#author("2025-06-30T09:50:39+00:00","","") #author("2025-06-30T11:16:22+00:00","","") &color(red){この作品は成人向け描写、BL要素を含みます。}; *似合わない花 [#y66c13d3] 「グラ……デシアの花?」 《グラシデアの花》ですよ、ガブリアスさん。と、俺は年下のラウドボーンに訂正される。ラウドボーンと共に出たダブルバトル大会後に、身体の汚れをとりながら控え室で話していた。 「父の日のプレゼントにはぴったりだと思いまして。今日は帰りに花屋さんで買おうかなと」 厳つい見た目とは裏腹に、ニコリと笑ってそう言うラウドボーン。そう、明日は父の日なのだ。自分たちの父親に、感謝を伝える日。それを前にして、上機嫌にプレゼントについて語るラウドボーン。俺はその様子を微笑ましく、同時に彼の父を羨ましく思ってしまう。親孝行者の息子を持つのはいいものだな、と深くため息をついた。 「ガブリアスさんは父の日のプレゼントもらったことないんですか?」 「……アイツだぞ、くれたことねぇよ」 「えー、そうなんですか? 意外です、彼ならこまめに渡してそうな気がしたんですけど」 ラウドボーンは驚いた様子だったが、アイツは外面だけは良いもんだから、ラウドボーンが分からないのも仕方ないだろう。俺とラウドボーンは少し長い付き合いで、今となっては時折ダブルバトルに共に出たり、逆にシングルバトルで敵として戦ったりすることもあるが、何年か前は彼のバトルの特訓に付き合っていたのだ。数年間の付き合いともなると、俺の家に飯を食いに来たり、バトルビデオをみたりでウチに来ることもあり、そこで俺の養子であるアイツと何度か出会うこともあった訳だが、猫を被ったアイツしか見たことは無いだろう。アイツの外面だけを知ってる状態なら、そんな風に思ってしまうのは無理はないか。そう理解はするが、それでも頭を抱えずにはいられなかった。 「普段のアイツはぐちぐちうるさい生意気な奴だぞ。そんな奴が何かよこすなんて、考えられもしない」 「あー、なるほど。《てれや》さんなんですね」 ピタ、と俺はそれを聞いて動きを止めてしまう。耳を疑うような言葉だった。俺から見たアイツは、てれやなんてちっとも見えやしないから、そんな風に言われたことに衝撃を受けてしまったのだ。 「え?なんかおかしなこと言いました?」 「……いや。お前ってほんと《てんねん》だよな」 「えへへ、褒めてますかね?」 褒めてないよ、と言いたいところだが、どこか笑顔の彼には言いづらい。しっかり者ではあるんだけど、どこか《てんねん》と言うのか、なんと言うのか。そんなラウドボーンの独特な感性に、俺は目を伏せる。苦労を理解されないことに悲しみを覚えるなんて子供じゃないんだからと思いつつも、アイツがそんな風に見えていることはなんだかムカついて仕方ない。だが、その苛立ちを少し抜けたような表情をしたラウドボーンにぶつけたところで仕方ない。 「まぁいいや。帰るぞ」 「分かりました!」 そそくさと荷物を背負って部屋を出ると、ラウドボーンは素直に俺についてくる。この素直さがアイツにもあればな、と思うがそれは無駄だろう。それはそれで気持ち悪いし。俺はそう頷きながら、帰路についた。 ---- 「おおっ! ラウドボーンくんとお義父さん! こんなところで出会うなんて奇遇だなぁ〜!」 そんな風に考えていた俺を出迎えたのは、胡散臭い演技をする『アイツ』、ジャラランガ。鱗をわざとらしくシャンシャンと鳴らして盛大に出迎えるような仕草を取り、一緒にいたラウドボーンは感嘆の声を上げてはしゃぐ。俺は盛大なため息が漏れた。バトル会場の出入り口前で出会うなんて、待ち伏せ以外ありえないだろ。俺にバレる分にはなんでもいいと思ってるのか、ラウドボーンが気にするはずがないと思っているのか。何にせよ、わざわざバレバレの演技でこちらをチラチラ見やがる様子で言いやがるから、心底いらだっていた。 「ところで、お義父さん。相談があるんだけど、いい?」 ほらこう来た。絶対こう来ると思った。俺相手に演技をしてくる時はいつもこうだ。