Writer:[[&fervor>&fervor]] ---- &color(red){*官能小説です。そういった表現がいくつも含まれておりますので、お気をつけ下さい。}; &color(red){*また、この作品は};&color(white){人×ポケ};&color(red){を含んでおります。駄目な人はお帰りください。}; ---- そのままじゃ隠れて見えないけれど 葉っぱをどければ見えてくる根っこ まるで貴方と私のようで ***コトバとホンネ [#b6cb7af0] 彼の影が彼女の不安な顔を覆う。二人の柔らかな唇はそっと触れあい、続けて互いの口内で舌と舌が絡まり合う。 その激しい動きはますます加速し、二人は時が経つのも忘れて互いの味を脳内に刻み続けてゆく。 そっと彼が口を離すとそこにはねっとりとした銀色の糸が。切れることなく伸びるそれは、二人が結ばれている様を表すかのよう。 彼女は彼の顔を眺めて微笑む。――そうだ、今は彼とのこの時を楽しまないと。 「さあ、……始めよう」 「……ええ」 彼もまた思う。――彼女とようやく身体を重ねる日が来たんだ。此処でいつまでも止まっている訳にはいかない。 彼は彼女の身体をじっくりと眺め、そしてある一点で視線を留める。薄暗い明かりを受けてきらきらと光るそこは彼を待ちわびてひくついていた。 そして 「だぁーっ、もうっ! 没、没よ没っ!」 カタカタカタカタとキーを叩く音が止む。その後に聞こえたのはガシャンガシャンとキーボードが「叩きつけ」られる音。 とどめの一撃とばかりに両拳を思いっきり振り上げて、彼女はそのキーボードに裁きの鉄槌を下そうとしていた。 「はいはいストップストップ。またキーボード壊す気? これじゃ何個あっても足りないわよ」 「……あ、ごめんなさい、静先輩」 振り上げた両手をつかんでそーっと前に降ろす新たな手。それは彼女が先ほどキーボードを叩いていた隣で黙々と作業をしていた彼女の先輩のもの。 いつのまにやら席を立ち、彼女の後ろへ回り込んでいたらしい。これも経験の賜物なのか、彼女がキーボードを壊す予備動作には非常に敏感だ。 二人のデスクは隣合わせで並んでいる。この部屋自体さほど大きいものではなく、彼女達のデスクの他にはもう一つやや大きめのデスクと業務用のプリンターが一台あるだけ。 いわゆる中小企業の事務室、とでも言えば説明が付くだろうか、規模こそかなり小さいが、至って普通のOL達の仕事場だ。 ただし彼女が先ほどまでしていた作業を見ても分かる通り、やはり此処は多少特殊な仕事場なのである。 「編集長、原稿チェック終わりましたー」 「分かった。早速製本の方手配しておこう。ああそれと翔香君、執筆が進まないなら、皆に食べ物を持っていってやってくれないか」 「……分かりました」 彼女――翔香が勤めているのは出版社、のようだ。こぢんまりとしたその様子からも、さして有名ではない事が見て取れる。 しかも作っている本が官能小説のみだというから驚きだ。この小ささ、この人数の少なさで執筆、編集までを全て行う。 製本に関しては外部委託という形をとっているのも理由は一つ。この会社にそれほど大きな設備を建てるだけの資本が無いのだ。 従って、どちらかというと同人誌制作に近いものがある。翔香はそんな会社に自ら望んで入社した珍しい人材の一人、だといえよう。その割には余り執筆が進んでいないようだが。 翔香は言いつけられた仕事をするべく倉庫へと向かった。倉庫といっても物が乱雑に積み上げられていたりはしない。ただ、その代わりに。 「いつ来てもがらーんとしてるのよね、この部屋。……さ、皆ご飯よー」 立て付けがやや悪くなったドアを力を込めてねじ開けて、呼ぶなりぞろぞろと出てくるのはこの辺りでよく見かけるポケモン達。