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斧竜に恋い慕う葉緑 の変更点


writer is [[双牙連刃]]

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 何もやる気が起きないからずっと住処にしてる洞窟の中に居た。けど、外の明るさに釣られて散歩でもと歩き出した。
けど、それが幸か不幸か、俺にとっては間違い無く不幸なんだが……また妙なものを見つける事になった。
血や泥で汚れた体、ぐったりとして動かない様子。最初は屍体かとも思ったが、僅かに動いたのを見て立ち去るのを止めた。
そっと口元に手を当てると、微かな吐息が手に当たった。まだ、息がある。
これで俺が肉食のポケモンだったら、喜んで餌にありついてただろう。けど、俺はどうも肉より果物や木の実が好みな為、それはしなかった。
で、これをどうするかと思案した結果、そのまま捨てていくのも見殺しにしたようで後味が悪いって事で、とりあえず住処に持って帰る事にした。別に回復させようとかそういうつもりがあった訳じゃあない。
まだ息がある、それがどうなるかはこいつの生命力次第だ。それを見届けてやるのもいいだろうと思った。その後、息を引き取れば埋葬してやってもいいし、回復すればそれまでだ。何処へなりともまた出て行くだろうさ。
そんな風に考えてた。けどそれは、俺の浅い考えだった。まさか、こんな風になるとは、夢にも思ってなかったもんなぁ……。

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 あれから三年……当時オノンドだった俺もそれなりに成長し進化、今じゃこの辺りでは最強の部類に入るオノノクスだったりする。
他にキバゴ種も居ない事もあり、キバゴやオノンドの頃はそんなに他のポケモンとの関わり合いを持つ事も無かった。どうやら俺は、親に捨てられてこの場所に居たらしい。
そんな天涯孤独の身寄りだった俺に転機が来たのは、三年前のあの日だ。あの日、俺は確かに一つの命を拾った。すぐにでも消えてしまいそうな、風前の灯の命を。
けれど、その命は……。

「お兄ちゃん、どうしたの? 難しい顔して」
「え? あ、いや、なんでもないよ、リーフィア」

 あの時の命、それは一匹のイーブイだった。そう、あの時拾ったイーブイは死なず、今もこうして生きている。それだけじゃなく、進化までして今も俺の住処である洞窟に暮らしていたりする。
洞窟にイーブイを運んでしばらくすると、弱々しくも目を覚ました。そして、目を覚ましたこいつの瞳を、俺は忘れられない。
震えて、寂しくて、今にも壊れてしまいそうな、そんな瞳。その瞳を見てしまった所為で、俺も思いもしてなかった事をしてしまった。
一言で言えば、面倒を見てやっちゃったって事だ。何の事は無い、身寄りが無く、独りでよく洞窟で震えてた自分と重なって見えただけだったのかもしれない。
それからだ、この洞窟には俺とイーブイ、今は進化してリーフィアの二匹で暮らすようになった。
最初こそ俺の事も震えて怯えてたリーフィアだったが、もう三年の付き合いだ。今じゃあさっき俺の事をそう呼んだように、俺の事を兄のように慕ってくれてるようだ。まぁ、聞いた事も無いから、本当にそうなのかは分からないがね。

「ま、ぼんやりしてるのはいつもの事かな」
「お前ねぇ……」
「それよりお腹空いたし、食べ物探しに行かない? もう木の実の備蓄も無いよね?」
「それもそうだなぁ……よし、行くか」

 腰を上げて、日の下に出る。別に日の光が嫌いな訳でも夜行性な訳でもない。単に出不精なだけなんだよな。リーフィアにも言われるんだよ、もっと昼間に色々しろって。
そうは言っても、寝る場所には困らないしそんなにやる事も無いって言うのが現状だ。リーフィアは昼間に散歩して、この辺りのポケモンとも大分友好関係を築いてるようだけどな。
噂では、リーフィアは相当人気があり番いになりたいという輩もかなり居るらしい。が、当事者のリーフィアからは特にそんな話を聞いた事が無い。気になる相手は居ないのかとかは聞いた事あるんだが、居るとは言っても誰かって言うのは口を割らないんだよなぁ。

「まーたぼーっとしてる。ほら、そこのチーゴの実取ってよ」
「お、あぁ、悪い悪い」
「しっかりしてよね。そんなんじゃ、番いが出来た時に相手に愛想尽かされちゃうよ?」
「いまいちピンと来ないんだよなぁそれも。そもそも、俺の事を好きになってくれるような相手って居るのかな?」
「それはお兄ちゃんが散歩とかして他のポケモンと接しないからでしょ? 実際少ないないよ、お兄ちゃんがどんなポケモンなのか聞いてくるの」
「へぇー」

 感心の無さそうな俺の様子を見て、リーフィアは溜め息を吐いた。そんな反応をされたって、本当に興味無いしなぁ。

「もぉ……」
「そう言うリーフィアだって、好きな奴が居るんだろ? 俺の事なんて放っておいて、そいつの所に行っていいんだぞ?」
「ダメだよ。私まで居なくなったら、お兄ちゃん本当に他のポケモンと接点無くなっちゃうじゃない。もっと外に出るようになるか、良い相手見つかるまでは意地でも出て行ってあげたりしないから」
「なんだよそれ……俺の事なんて気にしなければいいだろ?」
「気にするよ! だって、私が居なくなったらお兄ちゃんまた一匹になっちゃうでしょ? そんなの嫌!」

 あらら、むくれちゃった。三年経ってもリーフィアのこういうスイッチはよく分からないんだよなぁ。基本的には素直だし元気なんだけどな。

「分かった、悪かったよ。なるべく良い相手が見つかるよう、少しは努力するよ」
「…………」
「あ、あれ? なんかダメだった?」
「……お兄ちゃんの、バカ」

 いや賢くないのは自分でも認めるけども。プイッとそっぽ向いて歩いていっちゃったよ。どうしたかな?
でも完全に不機嫌な訳ではないらしい。リーフィアは不機嫌になると葉っぱみたいな尻尾がだらんと力無く垂れる。けど、今は尻尾も立ってるから大丈夫だろう。
仕方無い、埋め合わせに後で何か探そうか。リーフィアの好物となると、甘いか辛い木の実なんだよな……探してみるか。

 なんて探したところでそんな簡単に見つかれば苦労はしない。そもそもリーフィアが一緒に居る時に見つけた所でサプライズにはならないからして、埋め合わせの効果としては非常に薄い。
故に、食料集めを終えた後に単独行動をしなければならない訳だ。で、俺が出歩くと……。

「この辺一体を仕切ってるって言うオノノクスはてめぇだな?」
「こういう奴等がちょっかいを出してくるんだよなぁ……やれやれ」

 リーフィアには教えてない秘密。仕切ってるって訳じゃあないけど、俺にはオノノクスとしてのそれなりに優秀な戦闘力がある。それを利用して、面倒ではあるけどおかしな奴の退治をしてた。
初めはリーフィア、もといイーブイの為に始めた事だった。イーブイを拾った後すぐだったかな? イーブイを襲った奴が、イーブイを仕留めに来た。何の事は無い、玩具にされてたイーブイが逃げたのを追ってきた。
それを、俺が返り討ちにしてやった。気に食わなかったし、面倒だったしな。
で、そいつ等がまた丁度この辺で幅を効かせてた悪党共だったらしく、そいつを退治した俺はこの辺りのポケモンに頼りにされる存在になってしまいましたとさ、ってな。
そういう頼みは、必ずリーフィアが寝静まってから受けるようにしてたし、そういう事があったって言うのは口外しないように頼んでる。だから、リーフィアがそっちの事情を知ってるって事は無い筈だ。

「てめぇを倒せば、ここいらの奴は黙るだろ。覚悟しやがれ!」
「面倒だなぁ……俺はやる事があるんだ。さっさと終わらせようぜ」

 そんな絡みもあって、俺は洞窟からなるべく出ない生活をしてたって言うのもある。まぁ、そんな厄介事が無くても、元々そういう生活だったんだけども。
で、とりあえず片付ける事には成功した。グラエナ三匹にハッサムの計四匹、ちょっと噛まれて切られたりしたが、まぁ許容範囲だな。

「はぁ……終わり終わり」
「オノノクスさん! 良かった、大丈夫ですか?」
「ん? あぁ、ミルホッグさん。問題無いですけど、ひょっとしてですか?」
「えぇ、こいつ等、最近になって流れてきたと思ったら、ここいらは俺達の縄張りだって言い始めて暴れて回ってたんです。今晩にでもお願いに、と思ってたんですけどね」
「向こうから絡んでくるって事は、俺もそれだけ有名になっちゃったって事ですかね。メンドくさいなぁ」
「すいません、私達がオノノクスさんを頼ってしまってる所為で……」

 申し訳無さそうにしてるミルホッグさんに気にしないように言って別れた。……気にするなとは言ったけど、あまり俺の身バレが進むと一緒に居るリーフィアに危険が及ぶ可能性もある。それもあるから、良い相手が居たらそいつの所に行ってくれって言ってるんだけどな。
リーフィアの事を思い出してハッとして、別れたばかりのミルホッグさんの所に急いで戻った。木の実や果物探すなら、援軍が居るのは大いに助かるからな。
しばらく探し回ったら、日が傾いて来た。参ったな、ちょっと住処を留守にし過ぎた。リーフィア大丈夫かな?