やれ高いベッドを買ってほしいだとか、やれ画質のいいロトムテレビが欲しいだとか。そんなお願いまでがセットだ。今回も例外ではなく、声を作りながら、俺の手を取って下から見上げるように頼み込む。 「花、買ってくれない? ノルマきつくてさ〜」 ……うわぁ。本気で子供が頼み込むような仕草で、しかも尻尾までシャラシャラと鳴らす徹底ぶり。ただ、もう大人になったコイツがやるとなるとキツイ仕草であり、いたたまれない気持ちにさせる。そして、それが本懐だからこそやっているのが見て取れてしまうのも、すこぶるめんどくさい。 そんなことを言いながら、ジャラランガは手に花など持ってない。ただ、確かにジャラランガが『花売り』であることは間違いではない。つまりまぁ……そういうことだ。なんだかんだコイツも商業としてそういうことをしているから、上司とやらにノルマを求められることはあるのだろう。 まぁだからと言って助けてはやらないが。義理の息子に残酷? 知るか。大体コイツも俺が鍛えた大人なんだ、自分で何とかしてもらわないと。俺はそのまま、無視して帰ろうと……。 「えぇっ! ジャラランガさんってお花を売ってたんですか!? 僕も欲しいお花があるですけど……」 「おっ! ラウドボーンくんも欲しい花があるのかい? じゃあ、多分『初めて』のキミにおすすめはね……」 「……すまん、ラウドボーン。何の花を買うかジャラランガとしっかり相談したいから、今回は先に帰ってくれ」 前言撤回。ラウドボーンからそう言われて、ウキウキで余計なことを答えようとするジャラランガの腕を引っ掴んで、無理矢理連れていく。えーっ、と落胆の声を挙げられても知ったもんか。何とは言わないがこれ以上ラウドボーンにジャラランガの毒を浴びせるわけにはいかず、結局俺はジャラランガを連れて路地裏に出てしまい、二匹きりになってしまう。顔に張り付けられていた俺でも多少は可愛げを感じられるような喜ぶ顔は、明らかに俺を嘲笑する表情へと変貌し、そしていつも通りの生意気な口調に戻る。 「それじゃ行くぞ、おっさん」 「はぁー、本当に買わないとダメなのか?」 「男に二言は無い、だろ? 安心しろよ、一流の花売りのオレが何とかしてやるからよ~」 「お前だから安心できないんだろうが……」 いつしかジャラランガは俺の前に出て、腕を引いていたのが逆に引かれる形に。見覚えのある景色に連れられるところを確信しながらも、強引なこのクソガキに俺はなすがままに連れていかれた。 ---- 「ははっ、昔は泣きつく前にどうするか考えろって言ってたくせに、そんなにオレとセックスしたかったのか? おっさん」 「……はぁ、ちげぇよ」 ケタケタ、と笑いながらいつも通りの口調で俺を煽るジャラランガ。結局、俺はあのままジャラランガが勤める店にまんまと連れ込まれてしまう。歓楽街の区画にある、周囲と比べても一層ゴテゴテした形の建物が、ジャラランガの勤め先だ。こんな建物よく作れるな、と平時なら感心しているだろう。 そんなジャラランガの店は高級志向。雄好きの中でも金の持ってるやつだけが使えるお店らしい。らしいと言いつつも、娼夫を志望していたジャラランガをこの店に紹介したのは俺なのだけども。理由はまぁ色々あるが、大きな理由はたった一つ、オーナーと知り合いだったというだけだ。とは言え高級志向の店なもんだから多少品位や教養、特別感を味合わせる演出などが求められるとは思うが、オーナーから聞くにはジャラランガはいつの間にかこの店で一番人気な娼夫に成りあがっているらしい。上手いことやるじゃないかとは思うが、コイツ自身にそう伝えると絶対につけ上がるだろうから、絶対に直接は伝えてやらなかった。 「そんじゃ、本日のプランは最上級コースで」 「何でお前が俺のプランを決めるんだよ」 「って言われてももう部屋用意しちまったから無理だけどな。ちゃんとその分払ってくれよ」 「あぁそうかよクソ……」 俺はまた深くため息をつく。シャンデラの様な大きな灯りがついた部屋に、メリープの毛を用いた柔らかくて大きなベッド。全部が全部必要以上にデカい、無駄に豪華な部屋に連れてきやがって。