引き取り手がいなくてしばしば問題になっているポケモン達でもある。 そのようなポケモン達を拾ってきては此処で飼うのが編集長の趣味、らしい。翔香としては正直やめて欲しいのだが、このポケモン達の可愛さは否定できない。 だからつい優しく接してしまう。いつかは編集長に文句を言ってやろうと考えていても、此処で彼らとふれあっているうちについそんな気持ちが削がれてしまうのである。 ただそれでも一匹だけ、他の可愛らしいポケモンとは違って進化していて、かつ生意気な奴がいる。そいつと顔を合わせるのが嫌いだから、翔香は好んで此処には来ないのだ。 さっきからぶつくさと文句を垂れつつこの部屋に来たのもそれが理由。どうしていちいちあいつなんかの所に、といった具合だ。 しかし編集長に頼まれた以上は、断る理由も特に見あたらなかったので仕方なく、渋々ご飯を配りに来た、と言うわけだ。ご飯を盛ったお皿を床に置いてさっさと元来たドアを帰ろうとしたとき。 「……なんだ、翔香か。どうせまた小説詰まってこっちに回されたんだろ?」 「うるさいわね。確かにその通りだけど何か文句でもあるの?」 「いーや、別に。『今日も』ご苦労様ですよーっと」 わなわなと震える拳はもちろん怒りによるもの。今直ぐにでもこの目の前の黒と黄色の犬っころ――ライボルトというポケモンの色違い――を殴り飛ばしてやろうか、と思ってしまう。 それでも言い返せないのは、翔香が言われたことは確かに事実だから、なのだ。昨日も一昨日も執筆が行き詰まって此処にご飯を運びに来ていたのである。 翔香としてはどこかしらにスキを見つけてこのライボルトを口喧嘩で完膚無きまでに打ちのめしてやる、と毎回意気込んでいるのだが、生憎そもそも元より分が悪いのだから勝てる見込みは全くない。 「……まあ、官能小説書いてるのに処女とかないよなー」 「うるさいっ! 私はただ好きな男の人としかそういうことはしない、って主義なだけなの」 そう、翔香は官能小説を書いている身で有りながらその&ruby(じつ){実};そういった経験が一切無い。これが大きなディスアドバンテージだ、というのは彼女も十分に分かっている。 かといって翔香は容姿が整っていないわけでもなく、寧ろ整っている方である。だから告白されたことも当然あるのだが、彼女は今のところ全て断っていたりする。 それもこれも、翔香自身があまり男の人に興味が無いから、だそうだ。いい男居ないかなあ、と話しているのもあくまで女友達の話に合わせて喋っているだけのこと。 興味を持てず、男性を好きになったことがない彼女だからこそ、先ほど言ったような経験が全くなかったのだ。 「それってまるでお前がモテるみたいな言い方じゃないか」 「ディリム、あんたよりはモテてる自信あるけどねー」 モテてるのは本当なんだからね、と強い口調で言い放つ、が。ライボルト――ディリムも負けじとその口喧嘩に乗っかってくる。 目線と目線のぶつかり合いは今にも火花が散りそうなほど激しい。お互いににらみ合うこと数秒間。これぞまさしく犬猿の仲、とでも言うべきか。 聞くにも耐えない言葉と言葉の応酬。留まることを知らないそれは開けっ放しのドアを通じて隣である仕事部屋にも筒抜けであるが、当の一人と一匹は気にすることなど全くない。 次第に声は叫ぶように大きく強く。それを間近で聞きつつも、いつもの喧嘩ね、と落ち着いてお茶を啜っている静。編集長も気にすることなく作業を続行する。そう、この仕事場では日常よくある風景なのだ。 「はっ、それでも男とヤったこと無いお前よりはましだろ?」 「っ……! もういいわ、あんたに構ってる暇はないの! あー帰ろ帰ろ。付き合ってらんない」 「あーあーさっさと帰った帰った。