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[[同的3]]の続きです

#hr

僕はそのあと3日3晩熱にうなされてずっと寝てたらしい。
「ふぁ・・・」
「シャオ!おい、シャオ!起きたか?・・・」
「父さん?」
「そうだ。大丈夫か?」
「うん・・・」
「俺がいない間も友達がずっと見ててくれたからな。」
「フィーア?」
「そう。で、今家に帰ってまた来るって。断ったんだけど・・・どうしてもっていうから。親御さんと話していいっておっしゃったのでまた来るそうだ。」
父さんとのひと時をしばし僕は楽しむ。僕は今の今までずっと寝てたみたいで、フィーアはその間ずっと僕を看病してくれてたみたい。
ぴんぽーん!
「あっ、来たかな?」
「こんばんは、大丈夫ですか?」
「君もうつされないようにな。」
「わかってます。」
ドタドタと足音がしてこっちに誰かが近づいてくる。
「はぁっはぁっ・・・」
「フィーア・・・そんなに急いでどうしたの?」
「いや目が覚めたって聞いたから・・・その俺はね・・・俺はね・・・看病し続けたいって思ったから来たんだよ。断っても居座るよ。」
うわぁ・・・嫌なのが来た・・・ってのは冗談でフィーアの気持ちだけは素直にうれしかった。
「お茶飲む?」
「フィーア、それはこっちのセリフだって。」
「ところで・・・監督からの伝言です。」
「はぅぁあ!」
忘れてた!木曜から3日3晩寝続けてたってことは・・・えーっと木、金、土、日・・・試合・・・
「試合だ!」
「そうだよシャオ。選考はおろか試合ももう終ったけど。監督が起きたら残念だ、と伝えてほしかったみたい。」
「うわぁ〜。で、どうだった?」
「もちろん負けたって。結構今回はいい線いってたんだけど。ゼクスがまたもやポカやっちゃって突き放されちゃった。」
「見たかった・・・」
「ノインと監督が連名でメッセージをくれたよ。“ミスター残念、またも残念”だって。」
ノイン・・・ほんとにもう・・・僕は残念すぎるよ・・・
「試合だけど、僕は看病してて見れなかった。そう言えば明日終業式だよ。そしたら記録会まで自主練。シャオは状況に免じてノルマ3ラウンドだって。よかったね。」
ん〜喜んでいいとこじゃないと思うけど・・・
「そうか、次は記録会か・・・また嫌な記憶がよみがえってきたなぁ・・・」
「監督が、もしコンディション的に難しいなら、会場設営の手伝いやってもいいって。手当も出るよ、って。俺は30mだけでも出場するけどね。」
フィーア・・・やる気満々だよね。
「だからさ、早く元気になって、一緒に自主練しよ。」
「うん・・・フィーアありがとう・・・」
僕は熱を測るけど・・・まだもうちょっと無理に動けない。
「シャオ・・・ほんとにこんなことになって・・・」
「フィーア・・・別にいいよ。たまたまだったと思っとくよ。」
「シャオ・・・」
ぎゅうっ!フィーアはまた僕に抱きついてきた。
「あのーしんどいし・・・フィーア風邪、ほんとにうつるよ・・・」
「あ・・・ごめん。」
フィーアはすぐに僕を放してくれた。
「あれ?」
「どうしたの?」
「服・・・・」
うなされてる間僕はかなりの汗をかいたみたいで、服が変わってることに気付いた。ベッドのシーツだけはびしょびしょだ。
「シャオのお父さんと2人がかりでシャオの服かえたんだよ。汗がひどくてこれ以上熱が出たら困るからって。」
「フィーア・・・父さん・・・」
僕はいまだに風邪という状況だけどすこしうれしくなった。