ノルマが足りないと言われはしたが、利用料金が普通の部屋の三倍近くする部屋に無理矢理入れるのはどうかしてるだろ。と言うか、義理とはいえ親であるはずの俺を連れて来るなよな……そう思って、小言を口にしようとしたが。 「……!?」 突然、唇に感触。クチュ、と言う小さな水音。呆気に取られていると、力が抜けたところを狙ってか、グイっと軽く肩に力を入れられ、俺は少し体勢を崩してしまう。それを片腕で背を支え、ゆっくりとベッドに寝かしつけられた。その手際が良く、俺は目を丸くしてしまう。 「なんだよ、ビックリした顔して。力を抜かすときはこうやってキスしたらいいって教えてくれたのは、おっさんだろ?」 「教えたけどな、唐突すぎるだろ……!」 俺はそう文句を言う。確かに固い奴にはキスとか言葉で力を抜かせてやれとは教えたが、まさかこんなやり手になっているとは……ちゃっかりと俺に合わせたベッドを用意しているようで、所定の位置に背びれを収めることができる。完璧と言えるような場づくりをされてしまうも、俺はまだ歯向かおうとする。 「けどさ、コッチは準備万端みたいだけど、おっさんとしてはどうなの?」 だが、それはただの虚勢だった。たったキスだけで、俺のスリットからはもうピンっとちんぽが立ち上がっている。悔しいが、もうすでに、俺はコイツとの行為を期待してしまっていた。そもそもこの道のプロとその心理戦で戦おうとすることが間違いだったな、とまな板の上で気づかされる。 「身体、洗ってないぞ。いいのか」 「へっ、臭いおっさんには慣れっこだぜ」 「ぶん殴るぞ」 どすの利いた声で怒鳴りつけるも、コイツは慣れ切った様子でひょーこわい、とだけ言う。全く、心配を無碍にしやがるからな、コイツ。けどまぁ、良いって言うなら、身を任せるか。堪忍して、俺は彼に身体を預けた。 「はぁ〜っ、クッセェ……」 「そりゃ臭いだろ、わざわざ脇のところ嗅ぐなよ」 それがいいんだろ、といってのけるコイツ。それはどうなのかと思うが、まぁねじの一本や二本飛んでないと娼夫なんてやってられないか。俺はそう思うことにする。脇から顔を上げたジャラランガは、顔にどこか熱を帯びているように見え、腹にはアイツのちんぽも擦れる。そろそろか、と俺はゴクリと息を呑んだ。 「じゃあ、もらうぞ。おっさんのちんぽ」 少し性急な気がするが、正直俺もあまり我慢できる方じゃない。こんな気にさせたのだから、早くとまで思っている。いつも子どもだ子どもだとバカにしてるが、俺もまた同じだな、と自嘲する。そんな俺を見ながら、ジャラランガは不敵な笑みを浮かべた。 ぐいとあげられた腰。片手で俺のちんぽを尻穴にあてがいつつ、ゆっくりと体勢を整える。そして、尻穴が俺のちんぽの輪郭を捉えた。早く、早く……!俺はちんぽを震わせてしまうと、ジャラランガは微笑んだような気がした。 ジャラランガは、一気に腰を下ろし、俺の全てを飲み込む。俺が小さく声を漏らすと同時に、コイツも大きく、満足げに息を吐いていた。 「やっぱ、デケェ……態度もここもデケェよなぁ」 「はぁっ……! 態度はお前の方がデカいだろっ、くっ……」 「ははっ、そりゃあどんぐりの背比べってやつだぜ」 認めながらも俺も巻き込んでバカにするジャラランガ。それにムッとしつつ、ただアイツに身を任せるだけというのもどこか虫の居所が悪く、俺は軽くグイっと押し付けた。 「うぉっ、おっさん、腰動かすじゃん……! もっと欲しかったか?」 「オスが黙って相手任せにするかよ……! お前も、気持ちよくさせてやるっ……!」 「……へっ、そりゃあ嬉しいけど、今回は……!」 俺の言葉に一瞬笑みが見えたかと思うと、ガバっと俺に覆いかぶさる。そしてぐちゅ、と粘着質な音を大きく立てられちんぽに大きな快楽を与えられる。 「んうっ!? くうっ、おまえぇっ……!?」 俺は情けなくも喘ぎ声を漏らす。俺の腕を力強く押さえこみながら、ぐいぐいと中に押し付けつつも、締め付けることも忘れない。根本、砲身、先端全てに別の圧力をかけ、中から精を絞り出すかのような締め付けは、コイツの本気を感じさせられた。 「今日のアンタはオレのお客さんだ……! だからオレが、イッチバンきもちいいのサービスしないと、だろっ……!」 