執筆どうぞがんばってくださいませ」 「どーもわざわざご丁寧にありがとうございますっ!」 文字だけで捉えればものすごく丁寧な挨拶を交わしている彼らなのだが、その言葉の奥には深い深い皮肉が込められているのが声の調子で分かる。 ふんっ、と踵を返して仕事部屋を大股でずんずん進む翔香。出口脇のフックに掛けられたコートを羽織り、外へ通じるドアを勢いよく開けてそのまま出て行く。 明らかに怒りの混ざった「失礼しました」という声がドアの閉まる音と共に聞こえて、その日の喧嘩は終了した。 「今日は短かったな。昨日は数時間にも及んでいたのに」 「まったく、ディリムもディリムよ? もうちょっと翔香と仲良くできないかなあ……」 編集長は落ち着いて一言。静と同じように熱いお茶を啜りながら、またパソコンのモニターへと目を移している。どうも全く翔香とディリムの喧嘩には興味を示していないらしい。 一方でそれが少し気になっていた静は、しゃがんでディリムと目線を合わせ、優しく話し掛ける。手をディリムの頬に当てて撫でながら、ずっとディリムを見ているのだが。 「…………」 それでもディリムは返事をしてくれない。はぁ、というため息をつきながら、静は立ち上がり、またモニターに向かって座るのであった。 「私が? こいつを?! 冗談じゃありません! 私がこんな奴を家で預かるなんて……!」 夕暮れのヤミカラスの声がぼちぼち聞こえ始める頃。日は傾いていて仕事場もやや薄暗い。そんな中、西の窓の近くだけはオレンジ色に染まる。パソコンのモニターが見辛くなる時間帯だ。 そしてちょうど仕事が終わるこの時間に、驚きの声が仕事部屋一杯に響き渡った。いよいよ明日は久しぶりの一日丸ごとの休みだというのに、編集長は翔香にとんでもないお願いをしてきたのだから仕方ない。 なんでも編集長が旅行で二日ほどこの仕事場兼編集長の家を空けるんだそうだ。他のポケモン達はすぐに預かり手、もしくは引き取り手が決まったのだが、唯一残ったのがこのディリムらしい。 ディリムはどうしてかは知らないがとにかくボールにはいるのを極度に嫌がっている。かといってこの大きい身体をしたポケモンを旅行に連れて行くのはボールがないとほぼ不可能だ。 無理矢理ボールに入れようとしたことも過去にあるのだが、そのときは電撃を放ってまでそれを拒否されたので、以来無理に入れることはしなくなった。 そうなると当然何とかしてディリムを預かってもらう必要がある。だから翔香に、と編集長は言うのだ。 「そうはいっても、他に預かってくれる人もいないんだ。見知らぬ人に預かって欲しくない、とディリムが言うんでな」 「そんなわがまま放っとけばいいじゃないですか! それに静先輩だって居るのに……あ、それは流石に」 &ruby(わがまま){我儘};なんて聞いてやらなくても、親切な人の所に預けておけばどうせ別段心配は要らないのに、と翔香は真っ向反発する。 先輩である静の家に預けることも一瞬考えたが、あの人の家は見た目に似合わずまるでゴミ屋敷……そんな場所に預けるのはあんまりだ、とそれだけは思い留まった。 「ディリムを知らない人に預けるのは少し不安でな。やはりきちんとした知り合いに預かって欲しいし……君に任せたい」 「…………分かりました」 どうも反論できそうにないと悟った翔香は、渋々ながらもこれを了承した。――仕方ない、どうせ数日で終わりなんだ。どう言っても無駄ならさっさと預かってしまったほうがいいか。 せっかくの休日、出来ればゆっくり過ごしたかった、というのが実のところ、だったのだが。どうやら翔香のその願いはあまり叶いそうになかった。 「ふん、どうして俺が翔香の家に……」 「それはこっちの台詞よ。あんたのわがままに付き合わされる私の苦労を少しは考えなさいよ?」 