「ただいまー」
「あ、お兄ちゃんおかえり。なんか遅かったけど、何してたの?」
「機嫌の悪そうな妹への埋め合わせ探し。ほら」
「何それ……あ、リンゴだ。よく見つかったね」

 今日の戦利品は結局これだけだった。まぁ、見つかっただけマシなんだろうけどさ。
手渡してやると、好物だけあって尻尾がフリフリと揺れた。うん、埋め合わせとしては十分だろう。

「あれ? お兄ちゃんそこ、怪我してるよ」
「ん? あ、ホントだ」

 不味ったな。あいつ等と戦りあった時の傷と血、拭い忘れがあったみたいだ。腕とは、また不味い所に残しちゃったな。

「リンゴ取る時に枝にでも引っ掛けたかなぁ?」
「お兄ちゃんの腕がその位で傷付く訳無いでしょ。じっとしてて」
「お、おい、ちょっとリーフィア」

 見つけた傷を、リーフィアは丁寧に舐めてる。まぁ、これをやってもらうと本当に傷の治りが早くはなるんだけどさ。でも血なんて舐めて良い気はしないと思うんだけどな?
でも、リーフィアは俺が傷なんか作ってくるとこれをしてくれる。下手な薬草とかよりも効果がある辺り、リーフィアにはそういう力があるのか? なんて思った事もあるくらいだ。

「これでよし」
「あ、あぁ……ありがとう。でも毎回言うけど、血なんか舐めて汚いだろ? 嫌なら……」
「だーかーらー、嫌ならやらなくていいって、そもそも私からやってるんだから嫌な訳無いでしょ? やらせたくないなら、あんまり怪我して来ないように。分かった?」
「う、うぃっす……」
「それでよし。さ、お兄ちゃんが折角取ってきてくれたリンゴもあるし、お兄ちゃんもお腹空いたでしょ? ご飯にしようよ」
「そう、だな。備蓄も大分出来たし、食べようか」

 日も落ちたし、洞窟の中は暗くなるから明かりの代わりに焚き火を点けた。技として炎を出せる技を覚えてれば楽だったが、生憎俺はそんな技を使えない。
が、火を起こす事は出来る。爪なんかで擦ると火花が出る石を見つけて、それを削り出して使ってたりする。そうやって出した火花で乾かした草なんかを燃やして、それを焚き火用の木に燃え移らせて完成だ。
これは前に人間のトレーナーの所に居た事があるらしいポケモンから教えてもらった。なかなか便利だし、リーフィアも暗いより明るい方が安心するみたいだし。

「うん! 甘くて美味しい!」
「そりゃ良かった。頑張った甲斐もあったよ」

 嬉しそうな笑顔を見れただけ、な。我ながら、ちょっとリーフィアには甘いかなと思っちゃうよ。
まぁ、身寄りが無い俺にとってリーフィアは、血の繋がりこそ無いにしろ、始めて出来た繋がりだからな。ちょっとくらい甘いのも許容範囲だろうさ。
リーフィアの様子を見ながら、適当に積んだ木の実から一つを手に取った。そのまま齧ると、口の中に苦味が広がる……。カゴの実だったのね。

「うぐぅ……」
「へ? お兄ちゃん何か言った? って、なんで苦手なカゴの実なんて食べてるの?」
「適当に取ったらこれだった……うぇ、口の中がおかしな感じだ」
「何やってるのよ。ほら、口直しに一口あげる」
「ありがとリーフィア」

 リンゴの甘みが口の中の調子を戻してくれた。はぁ、木の実は味がどれも独特だし、余所見しながら取るもんじゃ無いな。
けど勿体無いから齧ったカゴの実は全部食べきった。リンゴの味で誤魔化しが効く間にな。

「うぇー、ご馳走様」
「ふふふ、頑張ったねお兄ちゃん。私もご馳走様」
「おう。ん? そのリンゴの種の所はまた挑戦してみるのか?」
「うん。植えて育ってくれれば、探さずに食べられるようになるかもだし」
「それまでに何年掛かると思ってるんだ? 気長な話だぞ?」
「いいでしょ、試してみるのは。それに、前に植えたのは芽が出たんだよ」
「マジで?」
「マジで」

 リーフィアのリンゴ植林計画……地味に発展してたんだな。前々からやってたんだけど、まさか成果があるとは思わなかった。
てくてくと外へ歩いていくリーフィアを洞窟の出口まで追って、そこから様子を見守る。幾ら近くとは言え外はもう夜だし、何かあっても嫌だからな。
前脚で軽く穴を掘って、そこにポトリと食べ終わったリンゴの芯を落とす。そして土を掛けて終わり、と。あれだけなのに本当に芽が出たのか?

「よし、終わり」
「手際良いじゃないか」
「大した事してないしね。本当はここから水とかあげた方がいいかなーとも思うけど、あまり世話をし過ぎると強い木にならないらしいしね」
「へぇ、そうなんだ」
「……言ってからあれだけど、私もそこまで詳しくない。オーロットさんに教わった事だから」
「あぁ、なるほど」

 オーロット、この辺りに暮らしてるポケモンの中でも古くから暮らしてるポケモンで、それに伴って色々知ってる生き字引だ。確か、リーフィアが進化した時に、進化出来る場所があるのを教えてくれたのもオーロットさんだったな。
リーフィアはオーロットさんとも仲が良いらしく、よく何か聞きに行ったり話し相手になってあげてるそうな。この感じだと、リンゴの事も相談してるっぽいかな。

「さてと、やる事も終わったし、そろそろ休もっか」
「だな。焚き火どうする?」
「寒くないし、消しちゃっていいんじゃない?」
「分かった。おいしょ、っと」
「熱くないのは知ってるけど……焚き火消す為の水とか、今度ここに運べるように考えよっか」
「そうか? 尻尾で消した方が早いだろ」
「いやそれ実際、地味に火の粉とか飛んで危ないよ」

 まぁ、焚き火を尻尾で叩いて消してるからな。リーフィアは草タイプだし、火の粉には十分配慮してるつもりだけど……何か考えるか。
それじゃあお休みって事で、リーフィアが目を閉じたのを確認して俺も目を閉じた。暗いと言っても、今日は月明かりが少し入ってるからそれくらいは見えるさ。
明日は、そうだな……今言われたばかりだし、水周りを少しなんとかする為に動くかな。

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 ……オノノクス。私を助けてくれて、今も見守ってくれてる優しいポケモン。出会った頃は無愛想だったけど、それも一緒に暮らしてる内に打ち解けてくれた。
お兄ちゃんって私は呼んでるけど、もちろん血の繋がりなんて無い。襲われて、捕まって、そこから命懸けで逃げ出した私を助けてくれてからの仲。
そして……言った事は当然無いけど、私が好きな……愛してるって言ってもいいくらい大好きなポケモン。進化して体が大きくなってからは、この気持ちも自分の中ではっきりとしてきた。それまでは、本当に兄弟に対しての好きって気持ちくらいだったと思う。
暗がりの中で目を開けると、ぼんやりとオノノクス、お兄ちゃんの姿が見える。……私が寝たフリしてるなんて、ちっとも思ってないんだろうなぁ。
そっと近付いてみると、スースーと穏やかな寝息が聞こえた。今日は木の実探しもしたし、私の為にリンゴを探してくれたりしたから疲れちゃったのかな。