「シャオ・・・あの・・・」
フィーアが眠ってる僕に話しかけてくる。
「ふにゃ・・・どしたの?」
「ごめん・・・ほんとに・・・」
フィーアはまだ気にしてる。もう手遅れだって。
「僕にあんなことをしたフィーアを許さないよ・・・」
僕の言葉をフィーアはとくに驚きもなく受け入れた。「わかってる・・・だけど・・・あんなはしたない声出して喘いでたの誰だっけ?」
フィーアの得意の喋りのパターンだ。僕は恥ずかしくなって語気を弱める。
「ぁ、ぁれはそのぅ・・・」
「・・・ごめん。」
フィーアがとたんにしおらしくなったので僕は話を続ける。
「フィーアは寂しいんだよね。ずっと自分のことを評価してもらえないって・・・」
「え?・・・」
フィーアは僕のほうをじっと見つめる。
「子供のときからそうだったよね。何かしても褒められることもないし、怒られるときだけ・・・ってずっと言ってた。」
「・・・」
フィーアは何も言わない。僕の失礼ともとれる邪推にずっと聴き入ってる。
「だからフィーアは必死で努力したんだよね。部活でも。」
「でも・・・結果を残しはじめたら怪我をした・・・ほんとに俺はついてないよね。」
フィーアがすごく悲しそうな顔をしてる・・・
「ねぇ、フィーアおぼえてる?小学校のときのこと・・・」
「え?うーんわからない。」
「小学校の運動会の全員リレー。」
フィーアは思い出したのか少し笑顔になる。
「あの時、僕たちのクラスはいい順位を争ってたんだよね。ところが僕が倒れて順位が下がっちゃった。でもフィーアは諦めずに全力で走ってくれた。順位は戻らなかったけど。フィーアはそのあと僕の所に来てごめん、って言ってくれた。普通に考えたら僕が謝らないといけないのに。」
「シャオ・・・その時から残念だよね・・・」
フィーアは茶化す。
「そうだけど。僕はフィーアの何事にも諦めない姿勢が好きだよ。だから今でも諦めないで。」
「シャオ・・・ありがとう。俺は・・・ついてないんじゃない・・・むしろ幸せだ。よし、俺はやるぞ。」
フィーア・・・
「記録会までの半月、毎日練習する。シャオも来るよな!」
え?
「そりゃ、シャオが俺に火つけたんだから来るのは当然だろう。」
ええっ!
「とりあえず、記録会でシャオ並の記録を狙うから、シャオも負けないように練習しよっ。」
「フィーア・・・わかった・・・」
「早く風邪治してね・・・」
ガチャッ
「お前ら、ご飯持ってきたぞ。」
父さんが粥とご飯を作って持ってきてくれた。
「お父さん、ありがとうございます。有り難くいただきます。」
フィーアは感謝したあとご飯をゆっくり食べる。
「じゃあ仲良く。1時間くらいしたら茶碗とか取りに来るから。」
そう言うと父さんは僕の部屋から出ていった。僕も粥をゆっくり食べる。
「シャオってさ・・・声あんまり変わらないよね。」
「え?」
「いやぁ、喘いでたときの声が♀みたいだったからさ・・・」
ぶっ・・・僕は粥を噴いた。
「なぁっ、何言ってるんだよぉ・・・もういい加減やめて・・・」
「ヌルにも同じことしたけどヌルより反応がよかったからさ・・・」
♂のフィーアにこんなこと言われるなんて・・・
「・・・忘れて。」

「まだ食べてんの?」
フィーアは早々に食べ終わったみたい。
「ご飯くらいゆっくり食べさせてよ・・・」
「おかゆだよ?」
「・・・いいじゃん・・・」
フィーアはゆっくり食べてる僕をせかす。でもフィーアはうきうきしてるみたい。なんか楽しそう。風邪の身分の僕としてはちょっとうらやましい。
「おーいご飯食べたか?」
下の階から声が響く。
「ほら、早く食べないと。」
「さっきから30分しか経ってないよ・・・」
ガチャッ
「まだ食べてたのか。ま、ゆっくりしな。たまにはいいだろ。」
父さんとフィーアが僕が食べ終わるのをじっと見てる。
「そんなに見られたら食べれないって。」
「そうか?じゃあもっと見てやる。」
父さんまで意地悪そうに僕にそう言う。でも僕はマイペースに食べ続ける。
「おいしかった。ごちそうさま。」
「そうか。よかった。」
食器を持って父さんはキッチンに下りて行った。
「シャオのお父さんの前では一応真面目を装っとかないとねぇ~。」
フィーアは意地悪そうな顔をした。
「まだネタにしますか?」
「いやいや、そういうわけじゃないけど、付き合いっていうことを考えたらそうしとかないとねってこと。」
フィーアは僕との付き合いが大事みたい。
「そりゃ、長いからね。うちの親もよくシャオのこと知ってるし、いい友達だって言ってるし。」
「そのいい友達に手を出すの?しかも♂に。」
「あれは・・・事故です。俺は・・・」
わっ、言い切った。風邪の僕によくも・・・
「ごめん。その・・・本当にその時俺は何も考えてなかった。」