ふらっと倉庫のドアから出てきたディリム。しかしさらさらお礼を言う気は無いらしい。決して翔香と目を合わせようとはせず、そっぽを向いたまま大きなあくびを一つ。 これが暫くお世話になる人間への態度なのか、と翔香はますます頭に血が上る。――いや、でもよく考えると。 「いーい? あんたのご主人様は今、わたしなんだからね? それなりの態度を見せてもらいましょうか」 くっくっく、とどこぞの悪役みたいな笑いをしながら翔香はディリムの方を嬉しげに見つめる。――そうだ、今は「ご主人様」なんだから。 これならいいようにディリムを扱えそうだ、と思うともうニヤニヤが止まらない。どんな雑用を押しつけてやろうかと、今から楽しみにしている翔香。 色んな妄想が頭の中で繰り広げられては消えていく。これは意外とディリムに仕返しをする良いチャンスかも知れない。 「はいはい、せいぜいよろしくお願いしますよ、ご主人様?」 呆れているのか単に興味が無いのか、やる気のない返事が返ってくるだけ。今に見てなさいよ、と間違った意気込みを入れる翔香。 編集長はそんな翔香を&ruby(たしな){窘};めつつ、明日の旅行の準備をしに階段を上がっていった。仲良くやるんだぞ、と半分諦めつつも、さらに念押しを付け加えながら。 「さ、私たちも帰りましょうか。ほらディリム、さっさと付いてきなさい」 無言でディリムがついてきているのを確認しつつ、ドアを開けて外の街道へ。暦の上では春になっていても、まだまだ寒さが残っている。 冷たい風が顔に当たって痛いくらいだ。空には雲一つ無く、それなりに傾いた太陽がきらきらと光っているのに、その赤々とした暖かさはどこへやら。 羽織っていたコートをさらに強く身体に巻き付けながら、やや急ぎ足で街道を歩いて行く。早く帰りたい、と自然と足が速くなる。 この時間だからか、人通りが少ないからディリムが目立たず、翔香は大いに助かっていた。色違いのライボルトを連れているトレーナーなんて滅多にいないのだから、当然人がいれば目についてしまう。 他人にじろじろ見られていい気がする人などあまりいないだろう。当然翔香も目立つのは避けたかった。ディリムと少し距離を置きながら、ずんずんと道を進んでいく。 本来ならばバスで帰るのが一番なのだが、ディリムをボールに入れられない以上は歩いて帰るしかない。決して歩けない距離ではなく、ただ単に寒いからという理由で翔香はいつもバスで通っていただけだ。 歩くこと数分、ようやく角を曲がって細い道へ。住宅街に入ってしまえばたいした人通りも無いだろう、と一安心だ。 そして此処で翔香はあることを思いついた。ディリムの大きさ的には少し無理があるかも知れないが、小柄な翔香なら何とかなるはずだ、とディリムにこんなことを頼む。 「ね、私を乗せて走ってよ、ディリム。 あんたに拒否権はないけどねー」 「……っ。じゃあさっさと乗れ。背中、しっかり掴まってろよ。暫く真っ直ぐでいいんだな?」 「ええ。お願いね」 ディリムに跨って背中の薄い毛を掴むやいなや、ぐっと後ろ足に力を込める感じが背中越しに伝わってくる。ディリムがその後ろ足を蹴り出せば、あっという間にものすごいスピードに。 時間がまだ早いこともあって、車通りは全くない。ディリムはそんな道の真ん中を颯爽と駆けていく。コート越しに当たる風、あるいは顔に直接当たる風にそのスピードが感じられる。 その疾走感に感動しながらも、翔香は本来の目的を忘れてはいない。危うく道を間違えるところ、と言うところでディリムに曲がる指示を出す。 かくっ、という効果音がばっちり合いそうなほどの急転回。ほぼ直角の曲がりに身体が思いっきり外側へと飛ばされそうになる。 