「ごめんねお兄ちゃん。ちょっとだけ、出掛けてきます。ん……」

 卑怯って言われるかもしれないけど、眠ってるお兄ちゃんの口元に唇を重ねた。こうじゃなかったらきっと、お兄ちゃんが慌てて逃げちゃうだろうな。私もドキドキして出来ないと思うし。
少しだけ後ろめたく思いながら、洞窟から出る。月明かりがあるから、足元に気を付けたりしながら歩かなくても大丈夫そう。
なんでこんな夜更けに出掛けるかと言うと、なんて言えばいいのかな? 森の牝ポケモンが集まっての夜の交流会って言うのかな? それが今日あるんだよね。
昼間は皆何かと忙しいから集まったり出来ないし、番いが居るポケモンも居て、自由に動けるのが夜だけってポケモンが居るからって言うのが夜な理由みたい。実はまだ数える程度しか参加した事無いから詳しくは知らなかったり……。
ま、まぁ、大事なのはそこで色々聞けるって事だし、そこまで詳しく知らなくても大丈夫。た、多分……。
あ、見えてきた。今日は結構集まってて、大体30匹くらいかな。ちょっと森が開けてて、日の光とか月明かりが射してる所が集合場所なの。

「こんばんはー」
「あ、リーフィアちゃんこんばんは!」

 最初に挨拶を返してくれたのは、一番仲の良いグラエナさん。この集まりの事を教えてくれたのもグラエナさんだったりする。
そこから私に気付いた皆が次々と挨拶をしてくれた。こういう集まりをしてるからか、この辺りの牝ポケモンは大体仲良しだったりするんだよね。
話をする内容は、最近何があったとかどんなポケモンがこの辺りに暮らし始めたとか、そんな話が殆どかな。たまに番いになった報告とかがあって皆でお祝いしたりもするけど。

「そうだリーフィアちゃん知ってる? 最近、この辺を荒らすポケモンがまた出たんですって。もう、毎回オノノクスさんがやっつけてくれてるのに嫌よねぇ……」
「え、そうなの?」
「うん。ここには来てないけど、私の知り合いの牝の子が襲われて酷い目に遭ったんだよね。皆も気を付けてね」
「あ、それなら多分もう大丈夫よ。うちの旦那が、倒されて逃げていったって言ってたわ」

 へぇ、そんな事起こってたんだ。サーナイトさんの知り合いの子、大丈夫なのかな? で、それもミルホッグさんの言う通りなら、被害はこれ以上出ない、と。……あ、ひょっとしてお兄ちゃんが帰ってきた時のあれって……。

「ミルホッグさん、その危ないポケモンをやっつけたのって、ひょっとしてお兄ちゃん?」
「あらリーフィアちゃん、オノノクスさんから聞いてないの? そう、四対一だったんだけど、オノノクスさんが退治してくれたのよ。退治したって言うより、相手がオノノクスさんを倒そうと襲い掛かったのを返り討ちにしたみたいだけど」
「やっぱり……もぉ、私に危ない事しちゃダメって言うのに、自分は怪我するような事してるんじゃない! もぉ~」

 私がこの集まりに参加するようになった理由って、こういうお兄ちゃんが私に隠してる事を聞けるからって面が大きいの。
始めて聞かされた時は本当に驚かされたもん。たまにお兄ちゃんが怪我して帰ってくる事はあったけど、その理由がそんな相手と戦ってだったなんて本当に何も知らなかったし。

「はぁ……なんでお兄ちゃんもそういうの教えてくれないかなぁ……」
「きっと、リーフィアちゃんに心配させたくないのよ」
「何も聞かされずに怪我して帰って来られたら、それこそ心配ですよ」
「そ、それもそうかもね」

 溜め息を吐く私の事を、皆苦笑いして見てる。お兄ちゃんの気持ちは分からなくは無いけど、本当に怪我して帰って来られたらそっちの方が心配だよ。

「で、でもオノノクスさんってやっぱりカッコイイよね! 誰にも知られない所で皆の事を守ってくれるなんて、憧れちゃうなぁ」
「お兄ちゃん自身は多分面倒臭がってると思いますよ? けど自分がやるしかないから仕方無くやってるくらいの気持ちだろうし」
「それでも、守ってくれてるのに変わりは無いでしょ? 羨ましいなぁリーフィアちゃん、オノノクスさんと一緒に暮らせて」
「う、うん……けどお兄ちゃんには助けて貰ってばかりだし、迷惑に思われたりしてないかって、正直不安だったりするんだよね……」
「それは無いんじゃない? もうずっと一緒に暮らしてるんでしょ? 迷惑だって思ってたらそんなに一緒に暮らしてないだろうし、そもそもリーフィアちゃんくらい可愛い子と一緒で嫌な牡なんて居ないだろうし」
「そう、かな」

 満場一致で頷かれた。なんか牡のポケモンから人気があるのは知ってるけど、私ってそんなに好まれるような感じなのかな?
あまり自分に自信って無いんだよね……お兄ちゃんに助けられた時だって、小さい群れだったけど、皆が逃げる為に私囮として使われてあの怖いポケモン達に捕まったし。
見捨てられて、怖いポケモンに捕まって、面白半分で痛めつけられて……今でもはっきり思い出せるくらい怖くて、悲しくて、辛かった。
逃げ出した後にお兄ちゃんに見つけてもらってなかったら、私はきっと今こうして生きてはいなかったんだと思う。あいつ等に殺されてたか、そうじゃないにしても、きっと弱ってそのまま……。

「ど、どうしたのリーフィアちゃん?」
「え、あ、う、うぅん、なんでもないの。なんでも……」

 ……こうして生きていられてるから、皆から心配してもらえてる。仲良くしてもらえてる。
お兄ちゃんが助けてくれたから、お兄ちゃんと出会えたから、私は生きてる。私の今の命は、お兄ちゃんから貰ったようなもの。
お兄ちゃん……オノノクス……。

「泣きそうになったかと思ったら、今度は放心しちゃってる……本当に大丈夫?」
「へ!? あ、あはは、今日は昼間に食べ物探ししたし、ちょっと疲れちゃってるのかな」
「あ、私見掛けたよ! オノノクスさんと一緒に楽しそうにしてたよね」
「うん、お兄ちゃんと一緒に居られて、毎日楽しいよ」
「あーぁ、やっぱり羨ましいなぁリーフィアちゃん。このままオノノクスさんのお嫁さんになるんだよね?」
「え!? そ、それはまだ……その……お兄ちゃんも私の事妹だって思ってくれてるんだし、私も……だし」

 お兄ちゃんだと思ってる、なんてはっきり言えないよね。だって、本当にお兄ちゃん、オノノクスの事が大好きなんだもん。
タイプも大きさも違うのは分かってる。それでも、この気持ちは止められない。はぁぁ、本当に、お兄ちゃんの番いになれたらもうそれ以外は何も望まないんだけどね。

「ははーん? 口では違うように言ってるけど、本音はもう番いになりたいって思っちゃってるわね? どう思ってるか、力を使わなくても分かっちゃったわ」
「へぁ!? な、なななな!」
「……隠し事出来ないでしょ、リーフィアちゃん」
「あ、あぅぅ……」
「まぁ、ここに集まってる以外の牝はどう思ってるか知らないけど、少なくともここに居る皆はリーフィアちゃん以上にオノノクスさんに似合うポケモンは居ないと思ってるしね。オノノクスさんってちょっとおっとりしてるみたいだし、ここはリーフィアちゃんから押してみるのもありかもよー」

 わ、私から!? だってそんな事してお兄ちゃんに拒絶されたりしたら、それこそ私、それから先生きていける自信無いよ!? そもそもあの洞窟にだって居難くなるし!
あ、なんか私の事なんかそっちのけで、私からお兄ちゃんへのアプローチの仕方で皆が盛り上がり始めてる……。こういう話が好きなのは、私も分からないでもないけど。

「そうだ! そんな時にぴったりの効果がある木の実、最近見つけたの! リーフィアちゃん、試してみない?」
「え、試すって……?」
「うん、ちょっと待ってて! 上手くすれば、明日にでも万事上手くいくから!」

 なんの事か知らないけど、グラエナさんが走っていった。まさか、その木の実を取りにいったの?
うわ、なんか皆も興味津々って感じだし、逃げられる感じじゃないよこれ。ど、どうしよう……。

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 軽く体を動かしながら、朝日を体いっぱいに浴びて体と意識の目を覚まさせる。うーん、今日も良い天気だ。
リーフィアも隣で体を伸ばして、朝日を浴びてる。けどなんか眠そうだな? どうしたんだろ?

