「…相手が悪かった。他の人に聞きますか…。」

一気にテンションが下がりつつも、アルスの探索に向かう…。

「…そういえば名前聞いてなかったな。私はセレナって言うんだ。
 貴方の名前、良かったら教えて?」

「アルスって言うんだ。レンと一緒に旅に出ていて…。」

「へぇ、私と同じ年なのに、旅に出てるんだ…。ロマンチックねぇ…。」

アルスとセレナは、セレナの家で話に花を咲かせていた。
セレナは料理の準備をしている。アルスにご馳走しようとしているらしい。

「あれ?でもそのレンって一緒に居なかったけど…。今どこにいるの?」

アルスの顔に氷結が走ったかのように青ざめる。

「忘れてたーっ!!!!レンのとこ戻らな…はにゃ…。」

立ち上がろうとしたとき、足元がふらついて再びアルスは座り込む。

「空腹で無理に動けないんでしょ?だったら落ち着いてからでも…。」

&size(30){(バタンッ!)「アルーッ!何処ですかーっ!?」};

突如セレナの家の扉が勢いよく開き、家の中に
一人のポケモンの叫び声がこだまする。レンであった。


「ちょ、何事!?…貴方誰ですか!?」

「アルッ!見つけましたよっ!!!辛い木の実持ってきましたよーっ!!!」

「レンっ!?どうやってここに…。あ、木の実だ。」

レンがセレナの許可も取らずに家に飛び込もう…としたが、
手前で踏みとどまった。

「おっと!アルに木の実を届けにきました!
 という訳で、お邪魔してもいいですか!?」

「え、あー…どうぞ。」

セレナは呆気にとられていた。
…どうやらこのリオル…レンは、セレナやアルスよりは少し年上のようだ。

「あ、貴方がアルスの言ってたレン…さんですか?」

年上だろうと分かったために、セレナは敬語へと切り替えた。

「あ、はいっ。アルが空腹になったんでこの街でアルの好きな
 辛い木の実を買い込んでいたんですが、戻ってみたらアルが
 いなくなってたんで、驚きましたよぉー。」

レンは苦笑いしながら、アルスにマトマの実を手渡す。
アルスは無言で、受け取った瞬間即口へと頬張る。

「あっ!ちょっとアルス!私が料理作ってあげるつもりだったのに!!!」

「えっ?セレナさんが?…あぁ。アルへお礼しようとしてたんですか?」

レンの言葉に、セレナは一度言葉を止める。

「えっ…あの、何で私の名前知ってるんですか?」

「此処に来る前に、街で起きた出来事を全部聞いたんですよ。
 セレナさんっていうイーブイが、見知らぬピカチュウに
 絡まれている所を助けられて、その後ピカチュウが気絶して、
 セレナさんがピカチュウを介抱するために家に連れ帰ったって。
 アルだと思って追いかけてきたんですが。正解でしたよ♪」

「な、なるほど…。」

レンは機転がきくようだ。さっきも不法進入をするとこでとどまったし。
中々できる青年である。年下のはずのセレナにも敬語を使ってるし…。

「あ、セレナさん。よかったら俺も料理手伝わせてください♪」

「え、レンさんも料理できるんですか?」

「度々作ったことありますしね。それよりセレナさんが
 アルに作ってくれるんだったら、これも使ってください。」

レンはそういって、残った辛い木の実をセレナに渡した。

(…アルスと食べようと思ってたんだけどな…。)

「あれ?どうかしました?」

「あ、いや、何でも…。それじゃ、レンさんも良かったら
 食べていってください。アルスはもう少し待っててね。」

アルスはさっきから無言で、マトマの実にかじりついている。
料理までは持つことだろう…。
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区切りをつけたいので一ページ目をここで終わらせます。
コメント等がありましたらどうぞ♪m(_ _)m

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