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想いの先 の変更点


リーフィア×ブースターの近親相姦モノです。苦手な方はお控えください。
だらだらと文が続きますが、それでもご容赦くださる方は、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
独自の設定などについてはなんとでも言い訳しますのでお許しを。


#hr

想いの先

作 [[ソライロ]]


熱狂する大勢のポケモン。
その全ての視線が注がれる中、パフォーマーと呼ばれる二匹のポケモンが、激しく、美しく、華麗に戦っている。
平和なポケモンたちの世界で、バトルと言うものは廃れてしまったが、本能的なものでこうした戦いと言う物を欲したのか、いつしかコンテストと呼ばれる舞台で、己の技を磨きあげて魅せる戦いに特化したポケモンが戦うという娯楽が発展していた。

「決まったー! ジュナイパー戦闘不能です! ここでアクティング得点を見てみましょう! 審査員5匹と、観客の中から無作為に選ばれた5匹の審査点の合計を表示します! それでは、まずはジュナイパーから!」

そう司会のペラップが声高らかに宣言すると、会場の大きな電光表示板に72と表示される。

「おおっと、72点だー! さすがはハイレベルなコンボを見せていただけはあります。なかなかの高得点、対してブースターはどうだー!?」

同じ表示板に、今度は77と表示される。

「77点! これに戦闘勝利ボーナスの10点が加算され、87点となります! ということで、勝者はブースター! おめでとうー!」

途中からもはや叫んでいるハイテンションな司会に負けず、会場の観客から大歓声と拍手が巻き起こる。
そんな中、勝者と言われたブースターは、笑顔で一礼した後、片方の入退場口へと消えていった。



今日の試合はどうだっただろうな。
夕食の準備をしながら、妹の帰りを待つ。
きっと疲れているだろうし、最近は少し寒くなってきている。
そう思って、今日はシチューにしてみた。
シキジカ予報でも、冬が近づいてきたと言っていたし、ちょうどいい季節でもあるだろう。

「ただいまー」

ちょうど、もうすぐ出来上がるという頃に、クタクタと言う顔の妹が帰ってきた。

「お帰り、どうだった」

「勝った、三連勝。次の試合きついんだろうな。出演料と賞金はいいけども」

「点数は?」

「87と72。私がボーナス」

「じゃあ、得点は割と僅差だったんだな」

妹は黙って頷くと、テーブルにつく。
出来上がったばかりのシチューを器に盛りつけ、妹の目の前に置く。

「いただきます」

ちゃんとそう言ってから妹は食べ始めた。
今度は自分用に注ぎ、妹の座っている向かい側に座って、食前の挨拶をしてから食べ始める。

「おにいちゃん、明日はあるの」

「二回出演するかな」

「ふーん」

「どうした」

「別に。さっさとAに来なよ」

史上最年少にしてAクラスに上り詰めて、第一線で活躍し、なかなかの人気を獲得しているような妹と一緒にしないでほしいものだ。
自分よりもう3歳くらい上でAクラスに上がるのが普通だというのに。

「まあ、時が来れば上がれるよ」

「ふーん」

興味ないといった風に、妹は食べながらテレビをつける。
ちょうど、バラエティー番組をしていたみたいで、良くテレビで見るポケモンが映っていた。

「ごちそうさま、後で片付けるから、食べ終わったら置いてて」

「んー」

妹の生返事はいつもの事なので、自分の食器をシンクに置いてから、風呂の掃除へ向かった。
いつもはシャワーとかで済ませる事が多いが、今日は結構疲れているだろうから、
湯船に湯を張っておいた方がいいだろう、そう考えての事だ。
丁寧に浴槽を磨き、その後に蛇口をひねり、お湯を入れる。
少し熱めのお湯がだんだんとたまっていくのを、しばらく眺め、半分くらいたまったところで蛇口を閉めた。

「ありがと、お風呂してくれて」

ちょうど、たまった具合を見越してか、妹が風呂場に入ってきた。

「せめて僕が出てからにしろよ」

「別にいいじゃない、ほら、出て」

はいはいと、つぶやきながらさっさと出る。
本当に、最近はかわいげと言うものが無いが、それでも大切な妹だ。
少し態度が冷たくても、こうして、家事とかを負担する事を嫌と思ったりはしない。

「あ、おにいちゃん、明日はさ、Aクラスのコと、町へ行くのだけど、おにいちゃんのコンテスト見に行っていいかな」

「あー、うん。でもなんでだ」

「未熟なおにいちゃんが成長してるかの確認」

「未熟は酷いな。まあ、ブースターの好きにしたらいいよ」

そう言い、食器を片付けに台所へと戻った。
明日は、妹が来るのか。
そう考えると、少しは魅せる戦いを意識しておくべきか。
いつもは考えていないのかと言うと、そう言うわけではないが、
妹に見られるのだと思うと、少し意識してしまうところがある。
食器を洗い終わり、そろそろ妹が風呂から上がる頃だと思うので、自分も風呂に入るために浴室へ向かった。
途中で、タオルを準備していなかった事を思い出し、タオルを二枚持って、脱衣所に入った。

「あ、ごめん。ちょうど、どうしようかと思ってたの」

「ごめん、僕も忘れてたから。じゃ、入らせてもらうね」

妹にタオルを一枚渡し、自分は風呂場に入る。
湯を頭からかぶり、ボディソープで全身を洗う。
リーフィアのトレードマークであり、武器でもある頭や手の葉っぱは、特に丁寧に洗い、
全身を洗い終わったところで、お湯で洗い流す。
その後、並んでいるボトルの中から、草タイプ専用の手入れオイルを取り、
葉っぱの手入れをする。
こういうところから、パフォーマーは気を使っていなくてはいけない。
もっとも、自分の場合はこの一つくらいのものだが、妹は首や尻尾、基本的な体、頭のもふ毛、なんかといろいろ使い分けているみたいで、ほかに並んでいるボトル類は全て妹の物だ。

「ふー……」

湯船につかる。
自分も今日は出演があって疲れていたので、お湯をためていて正解だった。
それでも、一回の出演の疲労度は、Aクラスの妹はとんでもないのだろうな。
今日はいつもより冷たい気がしたから、相手がなかなかの実力者だったのだろう。
お湯をすくい、それで顔を洗う。
息を深く吐きながら、浴槽にもたれかかるように力を抜く。
水面から立ち上る湯気に、妹の甘いような匂いがかすかに残っていた。
おそらく、並んでいるボトルのどれかの匂いなんだろうが、
先ほどのような風呂上がりのふわっふわな時に、特に強く香る。

「はあ……なんなんだろうな」

先ほどの妹を思い起こしていると、自分の身体が少し反応してしまう。
別に、妹の事は家族としか見ていないはずだが、まあ妹も年頃のメスになっているわけだし、少々は仕方ないのかもしれない。
ただ、やっぱりこういうのはまずいよな。
そう思いながら、十分に温まったので風呂から上がった。
用意しておいたタオルで体を拭く。
水気をしっかりと取ってから、自分の部屋へと戻った。

「んーと、明日の衣装はこれでいいかな」

わりと使い慣れている衣装を引っ張り出し、準備しておいてから寝床に入る。
そう言えば、明後日は大切な日だった。
前から準備とかはしていたし、明後日の帰りに、頼んだものは取りに行けばいい。
明日は特に慌てることはないし、出演以外に予定はないはず。

「よし、寝るとするか」

大きくあくびをし、そのまま目を閉じて眠りについた。



Next day - Sister

今日は出演が無いから、Aクラスで仲のいい子と街へ出かけている。
おにいちゃんは出演だって言ってたから、後で見に行くって伝えているけど、
はじめはいろんなお店を回って、明日の衣装を買おうと思ってる。

「あ、ブースター、待った?」

「ううんー、今の電車で来た」

「あれ、じゃあ同じのに乗ってたのかな」

「そうかもね。それじゃあ、行こっか」

ちょうど待ち合わせていたテールナーが来たので、一緒に駅地下に降りてウインドウショッピングを始める事にした。
よくここへは来るのだけど、季節の変わり目と言う事もあって、商品が結構入れ替わったりしていて、また新鮮な目で見る事ができる。

「あ、あの服良いなあ、ブースターは、どんなの探してるの?」

「うーんと……あんまり派手さとかはいらないし。なんか、原点回帰みたいなのがいいかなって。初めて出演した時みたいな……」

そう言って、あの日の事を思い出す。
初めて舞台に立った日、私はおにいちゃんが選んでくれた、白いワンピースのような衣装を着ていた。体毛の色に合わせた帯をかけて、シンプルにまとめられていた衣装だった。
そして、初出演、初勝利し、私のパフォーマーの道が始まった。

「明日、誕生日だっけ。それのエキシビションで着るんだよね」

「うん、そのためだけに着るの」

「エキシビションに命でもかけてるの……」

まあ、間違ってはいないかも。
全てをかけるに値する舞台になるはずだから。
そう思いながら、頭に描いた姿に一番近くなるような服を探していく。
ここでぴったりとイメージに合うものが選べなきゃ、半分くらい失敗と言っても過言ではないかもしれない。
衣装とわざの相乗効果は思いのほか強いものだから、パフォーマー自身の衣装選びのセンスはとても大切だ。

「それにしてもブースターさ、明日の誕生日で、もう適齢ラインなんだね」

「うん、そうなんだよ。なんて言うか、待ちに待ったって感じだよ」

適齢ライン、それを聞くと明日が待ち遠しくなる。
法律で決められた、子供の終わり。
成長しきって、その身の振り方を、自由に決められるようになるという、特別な日が明日だ。

「やっぱり、その、結婚とか、そういうのが待ち遠しかったりするの?」

結婚も、認められるようになる事の一つ。
しかしどうして、このテールナーは的確に私の秘めている思いを突いてくるのだろうか。

「まあね、ずっと想っているポケモンがいるの」

「へえー、どんなポケなの?」

「優しくて……私のことずっと見守ってくれてて、支えてくれてて、自分のことは二の次……だから少し、申し訳なく思っちゃったりするんだけど……ずっと好きなの。そのポケは多分知らないんだろうけどね」