背中に掴まっとけ、の指示をもう一度頭の中に呼び起こしながら、気をつけて二度目の角、三度目の角と曲がる指示を出していく。だいぶ慣れてきたな、とディリムへの指示もスムーズになってきた頃。 「ディリム、止まって!」 「……っと、此処か?」 ディリムの目線の先には至って普通の一軒屋。古い中古物件を安く買い叩いたと仕事場でたびたび翔香が自慢していた家だ。一人で住むには十分なほど広そうである。 「へえ……一人暮しにしては立派な家なんだな。翔香の事だからもっとアレなの想像してたんだが」 「何よアレって。いちいち一言多いのよあんたは。……まあいいわ、さ、入って」 取り出した鍵を差し込んで回す翔香。鍵の外れる音。ドアノブを降ろして扉を引き、翔香は、続いてディリムはその玄関へと入っていった。 家の中へ入った翔香はさっと靴を脱ぎ、コートを脱ぎ捨てて廊下の奥へと走っていく。こうも寒いと真っ先に暖房を付けに走りたくなるのだが、今日はもう一つやることがある。 「あんたはそこで待っててよ? あんたの足を先に拭かなきゃいけないんだから」 そう、何よりもまずはディリムを入れることを考えないといけない。汚れた足で入られたら掃除が大変になってしまうのだから。 要らなくなったタオルを水で濡らして手に持ち、ついでに居間のストーブとこたつのスイッチを入れてから再び翔香は玄関に戻った。 ディリムは退屈そうにまたあくびを。そんなディリムの右前足を手で持ち上げて裏側を拭く。拭き終えた足を玄関の段差の上に置いて今度は左前足を。 そして全ての足を拭き終えようとしたときに、不意に足の気持ちよさに気づく。いわゆる肉球だ。ふにふにと柔らかくて独特の感触。 試しにもう一度ふにふにしてみる。あ、なんだかいいかも……と翔香はちょっと楽しくなってくる。これが肉球か、と今までポケモンも動物も飼ったことがなかった翔香はすっかり&ruby(はま){嵌};ってしまっていた。 「おい、いい加減にしてくれ……」 はっと我に返ると途轍もなく迷惑そうな顔をしたディリムが。――いけないいけない、つい&ruby(はま){嵌};ってしまった。翔香は少し恥ずかしい思いをしながらもディリムの足を段差の上に乗せてやる。 「ご、ごめんディリム。つい……。私はご飯の準備するから、適当にそっちの部屋で寛いでて」 居間を指さしてディリムに教えてから、翔香は台所へ夕飯の準備をしに行く。――ちょっと早いけどまあいいか。たまにはさっさと食べて早く寝るのも悪くないよね。 綺麗に手を洗ってから冷蔵庫の食材をざっと確認する翔香。明日の分がぎりぎり作れるか作れないか、といったところだ。明日は買い物に行くしかないか、と翔香は少し残念がる。 そして使えそうな材料を取り出してから献立を考えてみようとしたのだが、どうもディリムの様子が気になって仕方ない。 台所から居間へと通じるドアを開けてみると、温かな空気がどっと台所に流れてくる。台所にもストーブが欲しくなるのだが収入の都合上我慢するほかない。 「……あれ?」 いくら見渡してもディリムが居ない。こたつの中を調べても居ない。一体どこに……と考えていると、どこからか何かをひっかくような音が。 ――泥棒……いや、そんなわけない、きちんと鍵はしたはずだし……じゃあ何だろう。と翔香は暫く考えてみるがその不気味な音の正体は一向に分からない。 廊下へと続くドアの方だ。猫か何かが天井裏から入ってきたのかな、などと考えつつも音がする廊下側へと、台所から回り込む翔香。 曲がり角で一度止まり、そっと顔を出してその先の廊下を覗くと、そこには。 「んっ……くっそ……っ……! あ、しょ、翔香……」 「あ、あんた……そっかそっか……っはははははは! そうだよね、ごめんごめん……あはは!」 