「どしたリーフィア? まだ眠いのか?」
「うん、ちょっと……昨日、なんかあの後寝付けなかったんだよね」
「そうだったのか? 焚き火消してからすぐに眠ろうとしてたと思ったけどな」

 俺がそう言ったらリーフィアは何故かハッとしたような顔をして首をブンブンと振ってる。大丈夫かなぁ?

「どうした? 調子悪いならまだ休んでていいんだぞ? 特に急いでやる事なんて無いし」
「いや! ちょ、調子悪い事は無いよ! でもお腹は空いたし、朝ご飯にしようよ!」
「お、おぅ、そうするか」

 勢いで流されたような気がひしひしとするけど、あまり詮索するのもこの感じだと嫌がるだろうし……話したくなったら話すだろうし、とりあえずはリーフィアのタイミングに任せようか。
木の実を数個取って渡すと、頂きますって言った後にすんなりと食べ始めた。うん、調子が悪いならここで食べるのにもおかしな所が見えるんだけど、その様子も無いみたいだな。なら体調は異常無しと見ていいか。

「えと、お兄ちゃんどうかした? 私、何か付いてた?」
「いや、調子悪いの隠してるのかと思ってさ。その分だと本当に大丈夫そうだな」
「もぉ、心配してくれるのは嬉しいけど、私だって調子悪いのなんて隠さないよ。お兄ちゃんこそ、昨日の怪我の所大丈夫?」
「怪我? あぁ、あれの事か。大丈夫、リーフィアがしっかり消毒してくれたしな」

 腕を動かしても、ピリッとも痛みは無い。そもそも大した傷じゃなかったし、放っておいても塞がってたような傷だったしな。
けど、痛みも無いのは間違い無くリーフィアのお陰だな。感謝感謝。

「そっか、良かった。こっちも心配になっちゃうし、あまり怪我するような事しないでよ?」
「あぁ、気を付けるよ。まだ一緒に暮らしてる以上、リーフィアの事を一匹にする訳にもいかないしな」
「わ、私だって一匹で居るくらい出来るもん。そりゃあその……お兄ちゃんが居なくなったら寂しいけど……」
「……ははっ、そうだな。リーフィアが寂しくないように、俺もしっかりここに帰って来れるように気を付けないとな」

 寂しい、か。面と向かって言われたのは始めてかもしれない。そっか、俺はリーフィアにとって、少なくとも居ないと寂しい相手ではあるのか。
俺もきっと、リーフィアが居なくなったら寂しいんだろうな。始めて傍に居てくれて、慕ってくれて、心配してくれて……。
考えないようにしてたけど、そう、だよな。リーフィアが居なくなったら、俺は……寂しいよ。
リーフィアと出会って、一緒に暮らすようになって、それが当たり前になって。俺にとって、何にも代え難い絆。それを俺にくれたのは他でもない、リーフィアだ。
もしリーフィアが好きな相手の所に行くと言ったら、俺は本当に納得、出来るのかな。本当に絆を、リーフィアが傍に居るって言う今を、リーフィアを失う事を……納得出来るのかな。

「……なぁ、リーフィア」
「ん? 何?」
「お前が好きな相手ってさ、どんな感じの奴なんだ? 誰とか、具体的じゃなくてさ」
「え? んー、そうだなぁ……」

 リーフィアは少し考え込んだ。今きっと、そいつの事を思い浮かべてるんだろうな。

「普段はちょっとのんびりしてる感じなんだけど、私に何かあれば凄く真剣になってくれるって言うのかな。本気で私の事を見てくれてるんだなって感じるよ」
「へぇ……」
「それに、私には知られないようにしてるみたいだけど、影で努力……とはちょっと違うかな? 色々頑張ってくれてるんだよね」

 そう話すリーフィアの様子を見てるだけで分かる。本当にそいつの事が好きで、嬉しいんだなって。
そいつの事が、リーフィアもとても大事に思ってる。嬉しそうにしてるリーフィアを見てると、その辺鈍い俺だって分かる。
そうして思い出してる相手は……俺じゃない。ははっ、なんだろうな……なんか、泣きそうだ。

「お兄、ちゃん?」
「え? あ……悪い」

 いけないな。俺がこんなんじゃ、いずれ俺がリーフィアの足枷になる。それだけはやっちゃいけない、リーフィアが自分の生きる場所を見つけたんなら、俺の役目はそこで終わりなんだ。
俺は大切な事をリーフィアから教えてもらった。大切な物を貰った。だから、リーフィアには幸せになって欲しい。
それが、俺の願い。リーフィアにしてやれる、俺の最後の役目だ。

「全く、このぼーっとする癖も直さないとな。さて、リーフィアのノロケも聞けたし、そろそろ俺は昨日言われた通り、水をどうにか出来ないかやってみるかな」
「あ、あの……」

 何かを言おうとしたリーフィアを残して、俺は住処を出た。目からは、一筋だけ涙が零れたのを感じる。……カッコ悪いな、俺……。
そのまま歩いて、近くの川まで来た。飲み水としても、体を洗う場としてもいつも利用してるし、静かで落ち着ける場所でもある。
ここから洞窟へ水を運ぶ……水を容れて運ぶ器と、水を貯めておく何かが必要になる訳だ。って、そんなの簡単に見つかったり作ったり出来ないわな。
川の淵へ近付いて、足を水に浸しながら座り込んだ。さっきのあれがあって、なんだか何もする気になれない。
改めて考えると、俺が今感じてるリーフィアへの気持ちはなんなんだろう? 妹として大切だっていう家族を大切にする思い? 自分と重なって見えたリーフィアへの同情?
……違うな。最初こそリーフィアと自分をダブらせてたのもあるけど、今俺はリーフィアの事をきちんとリーフィアとして見てる。
妹として見てるのも確かだけど、それだけだったらきっと俺は、ここまで思い詰める事は無い。
焦がれる程にリーフィアの事を想って、リーフィアが俺の元から離れていくのを恐れてる。それって……?

「何か、悩み事かね?」
「ん? ……うわぁ!? お、オーロットさん!?」
「おやおや、驚かせてしまったかね。済まなかったよ」

 び、ビックリした……気が付いたら古木が後ろにあったら、と言うか居たら誰だって驚くだろうな。
昨日の寝る前に話題に出てきたオーロットさんだ。そこまで動いてるところを見た事無かったから、動いてる事自体にも驚かされたぞ。

「隣に失礼しても?」
「あ、はい。どうぞ」
「では失礼」

 そう言って、オーロットさんは俺の隣まで来た。老木ポケモンなんて言うだけある通り、貫禄って言うのかな? とにかく存在感があるな。

「ふむ……リーフィア、だね?」
「え?」
「君の悩みの元さ。それも、喧嘩をしたという訳ではない。自分の中でリーフィアがどういう存在なのか、それがはっきりとせずに悩んでいる、というところかな?」

 な、なんでそんなに的確に言い当てられるんだ!? そりゃあ、そう思ってたけども。

「ははは、済まないね。特性として、私は他者の状態を見通せる力を持っていてね。こんな爺さんになると、その特性も相まってそういった事が見えるようになってしまったんだよ。それなりに重宝するが、ね」
「そ、そうなんですか……」
「しかし、具体的にどうかは流石に分からなくてね。良ければだが、この老いぼれに話してみないかい? 力になれるとは、明言出来ないが」

 相談、か。された事はあっても、俺が誰かにするって言うのは今まで無かったな。……リーフィアも世話になってるみたいだし、してみてもいいのかな。

「他の奴が聞いたら下らないって言うくらいの事、なんですけどね……」
「悩みなんて、大概はそんなものだよ。けど、それは悩む当事者にとっては重要な事だ。下らないなんて言うつもりは毛頭無いよ」