「お~い、フィーア君は風呂入るの?」
下から父さんの声がした。
「あっ、入ります。着替え持って来たんで。じゃっ、この続きは後で。」
別に聞きたくないけど。自分が友達に襲われた理由なんて。フィーアはさっさと風呂場に行ってしまった。
僕はいろいろと考える。試合のこと。フィーアのこと。フィーアは僕にはしたないことをさせたけど、でもあの時フェアじゃないって言った。どういうことなんだろう?

「やっ!」
「ああ、お風呂早いね。」
「そう?いつもこれくらいだけど。」
フィーアは少し汗をかいてる。
「そう言えばどこで寝るの?僕のベッドで寝たら風邪ひくよ?」
「いっつもこれくらいの時間にシャオのお父さんが布団持ってきてくれるんだ。」
ガチャ
「お待たせ。布団だよ。シャオも早く寝て元気にならないと。お休み。」
「ありがとうございます。おやすみなさい。」
「おやすみ。」
父さんは布団を敷くと部屋から出て行った。フィーアはすぐゴロンと横になった。
「で、さっきの続きだけど。聞きたくなくても聞いて。嫌だと思うけどお願い。」
「・・・・」
「あのね、俺がシャオに手を出したのは前も言ったけどいやらしい顔が見たかったって。でもあれは半分嘘で半分本当なの。」
フィーアは何やら申し訳なさそうに話している。
「風邪のときだったら抵抗されない、とかそんな打算的な考えもあった。でもよく考えたらただ俺の支配欲を満たしたかっただけなんじゃないかって。シャオの気持ちも考えずに・・・」
「あのさ・・・なんであのときフェアじゃないって言ったの?」
「へ?」
フィーアは僕の質問に少し戸惑っている。
「自分で言ったこと忘れた?」
「そんなわけない。ちゃんと憶えてる。シャオが憶えてたのかなって。あの発言の真意は、結局罪悪感を中和させたかったんだと思う。シャオにだけひどいことしてって。
シャオが嫌がってるのに散々嫌な目にあわせてそんなことをした自分が嫌で仕方なかったんだと今は思う。」
「フィーア・・・」
僕はフィーアは罪悪感だけで動いたんじゃないとも思った。だってフィーアはあの時の前からもずっと僕に何かしたら必ず謝ってくれてた。
いつだってフィーアは僕とだけの時は僕を優先してくれてた。フィーアも僕のことをどう思ってたんだろう。
フィーアの行動は欺瞞ってみんなは言うかもしれないけど、僕だけはそれを信じない。申し訳なさもあるけど、少し僕に対する思いやりっていうのを感じる。
眠いなぁ・・・瞼が重い・・・もう考えるのをやめるか・・・

「シャオ!おはよう!」
フィーアはすごく元気な声で寝てる僕にあいさつしてる。
「うにゃ、フィーアおはよう。」
「今日終業式だけど、無理しないほうがいいよ。動けるの?」
フィーアは僕に気づかいを見せてくれた。僕は体温を測る。まだ少し熱がある。熱があっても学校には行きたいけど・・・
「行く。」
「ダメだって。」
即答で返された。
「行くって。」
「寝てなきゃダメだって。どうしてもって言ってもダメなものはダメ。」
「フィーアは僕の保護者なの?」
僕はついつい聞いてしまう。別にそんなこと聞きたかったわけじゃないんだけど。
「それ以上かな。普通親だったらこの場面は無理強いしてでも行かせるでしょ。」
「じゃあ行かせて。」
「ダメだって。」
同じ問答を延々繰り返す僕たち。どしどしと音がして父さんが僕の部屋に来そうな気配。
ガチャ・・・やっぱり父さんだ。
「シャオ、まだ寝てたほうがいいよ。まだ意識が戻ってから1日しか経ってないんだから。」
「うん・・・」
「さ、決まりだね。休んだら多分先生か監督が家に来るよ。」
嫌だなあ、何て言うかすごく嫌だなあ。監督って・・・
「じゃあ学校行ってくるから。」
「すっかり住人だね。」
「いやぁ・・・褒められても・・・」
ほめてないって。でもフィーアのおかげですっかり元気になったし・・・ってあれ?僕はフィーアの行動が原因で3日3晩寝たまんまだったんだっけ?
まあいいや、どっちにしろ選考に出れないから試合には出れなかったし。試合見たかったな。
僕はカレンダーを見る。記録会まであと半月。その間はフリーだから練習して取り戻さないと。