「へえ、最初からのファンの誰かとか……?」

「まあ、そんなところ」

笑顔をテールナーに返し、また服探しの続きを始める。
テールナーの方も、一緒に探してくれているみたいで、伝えたイメージに似た感じの服を時折見せてくれるが、どれもいまいちピンとこない。

「なかなかこだわるね、ブースター。まあ、その好きな人もエキシビションを見るんだろうし当然よね」

「そんなところ。ごめんね、こんなのに付き合ってもらって」

「いいのいいの、いつも助けてもらってるし」

そう言って、テールナーは再び探し始める。
テールナーが探しているのに、私が適当にしているわけにもいかない。
私も一生懸命探し、ようやく6件目の店を探していた時に、目的の服を見つけた。

「あ、これ……」

見つけた服は、白地にところどころ黒のアクセントが入ったワンピース。
少し大人びた雰囲気のそれは原点回帰と同時に、変化した自分を表しているような気がした。

「それ、探してたのにピッタリじゃない?」

「うん、私もそう思う。これにするよ」

会計を済ませ、きれいに袋に入れてもらい、それを紙袋に入れて提げる。
予定より少しかかったが、おにいちゃんのコンテストは最初から見られそうだ。

「それじゃ、ブースターのお兄さんの舞台を見に行くの?」

「うん、ごめんね、付き合ってもらって」

「ううん、ブースターのお兄さんでしょ。私も少し参考に見てみたいし」

なるほどねと、向上心に溢れた友人に感心しつつ、駅に上がり、コンテストドームの最寄り駅への切符を購入し、ホームに向かう。
幸いにも10分程度待つと列車が到着したので、それに乗って目的地まで向かった。
通学のために電車を使うポケモンと被ったため、車内には学生と思しき若い子がたくさん乗っていて、テールナーとは立って乗る事になったが、それほど遠いわけでは無いので別にいいと友人は言う。

「仮にも、ちょっとした有名人って所なのに、案外気付かれないものなのね」

「こんなブースター、どこにでもいるでしょ」

「そうひがまないの。ドームに入る時は関係者入り口使った方がいいかもね」

「まあ、さすがにそれはね」

車掌のアナウンスが、次の停車駅を告げる。
その駅で降りるために、ドアの近くに移動し、手すりに寄りかかって待つ。
程なくして列車が止まり、両開きのドアが開く。
電車を降り、改札を抜けて、駅の北口から外に出る。
同じ電車に乗っていて、この駅で降りたポケモン達も大体こちらの出口へ来る。
もちろん、コンテストドームに行くためだ。

「わりとこの時間帯からでも観客は来るのね」

「Bクラスの舞台でも、最近はなかなか凄いからね。人気を出し始めてるの」

「私がいた頃とは大違いね」

その理由の一端にはおにいちゃんの存在があるだろう。
きっと、テールナーはおにいちゃんの舞台を見て驚くはずだ。
ドームまでは歩いて数百メートル程度で、駅からも見えている。
途中に一度、左に曲がる角があるが、ほぼ一本道だと言っていい。
きれいに整備された歩道は、この辺りの再開発の時にできたもので、私が小さい頃、ドームに来た時はまだ狭い路側帯を歩くしかなかった覚えがある。
しばらく歩き、ドームまで着くと、私とテールナーは横の方に回り、関係者入り口から中に入る。

「あれ、ブースターさんにテールナーさん、今日出演ですか? 二人で来るなんて珍しいですね」

偶然、扉を開けた目の前にいた同じAクラスのルガルガンに声をかけられる。
ちょうど来たばかりの所を鉢合わせしたようで、彼は地味な格好で大きな鞄を持っていた。
おそらく今日のAクラス一番手の出演で、早めに楽屋入りしたのだろう。

「ううん、今日は少し観戦しに来ただけなの。上は使ってもいいのかな」

「ああー、控え席ですか、多分いいと思いますよ」

「それならよかった、ありがと」

テールナーと一緒に、本来は出演するパフォーマーが次に備えておく控え席に向かう。
ここは、一般客は立ち入りができないため、ゆっくりと見学する事ができる。

「あれ、こっちに来たのか」

声をかけてきたのは、リーフィア。
ここは控え席で、私たちが見に来たのはおにいちゃんの舞台、となればそのリーフィアはもちろん、おにいちゃんである。

「これから始まるところ?」

「うん、もうすぐ始まる。間に合ってよかったな」

「うんー。じゃあ、ゆっくり見させてもらうね」

「ごゆっくり」

そう言って、おにいちゃんは舞台の上に上がっていった。
おにいちゃんに対するのはミミッキュ、最近実力をつけてきていて、噂はAクラスでも流れているほどのポケモンだ。
ばけのかわに浮かんでいる顔にも気合が入っていて、おにいちゃんには本気でかかっていく気でいっぱいのよう。
おにいちゃんの方はと言うと、いつも来ているような衣装で代わり映えなんかしない。
いや、おにいちゃんはそれでいい。
それでこそ、と私は思っている。

「さぁー、待ちに待った方もいるんじゃないでしょうか、このカード。最近急激に実力を伸ばし、Bクラスの話題をほとんどさらったこのポケモン、ミミッキュと、その実力は誰もが認めるところ、Bクラストップの実力者、リーフィアです!」

おおーっと、会場がどよめき、次第に観客のボルテージも上がっているようだ。
私も二カ月かそこら、おにいちゃんの舞台を見ていなかったのでとても楽しみにしている。

「それではいよいよ、コンテストバトルのスタートです! 両パフォーマー、準備はいいですかー? レディ……ファイッ!」

宣言と共にミミッキュのかげうちがおにいちゃんに襲い掛かる。
自由自在な動きで、素早くおにいちゃんを囲み、閉じ込めるように影が伸びる。
素早い攻撃で、しかもアレンジを加えており、Bクラスで実力を伸ばしてきたというのは伊達ではないようだ。
対するおにいちゃんは、上に飛び上がり、回避し、マジカルリーフを繰り出す。
相手を追尾する不思議な葉っぱが空間に散らばり、四方八方からミミッキュに降り注ぐ。
さらに、大きなはっぱカッターで釘付けになっているミミッキュに追撃をする。

「おおっと、いきなり激しい攻撃がさくれつ! このまま一気に決まってしまうのかー!」

いや、ミミッキュは特性で一度だけ攻撃が効かない。
途中からかげぶんしんにでも成り代わって、おそらくは……。
そう思った時には既に、ミミッキュがおにいちゃんの背後を取っていたところだった。
だましうち、からのじゃれつくコンボ。
いい流れで繋いでいて、思わず凄いと言ってしまうほどだ。
おにいちゃんはだましうちこそガードできたが、それで崩された後にじゃれつくを受けてしまう。
だけど、リーフィアは防御こそ一番高い。こんなことでおにいちゃんは倒れない。

「華麗なコンボがさくれつー! しかしリーフィア立ち上がる! 両ポケ共に白熱したバトルを繰り広げ、一瞬も目が離せません!」

先に動いたのはミミッキュ、かげうちで先手を取り、その後にだましうちを仕掛ける。
おそらく、上に避けると読んでの事だろうが、おにいちゃんはかげうちに当たりつつもはっぱカッターを撃つ。
飛び上がっていたミミッキュは回避できずそのまま撃ち落とされ、体勢を大きく崩した。
そこへ、おにいちゃんがリーフブレードで切り付ける。
しかし、それだけでは終わらなかった。
まるで舞うかのようにリーフブレードで攻撃を続ける。
重い一撃を放つわけではないのに、あの動き。

「すごい、つるぎのまいね」

テールナーがそう漏らす。
リーフブレードでのつるぎのまい、攻撃を続けながら攻撃力を上げていくという事だろう。
私も初めて見たけど、おにいちゃんの進化に驚きを隠せなかった。
わざを連携して出す事はよくやる手段で、どれだけ上手く、早く、巧みに繋ぐかが、勝負の分かれ目と言っても過言ではないが、同時に行うなんて、聞いた事がない。

「決まったー!」

おにいちゃんが最後の一撃を決める。
司会の熱のこもった言葉と同時に、連撃から解放されたミミッキュはその場に倒れ伏した。

「ミミッキュ、戦闘不能ー! よって、勝利ボーナスの10点がリーフィアに加算されます! それでは、アクティング得点の発表行ってみようー!」

わぁっと会場が沸き立ち、電光掲示板に表示されるリーフィアの姿に注目が集まる。

「まずはリーフィアの発表!」

司会が翼を振り上げると、掲示板に74と表示され、会場が大歓声に包まれる。
クラスによって採点基準が変わったりする事は無いので、私が昨日取った得点に迫る点数は、Bクラスらしからぬ実力を物語っている。

「これは凄い、勝利ボーナスと合わせると84点です! Aクラスにも勝るとも劣らない素晴らしい結果です! それでは対するミミッキュはどうかなー?」

続いてミミッキュの映像が映り、62と表示される。

「おおっと、大きく離されてしまい62点です! しかしこれでもかなりの成績! Bクラスランキングポイントにはこれが反映されるので、次の集計が楽しみです!」

ミミッキュの健闘を称えるように、大きな拍手が起こる。

「ということで勝者は、不動のトップ、リーフィアです!」

会場の大喝采を背に、おにいちゃんが控え席へ戻ってくる。

「お疲れ様。いつの間にあんなの使えるようになったの」

「ん、ちょっと、ね」

そう言って、おにいちゃんは少し照れたような顔をする。
そうやってはぐらかすけど、相当な練習を裏で重ねたのだろうな。
私なんかより、本当はずっと実力があるんじゃないかと思う。