 その言葉に少し安心して、俺は……俺の中で燻ってるものを、出来るだけ分かり易いように言葉にした。
リーフィアへのこの気持ちは何なのか、どうすればこのジレンマが終わるのか。俺は……どうすればいいのか。俺自身上手く伝えられてるか分からないけど、それでもありったけ真剣に伝えたつもりだ。
オーロットさんは全てを静かに聞いてくれていた。相槌なんかは無かったけど、横目に見ると目の光は消えていなかったから、聞いてくれてると判断して言葉を続けたんだけどな。

「……リーフィアと別れたくない。けど、リーフィアには本当に幸せになって欲しいんです。どうするのが……一番いいんでしょうね」
「ふぅむ……わしもリーフィアちゃんにはよく話し相手になってもらっているし、幸せになって欲しいと願っているよ。けど、少し見えてこない部分があるんだよ」
「見えてこないところ? それは?」
「わしもリーフィアちゃんに想い慕う相手が居るというのは聞いた事がある。が、それが誰なのかをわしも教えてもらった事が無いんじゃよ」
「オーロットさんにも、ですか?」
「うむ。君に話さん理由はわしも分からないでは無い。が、君以外のポケモンにも話さないという所が、わしにはどうも分からんのだよ。それに、この森でリーフィアちゃんに脈有りだと言うポケモンの話も聞かん。リーフィアちゃんがそこまで慕う相手ならば、噂話の一つも出てきておかしくは無いのに、な」

 言われてみると、確かに変だ。朝の様子からして、相当リーフィアは相手の事を慕ってる。そこまで仲が良くなった相手が居るとして、リーフィアがその相手に会いに行くような素振りを見せた事も無いし、そんなポケモンがリーフィアに会いに来た事も無い。

「……君の悩みの答え、それは……君が思う程に難しい事では無いのかも知れないよ」
「? どういう事ですか?」
「君が本当にリーフィアちゃんの幸せを願うのならば、あの子の想い慕う相手をはっきりとさせる事だよ。そうすれば、答えは自ずと出る。わしが言えるのは、そこまでだね」
「リーフィアが慕う相手を、はっきりさせる?」
「そう、恐れずに聞いてみなさい。他の誰でも無く、君自身の為に」
「あ……えっと、ありがとうございました!」

 助言を残して、オーロットさんは森の中へ戻っていった。……ひょっとして、俺を励ます為に出てきてくれた、のかなぁ?
でも、イマイチはっきりとしない助言だったな? リーフィアが好きな相手をはっきりさせたら答えは出るって、どういう事なんだ?
けど、相談してみたら少し落ち着いたかな。変な感じで出てきたからリーフィアも心配してるかもしれないし、そんなに経ってないけど一度戻ってみるか。
にしても、リーフィアが好きな相手か……落ち着いて考えてみると、本当に誰なんだ? 特徴は聞いたけど、言ってたようなポケモン、この辺に居たかなぁ?
ま、それも聞いてみれば分かる事だな。普段より少し真面目に聞けば、多分答えてくれるよな?

「ただいま。リーフィア、居るか?」
「あ、お兄ちゃん! 良かった、もう帰って来ないかと思った!」

 うぉぉ? 予想外に飛びついて来られたぞ? 俺、そんなに心配させるような感じだったかな?

「ちょっと出掛けてきただけだろ?」
「だって、だってぇ……」

 リーフィア、泣いてる……のか? え、なんで?

「様子が変なのにそのまま行っちゃうし、振り返ったりもしないしぃ……ふぇぇ……」
「バカだなぁ、俺がお前に何も言わずに居なくなる訳無いだろ? そもそも、俺にはここ以外に帰る場所なんて無いんだし」

 俺の首に抱きついたまま、しゃくり上げるように泣くリーフィアの背を、宥めるように撫でる。イーブイの頃ぶりかな、リーフィアがこんなに泣くなんて。
ん、少しづつ落ち着いてきたかな。背中を撫でるのを止めて、抱き起こしてリーフィアを目の前に持ってくる。あーぁ、涙でぐしゃぐしゃだ。
そっと拭ってやると、鼻はまだ鳴らしてるけど落ち着いたみたいだ。けど、一応聞いておくか。

「落ち着いたか?」
「くすん……うん」
「そっか」

 降ろしてやると、目の前にちょこんと座り込んだ。この辺は、イーブイの頃とあまり変わらないみたいだな。

「全く、飛びついてきたりしたら危ないだろ? 俺にはこんな牙があるんだし」
「だって……」

 しょんぼりしてるリーフィアの頭に手を置いて、ゆっくりと撫でてやった。まぁ、朝の俺は確かにどうかしてたし、あまり咎める必要も無いだろ。

「ねぇ、お兄ちゃん。お水の事は今度にして、今日はここでゆっくりしてよ。私も出掛けないから……お願い」
「そうだなぁ。こんな調子のリーフィアを置いていくのも偲びないし、そうするか」
「うん! そうしよ!」

 顔を上げたリーフィアは、満面の笑みだった。うん、これなら多分大丈夫だな。
さて、リーフィアと約束もしちゃったし、今日はもうのんびりするとしようか。さっきの事も聞きたいし。っと言うか、聞くのが目的で帰ってきたんだしな。
で、寛ぐ状態になったんだけど……なんでか寝そべる俺に、リーフィアはぴったりと体を寄せてくる。どうしたんだ?

「どしたのリーフィア? ピタッとくっ付いてるけど」
「えへへ、特になんでもないけど、今日はこうしてたいの。ダメ?」
「いや? 俺は構わないけど?」
「なら決まりね。……何時ぶりだっけ、こうやってお兄ちゃんと一緒にのんびりするの」
「そんなの、毎日夜にはなってるだろ?」
「そうだけど、いつもは昼間に何かしらやって、夜はご飯食べたら寝ちゃうでしょ? こんなにのんびりするのって久々じゃない」

 それもそうかなぁ。まぁ、俺の場合は夜は夜でこの辺を荒らす馬鹿を倒す為に夜襲したりしてるから、夜も一概にのんびりしてるとは言えないけど。
そう思うと、確かに昼間からのんびりするのは相当久々だな。リーフィアをゆっくり構ってやるって言うのも最近は無かったし、たまには好きにさせてやるか。

「でもさ、お兄ちゃんって変わったようで変わってないよねぇ」
「ん? どういう事?」
「進化はして強く大きくなったけど、出会った頃と性格は変わらないよねって事。まぁ、前向きにはなったけど」
「そうでも……いや、そうかも」

 自分でも変わった感じがしない。というか、性格って進化や成長で変わるものだろうか?

「でもそう考えると、リーフィアは大分前向きになったんじゃないか? 出会った頃なんか、相当あれだったろ」
「あれって何よぉ。そりゃあだって、助けてくれたとは言えお兄ちゃんも基本何も言わないし、洞窟からあんまり出ないで暗がりに目だけ光ってたりで怖かったし、とにかく怖いものだらけだったんだもん」
「じゃあ、見た目が怖くなってもリーフィアが怖がらなくなったって言うのは、俺の進歩って事だな」
「そもそもお兄ちゃんって呼ぶくらい好きになってるのに怖がる訳無いでしょ。私にとってはもう唯一の家族なんだし」
「家族かぁ……ふふ、俺に家族って呼べる奴が出来るなんて、キバゴやオノンドの頃の俺なら思いもしなかっただろうな」

 珍しいもんだ。リーフィアから家族って単語が出てくるとは思わなかったぞ。こいつ、そういう話題あんまり好まないんだよな、昔の事思い出すからって。
リーフィアは……自分が居た群れに捨てられたって過去がある。それ即ち、自分の親に当たるポケモンにも見捨てられた事があるって事なんだよな。
だからか、リーフィアは家族って言葉に少し敏感なんだよ。自分が失った、とても大切だったものだろうし、思い出すのはやっぱり辛いんだろうさ。

「そう言う事は、お兄ちゃんも私の事を家族だって思ってくれてるんだよね」
「俺にとっては、始めて出来た妹だぞ? お前が思ってなくたって、俺にとっては換えの効く相手なんて居ないさ」
「も、もぉ……でもやっぱり妹なんだ」
「そりゃあそうだろ? 間違っても姉ではないよな」
「あ、うん、それは自分でも思う」