フィーアはリビングで朝ごはんを食べて学校に行ったみたいだ。僕は少し寝て熱が下がるのを待つことにした。
その日は結局1日寝たままで終わってしまった。でも体温も普通に戻ったし、元気にもなった。フィーアもなぜかまた今日泊まることになってるし。
僕は風呂に軽く入って明日に備えることにした。

「シャオ、明日の予定を言うよ。」
「はいどうぞ。」
「えっと・・・明日は3ラウンド射つよ。とりあえず感覚を戻さないといけないんで。」
「ハードだね。」
「シャオは別に自分の射ちたいようにしたらいいよ。近射だけでもいいし。距離3ラウンドがっちりしてもいいし。僕は早く距離射てるようにならないと。」
僕は少し考える。どうするべきか・・・距離を射つか・・・無難に近射から始めるか。
「ま、もう遅いし。明日考えたらいいよ。」
「そうだね。・・・ふぁぁぁぁ・・・」
むにゃむにゃ・・・

「オ・・・シャオ・・・」
誰かが僕を呼んでる・・・朝なのかな・・・
「ん~なぁに?」
「シャオ・・・起きなさい・・・」
誰だろう?・・・

「ふぁ・・・?」
僕は目を覚ました。周りを見ても誰もいないし、フィーアはすごい気持ちよさそうに下で寝てるし・・・僕は時計を見る。
「3時?早起きだなぁ・・・」
って何独り言で冗談言ってるんだろう。僕はベッドから起きて一応トイレに向かう。
「ふぁぁぁ・・・」
僕はちらっとリビングのほうを見た。明るい。電気がついたままなのかな。僕は少しの不安を胸にリビングに行く。
家にいるのに心臓がドキドキする。何かあったのかな・・・
「おう、まだ起きてたのか?」
父さんの声がした。
「う、うん・・・父さんこそ何してるの?」
「んー?こっち来るか?」
父さんの声に誘われるがまま、僕はリビングにどんどん入っていく。父さんが何やら眺めている。
「シャオの通知表だよ。今日シャオが寝てる間に先生が持ってきてくれたんだよ。」
「つうちひょう?あぁ・・・」
そっかフィーアが昨日は終業式だって言ってたね。僕は僕の成績を知らないわけだ。知らなくていいってことのほうがほとんどだけどね。
「何か書いてあるの?」
「成績だよ。」
そりゃそうだ。そんなことはわかってますって。成績以外のことは書かないでしょ。成績に何が書いてあるか知りたいんです。
「見せてあげてもいいけどね~。やっぱダメ。」
「え~なんでぇ・・・」
父さんも僕に少し意地悪する。
「他人が評価した自分のことを知るのは怖くないか?」
なにそれ・・・そんなたいしたものじゃないでしょ、普通に考えて。
「冗談だよ。こっちに来なさい。」
僕は父さんに言われるがままに父さんのほうに近づいていく。父さんは僕の頭を大きな前肢でなでる。
「よくここまで、成長してくれた。」
「え?」
「俺は何もしてやれなかったかもしれないけど、シャオは自分で選択した道を歩んでる。そう通知表には書いてあるよ。」
「そんな・・・」
言葉が出なかった。父さんには感謝してもし足りないくらいだ。僕が困ったら助け船を出してくれて、なんでもしてくれて・・・そう考えると涙が出てくる。
「なんだ、泣いてるのか?」
「ぅぅん・・・泣いてなんかないよぉ・・・」
「俺は幸せ者だな。自分の子の成長をずっと見てられるんだから。これが本当の孝行息子ってとこか。」
「ふぇ?」
「そう安心してられなくて、心配をかけるけど、その分ちゃんと期待・・・とはいかないけどちゃんと成長して学んでくれる。」
「ふぇぇぇぇん・・・」
僕は涙が止まらなくなる。なんでだろう・・・何の恐怖も感じないのに。
「ま、気が済むまでゆっくりしときなさい。俺は少し眠る。」
そういうと父さんは自分の寝室に向かって行った。僕の涙はおさまったけど、まだ少し頭がぼーっとしてる。
「僕の一生?・・・」
最高の友達がいて、いい父さんがいて・・・でも、僕は・・・いや、これだから僕なのかな。この環境にいるからこそ僕なのかな。
「・・・シャオ?」
「わぁっ!」
フィーアが後ろにいた。ぼーっと考えてたらいつの間にか起きてたみたい。
「シャオ・・・どうしたの?目、潤んでるよ?」
「なっ、なんでもないよぉ・・・」
その言葉を言った瞬間だった。
ぎゅぅっ・・・フィーアは僕を後ろから強く抱きしめた。
「シャオ、シャオが悩んでるなら、俺は力になりたい。こんなこと言える立場にないと思うけど。それでも力になりたい。だって・・・」
僕はその言葉の先を知ってる。
「友達だからでしょ?」
「うん・・・ただの友達じゃないけど。親友っていう言葉でも片づけられない。」
フィーアは優しい、普段とは違う顔で僕を見る。僕はフィーアを見て今まで考えていたことを吹き飛ばす。
僕の心の不安やもやもやはフィーアの言葉・・・抱きつく力で押しつぶされた。
「どう?少し落ち着いた?」
「うん。ありがと、フィーア。」
「落ち着いたら寝よっか?」
「うん・・・」
僕はフィーアに連れられて自分の部屋に戻り、再び眠りに就いた。