「あの、ブースターのお兄さん」

「えっ、あ、は、はい。えっと、妹の友人でしたっけ、いつもお世話になっています」

「いえいえー、それよりも先ほどの舞台、本当にすごいかったです。同時にわざを使うなんて離れ業、見たことないです。どうして、これほどの実力なのにBクラスなんですか」

「それは、まあ、ね。いろいろあるんだ」

それ以上は聞かないでという風な笑顔で返し、次の舞台の準備があると言って、更衣室の方へさっさと歩いて行った。

「なんていうか、凄いね、ブースターのお兄さん」

「まあ、うん……そうかもしれないけどさ……」

「どうしたの」

「ううん、それじゃあ、帰ろっか」

テールナーと共にスタジアムを後にして、電車に乗り帰路についた。
途中の駅でテールナーとは別れ、一人で家に帰る。
カギを開け、静かな家に入り、既に暗くなっている室内に明かりをつけた。
普段帰るよりは早いけど、それでも夕ご飯時にはちょうどいいので、先にご飯を食べておくことにした。
昨日の残りのシチューがあったので、それを温めなおして食べる。
明日は朝からトレーニングを入れていて、早めに寝ないといけない。
午後には舞台と、最後にエキシビションがある。
結構ハードな一日になりそうなので気合入れていかないとな。
ご飯を食べ終わり、食器を洗って片付けて、その後にお風呂を洗う。
ちょうどその時におにいちゃんが帰って来た。

「ただいま。お風呂洗ってくれてたんだ、ごめん」

「おかえり。いいよー、ご飯も食べたから、お風呂入って早めに寝ようと思っただけだし」

「そっか、悪いね。じゃあ任せるよ」

そう言っておにいちゃんはダイニングの方に行った。
私はお風呂を洗って、そのままお湯張りをしながら、体を洗う。
頭と顔の毛、頭のモフモフ、首の、体の、尻尾のと、いろいろ使い分けながら洗っていくので結構大変だ。
だけど、見た目も大切な舞台に立つので、こういう所は手を抜きたくない。
しっかりと時間をかけて丁寧に洗い、お湯で流して完了する。
湯船のお湯はとっくにたまっていたので、そのまま湯につかり、ほっと一息つく。
耳の先などから落ちる水滴が、静かな浴室内に結構響く。

「ついに明日かあ……」

待ちに待った日、長年の想いが果たせるという嬉しさがあり、失敗したらどうしようという不安もある。
何より、受け入れてもらえるかが本当に心配だ。
テールナーには正体を言わなかったけど、私が好きなのはおにいちゃんだ。
いつの頃からだったかはわからないけれど、トレーニングに付き合ってくれたり、一緒に買い物行ったり、そんなただの日常だったはずのものに色が付き始めた。
最初は、もう年が上がってきたから、恥ずかしいのだと思っていたけど、そうではなく、明らかに別物の感情で鼓動が早まっていた。
私が、おにいちゃんが好きなのだと気付いたのは二年ほど前だったが、それから、明日の私が適齢になる誕生日の事を思い計画してきた。
兄妹や姉弟で番になる事に問題は無いが、今まで家族だった自分から告白されたおにいちゃんが、はたして何を思うのか。
どちらにしても、もう、今までの家族ではいられない事は確かだと思う。
何も言わなければ、今まで通りに過ごし続けられただろう。
でも、それでは私は心を抑えながら暮らし続ける事になる。
だから、全てを得るか失うか。
だからこそ心配になるのは当然だろう。
本当にやっていいのかと思う事もあった。
けれど、前に進まなければいけない。
きっと、大丈夫だから。
半ば、強引に自分を納得させて奮い立たせるようだけど、なりふり構ってはいられない。
一人で頷き、お風呂から出た。
タオルで丹念に拭き、ドライヤーでしっかりと乾かすとふわふわの毛並みに揃う。
鏡で見ながら気になる所を直して、完了。
自室に戻り、明日の衣装とエキシビションの衣装を確認して、昂る気持ちを抑えながら眠りについた。



Next day - Brother

「お疲れ様でしたー」

今日の舞台は全て終わり、更衣室を後にする。
今ちょうどAクラスの舞台が始まる頃だろうが、妹がエキシビションをどうしても見ろというので、その時間までは少し暇だ。

「あ、リーフィア、今日はもう終わりなの?」

Aクラスに所属しているルガルガンに話しかけられる。
同じBにいた時は、結構仲が良かったが、今はクラスが違うためあまり会わない。

「まあね。でもエキシビション見て行けって妹に言われちゃってさ」

「あ、それなら、少しいいかな。時間あるでしょ。アップに付き合ってほしいんだけどさ」

「それくらいならいいよ」

どれだけかかっても、エキシビションは全ての舞台が終わってからなので、ルガルガンの舞台の方が先に来る。
どうせやる事は特に無いし、付き合っていてもいいだろう。

「じゃあ、練習室にいこうか。リーフィアも少し体動かすといいよ」

「今日はもう終わったから、別にいいんだけど」

早足で向かうルガルガンに小走りでついていく。
練習室はドームの一角に作られていて、昼間だったら練習するCクラスやBクラスのポケモンが多くいる。
今はもう誰も居らず、来るとしてもウォーミングアップをするAクラスのポケモンくらいだろう。

「よーし、いい?」

「うん、いつでも」

軽く体を伸ばしてストレッチをし、それから身構える。

「いくよ! ストーンエッジ!」

下から鋭い岩が突きあがる。
それくらいなら容易くよけられるが、飛びのいた先にはまたもや鋭い岩が待ち受けている。

「なっ、いっ……!」

本気の攻撃ではないが、痛いものは痛い。
その痛みで一瞬反応が遅れた時には、ルガルガンの姿が消えていた。

「ロッククライム!」

死角から飛び込んでくるルガルガンを避けることができず、攻撃を受け、吹っ飛ばされる。
受け身を取り、何とか頭を打たないようにだけはした。
ルガルガンが起きるのを助けてくれる。

「ごめんごめん、少し力を入れすぎたよ」

「凄いじゃん……何が起こったか全然わからなかった」

「ストーンエッジで誘導しつつ、ステルスロックを当てて、エッジの岩を使ってロッククライムでの高速攻撃で決めていくってね」

「なるほどね」

いきなり高度な連携わざをかましてくるなんて酷いなあと思いつつ、かつての彼から大分成長している所がうかがえた。
Aクラスに上がってからも、しっかりと戦っているのだろう。

「リーフィアはどう? 少しわざ見せてよ」

「だーめ、それに、手加減しても相性悪いから倒しかねないし」

「まあ、そうだよね。また見せてもらうよ」

そう言って、壁にかけられている時計を見て、ルガルガンはタオルを持つ。

「そろそろ時間だから行くよ。ごめんね付き合ってもらって」

「いいよ、じゃあまたね」

部屋からルガルガンが出ていき、自分一人で練習室に残った。

「もう少し時間はあるかな……」

時計を確認し、少し練習していく事にする。
今はマジカルリーフの応用を試していて、今はばらまく使い方しかしていないが、
もっと自由に動かせるようにしたい。
もう完成には近いのだが、今一つ、数多く放つ事ができないので、もう一歩という所。

「……いけっ」

不思議な葉っぱを放ち、いったん空中で止め、一点に向かって降らせる。
そのまま反転させ、縦横無尽に飛び交う葉っぱを制御する。

「……よし、少し増やせたかな」

制御できずに床に落ちた葉っぱが前回より少ない事を確認し、わざをやめる。

「これなら……使えるかな」

でも、今以上に実力を発揮してしまうと、今度こそAクラスに上げられてしまうかもしれない、そうなれば、家事とかをやる時間が遅くなってしまう。

「しばらくは使えないか」

時刻を確認するとちょうどいい時間になっていたので、控え室の方に上がって、最後のエキシビジョンマッチを見る事にした。
控え室にはなぜか、結構の数のポケモンがいて、いくらか見た事のあるAクラスのポケモンも混じっていた。

「あ、やっと来たね。そろそろ始まるよ」

ルガルガンもベンチに座っており、自分はその隣に座る。

「もうすぐだから」

ルガルガンがそう言った時、ちょうど司会のアナウンスが入る。

「さあ、いよいよ最後の舞台です。今宵はエキシビジョンマッチ、生誕の日を迎えたブースターがパフォーマー! 気になる対戦相手は、ブースターから発表されます!」

司会のペラップから紹介があり、スポットが落とされる。
白いワンピースで、ブースターの毛色と同じ帯とリボン。
初めてブースターが舞台に立った日の事を思い出した。

「エキシビジョンマッチまでご観戦してくださりありがとうございます。今夜は、私がずっと心待ちにしていた舞台なので、最高の戦いにしたいと思います」

観客席から大きな拍手が起こり、ブースターはそれにかき消されないように、少し大きな声で話し始める。

「それでは、エキシビジョンマッチの相手は……私のおにいちゃん、お願いします!」

突然の事に硬直してしまう。
まさか、帰らずに見て行けというのはこういう事だったのか。
隣のルガルガンも笑って、ほら行けよ、なんて言っているので、いくらかのポケモンは初めから協力を頼まれていたのかもしれない。

「さあ、発表されました! 今宵最後のカードはブースターと、Bクラストップで、Aクラスにも引けを取らない実力者! さらに、ブースターの実の兄という事で、この舞台、非常に楽しみです!」

司会にも言われたところで、しぶしぶ舞台に上がっていく。
衣装とか何も着ておらず、素の姿のままなので少し恥ずかしいが、着替える時間は無いし仕方がない。
自分が舞台に上がると、観客が一気に沸き立ち、いつものBクラスの舞台よりさらに熱狂しているようだ。
ブースターと向き合って立ち、自分の所にもスポットが落ちる。

「まさか、なんで僕なんだよ」

「ずっと戦ってみたかったの。だから、お互いに遠慮無く、本気だよ」

「もちろん、舞台の上だからね」

ブースターが笑うその中の眸に、闘志の炎が映る。
タイプ相性を考えても、本気でやらなければ一瞬で負ける。
妹の様子から、遠慮なんて到底できるものでは無かった。

「さあ、それでは、エキシビジョンマッチ、準備はいいですかー? レディ……ファイッ!」

宣言と同時にブースターが先制する。俊足な種族ではないが、鍛えれば早い。
炎を纏って突進する、フレアドライブ。
動きが直線的で避けられない事は無い。
最小限の動きでかわし、マジカルリーフを放つ。
しかし、その直後、目の前が真っ赤に染めあがる。
かろうじて飛び退くが、少し耳が焼けてしまった。
葉っぱも燃やされてしまい、ブースターには届いていない。