 だよな。面倒見の良い妹ってのが一番表現としては合ってるんじゃないかな? おぉ、しっくり来る。

「でも、さ。妹以外にはなれない、のかな」
「妹以外って、何があるよ?」

 無論親は無理だろ? そもそも姉が無理なんだし。

「おっ……」
「お?」
「お嫁さん、とか」

 お嫁さん、その一言を聞いて俺の思考は停止した。で、ハッとして首を振ってなんとか思考を再稼働させる。

「お嫁さんってな、そりゃ成れないだろうよ? 意味は分かってるよな?」
「わ、分かってるよそれくらい。その……番いになって、一緒に暮らして、子供を作ったりとか」

 う、うむ、その辺の事は理解はしてるみたいだな。何を急に言い出すのかと思ったぞ。

「ったく、急に言ってくるから驚かされたけど、そういうのは自分の好きな相手となるもんだ。今確かに俺と一緒に暮らしてるけど、リーフィアには好きな相手が居るんだろ? お嫁さんってのは、そいつになってやるもんだ」
「…………」
「そもそもだ、お前の好きな相手って一体誰なんだ? そいつを蔑ろにして、俺の嫁になるなんて言うのはあまり感心出来ないな。そいつの事が好きなら、もっと想ってやるべきだと俺は思うぞ」

 我ながら似合わない真面目な事言ったぞ。でも、これは俺の気持ち抜きで本心だ。こんな気持ちで好きだなんて言ってたら、向こうが本気だったとしたら失礼だろうしな。
リーフィアはまた俯いて何も言わない。けど、ここは甘やかさないできっちりリーフィアの気持ちを聞いておかないとならないだろう。

「……たし、が……」
「ん?」
「私、が……」
「私が?」
「私が好きなのは……オノノクス」
「ほぉ、なんだ俺と同じポケモンじゃないか。あれ? でもこの辺に俺以外でオノノクスなんて居たかな? 何処かからの流れ者か?」
「違うの! 私が好きな、大好きなオノノクスが他に居る訳無いでしょ! 私が好きなのは、お兄ちゃんなの! なんで全然気付いてくれないのよぉ!」

 リーフィアの捲し立てを聞いて俺は固まった。え? リーフィアが好きな相手って……お、俺ぇ!?

「そもそもずっと一緒に居て好きになるなって言うのが無理な話でしょ!? 優しいしカッコイイし! 助けられて守ってもらって、ずっとずっとお兄ちゃんだけを見てきたんだよ!? 他の牡よりもまず自分か!? とかちょっとは思わなかったの!? 私はお兄ちゃんが好き! オノノクスの事が愛してるってはっきり言えるくらい大好きなのー! うー!」
「お、おぉぉ落ち着けリーフィア! 分かった、分かったから!」

 物凄い剣幕でとんでもない反撃を喰らった気分……この勢いで言うのは、間違っても嘘なんかの類ではないわな。
なら、リーフィアは本気で俺の事を? ……そんな風に考えた事、今まで全然無かったな。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……ふぅ……」
「えっと……とりあえず、落ち着いたか?」
「う、うん」
「そ、そっか。いやまぁその、あれだ。あーっと……ほ、本気で、か?」
「あんまり何度も言わせないでよ……結構恥ずかしいんだから。でも、納得してくれないなら納得してくれるまで言うよ。私はお兄ちゃんが、オノノクスの事が大好きです。ううん、愛してます」

 さっきので飛び起きてた俺に、リーフィアがそっと身を預けてくる。本当に、本気なんだな。
俺は、どう答えればいいんだ? リーフィアのこの気持ちを、受け止めていいのか?

「リーフィア……お前、それでいいのか? 俺の事を愛してるって、それでお前は幸せ、なのか?」
「私、今もう幸せだよ。お兄ちゃんと一緒に暮らせて、こうして同じ時間を過ごせるんだもん。これが、これからも続いて欲しい。何年経っても、いつまでも」
「それが、お前の幸せ……なんだな」

 リーフィアは頷いた。だったら、俺は……俺の答えは。

「俺の願いは、お前がこれからも幸せを感じながら生きていってくれる事だ。そして、お前が俺とのこれからを望んでくれるなら、俺はお前を幸せにしてやりたい。いや、幸せにする」
「お兄ちゃん……本当に?」
「あぁ。俺に『家族』を教えてくれたお前と本当に家族になれるなら、俺にとってそれ以上幸せな事は無いさ」

 身を預けてきたリーフィアをそっと抱く。この温かさを俺は、受け入れていいんだよな?
俺とは違う柔らかな体、少しでも爪や牙を強く当てたら間違い無く傷付ける事になる。けど、だからこそ愛おしくて、守りたい。
愛おしい……そうか、そういう事だったんだ。俺は、いや、俺もリーフィアの事が……いつの間にか、好きになってたんだな。

「ははっ、なるほどな」
「え? どうしたの?」
「さっきオーロットさんに会って言われたんだ。リーフィアが好きな相手が分かれば、自然と全部の答えが分かるって」
「オーロットさんに会ったの? でも、答えって?」
「簡単な事さ。俺もリーフィアの事が好きになってたんだって事」

 抱いたリーフィアに視線を合わせると、リーフィアは静かに目を閉じて、何かを待ってるような様子になった。ひょっとして、あれを待ってるのか?
少しだけ首を上げて周りを確認。いや、する必要は住処の中に居る時点で無いのかもしれないけど、他のポケモンが何か用があって覗き込んでる可能性も加味してだな。
確認終了。な、なら、俺も覚悟を決めますか。

「んっ……」
「……っと。してから言うのもあれだけどな? いきなりキスをせがまれるとこっちとしてもなかなか大変だぞ? 覚悟というか、心の準備としてな」
「だってこっちから待たないとお兄ちゃんしてくれそうに無いなーと思ったし。でも、ありがと」

 満足したのか、リーフィアは笑顔になってる。それに釣られて、俺も自然と笑ってた。

「で……お兄ちゃん、この先は?」
「え!? い、いや、それは流石にすぐにとは行かないだろ。そもそもリーフィアと俺とじゃ体のサイズ的に無茶があるし」
「うーん、そうだよねぇ。私もちょっと怖いし」

 ですよね。と言うか、キスの先って事は、牝と牡があれしてこれしてって奴ですよね。俺だって一応知識としては知ってるけども、実際するとなるとどうすればいいものかと戸惑うぞ。
まぁ、ここはお流れになったし、一息つくとしようか。色々目まぐるしかったしな。

「にしても、些細な話から告白なんて流れになるとは思わなかったぞ。慣れない事はするもんじゃないな、肩凝る」
「ひっどいなー、こっちとしては一世一代の勇気出して頑張ったのに。それに、私としてはお兄ちゃんから言ってくれた方が嬉しかったな」
「そんな事言ったって、リーフィアが好きだって言ってくれなかったら俺も自分の気持ちがはっきりしてなかっただろうしなぁ。けど、好きだって言った事に後悔は無いよ」
「うん……私も」

 二匹で笑い合って、ようやく安心した気がする。全く、可愛いもんだよリーフィアは。

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 それからしばらくのんびりと過ごしてた。する事が無ければ基本俺は大体こんなだし、リーフィアが居るから退屈もしない。これでリーフィアが居なかったら退屈を紛らわす為に散歩くらい出てたかもな。

「そろそろお腹空いてきたかなぁ……あ、そうだお兄ちゃん」
「ん? どした?」
「グラエナさんにね、珍しい木の実分けてもらったんだけど食べてみる?」
「グラエナ……? あぁ、そういやここまで遊びに来たグラエナさん居たっけ。へぇ、どんな実だ?」
「これだよ。えっと、ヨプの実とフィラの実って言うんだって」

 ふーん、確かに見た事の無い実ではあるな。香りは……うん、よく分からん。
で、どうやら食べるのに順番があるらしく、ヨプの実を食べた後にフィラの実を食べた方が良いそうな。まぁ、折角だし食べてみるかな。

「今度会ったら礼を言っとかないとな。あれ? でもこれ何時貰ったんだ?」
「え!? あ、えっと、今日お兄ちゃんが出掛けた後に入れ違いでね!?」
「あぁ、そうだったのか。……なんでそんなに驚いてるんだ?」
「べ、別になんでもないよ! うん!」

 因みにリーフィアは嘘の類を吐けない。何故なら、感情に耳と尻尾が機敏に反応するからだ。
今回も例に漏れず耳と尻尾がピーンと立ってるんだが、気付きつつもスルーしてやるのが優しさだって事で見なかった事にする。これ、リーフィア自身自覚してないんだろうなぁ。

「そ、それより食べようよ、ね!?」
「分かった分かった。それじゃ、頂きますっと」

 順番があるらしいからして、とりあえずヨプの実って方を口に入れて、噛む。うぉ、結構辛いなこれ。

「辛いけど、大丈夫かリーフィア?」
「ひぃー……でも食べれない訳じゃないから大丈夫」

 リーフィア、辛いの苦手なのに頑張るな。貰い物とは言え、無理しなくていいのに。
俺は一個目を食べ終わった。んー? なんか、心做しか体がポカポカするような気がする。気のせいか?