「オ!・・・シャオおおおおお!」
「わああぁぁぁぁっ!」
僕は一気に目が覚めた。フィーアが叫んだからだ。
「おはよう・・・・ゼイ・・・ゼイ・・・」
フィーアは叫びすぎて息も絶え絶えだ。
「そこまで身体はって僕を起こさなくていいのに・・・」
僕は本音を漏らす。フィーアがわざわざ起こしてくれたのに。そこは気を使わないとね・・・
「いやぁ・・・シャオが朝苦手だっていうから、大声出したら起きるかなって思ったんだよぉ・・・」
フィーアは照れてる。フィーアらしくないなぁ。
「今日は部活行くよ。」
「そうだね。着替え持ってきてるの?」
「うん3泊分は。」
そう言うとフィーアは学校のカバンを取り出して、中身を僕に見せた。確かに3泊分の荷物が入ってる。
「ってことはあと3泊するの?」
「ん~。シャオが迷惑に感じない範囲で。シャオのお父さんは何日泊まってもいいよって言ってくれたけどね。」
フィーア・・・恐ろしい。もうすっかり父さんもフィーアのことを信じ切ってるし。嫌なことされなかったらそれで僕も十分だけど。
「シャオは何泊してほしいの?」
「えっ?うーん、じゃあせっかく3泊分荷物持って来たんだから、3泊で。」
フィーアは笑顔で僕を見る。すっごいうれしそう。

ガチャ
「くぉらぁぁぁぁ!朝から何かと思ったぁあぁぁぁ!」
父さんがすごくあわてた顔で僕の部屋に入ってきた。
「とは言ったものの。おはよう。シャオ、フィーア君。」
「おはようございます。」
「おはよ。」
フィーアは何やら僕を見た。
「ほら、ちゃんと挨拶しないと。」
「ふぇっ?」
「そうだぞ、シャオ、ちゃんと挨拶しないと。」
父さんもフィーアも僕が適当に挨拶を流したのが不満みたい。
「・・・おはようございます。」
フィーアが僕の頭を前肢でなでる。
「よくできました。」
父さんもフィーアも満足したみたい。
「じゃあ、朝ごはんできたら呼ぶからそれまで準備して待ってな。」
「は~い。」
父さんは部屋から出て行った。フィーアは何やら父さんがリビングに下りて行ったのを確認していた。
「何してんの?」
フィーアは僕に近づく。そしておもむろに手を・・・
「ひゃぅぅっ!・・・な、なにしてんだよぉ・・・」
「朝は元気だね。下も。」
フィーアは朝勃ちしてる僕のモノを服の上から触って笑顔で言った。
「どう?テンションあがった?」
「上がるわけないでしょぉ・・・」
「あり?ごめんなさい。ついつい手が出ちゃって。シャオがかわいいから。シャオのも。」
フィーアは僕のモノから手を放す。僕はフィーアの言葉の意味を知って顔が真っ赤になった。
「な、何言ってんだよぉ!そ、そんなことより早く着替えるよ。」
「そだね。」
僕たちはお互いを茶化しあいながら着替えを済ませた。