コイツ、こんな顔できたのか。必死に俺の上で腰を振るジャラランガは、いつになく真剣な顔で。まっすぐに俺を求めるコイツに、年甲斐もなく胸が跳ねる。パン、パンと身体をぶつけられ、ぐにぐにと竿全体が加圧される。心拍数が早まる、頭がくらくらする、ちんぽから感じたことのない噴流があふれそうになる。 「くうっ、出る、出るぞ、ジャラ……!」 「あぁ、こいっ、アンタのを、くれぇっ……!」 そこから、俺の限界を迎えるまでは一瞬だった。息を切らし、ジャラランガの顔から眼を離せない。ジャラランガも、俺を見つめ返し、そして満足げに笑う。 あぁ、クソ。いい顔をしてやがるじゃねぇか。 ジャラランガは最後の一押しと、リズムが崩れながらもグイグイと中に押し込んだ。そして、俺のちんぽの先端が最奥にたどり着いたのが、その時だった。 「ぐうっ、があっ!!」 「んうっ、んおぉっ!!」 俺は、思いっきり顔を上に向けて果てる。中へと放出する度、身体中に伝播する快感。頭の中が霧がかかったようにぼやけ、気持ちいいという情報だけが俺の中を埋め尽くす。もう、俺にはコイツに嫌々始めさせられたなんて気持ちはありもしなかった。そして、びちゃ、びちゃとお腹にかけられた液体にジャラランガもイったのだと知り、また俺は満足感に包まれた。 「なぁ、義父さん」 「……なんだ?」 情事を終えて、一旦息を整える最中にそう呼びかけられ、一瞬遅れて反応する。そんな呼び方いつ以来だよ、と思ったが、そんな皮肉も引っ込むほど、アイツは俺をジッと見つめていた。 「オレ、もっとしたいんだけど、まだイケる?」 いつもだったら、一回じゃ収まんねぇのかよと言っていただろう。だけど、いつになく素直に求められ、俺も無碍にする気になれなかった。 「……好きにしろ」 「やりぃ」 目をそらしつつも、俺は柄にもなくコイツを認める。俺とジャラランガの夜は、しばらく続いていた。 ---- 眠気で重たい身体を動かし、俺は部屋から出てフロントの会計窓口に向かう。行為を終えた後、ジャラランガと共にシャワーを浴びたが、まだ仕事があるから先に帰っておけということ。俺もアイツも見送りなんて柄じゃないし、別に何の問題もないが……はぁ、と俺は何故かため息をついた。 「会計を」 ぶっきらぼうにジャラランガから手渡された会計札をフロントに渡すと担当者の小さな手が伸びてくる。この華奢な手は、オーナーか。向こうもそれに気がついたようで、小声で俺に話しかけてきた。 「あぁ、お久しぶりです」 その声に気恥ずかしくなりながら、俺は軽く手を振る。とにもかくにも眠いから、早く帰ろうと思い、財布を開こうとした時だった。 「あぁ、お客様のお会計はありませんよ?」 「……ん? どういうことだ?」 「いやぁ、お会計はもう済まされていますから」 俺は、耳を疑った。全く金を払った記憶がないのに、会計がもう終わってるとのこと。何が起こっているんだ、と疑問を口にする前に、目の前に何かを手渡される。 「それと、こちらご利用特典ですので、受け取ってください」 「花……?」 「はい。《グラシデアの花》です。父の日だからサービスしてやる、って言ってましたよ」 お互いを隠すためのカーテンを少しだけ捲し上げ、下の隙間から渡されたのはご利用特典という名目にしてはいささかキレイに作られた、可愛らしい花束。あぁ、確かラウドボーンが言ってたな。感謝の気持ちを伝える花があると……それが、《グラシデアの花》であると。それを思い出し、俺は急に顔に暑さを感じ始める。アイツめ、全部嘘じゃねぇか。だけど、この花だけは作り物ではなく、確かにここに存在していた。 「……クッソ。似合わねぇだろ、こんな花」 俺は悪態をつき、両腕で花束を抱えて店を出る。全く、こんなおっさんに可愛らしい花渡して来やがって、似合わねぇだろうが。とにかく、早いうちに本物の花売りに相談しないと。強く頭を掻きみしりながら、この花から目を離せずにいた。 書:[[烙雷]] 前 >> [[軋む逆鱗に触れる夜]] 次 >> 後日更新予定 *コメント [#i41c1b07] お読みくださりありがとうございました! もし良ければご感想を頂けると励みになります! #pcomment()