「うぅ、味まで聞いておくんだった……」
「大丈夫……じゃ無さそうだな? 水でも飲みに行くか?」
「うぅん、平気。それよりこっちも食べてみてよ。……今度は辛くないといいな……」

 無茶するなぁ。俺なんか、苦手な木の実は他の木の実の味で誤魔化さないと食べれないのに。まぁ、こっちの実まで辛い事は無いだろう。
と思って食べたら辛かったんだが。これリーフィアダメなんじゃ……ん? な、なんだ?
体が……熱い? さっき食べた実の後も確実に体は温かくなったけど、この実を食べたら数段熱く感じるぞ?

「ど、どうなってるんだ? リーフィア、だいじ……うぉ!?」

 何も言わず飛び込んできたリーフィアに俺は押し倒され……なかった。いやまぁ、どんなに突発的に飛び込んできたって、流石に俺がリーフィアに押し倒される事は無いわな。

「お、兄ちゃん……」
「ど、どしたのリーフィア」

 有無を言う前にリーフィアは俺にキスをしてきた。さっきのキスなんて比じゃないくらい、貪るように。

「ぷぁ、は!? ちょ、ちょっと!?」
「体……熱いの……もっと……」

 どうなってるんだ? なんか、リーフィアの目が正気じゃない。酔ってるというか、混乱してるようなそんな感じだ。
なんて思ってる暇も無く、リーフィアの舌が俺の体の上を滑っていく。首筋を通って腹に向かって、ゆっくりと下へ……下へ!?

「ちょ、ちょっと待てリーフィア!」
「やだ……欲しい、お兄ちゃんの……」

 俺のってどういう事ですか!? いや、意味合いとしては俺も何の事か分からなくもないけど、何処でそんなの覚えてきたんだ!?
なんて呑気に考えてる場合じゃない。あの二つの木の実を食べてからの火照った感じも助力して、俺の息子は臨戦状態になりつつある。ま、まさかリーフィアの奴、これを狙ってあの木の実食べさせたのか!?

「だ、ダメだってリーフィひゃ!?」
「おっきくて、アッツい……ん……」

  な、舐めてる!? それは舐める物ではないよリーフィア!? なんて言葉は声にもならず、俺はリーフィアの為すがままなんですけどね!
もう、体がリーフィアからの刺激を求めちゃってて仕方無いんだよ。これ、絶対あの木の実の所為だよなぁ。

「くっ、うぅ、りー、ふぃ、あ」

 何も言わずにリーフィアは俺の完全に露出したあれを舐めてる。くっ、意思はダメだと思っても体が言う事を聞かない。この先を求めてしまってる。

「んぅ、くっ、あぁ!」

 ……とうとう堪えられなくて、堰を切ったように俺のものから白くて粘ついた液体が吐き出された。正直、自分でヌイた事はあるけど、こんな刺激は味わった事無いし、よく辛抱した方だと思うよ? ……多分。
頭の中がぼんやりして、上手く考えがはっきり纏まらない。ただ、俺のが降りかかって汚れた体を、美味そうに舐めてるリーフィアが可愛くて、愛おしくて……欲しい。

「んっ、美味し……あっ、れ? 私、どうして……? なんか、不思議な味……」
「リー……フィア?」
「お兄ちゃん? って、えぇ!? どうなってるのこれ!? それにお兄ちゃんのがそうなってて私の体に付いてるのって……」
「リーフィア、あのさ……先に、謝らせてくれ」
「謝るって? え、な、なんで急に抱っこして……あ」

 どうやらリーフィアも、俺が今どういう状況にあるかを理解してくれたようだ。俺がリーフィアのあそこを自分のに合わせた事で。
もう抑えられない。リーフィアが愛しい、欲しい、繋がりたい。頭の中がそれでいっぱいでおかしくなりそうだ。
それでも理性を振り絞って、急にはしない。痛がって泣くリーフィアなんて見たくはないし。

「あ、あの……ゆっくり優しくしてね? は、始めてだし……」
「ふぅぅ……大丈夫だ。力、抜いてるんだぞ?」
「うん……」

 静かにリーフィアを下げていく。先がリーフィアの中に入っただけで理性を捨てて犯してしまいたくなる。だが待て、それをする訳にはいかない。

「ひぁっ、お、お兄ちゃんの、おっきい」
「その言い方だと、ぐぅっ、他の、牡のを知ってるみたいに聞こえるんだけどな」
「そ、そんな訳無いでしょ!? って、大丈夫? 辛そうだよ?」
「ちょっと、話掛けてもらってないと、ここからどうするか自分でも分からん」

 話しながらもゆっくりとリーフィアの中へ息子が沈んでいくのが感覚で分かる。うぅ、勢い良く押し込んでしまいたい。でも、それをやったらリーフィアの体が壊れる。けどしたい。ダメだ、うぅぅぅ~。
なんてやってると、先が何かに閊えて進まなくなった。確か、処女膜だっけ? 他のポケモンがそんなのの事を話してるのを聞いた事がある。
これを破らないと、当然それ以上は入っていかない。けど体の膜なんて破って平気なのかとも思う。まぁもう正直言って抜きたくないからして、破るしかないんだが。

「うっ、お、お腹コツコツ押されてるの変な感じ」
「ここから先を入れると相当痛い筈なんだが、いいか?」
「ダメ……って言っても、もうお兄ちゃん我慢出来そうに無いんでしょ? 私もお腹の奥までお兄ちゃんのが入ってるの、どんな感じか知りたいもん……いいよ」

 深く呼吸して、リーフィアは力を抜いたみたいだ。なら、俺は力を入れていいんだよな。
ぐっと力を込めて、リーフィアを更に下げる。すると、思ったよりもあっさりと閊えは突破出来た。やっぱり、リーフィアが力抜いてたからかな?

「あっ!? うぅぅ……はっ、はぁっ、はぁ……」
「……痛かったか?」
「お、お腹……裂けたかと思った……」
「よしよし、頑張ったな」

 身を預けるようにしたリーフィアの、背と頭を撫でてやった。本気で痛かったのか、目からはボロボロ涙が溢れてるよ。
が、そんな行動の裏で、リーフィアの中のうねりが俺の奴を包み込んで凄まじく心地良い。入ってるのは、大体七割ってところか。結構入るもんなんだな。

「お腹の中いっぱいに、お兄ちゃんのが入ってる……」
「流石に、全部とは行かなかったけどな」
「こ、こんなに入っちゃうんだ。凄い……」
「入れてから言うのもあれだけど、腹が出っ張るくらいだけど……大丈夫なのか?」
「体に力入らないけど、痛くはないよ。いや、さっきの痛いのでまだジンジンはするけど」
「そっか。いや、当たり前だよな。でも、な? 正直言ってもう我慢出来そうに無いんだわ」

 きょとんとするリーフィアを軽く持ち上げる。するとゆっくりとリーフィアの中に埋没してた俺の息子が姿を現して……。
次の瞬間、またリーフィアの中へと戻っていった。

「ひぁっ!?」
「リーフィアの中、すっげぇ柔らかくて滅茶苦茶気持ち良い……」
「んあぁ! ダメ、だよぉ! 中で、動いただけで! ひぃん!」

 何度もそれを繰り返す。擦れ合うだけで頭の中がビリビリするくらい気持ち良さが伝わってくる。もっと、もっと欲しい。この快感が、リーフィアが。
向き合った体制からリーフィアに回ってもらって、地面に下ろす。俺はそれに覆い被さるような姿勢になった。いちいち持ち上げて降ろしてじゃリーフィアが痛そうかとも思ったし、何よりまどろっこしかった。この体制なら……俺が動けばいいんだし。