「甘く見ないでね、おにいちゃん」

不意打ちの、おそらくふんえんの威力からして、フレアドライブは当てる気がなかったようにも見える。
初めから、ふんえんを狙っての突進か。

「なら……」

自分も惜しみなくいく。
マジカルリーフをばらまき、ブースターめがけて突撃させる。

「なら、これで!」

ほのおのうずが二発、マジカルリーフの群れと、自分のそれぞれを囲むように放たれる。
自分の方は避ける方が大きくダメージを受けるだろうから、その場で動かずに、マジカルリーフだけ、上に逃れさせる。
その間にブースターは再び突進の構えを取ろうとする。

「させない!」

マジカルリーフを誘導し、ブースターに回避をさせる。
そして新しいマジカルリーフを出し、さらに追撃させる。

「落ちて!」

再び強烈なふんえんで全て燃やされる。
しかし、距離を詰めさせるわけにはいかない。
あと少し、溜まりきれば。
再びマジカルリーフを出し、今度は途切れる事なく、ヒット&アウェイの容量で突撃させる。
放つ時に少し溜めがあるふんえんは迂闊には出せないだろう。
うまくかわされるも、距離を取ったまま、時間を稼ぐ事はできた。
まずはマジカルリーフを、一斉にブースターに降らせる。
少し溜める余裕を持たせ、ブースターがわざを出した瞬間に、ソーラービームを放つ。
ほのおのうずをかき消し、一直線に光のビームがブースターを撃つ。
しっかりと溜めを確保したために、照射時間は長い。
これだけ当てれば、かなりのダメージになるはずだ。
と、その時、目の前に影が映る。
身体を捻り、かわしつつ尻尾を盾にすると、焼けつくような痛みが尻尾に走る。
かろうじて身体を守り、地面に倒れこむも、尻尾は無残な事になっていた。
確かにブースターは、特殊わざに対する防御力が確かに高い。
しかしまさか、ソーラービームの中をフレアドライブで突っ込んでくるとは、相変わらずぶっ飛んだ戦い方をする。

「くふふ、力のぶつかり合いもなかなか楽しいね、おにいちゃんっ……!」

確かにわかる。
限界をぶつけ合うような、こんな戦いは久しぶりだ。
起き上がり、にやりと笑う妹に自分からも笑い返し、リーフブレードを出して正面に構える。

「これで決めるからっ」

ブースターがまるで燃え上がる闘志のようにふんえんを放ち、そのままフレアドライブ。
自分に向けて突っ込んでくる。
もちろん今度はしっかりと飛び退いて回避するも、途中で急停止する。

「しまっ……」

空中では急な身動きは取れない。
飛び退いた先の着地点にほのおのうずを放たれ、狭い炎の壁に囲まれてしまう。
フレアドライブの途中から、こんな急に止まって切り替えるなんて……。
いや、ただ単にふんえんの炎を纏って走っていただけだったのか。
そして、囲んで足止めをした後、どうなるかは、もはや考えるまでもない。
炎を纏って突進してくるブースターに向かって、リーフブレードを振り下ろす。
灼熱のブースターの右手と、リーフブレードがぶつかり合い、はね飛ばされるかと思うくらいの衝撃に襲われる。
かろうじて鍔迫り合いのような形で均衡を保つが、ブースターの攻撃の重さは尋常ではない。

「さすが、おにいちゃんだね。まだまだいくよ……!」

均衡を保ちながら少し余裕そうに語るブースター。
まったく、妹は恐ろしい。
そう思った時に、重さが一気に増す。
支える手の方は耐えられるが、若干上向きに力が加えられているため、踏ん張りの力が足りなくなり、横に飛ばされた。
上手く着地し、体勢を直すが、すぐにブースターが追撃に迫る。
フレアドライブとばかぢからを合わせた連撃。
ブースターの破壊力を最大限に発揮されるそれを、まともには受けられない。
リーフブレード使って攻撃を受け流していくので精いっぱいだ。

「それだけじゃあ勝てないよっ」

「くっ……」

攻めに転じる手がまだ無い。
まともに打ち合っても力負けするだけだ。
ただでさえも、ポテンシャルでは一歩劣る事の多いリーフィアという種族、そしてブースターとのタイプ相性が物を言う。
しかし、自分の武器は圧倒的パワーなんかではない。
パワーをテクニックで補い、戦ってきた。
そう、ならこの状況でも、自分はまだ、いけるはずだ。

「リーフィア、徐々に押されています! しかし、これは……リーフィアの動きが少し変わってきました。受け流すリーフブレードの捌き方、これはまさか、この状況でつるぎのまいを使っているー!」

ブースターの連撃を受け流すたびに、打たれる感触が軽くなっていく。
テクニックでパワーを補う、言葉の意味そのままを体現したようなこのわざ。
防御を攻めに転じさせる、これこそが自分の戦い方の神髄なのかもしれないな。
しかし、ブースターもそれを黙って見過ごすわけではない。
素早くバックステップで距離を置き、一瞬の間も開けずに、炎を纏った突進を繰り出す。
フレアドライブを乗せたばかぢからではなく、ばかぢからを乗せたフレアドライブ、といったところだろうか。
再び、全力でリーフブレードを打ち付ける。
本気でのぶつけ合いに、一瞬時が止まったかのような感覚だったが、次の瞬間にはブースターを打ち返していた。
そのまま、マジカルリーフで追撃をし、その間にソーラービームを溜める。
体勢をいったん崩したブースターは、避ける事しかできないだろう。
一撃でも入れば、その隙を突いた攻撃で一気に畳みかけられるかもしれない、というようにブースターも感じているようだった。
もちろん、のんびりしているわけにはいかないので、次々に追撃のマジカルリーフを放ちながら、リーフブレードを構えて、隙を狙うように間合いをうまく調整する。

「ここっ!」

ソーラービームが溜まりきって、予備動作に入った時に、ブースターが先に仕掛ける。
マジカルリーフを出さなくなり、少なくなったところを見逃さず、大きく横にとび、一瞬の溜めの後、ふんえんを放ち、その後、こちらに飛び込んでくる。
ふんえんを利用して火力を上げた、全力のばかぢからフレアドライブ。
纏っている炎の勢いも、この戦いの中では一番大きい。
それを迎え撃つのは、こちらも全力のリーフブレード。
それに、ブースターのように、もう一つの技を乗せ、放つ。

「これが私の……っ!」

「僕の……全力! ソーラービームブレードオォッ!」

振り下ろした一撃がブースターに当たり、ドーム内に衝撃が走る。
一瞬の閃光の後に爆発が巻き起こり、舞台の上は煙と炎に覆われて見通しが効かなくなる。

「凄まじいぶつかり合いです、舞台の上の様子は全く見えません! さあ、どうなっているのでしょうか、どちらかが倒れているのか、それともどちらも健在なんでしょうか!」

少なくとも自分は立っているが、ブースターはどうだろうか。
だんだんと煙が晴れ舞台が見えるようになるとブースターの姿を確認できるようになる。
その姿を見た瞬間、ブースターに駆け寄っていた。

「決まったー! ブースター戦闘不能! よって、この凄まじい戦いを制したのは、Bクラス筆頭のリーフィアです!」

轟く歓声の中、ブースターを揺する。

「大丈夫か、ブースター?」

声をかけながら、優しく揺さぶると、ゆっくりとブースターは目を開ける。

「ん……、さすがおにいちゃんだね……やっぱり強かったっ」

「ブースターも、凄く強かった。負けるかと思ったよ」

ブースターは立ち上がり、自身についている埃を払う。

「エキシビションですが、点数の確認をしてみましょう! ブースター、92点! リーフィア、97点です! Aクラストップでもなかなか出ない点数です、リーフィアがBクラスにいるのは、正直もったいないくらいです!」

おめでとうおにいちゃん、と言いながら、ブースターはそっと寄ってくる。

「どうした?」

「私、おにいちゃんに伝えたいことがるの」

ゆっくりと一度、ブースターは呼吸する。

「ずっと、思ってて、やっと今日、適齢を迎えて、子供じゃなくなるから……」

「うん、なに……?」

「私、おにいちゃんの事が好きですっ……」

そこまで言って、ブースターは下を向いてしまう。

「うん、ありがと。僕もブースターの事は好きだよ。大切な妹だし」

「そうじゃなくて……兄妹のとかじゃなくて、おにいちゃんの事、ずっと好きって思ってて、何気ない事でもドキドキしたりして……」

「そんな風に、思ってたんだ……」

「だから、おにいちゃんがいいなら……つきあって、もらえないかな」

とんでもない事を言われたはずなのに、とても冷静でいた。
心臓の鼓動がブースターに聞こえてしまうんじゃないかって思うくらいに高鳴っているのに、慌てたりとかしなくて、ブースターに問を返していた。

「そうなると、今までの兄では居られないよ?」

「おにいちゃんがじゃなくて……おにいちゃんっていうリーフィアが、好きなの」

「僕はいいけど……僕なんかでいいのか?」

「うんっ……!」

そう言うが早いか、ブースターはその口でこちらの口をふさいでいた。
突然のキスに驚きしばらく硬直してしまうが、その後にはキスをされながら、自分からブースターを抱きしめていた。
しばらくの間、口づけを交わした後、ゆっくりと離れる。

「……ました、おめでとう! リーフィアとブースター!」

いまさらながら、舞台の上だった事を思いだし、羞恥を覚える。
途中からしか聞こえなかったが、司会のペラップが祝う言葉を述べると、ドーム全体からおめでとう、という言葉と拍手が自分たちに贈られた。