「ご飯だよ。」
下から父さんの元気な声が聞こえる。
「は~い。今行く。」
フィーアと僕はリビングに向かう。すると朝ごはんのいいにおいがした。
「わぁー、おいしそう~。」
「どうだ!」
父さんは誇らしげに僕たちに朝ごはんを披露する。
ぐるる~、僕のお腹が鳴った。
「シャオ、そんなにお腹すいたのか。」
「そりゃ・・・もう・・・」
否定する気にもならない。本当にお腹がすいた。よく考えたら昨日まで何も食べてなかったっけ?寝てたし。体力落ちてるだろなぁ・・・
「いただきます。」
「いただきま~す。」
僕は朝ごはんをあっという間に食べる。ものすごい空腹も少しは満たされたみたい。
「今日部活いくんだろ?監督今日いる?」
「たぶん、今日はいないと思いますよ。記録会以降なら練習あると思いますんで。」
「そうか、ありがとう。」
「フィーアって詳しいね。」
僕は思ったことを率直に話す。
「いやぁ、いろいろ援助してもらって結構詳しくなった。監督にも、シャオのお父さんにも援助してもらったから・・・」
「へ?どういうこと?」
父さんが?父さんに視線を向けると父さんはちょっと気まずいって顔をした。
「いや、あの・・・シャオ・・・落ち着きなさい。」
その言葉は僕をさらに刺激する。
「援助ってのは弓のことだよ。変なこと考えたらダメだよ。」
「なんだ。弓か。」
僕は残念だな~と思いながらも少しほっとした。
「フィーア君が弓の左右を変えてまたやるって言ったから、そうすると金額面でちょっとかわいそうだから、割引をね・・・」
「援助って言うほどのでもないよね。」
僕は本音をポロっとこぼす。
「シャオ!俺は十分シャオのお父さんの好意を受け取れたからいいの!」
あちゃー。フィーアに怒られちゃった。逃げるように僕は荷物をまとめて学校へ行く準備をする。
「シャオ、大丈夫?まだ回復したばっかりだから無理は禁物だよ。」
「フィーア、ありがと。でもやらないと体力は落ちてくるし。」
フィーアは僕に笑顔で言う。僕は少し照れて、顔を上にあげる。

「じゃ、行ってきます。」
僕たちは家を出る。父さんは僕たちを笑顔で送り出した。僕は4日ぶりに学校へと向かう道を歩く。
「う~シャオ・・・暑いね。」
「そう?これからまだ暑くなるよ。」
「やだなぁ・・・太陽が出てるうちはいいんだけどね。夜は蒸し暑いだけだから、草タイプの俺には辛いんだよ。」
「僕も夜は苦手だな~。」

僕たちは学校につくと部室に向かった。部室の前に付くとドアが少しだけ開いてた。
「あれ?ドア開いてる?」
「ホントに?あ、ホントだ。誰かいるみたい。」
フィーアが恐る恐るドアを開けるとそこには・・・
「やぁ!ってシャオ!元気になったんだー!よかった・・・・」
ケイがいた。もうユニフォームを着てる。あ、僕たちのほうに向かってくる。
むぎゅうっ・・・ケイまで僕に抱きついてくる。
「風邪治ってよかった~。試合にこなかったときは本当に心配したんだから~。」
「わかったって・・・ほんとにありがたいから放して・・・」
ぎゅっ・・・ケイの僕を抱く力はさらに強くなった。
「こらこら。ケイ、俺を差し置いて何やってんだよ。」
はぁ・・・はぁ・・・やっと放してもらえた。
「何?なんか文句あるの?」
ケイとフィーアは少し睨み合ってる。
「ケイってそういうことするキャラじゃないと思ってたんだけど。」
「そう?たぶんドライの影響かな。シャオって誰にでも抱きつかれてるけど、嫌な顔もニヤニヤもしないから・・・」
僕の問いにケイはあっさり答える。ちょっと恥ずかし・・・
「何?俺にはしてくれないの?」
「当たり前でしょ。フィーアにはヌルっていう立派な彼女いるじゃん。シャオは考えがあんまり深くなさそうだからいじりやすいんだよね~。」
ケイはよく僕をからかうけどそういうことが・・・
「あ、今の発言はシャオを馬鹿にしたんじゃないよ。ただとっつきやすいってだけで。」
「わかってるよ・・・さっさと練習しないと・・・」
僕たちはユニフォームに着替えて弓を組んでレンジに向かった。