「うっ、あ、激、し! おに、ちゃ!」
「これ、締め付け強くなって、すげぇ」

 俺が奥を突く度にリーフィアは声を荒げる。最初は辛そうな声だったけど、だんだん甘いような、牝って感じの声になってきた。それを聞いてるだけで、もうそれ以外の音が聞こえなくなってくような錯覚がする。
リーフィア、可愛いなぁ。こうして抱いてるのが嘘みたいだ。当然、嘘でもなんでもなく俺は今リーフィアと繋がってるんだけど。

「お腹、気持ち良いよぉ。もっと、もっと突いてぇ!」
「はっ、はっ、リーフィア……リーフィア! ぐっ、んん!」

 さっき出したよりも数段強い快感の中で、リーフィアと繋がったまま滾って溢れそうになってたものを吐き出した。

「くぅっ、ん! お腹、いっぱい……!」
「はぁぁぁ……まだ出る……」

 俺のが脈打つ度に、リーフィアの中には俺の精液が吐き出されてる。開放感と虚脱感が一気に来て、意識がふわふわしてる。

「お兄ちゃ、くるし……」
「ふぇ? ……おわぁ!? り、リーフィアごめん!」

 ……盛大にぶちまけたお陰でようやく体の火照りも収まって、思考も冷静になってきた。で、自分が何をやらかしたかもはっきりと分かった。
リーフィアのあそこよりサイズの大きい俺のがみっちりと栓になった状態で、リーフィアの中に全力で精液を注ぎ続けたらどうなるか。まぁ、当然逃げ場の無い精液はリーフィアの中に溜まり続ける訳で、それが限界を超えれば入るところが広がるしか無い訳だ。
その結果、リーフィアの腹は俺の精液だけでタマゴが出来たかのように膨らんでいる。……完全にやり過ぎたな。
慌てて俺が息子を抜いた穴からは、出口を見つけた白い液体達が吹き出すように溢れてくる。……何これ超卑猥。じゃなくて、俺はリーフィアの中にこんなに出したのかよ。精液で水溜まり出来る勢いだぞこれ。

「ぷぁ、はぁ……はぁ……」
「だ、大丈夫か? リーフィア」
「ち、ちょっと、休ませて……無理……」
「お、オッケーどうぞごゆっくり」

 相当疲れたのか、リーフィアは体を横にして息を整えてる。これは不味いぞ、本当にやり過ぎた。
と、とりあえずリーフィアが落ち着いたらまず謝ろう。本気で謝ろう、うん。

----

「リーフィアごめん、本当にごめん!」
「も、もういいったら。正直話に聞いてたより激しくてビックリしたけど、気持ち良かったのも確かだし」
「で、でもその腹だって体洗っても戻らないし……」
「それはまぁ、量が量だし、私が出さないように今ちょっと頑張ってるのもあるし」
「なんで!? しんどいっしょ!?」
「だって、全部お兄ちゃんのなんだもん。これだけ一杯になってたら、きっと私達の子供も出来てくれるんじゃないかなーと思って」

 なんて言いながら、リーフィアは俺の精液でぽっこりと膨らんだお腹を愛しそうに摩ってる。俺もそうなると嬉しくはあるけど、今のリーフィアの体が心配って面もあるんだよなぁ。
あぁ、リーフィアが動けるまで回復した後、当然汚れてた俺達の体を洗う為に川に行って、それから帰ってきて俺がリーフィアに土下座して謝った後って言うのが現状だ。幾ら異常に興奮してたからって、夢中になり過ぎたし。

「にしても驚いたなぁ……グラエナさんから凄い効果あるとは聞いてたけど、お兄ちゃんがあそこまでなるなんて思ってなかった」
「って事は、あの効果はやっぱり?」
「うん、知ってて食べてもらったの。まさか私が混乱して暴走するような事になるとは、流石に聞いてなかったけど」
「落ち着いてから思うに、あれはフィラの実単体の効果が興奮状態で強まったんだろうな。でもまさか、あの二つの木の実でこんな事になるとはなぁ……」

 木の実の食べ合わせとか、今度からもっと気を付けて食べよう。今日みたいな事がまた起こったら大変だ。……主に後始末が。
現状俺達は住処の洞窟に入っていない。原因は、営んだ所為で洞窟が淫臭漂う魔窟に変貌してるからなんだが。自分達の所為で起こってるんだから自業自得なんだけど、中に居るとまーたスイッチが徐々に入ってきちゃいそうになるんだよな。

「全く……頼むから今度はこんな驚かすやり方は遠慮してくれよ? ブレーキが効かなくなってしんどい思いするのはリーフィアなんだから」
「はぁい。けど、これが無かったら多分、お兄ちゃん私の事抱いてくれなかったでしょ?」
「そ、そりゃあまぁ……わ、悪かったな、甲斐性なしで」
「ふふっ、拗ねないでよ。私ももうこんな無茶な事はしないから……今度は木の実の効果無しで、私の事を愛してくれる?」
「……とりあえず、そのお腹が落ち着いたら、な」

 寄り添ってきたリーフィアをそっと抱き上げて、優しく口付けをする。急に関係が変わる訳じゃないけど、確かに俺の中にも、リーフィアをこれからの伴侶として守っていくって気持ちが芽生えたのをしっかりと感じる。
もし、あの時イーブイだったリーフィアを見捨ててたら、俺はきっと今も一匹、洞窟の奥で誰とも関わらないように生きて、そのまま生涯を終えてた……かもしれないな。
けど、今はリーフィアが居る。居てくれる。俺の生き方に、命に、独りの冷たさに温もりをくれた、大切な存在。

「リーフィア……愛してる。これからもずっと、ずーっとお前の事を守ってみせる。愛してみせる」
「私も、お兄ちゃ……オノノクスの事、愛してる。ま、まぁ、呼び方とかはすぐには変えれないかもだけど、ずっと傍に居るよ。これからもずっと、ずーっと!」
「ぷっ、あははは。呼び方は無理に変えなくてもいいんじゃないか? 俺だって呼ばれ慣れてるしさ」
「も、もぉー、笑う事無いでしょ。……まぁでも、そうかもね。なら、これからも一緒に居てね、お兄ちゃん」
「あぁ、約束だ」

 澄み渡る青空を見上げて、リーフィアと一緒に笑い合う。なんでだろうな、それだけでいつもより空がずっと青くて、広く高く広がって見える。
これからも、この空の下で生きていこう。独りだった俺に温もりと光をくれた……リーフィアと、一緒に!

 ……因みにこれは後日談だが、どうも俺とリーフィアが睦み合ってる際に、木の実をリーフィアに渡したグラエナさんが俺達の様子を見に来てばっちりと俺とリーフィアの行為を目撃してしまい、瞬く間に森中に俺達が番いになったという情報が広まる事となった。
と同時にあの二つの木の実の効果も口頭で伝播していき、しばらくは森中が春真っ盛りな状態になったりならなかったり……。
しかも何故か俺が巨根の絶倫だと言う訳の分からない尾鰭が付いて、しかも寂しがってる牝を慰めてくれるという訳の分からない情報まで広まってしまい、あの二つの木の実を食べた牝が時折俺達の洞窟に現れるようになったりならなかったり……(リーフィアが全力でお帰り願ってる為俺は抱いてません)
こ、これって俺達が悪いのか? 多分違うよな? な!?
と、とにかく今日も森を守りつつ、リーフィアと楽しく暮らしております。……マジで勘違いした牝の方だけでも、なんとかしないとなぁ……。

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~後書き~
 ……作者、久々のR-18作品でございました。いやぁ~……官能小説ってこんなに難しかったっけ? と思うくらい難しかったですね。官能部分少ないけど!
今回何故チョイスしたのがリーフィアとオノノクスだったかと言うと、単に私の作品にリーフィア居ないなーと思ったからだったりします。後登場しないのは、ブラッキー?
まぁ、何故登場して来なかったかと言うと、後々使いたいなーと思ったままその後々が来ていないだけなのですがね! 鈍筆で申し訳無い……orz
とにかく、まだまだヒヨっ子物書きではございますが、これからも頑張って書いていきたいと思います! 次は何が先に出来るかなぁ……。

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