「まさか、こういうのも狙っていたの?」

ブースターに問いかけるも、にこりと笑って自分にくっつくだけである。

「まったく、こういう所だけ黙ってさ……」

若干の歩きにくさを感じながらも、ベッタリとくっついて離れない妹と共に舞台の上から降りた。

「やっ、おめでとう、リーフィア」

ルガルガンをはじめ、控え室にいたポケモンたちから、お祝いの言葉を受け取る。

「ありがとう、でも、ルガルガンはこのこと知ってたでしょ」

「まあねえ、応援してたよ。っていうか、一緒に暮らしてて気付かないなんて、リーフィア結構鈍感なんだね。舞台の上じゃ恐ろしいくらい鋭いのに」

「うるさい、妹にまさかそんなって思わないだろ」

「でも、受け入れたんじゃん、ちゃんと幸せにしてやれよ」

妹の方を一度見て、頷く。
目に入れても痛く無いというくらいに可愛がっていた妹と、付き合う事になったのだから、絶対に幸せにしてみると、心に決めた。

「じゃあ、ブースターの手当とかして帰るね、またね」

「じゃあねー」

挨拶を交わした後、ブースターと一緒に更衣室へと向かった。
エキシビションは最後に行われたという事もあり、更衣室には誰もいなかった。
自分は特に何も着ていなかったが、ブースターは衣装を着ていたため、とりあえず脱ぐまで待つ。

「あんまり目立った傷は無いね」

ブースターの身体を眺めながら言う。
毎朝、基礎トレーニングをちゃんとしているのだろう、無駄な肉が無く、引き締まった体躯をしている。
そのおかげだろうか、妹が舞台で大けがをして帰ってくる事はまずない。

「よかった……。おにいちゃんの一撃もらった時、正直まずいなって思ってたんだけど」

「ごめん、つい本気で」

「本気で戦おうって言ったでしょ。ありがとう、本当に昂る舞台だったよ」

不意に妹が軽くキスをしてくる。
突然の事にまたもや体の動きが止まってしまうが、妹がオボンのみを手渡してきて我に返る。

「おにいちゃんの方が重傷でしょ。尻尾とか耳の先大丈夫?」

妹に言われ、改めて鏡で確認してみる。
焼け焦げて黒くはなっているが、やけどの範疇なので問題は無さそうだった。
草タイプがやけどをすると大体こんなものなので、チーゴのみとオボンのみでも食べておけば、すぐにでも治るだろう。

「大丈夫そう?」

「うん、これくらいならね。チーゴのみが、僕のロッカーに入ってないかな」

オボンのみを口に入れて咀嚼しながら、ロッカーを漁っている妹の元まで歩いていく。

「あったよ。あんまり入れっぱなしにしちゃいけないんじゃない?」

「一週間ごとに買い直してるよ」

チーゴのみを受け取って、それも口に入れてよく噛んで飲み込む。
ブースターもオボンを食べているようだ。

「ふう、これでまあすぐに治るかな。じゃあ帰ろっか」

「あ、うん。分かった」

座っていた妹は立ち上がり、衣装を詰めた鞄を持って更衣室を出る。
そこからドームの外に出ると、空はすっかり暗くなっていた。
歩いて駅まで向かい、列車が来るまで待つ。

「ちょっと、寒くなってきたな」

待合室なんてない、吹きさらしのホームを、冬の色を感じる冷たい風が吹き抜ける。
ひゅうっと足元を抜ける風が吹き、冷たさに少し体を震わせると、ブースターがそっと寄り添ってくれた。

「寒いでしょ」

「あったかい、むしろ暑い」

「寒いのとどっちがいい」

「今のままがいい」

二人で一緒に座り、電車を待つ。
この季節には、炎タイプはいいなあと思う。
草は寒さに弱いので、こうして、そばにいてくれるのは本当にうれしい。
そうしているうちに、列車がホームに入ってくる。
列車に乗り込み、席に座り、最寄り駅に着くまではしばらく電車に揺られる

「もう乗っているポケモン少ないんだな」

「こんなもんだよ。下り線は特に」

いつもこれくらいの電車で帰っている妹にとっては普通の事なんだろうが、自分はわりとポケモンが乗っている時間に帰っているので、新鮮な感触だった。
静かな車内で二人寄り添って座り、その後は特に何もしゃべることなく最寄り駅まで過ごした。



At Night - Brother

最寄り駅で列車を降り、そこからまた徒歩で、家に向かう。
駅から家まではそこまで遠くはなく、数分歩いて家に着く。
暗い中で少し苦労しながら鍵を開け、家に入り、明かりをつける。

「ただいまー」

「おかえり、おにいちゃん」

先に家へ入ったブースターが笑顔で迎えてくれる。

「一緒に帰ってきたじゃない」

「それでも言いたいの」

自室内に入り、カバンを置いてから台所へ向かう。

「ブースター、お風呂洗ってくれないかな」

「おっけー」

妹が浴室へ向かうと同時に自分も料理を始める。
今日は妹の誕生日なので、妹が一番好きだという肉じゃがを作る事にする。
それに今日は帰るのが遅くなってしまったので、手早くできる肉じゃがはちょうどよかった。
何度も作っているので、手早く用意を済ませ、火を使う調理を始める。
味付けはいつも適当にしてしまうのだが、それで上手くできてしまうから、案外勘というものも侮れない。
そうこうしている内に、ブースターがお風呂を洗い終わって戻ってきた。

「あ、この匂い、肉じゃがかな!」

「そうそう。ブースター好きでしょ?」

「うん、お皿準備するね」

もう少し煮込んだら完成なので、少し火元から離れ、自分もテーブルの上を拭いたりして準備する。
そして、具がしっかりと柔らかくなっていることを確認してから、お皿に盛り付け、テーブルに並べた。
二人で向かい合ってテーブルにつき、手を合わせる。

「ブースター、お誕生日おめでとう」

「ありがとう、おにいちゃん」

グラスを差し出し、軽く触れ合わせて澄んだガラスの音を鳴らす。

「今日、告白した時、凄く怖かったの。拒絶されて、もう二度と一緒に居られなくなったりするかもしれないって思ったり」

「そんなこと絶対ないよ。僕がブースターをそんな事になんかするものか」

「良かった……」

「それに、良いって返事したでしょ」

「うんっ……!」

心配事とか、全て吹き飛んだというような満面の笑みをこちらに向けてくる。

「それじゃあ、食べようか」

「うん、いただきまーす!」

「いただきます」

食前の挨拶をし、食べ始める。
急いで作っても、わりといつも通りの味になっており、どの具材もしっかりと火が通っているようなので安心した。

「うん、美味しいよ、おにいちゃん!」

「それなら良かった。しっかり食べて」

そう言う前から、ブースターはかなりの勢いで食べ進めている。
美味しそうに食べてくれる姿を見ると、作った自分も嬉しく感じた。
もちろん自分も早めに食べるようにし、ブースターが食べ終わってからさほど間を開ける事無く、自分も食べ終わる。

「ごちそうさま、美味しかったー」

「お粗末さま。それじゃ、少し待っててね」

夕飯の食器を片付け、小皿を代わりに持ってくる。
その後、冷蔵庫から、昼頃に買ってきておいたケーキを取り出してテーブルに置く。

「っわあ、買ってたんだ! 今日は忙しいかなって思ってたんだけど、さすがおにいちゃんっ!」

甘いもの好きな妹は、小皿にケーキを乗せた時点で目を輝かせている。
二人だけでホールケーキは多いのでカットしたものだが、ケーキ屋に頼んでチョコレートのメッセージプレートだけはつけて貰っている。

「それじゃあ、もう一度。ブースター、誕生日おめでとうっ!」

「うん、ほんとに嬉しい。ありがとう!」

手を擦り合わせていただきますと言い、早々に妹はケーキを頬張る。
口の横に付いたクリームを指摘すると、指で拭い、ペロリと舐めた後、再びケーキ口に運ぶ。

「本当に甘いものが好きだね。こっちも食べていいよ」

自分の皿を差し出す。

「本当に良いの?」

「そこまで好きじゃないの知ってるでしょ。先にお風呂入ってるから、食べていいよ」

皿をブースターに預け、自分は席から離れ、風呂場へと向かった。
鏡でもう一度やけどした箇所を確認してみると、ほぼきれいに治っている。
相変わらず、きのみの効果はすごいなと実感しつつ、浴室内に入る。
いつも以上に、やけど痕などに気をつけつつ、丁寧に洗う。
しっかりと身体を流した後、普段は使わない手入れ用のオイルを取り、治った箇所を中心に使っていく。
こうすると、治ったばかりでも結構調子が良くなる。
そして、温かいお湯が溜められた湯船にゆっくりと入っていく。
傷はすぐに治るとはいえ、疲れは休まないと取れない。
リラックスして息をつくと、お湯の温かさが全身に染み渡り、肉体を癒やしてゆく。

「ふー、なんだか今日は色々あったな」

お湯をすくい、顔を一度洗う。
まさか、自分が妹と付き合うなんて。
正直まだ、実感がない部分があるが、いずれは結婚とかも考えていたりするのだろうか。
自分が妹を好きだと感じていた感情は、今までは家族として、と言うまでだった。
ちょっとくらいは、妹のことが可愛いメスだとか、思った事はあるけど、
ここまで真剣に、異性としてのブースターを考えた事は一度も無い。
いや、あったらそれこそ少し問題があると思うが。
そうして考えてみて、どうだろうか。
自分は、妹のことを好きといえるのだろうか。
いろいろな妹の姿を思い起こし、これまでの自分の行動も考えてみる。
一番思っていた事って、何だっただろうか。
そう考えている時に、不意に浴室の扉が開く。

「入るよ、おにいちゃん」

「ちょっ、待って、まだ入ってる!」

「いいじゃない、一緒に入ろっ」

そう言って妹はお湯を身体にかけ、身体を洗い始める。
そうなったら、妹は退出することはできないし、こちらが出ようとしても、妹に阻まれるだろう。

「はあ、わかったよ」

「ありがとうっ」

そう言うと、妹はシャンプーを手に取り、慣れた手つきで毛を洗い始める。
そういえば、久しく妹とお風呂なんて入っていないため、妹がこうして丁寧に洗っている姿を見るのは初めてかもしれない。
昔一緒に入っていた頃は、ちょっと良いシャンプーの一つだけで全部洗っていた。