「さて、今日からもう近射するか。」
「もうするの?」
「もう大丈夫でしょ。」
フィーアはそう言うと近射台のほうに向かって行った。ストレッチを済ませた僕は的を張り50mラインに立った。
「さて、やるぞぉ・・・」
矢をつがえた僕はゆっくり弓を引いて・・・カチッ・・・・シュー・・・カッ・・・矢は的の中心から大きく外れた。
「うわぁ~白いところ行った~1か2だ・・・。」
50m36本採り終わったところで僕の点は132・・・ひどい・・・体力落ちてるとはいえこれは・・・
意気消沈しながら30mラインに向かうと、ケイがドライを引き連れてやってきた。
「やぁ!元気になったみたいだね!」
「ドライ、ありがと。」
僕とドライは会話を交わすとドライはケイのいる方向に走って行った。ケイとドライは隣同士で射つみたいだ。
「うわぁ~もうだめだ~。」
30mもやっとこ278って・・・足して410・・・悪い・・・悪すぎる。
ドライが矢取りに行くときに方向を変えて僕のほうに来た。
「どうだった?って期待はしてないよ。」
「410だった。」
「ありゃ、やっぱり射ってないと下がるよね。50mが132かぁ・・・シャオの実力だとどれだけ悪くても150載せないとね。ま、がんばって。ケイが待ってるから。」
そう言うとドライは再びケイのいる的のほうに走って行った。
近射して射形みてからもう一回距離取ろうかな・・・僕はそう思いフィーアのいる近射台のほうに向かう。
「おっ、もうあきらめた?」
「違うよ・・・点が低すぎるんだよ。はぁ・・・ちょっと調整。」
「何点?」
「・・・410・・・」
「仕方ないよ。最後に射った時は497だったんでしょ?そっから風邪ひいて体力落ちてってなったら相当だよ。」
僕を励ましてくれるフィーアだけど、フィーアはそろそろ距離を射ちたそうだ。僕は1ラウンド分近射して再び距離で点を採る。
「シャオ!俺もそろそろ距離射ちたいんだけど、どうしよう?」
「とりあえず5mと18mでそれぞれ1ラウンド分とってからやったほうがいいよ。じゃ、僕はもう一回距離射ってくるから。」
僕はとりあえず距離を射った。
「・・・うーんやっぱり不調かなぁ・・・」
「シャオ・・・どしたの?」
ケイだ。がっかりした様子の僕を見つけた。
「うーん・・・トータルで433でっす。」
「あちゃー。まぁ、だんだん取り戻してったらいいよ。監督から聞いたよ。熱にうなされて起きなかったって。」
ケイは僕を慰めるとさっさとドライの所に戻って行った。
「シャオ、終わった。」
「あ、フィーア。終わったよ。」
「最後どうだった?」
僕は少し答えに詰まる。
「え・・・あ・・・うーん・・・433だった。」
「そっか・・・まあ最初より上がってよかったね。」
「フィーア、ありがと。」
僕たちは部室に戻る。

「シャオ!お昼食べようよ。」
フィーアは急に明るい顔で僕に話してきた。
「そうだね・・・なんだかんだでもう12時だしね。」
僕たちは父さんが作ってくれたお弁当を食べる。
やっぱり僕はまだ少し物足りないといった感じだけど、フィーアが食べ過ぎると胃がしんどいよ・・・って言ってくれたから止めることにした。
お昼を食べてゆっくりして家に帰った僕たちは弓の話をしたりして、楽しい時間を過ごした。
僕もすっかり元の生活に戻ることができた。フィーアは予定通り僕の家に3泊した。その間フィーアはうれしそうにしてた。

そのあと僕はフィーアに連れられて記録会まで連日毎日のように射ち続けることになった。

続きます

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