「そんなに珍しい? じーっと見ててさ」

頭のところのもふ毛を洗いながら、ブースターがこちらを見る。

「まあ、初めて見るかなーってさ」

「あ、そういえばそうかもね。でも大したものじゃないよ」

一旦お湯で流し、ふるふるとお湯を飛ばして、別のシャンプーを手に取りながら、ブースターは話を始める。

「あのさ、おにいちゃんは、本当に良かったの? 付き合ってくれること」

「その事さ、今考えてたんだけど……」

「うん」

「僕はさ、ブースターの事を、支えたいって思ってる。家族として好きだとしても、付き合うってなっても」

全身を泡まみれにしているブースターは少し曇った顔をして頷いた。
そこから一呼吸置いて、もう一度口を開く。

「でももう、家族って言う目じゃ見れないかもしれない。改めて、大切だと、好きだと思い直した。絶対に幸せにするって誓う」

「……ありがとうっ」

そう言って、ブースターは頭からお湯をかぶる。
さらに何度かお湯をかけて、きれいに泡を落としきると、ブースターは湯船の端に手をかけた。
そしてこちら側に少し乗り出すような形で寄りかかりながら、静かに口を開く。

「でも、おにいちゃんばっかりが苦労するのは、私、もう嫌だな。早く帰るためにBクラスのままで家事とか全部してくれるより、二人で分担して家事をしてさ、二人でAクラスの舞台に立ちたいな」

妹には言っていなかったはずなのに、バレていた気恥ずかしさから、少しいじけてみせる。
しかし、クスクスと笑う妹を見ていると、自然と顔がほころんでしまい、最後にはごめんねと呟いていた。

「謝ったりすることは無いの、ただ、私からのお願い……かな」

「わかった、考えるよ。そういえば、ダブルコンテストも予告されてたしね。僕もブースターと一緒に出るのアリかなって」

「あ、そうだねっ。おにいちゃんと二人で立つ舞台か……」

照れながら笑うブースターがとてもかわいい。
こちらも笑顔で返すが、早打ちする心臓の音がブースターに聞こえそうだ。

「そ、そろそろ僕は上がってもいいかな」

「あ、うん、のぼせちゃった? あがったら行くから待ってて」

「あーうん……」

ボーっとする中で、足をふらつかせながら何とか浴室から出ると、力の入らない手でタオルを使い、水気を拭き取っていく。
疲労が重なり、長湯をしてしまったことで、風呂から上がって冷めると、だるさがどっと来る。

「はあ、早めに寝るか」

タオルを洗濯かごに放り込み、力ない足取りで自室まで行き、そのままベッドに倒れ込んだ。
何とか寝返りをうち、仰向けになると、深く息を吐く。
のぼせたのか、それとも別の理由かは分からないが、トクトクと激しかった鼓動も収まってきた。

「おにいちゃん」

いつの間に来たのか、妹が部屋の入り口に立っていた。
持っている瓶を揺らし、チャプンと音を立てる。

「一緒にどうかな。飲めるようになったから」

ブースターは静かに部屋に入り、テーブルの上に小さめのグラスを二つ置く。
瓶を大切にその隣に置くと、自分の寝ているベッドまで来て、その端に座る。

「それ、どうしたんだ」

「テールナーがくれたの。お祝いにって」

「なるほど」

瓶に入っている液の色とラベルから察するに、白ワインか。
なかなか小洒落たものをプレゼントしてもらったのだな。

「僕はあんまり飲めないんだけどな」

「苦手だったねそういえば。でも少し付き合ってよ」

「わかったよ」

ゆっくり起き上がり、ブースターと並んでテーブルを前にベッドに座る。
開けてと言われ、瓶の栓を抜く。
ほんのりアルコールの匂いが広がり、鼻を突く。

「はい、出して」

妹の持つグラスにそっと注ぎ、八分目ほどまで満たす。
その後、テーブルの上にある自分のグラスにも同量注ぐ。

「じゃあ」

自分もグラスを持つ。

「おめでとう、ブースター」

「もう、何度目? えへへ、ありがと」

カチリと二つのグラスを合わせ、そのまま一口飲む。
あまりお酒が好きな方では無いが、自分でもあまり抵抗なく飲める、口当たりの良いワインだ。
ちょっぴり甘くて、でもアルコールの匂いでくらくらする。
まるでブースターとキスしたときみたいだなと思って少し笑ってしまった。

「初めてのお酒の味はどう?」

ブースターはもう一口飲み、しっかり味わうように飲み込むとグラスをテーブルに置く。

「思ったより美味しいものじゃ無い……かな」

くくっと笑いながら自分はもう一度ワインに口をつける。

「まあ、そんなものだよ」

ブースターはうん、と言って少し下を向き、それから両手で再びグラスを取る。

「もう、ブースターと、こうして飲むようになるなんてね」

自分が初めて酒を口にした時、いつか妹と、酒を酌み交わす日が来るのかなと、思っていたが、もうその日が来てしまうなんて、年月はすぐに経ってしまうものなのだな。

「私は待ち遠しかった、かな。おにいちゃんとこうして、一緒に飲むのが」

そっか、と、また一口。

「もう、ブースターもこんな歳になって……なんだか、感慨深いっていうか」

「おにいちゃん、まるで父親みたいだよ。でも、お父さんであり、おにいちゃんであり、あながち間違いじゃないっか」

「そして今度は、彼氏、か」

「夫、じゃあだめ?」

「まだ早いだろ」

「わかってるって、聞いただけ」

酔いも回り始めたのか、ブースターの耳はほんのりと赤くなり、言動にも軽さが出てき始めていた。

「こういうのが酔ったって感覚なのかな……ちょっとくらくらするような」

「僕とおんなじで、あんまり強くないのかな。大丈夫?」

大丈夫と言うが、その言の響きが甘ったるくて、自分も酔っているのも相まって恐ろしいくらいに心臓に悪い。
とりあえず、軽くしていた瓶の栓をしっかりと締め直し、グラスに少しある残りを呷る。
結構小さなグラスなのだが、それだけでもこの有様なんて、自分の弱さには呆れそうなほどだ。
ブースターの方はすでに空になっていたので、自分のグラスと一緒に瓶のそばに並べて置いた。

「あれなら、部屋までついて行こうか?」

そう言った直後に、ブースターがこちらにもたれかかってくる。
もともとブースターは体温が高い方だったが、お酒が入ってるのもあり、さらに熱くなっている。
そして、小さくおにいちゃん、と呟く声は、先程からさらに甘さを増しており、鼻をくすぐるアルコールと、やわらかな妹の匂いのせいで、心臓が破裂しそうなくらいに鼓動していた。

「っ……本当に、大丈夫か?」

ブースターは熱い吐息をこちらの頬にかけながら、そのまま僕の口を奪う。
一瞬、鼓動が止まったかと思ったが、むしろ余計に早まったかもしれない。
もたれかかって来るブースターの重さに耐えきれず、後ろからベッドに倒れてしまうがブースターの口はこちらの口から離れることはなかった。
そこからまた、長いキスを続ける。
いつまで続くのかと思ったが、やめたくもない。
お互いの入り口を堪能した後、自分の方から境目に舌を差し出す。
ブースターも口を開けてくれ、お互いに交差させるように重ね、舌を絡ませる。
たまに隙間が開き、くちゅりという音が漏れると、それが昂ぶりを加速させ、さらに相手の口腔を味わおうと舌を、牙をと舌先で撫でていく。
まだ少しワインの味を感じるが、お互いの唾液が混ざり合い、どちらのものともつかない味が広がっていく。
もっとずっと、味わっていたかったが、次第に息苦しさを覚え始め、ほぼ同じタイミングで口を離してしまう。
半開きになった口から唾液の糸が垂れ、手でそれを拭う。
あがってしまった息を整えようとするが、もはやその息が平常に戻らないと悟るのに時間はそう要らなかった。
もう、ここまでなってしまったら、お互いに歯止めなど到底効かない。
素面ならまだしも、今は完全に酔いが回っている。

「あのさ、おにいちゃん。もう……」

物欲しそうに、胸に手を当てながら呟く妹の姿がトドメになってしまった。
起き上がってからブースターの肩に手を当て、今一度のキスをしてから、ベッドに倒す。
少し乱暴になってしまったかと思ったが、特にブースターからの文句はなかった。
ブースターの紅潮した頬を優しく撫でる。
嬉しそうに手に頬ずりする姿がとてもかわいい。
頭、耳と撫でていくと、ブースターは心地よさそうに目を閉じる。
よく手入れがされたもふもふは、見た目はもとより、やわらかな手触りが最高に気持ち良い。
撫でる仕事は片方の手に任せ、もう片方でもふもふに隠れた乳首を探る。
とりあえず、一番初めに手に当たった突起を触れるか触れないかくらいで撫でていく。
ブースターの口から漏れる息が、小刻みに、そして早くなっていき、身を少しよじる。
頭を撫でていた手も、その対角にあるツマミに移し、今度はちゃんと触れながら円を描くように弄る。

「あっ、んん……」

押し殺すような声でブースターは快感の音を漏らす。
ブースターは、初めてこういうことするのかな。
それにしては、感度がいいし、自身でもしていたのかもしれない。

「どう? 結構敏感だね」

「いい、初めて、なんだけど……」

「自分でしたりとかなかったの」

「あんまり、トレーニング、ばっかりで」

そっか、と返した後に軽く乳首を摘む。
感覚を研ぎ澄ませ、バトルに特化させてきた身体は、もしかすると感度がよく仕上がっているのかもしれないな。
固くなった突起を弄る度に、ブースターは苦しそうにも聞こえる嬌声を熱い吐息とともに吐き出す。
僕の背中に回されたブースターの腕に、段々と力がはいるのを感じる。
口を閉じ、強すぎる快感に身悶えし、耐えようと、僕にしがみついてくるからだろう。
鍛えられたブースターの力は正直、耐えられるものではなく、足が持たなくなってきたところで、弄るのをやめ、手をベッドについた。

「はぁ、はぁ、すごい、ね」

僕に回した腕を解いたブースターは、そのまま腕で目を覆うように隠し、火照りに顔を染め、恍惚として荒い息を漏らし、言葉を一つ絞り出す度に呼吸を挟む。
恥ずかしさで目を隠すのか、それでも口元は緩み、笑みを零しながら、空いている手で、僕の腕を引いてくる。
わかってる、僕もこれで終わりたくはない。

「どこまで、いい」

「ぜん……ぶ」

「いいんだな?」

ゆっくりと頷くブースターの頬に軽く口付けをし、尻尾を使って足を開かせる。

「ほら、尻尾で隠すなよ」

ふわりと邪魔してきたブースターの柔らかい尻尾をどかしながら、しっとりとしている体毛に隠れた秘所を暴く。

「もう濡れてるね。乳首、そんなに気持ちよかった?」

「うん……」

聞くなとばかりに顔を背けるが、はにかみながらそんな仕草をするのは、こちらの欲をそそらせるだけである。

「じゃあブースターのここ、触るよ」

腿の内側をそろそろと触り、先程暴いた割れ目に手を近づけていく。
ノーとは言われなかったので、そのまま手を当て、あまり押さないように回すように撫でる。
あまり急な刺激にならないように、優しく続け、ブースターの表情を見ながら、タイミングを計った。
ブースターはこちらを見ないように、顔をそむけ、目を閉じている。
少し開いた口からは、呼吸の音がかすかに漏れ、耳がピクピクと震えている。
そろそろ良さそうなので、割れ目に沿って手を動かし、段々と内側へと移った。
じんわりと濡れている隙間に手の先だけをそっと入れ、擦るように動かしていく。

「っう……あ」

今までは大きな口をあけて、荒い呼吸を繰り返すだけだったブースターが喘ぎ声を漏らす。
気持ちよさそうに身をくねらせ、しかしそれを我慢しようとする姿が艶やかで堪らない。
たたんで胸の前でギュッと閉じている前足をそっと握り、いくよ、と声をかける。
何も言わず、ただ首を縦に振るだけの返事を受け取ると、ブースターの花弁から垂れる蜜をすくい、手先をしっかりと濡らす。
割れ目を広げ、目的の部位をしっかりと見定め、ゆっくりと触れた。
ちゃんと触れたのか微妙な感触だったが、熟れた果実のように膨らんでいるそれは、小さいながらもブースターに与える快感は凄まじいようで、それだけでも身体を仰け反らせる。

「大丈夫?」

「らい……じょぶ」

もう一度、蜜でしっかりと手を濡らし、弾力のある突起を軽く押さえる。
それから、押さえる力を弱め、一呼吸置いてもう一度押さえてと、繰り返していく。
押さえる度に、ブースターは呼吸が止まったかのように押し殺し、離すと大きく肩で息をしていた。
しばらくそれを続けると、ブースターは次第に喜悦の声を微かに零す。
息をするために大きく開けようとするが、我慢のために食いしばろうとするために半開きになっている口元。
雫を溜めながら、ずっと閉じている目。
紅潮の色が映り、時折ピクリと震える耳。
愛くるしいその姿は、愛撫を続けながらずっと眺めていたい程だ。
しかし、もっとかわいい姿が見たい。
何より自分の欲望が止まらない。
そしてブースターも、我慢を続けている様子だが、性感の高まりは既に頂上に近いだろう。

「我慢しなくていいから、かわいいとこ見せてよ」

ブースターの耳元で呟き、固くなった豆を手で弄る。
痛みを与えないように、手先が濡れている状態をしっかりと保ちながら、クリクリと軽く押さえつけて丸く回転させるように動かす。

「ひっ、んぃっ……ん、はぁっ」

先程までの反応とは大違いに、ブースターは手を震わせながら淫らな叫びを上げる。
胸と口を手で抑え、身体を反らせ、股を閉じようと必死に悶える姿は、点数をつけるとしたら120点でも付けられる。
股の間に座っているため、強すぎる刺激から逃れようとしてブースターが身をよじろうとも、関係なく続けられる。

「あんまり暴れないでよ、やりにくいでしょ」

少し意地悪く言葉をかける。

「んやっ、むりぃ……んぃ、にゃはぅっ」

金切り声のようなトーンの返答と喘ぎを叫び、そこから先はもはや声にならなくなっていく。
自分も興奮を一つも隠すこと無く、荒い息をしながら時折かわいい、等の言葉をブースターにかけながら愛撫を続ける。
ブースターの呼吸の間隔が短くなっていき、そして、一瞬息が止まったかと思う。

「っにぁ、あっ、っぁぁ……!」

あっと思った次の瞬間、ブースターは一際大きく嬌声を上げ、声にならない叫びと同時に身体を跳ねさせ、痙攣しているかのように反らせた身体を震わせる。
しばらくの間、ブースターは目を閉じ、口を開けたまま呼吸すらままならない様子で快感に浸っているようだった。
そして、ようやく荒いながらも深く息をし始めると、うっすらと目を開けよだれを零しながらも緩んだ笑顔を見せてくれた。

「どうだったかな」

「すごかった。気持ち良かった、くらいしか」

ブースターは手をついて半身だけ起こし、深く息を吐く。
耳が垂れ、完全に今は力が抜けているようで、返事もふわふわとしたような軽さがあった。

「えっと、おにいちゃんは……」

「へっ?」

唐突な問いに素っ頓狂な声で返してしまう。
酔いで完全には回っていない頭が答えをひねり出すより先に、ブースターが動く。

「全部って、ここまで思ってたんだけど」

先程の僕の行動をそのまま返されるかのように、ブースターの手が内股を這う。
ブースターをイかせて、一仕事終えたような気分に浸っていた所であったため、突然の攻めに背筋を震わせる。

「そうだった、けど。ブースターそんなすぐにっ……」

言い終わるか終わらないかくらいには、抱きしめられて逆に倒されていた。

「おにいちゃんだって、我慢できないでしょ……?」

そう言われて、否定など返せるわけがない。
ただ、火照りきった頭で、ブースターのやわらかな体毛がこすれる触感を感じるだけで精一杯だった。
鼻先に熱いものを感じる。
やわらかなブースター舌によって僕の鼻先が濡れる。
そのまま頬を舐められた後に、円環の形の温かさを感じた。
自分から攻めていたときはあまり思わなかったのに、いざされていると、ブースターの甘いメスの匂いが、鼻をくすぐり、抵抗という反応を起こさせる。
ある種、屈辱的な思いがこみ上げてくるが、こんな体勢、しかもブースターの方が力が強いとなれば、もはやおとなしく、ブースターの首のもふ毛を眺めながら、頬へされている口付けが終わるのを待つ他無い。
時間の感覚があやふやになりつつある中で、長いキスが解かれる。
どれほどの時間、緊張が続いたかわからない。

「まったく、こうなっちゃうとおにいちゃんもかわいいね……。大丈夫だって、緊張しなくても」

ブースターのいたずらっぽい笑いに心臓が跳ねる。
自分もこういった事は初めてだけど、ブースターだってそのはずだ。
自分のほうが年も上で、何よりオスだし、普通だったら逆なのではと、今までの経験と常識と思っている事の中から推測するが、どうやらこの小悪魔には通用しないのだろう。
シーツの擦れる音、ギィとベッドが軋む音、それらがまるで大音響で広がっているのかと錯覚する。
お腹の上に手を乗せられる。
その行動を見ていたはずなのに、ピクリとお腹が震え、次第に下の方へとその手が移動していくのに合わせ、呼吸が震えていく。

「いいよね、聞かないよ?」

今までその存在を忘れかけていた自分のオスの象徴に、やわらかい毛が当たる。
くすぐったいような感覚を覚え、息を一度つまらせたが、すぐに熱いブースターの手が、僕を包み込んでいた。

「っう……ん」

刹那の間も開けず、軽く力を入れられて握られ、鋭い快感に体が跳ねる。
手足に力が入り、シーツを握るも、そうしたところで気休めにもならない。
握られたり、緩められたりを繰り返し、その刺激だけでも、一瞬にして快楽の階段を駆け登っていく。
もっと強く握るなり、扱くなりしてもらえれば、果てるくらいは一瞬だろうが、そんな事は口が裂けても言えない。

「そんな顔して。おにいちゃんこそ、自分でしたりとかしないの? 私結構おにいちゃんの事見てたんだけど、そういう素振りを見たこと無くてさ」

ぎこちなく首を横に振る。
なんだよ、さっきの仕返しでもしたいのか。
僕がやったことを繰り返されているような気がする。

「スグにイったら許さないよ? 約束ね」

約束ね、という強制の命令を植え付けられ、手を解かれる。
性感も最高潮に高まっていて、なおかつ、溜まっているという事実を知ったくせに、その命令はあんまりだ。

「ほら、力抜いて。目も開けててよ?」

そんなことを言われても、緊張し切って突っ張った手足の力は上手く抜けない。
半開きになっていた目は何とか開けられるものの、赤く染めたまま嬉しそうに笑みを見せるブースターの顔をまともには見られなかった。
ブースターはそんな僕の事にはお構いなしに、しなやかに体躯を絡ませ、そして、高温に熱せられた炉のような口を、息をするのに必死な僕の口に重ね、熱を押し付けてくる。
塞がった口からはくぐもった声を出すのだけで精一杯で、炉内で温められた舌が僕の口にねじ込まれ、舌どうしを絡ませられると、もはやウンとも言うことができなくなる。
一方では、上から重ねられたブースターの身体の中で、一番に繊細な部分が、僕の一番に猛々しくなっているモノを包み込み、彼女の体重で押し付けられている。
水音を立てながら、僕の口腔を犯し味わおうと、ブースターが身じろぎする度に、ゆりかごに寝かせられた息子が鳴き声を上げんばかりになる。
舌ごと唾液を吸い上げられ、無理やり僕の舌をブースターの口へと拉致され、そこで熱い歓迎を受けた。
巻きつけるように柔らかな舌でしゃぶるように舐められ、そして、再び唾液を吸われ、ブースターのと合わさり、それをお互いの舌で混ぜる。
他方でも、自分の竿からとめどなく出てくる先走り汁と、ブースターの蜜壺から溢れる愛液とが混ざり、お互いの性器周辺の体毛をぬるりとした感触に変えるまでに広がっていた。
密着した花弁に嬲られ、ブースターの熱をこれでもかと言うほど受け取る。
熱く、固くなり、『僕』の準備が整ったとブースターは感じたのか、ゆっくりと口を離す。
二つの舌が外気に晒され、湯気が立ち上る。
混ざりあった唾液が橋を掛け、窓から差し込む薄ら明かりに照らされて、一瞬だけキラリと光り、ぷつりと切れる。
その切れた橋は、水滴となって、僕の頬に降りかかった。
それをブースターが優しく拭ってくれるが、僕は恥じらいのあまり、目を背ける。

「そういうとこ、かわいいな」

ブースターがくすりと笑い、指で僕の頬をもう一度撫でる。
自分の頬が赤く染まっているような気がして、さらに少し顔を背けるようにし、目をとじる。

「もう、いいよね」

押さえつけられていた下腹部の重みが無くなり、牡が冷たい外気にさらされる。
そこで熱が少し抜け、いくらかの余裕ができたような気がしたが、そんなものはこれから起こる事に対してはなんの役にもたたなかった。

「そんなに固くならないで、なんで私よりおにいちゃんの方が緊張してるのさ」

そんなことを言われても、ブースターが上に乗っていて、目と鼻の先に顔が接近してて、ペニスの先には、彼女のアソコが触れている。
こんな状況、普通なら慌てふためくどころではない。
酔っているからか、緊張こそしているが冷静にこれから起こる事を待っている方が異常な気がしている。

「まあ、スグに楽にしてあげるから……いくよ?」

ゆっくり、ゆっくりと、ブースターは腰を下ろしていく。
しっかりと滑らかになった肉の壁を押しのけながら、じわじわと中に入り込んでいく。
摩擦のような抵抗はなく、狭い洞窟を進むような、そんな進み難さがあるだけだ。
声などは一切出さず、呼吸さえも忘れ、ただ先の方から根本へと包み込んでいく熱に集中し、こんな段階で粗相だけはしないように必死に押さえ込む。

「あ……、入ったよ」

思ったよりも呆気なく、全て飲み込まれてしまった。
恐る恐ると言った感じで腰を下げていたブースターも、時折小さく声を漏らしてはいたが、なんとも無く滑り込んでしまった事に驚いている様子だ。

「……っは……っはあ」

ようやく大きく息を付き、お互いに一度動きを止める。
とは言うものの、型でも取ったかのように、ピッタリと雄棒に絡みつき、優しくもしっかりと締め上げられている中では、落ち着こうとしたってそんな事はできない。
ブースターの方も、体重を全部僕に預け、身体同士を密着させながら、この均衡の中で作られる快感を楽しんでいるようだった。

「うんと……、おにいちゃんはリーフィアだし、おしべってとこかな? おしべすっごくイイよぉ」

ブースターは、余裕そうに喋るが、こちらには気の利いた返しをするような余裕は全く無い。
荒い息をしながら、頷くので精一杯な僕を見て、ブースターは大丈夫かと聞きながら笑いを堪えている。
しかし、その笑いを押し殺して肩を震わせている振動ですら、ジリジリと僕を追い詰める攻撃になっている。

「それじゃあ……」

ブースターの中で捕らえられた自らの分身が馴染んできた頃に、再びズルリと外に引きずり出される。
先は完全に抜けないように入ったままで、そこに集中して熱が集まり、脈動する情熱と、空気の冷たさが僕に緊張感を与え、次の行動に移る間をこの上なく長く感じさせる。
とてつもなく長い間を過ごした後、ブースターは一気に腰を下ろし、快感の塊を叩きつけてくる。
もはや僕の耐久値は風前の灯で、歯を食いしばって耐えているが、いつ崩れ去ってもおかしくない程の脆い城壁だ。
一つ一つの動きを確認し、まるで練習メニューでも行っているかのように、ブースターは早くもなく、遅くもなく、僕の竿を果実の中に収めたり、離したりする。
それが丁度いいバランスなのか、僕の牙城は辛くも持ちこたえることができていた。

「っは……すっご……っ」

僕の上で腰を振るブースターが吐く息に合間にそんなことを呟く。
僕の方は苦しいほどに快楽に浸かっているが、彼女の方だって繋がっているのだから同じようにでは無いとは言え、相当に感じているのだろう。
やめておけばいいのに、ブースターの心地よさそうな顔をもっと見たいと、自分で軽く突き上げる。
ちょうど降りてきたブースターとぶつかり合う。
身体同士が淫らな音を奏で、ブースターは10まんボルトでも当たったかのように、呻きのような声を上げ、身体を跳ねさせる。
しかし、自分に対しても余計な事をしたと、危うくイキかけたところで後悔する。

「そんなに我慢できない? それとも……。でも待って、もう少し」

少しばかりか繰り返す動きが早くなったようだが、相変わらずねっとりとした様な動きで獲物を味わうように往復運動を続ける。
次第にブースターの表情から余裕の色が無くなり、時折漏らす小さな嬌声と艶やかな吐息が、その予兆を教える。

「あっ、は……ぅく……」

ブースターが息をしようと開く口から見える牙は唾液の糸を引き、僕の方を見てはいるが、その目の光は虚ろな様子だった。
腰を振る周期こそ変わらないが、初めより丁寧さが無くなり、餌を貪る獣のようになっている。

「ブースター、そ、これ……」

「な……ん、ぁっ……!」

もう少し抑えてほしいと訴えようとした矢先、ブースターの返答が途切れ、動きが止まる。
一瞬何があったかと思ったが、顔を僕の胸にこすりつけながら、ビクビクと震えて苦しそうに呼吸をするブースターを見て、答えを思いつく。

「い……った?」

「うるしゃ……」

目を潤ませて恥ずかしげに僕の飾り葉で顔を隠そうとする姿がたまらなく可愛い。
密着した股がじわじわと濡れていき、ブースターの香りがより色濃くなる。
一呼吸の休みが置かれ、お互いに程よく落ち着いたところで、まだ熱の冷めないうちにとばかりに、ブースターは体勢を戻した。

「こんなに気持ちいいなんて、ごめんね私ばっかり」

「いや、良いんだけど……もう少し抑えて……」

「やーだ」

そうブースターが言うと、彼女の内へ入り込んだ尖兵が助けを求めてくる。

「ちょっ、まぁ!」

どこに力を入れれば、どこがどう動く、そんなことを把握しきっているからこそ、自由自在に攻められる。
先程までより強い力で締めつけられ、捕虜となった兵士は自白してしまおうかと諦めてしまいそうだ。
こんな拷問、一体どこの誰が耐えられるのか、本当に悪魔のようである。
ゆっくりとブースターは出し入れを始めるが、少しして、一際大きく息をつくと、一気にテンポが早くなる。

「く、ぁは……っ」

「ん、っん、ぁっ……ふ」

その加速に合わせ歯の間から抜ける僕の息と、ブースターの漏らす喘ぎ声も早く、激しくなっていく。
体全体に力が入らず、ブースターの熱で融解でもされてしまったのかと思うぐらいだが、不思議なことに自分のおしべは深くブースターを穿ち続ける。
ブースターも、かろうじて僕に倒れこまないように耐えているだけのようで、打ち付けられる下腹部以外は、小刻みに震えて力があまり入っていないようだった。
乱暴に扱きあげられ、これ以上ない享楽を味わい続け、思考など停止し、もはや何故こうして耐えているのかもわからなくなり、最後の理性の糸が切れる。
その途端に、一気に頂上への歩みを進め、下半身へ引きつるように力が入る。

「も……ぶー……すたー。だ、め……」

許しを乞うように言葉を絞り出す。
ブースター自身も答える余裕など無いのか、淫らな声と熱い息を吐きながら、倒れ込むように僕の肩にしがみ付いた。
何かブースターが言った気がしたが、その言葉が頭に届かない。
あっと思った瞬間、ついに決壊し、自分のすべてを濃縮したような精を、強く、何度もブースターの雌花へと吐き出しながら果てた。
背筋を貫くような快感が濁流となって、頭の中を真っ白に染め上げる。
時間をかけて、入念に装填された白濁が、自分の牡を通って脈打つように注ぐ感覚、それだけが少しの間続き、高まった熱のせいか、しばらくの間満悦に浸っていた。
しばらく経ってようやく状況がわかるようになって来ると、自分にしがみつきながら、同じく果ててしまい、肩で息をしながら、まだ熱に浮かされているブースターにようやく気付く。
ブースターの頭に手を乗せ、優しく撫でると、若干の高揚を残したブースターがゆっくりと顔をこちらに向け、ありがとう、と声に出さず言い、そのままキスを交わした。
性臭と、メスの甘い香りが鼻につく中、口と性器、両方の繋がりを解き、お互いに寄り添ってベッドに寝転んだ。

「本当に、良かったのか」

最初は自分から口を開いた。
今更ながらに、若干の後悔がある。
この後、自分はどうして行けば良いのか、そんな不安が冷静になった脳に浮かんでいた。

「私は、良かった。とっても、幸せ。むしろ、ほとんど私のわがまま聞いてくれてありがとう……」

目に涙を滲ませながら、ブースターはこちらの胸に頭を埋めてくる。
今日は、色々な事があり、相当にブースターは疲れていたのだろう。
その後すぐに寝息をたて始めた姿を眺めながら、自分も目を閉じた。
明日の新しい朝に、ブースターの朝ごはんを作らなければいけない。



One day

「さあ、記念すべきダブルコンテスト、その初めての舞台を飾るのは、ブースター、リーフィアペア! そして、テールナー、ゲッコウガペアです!」

大歓声に包まれる中、四匹のポケモンがステージに上る。
お互いのペアともに、呼吸の揃った舞台挨拶を軽くし、それぞれが描かれている円の中に入る。

「ブースター、初めての舞台、全力で行こう」

「もちろん、おにいちゃん!」

ペラップの宣言とともに、ステージは炎に包まれ、両ペアの姿が円から消える。
激しい攻防と華麗な技、そして、完全にシンクロしたコンビネーション。
このステージの新たな幕で、繰り広げられる戦いは、これから先もずっと続くだろう。
二匹の想いと共に。


Fin


#hr

こんな事にならないかなと願う日々でございます。
書き上げてみるとなんか、偏った考えなのかなとか思ったり、でも好き。
次に何書こうかと考えるのですが、まだしばらくは妄想の日々になりそうです。

#hr

感想なり、批評なり、なにか一言でもいただけると泣いて喜びます

#pcomment


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