廊下から居間に入るドアにはドアノブがついているのだが、中古の家だからドアノブが丸い形をしているのだ。おまけにステンレス製でつるつるしていて滑りやすい。 ディリムはそれを相手に、必死で前足をかけては回そうと&ruby(もが){藻掻};いていたらしい。ひっかいていたような音は全部ドアノブに爪が引っかかる音だったみたいだ。 そんな必死な様子のディリムを見て、つい翔香は笑ってしまった。可愛いとこあるじゃん、と健気に頑張っていたディリムに少し愛おしさを感じてしまう。 う、うるさいな、と恥ずかしそうに翔香を睨むディリムだが、今回ばかりは普段のクールっぽさが微塵も感じられなかった。 翔香はドアノブを回してガチャリとドアを開けてやる。ディリムが今度こそ居間に入ったのを見てから、翔香は食事の用意を始めるためにキッチンへと向かおうとした。 「言い忘れてたけど、トイレなら庭で適当にね。庭に出られるポケモン用のドアがそこにあるから」 と、翔香が指を差したその先には身体で押し開けられる簡単な作りのドアが。結構大きく、ディリムの身体もすんなり入りそうなほどの大きさだ。となれば泥棒だって入れるだろう。 このドアの鍵が開けっ放しなのは不用心じゃないのか、とディリムが言おうとした時には、既に翔香はキッチンへと姿を消していた。 「……ったく」 一方の翔香は机の上に先ほど取り出した材料を眺めながら、食事の献立を考えていた。自分のものは適当に作るからいいとして、ディリムに何を食べさせればいいのだろうか。 余り物の肉はある。生肉でもディリムは食べそうな気はするが、此処はやはり腕の見せ所。何か調理してあっと驚くような料理を作りたい。 少し考えて、翔香は肉じゃがを作ることにした。これなら自分も食べられる。まずは薄味で作ってディリムに渡せば問題はないはずだ。 煮込むだけ、とはいえ肉じゃがは家庭料理の定番。おいしく作れるかどうかで料理が上手かどうか判断できるはずだ。これならディリムも認めざるを得ないだろう。 材料の下ごしらえを済ませて肉を鍋で炒め、手際よく煮込んでいく。アクを取りながらコトコトと鍋でそれを煮込む翔香はいかにも料理が出来そうに見える。 実際翔香は料理が得意なのだが、いつもの様子を知っている人は大抵驚く。荒い面が多い翔香だが、こういう所では意外と器用なのだ。 日はいつの間にか落ちてしまった。辺りがすっかり暗くなって、台所でも手元がよく見えなくなってきた頃、ようやく肉じゃがが完成する。 薄味なのでさほど煮込んではいないのだが、それでもじゃがいもは十分に柔らかく煮えている。ディリムにも食べやすいように浅い皿にそれを盛りつけて、翔香は居間へと戻った。 「さ、まずはあんたのご飯出来たから食べて……って」 翔香が見つめる先には、静かに息をしながらストーブの前に丸くなって寝ているディリムの姿が。そういえば今日はいつにも増して走ったりして、色々と大変だったかもしれない。 あまりにもディリムが気持ちよさそうに寝ているので、翔香はディリムを起こさないことにした。――これはさっさとご飯を食べて寝た方が良さそうかな。 そっと扉を閉めながら、一人そう呟いて、翔香は再び肉じゃがの鍋の前に立ち戻るのだった。 翔香が目を開けると、明かりが点いたままの部屋。薄ら寒いのはカーテンを開けっ放しにしていたからか。――いけない、ついこたつで寝ちゃった。 遙か遠くでバイクや車の音が聞こえるぐらいで、他はまるで静かな夜。テレビは付けていなかったし、音と言える音は冷蔵庫とこたつの動いている音ぐらいか。 眠い目を擦りながら時計の方に視線をやる。――四時……だいぶ寝ちゃったみたいね。&ruby(さ){然};れどもこの季節はまだ外が暗い。時計がなければきっとまだ夜中だと勘違いしていただろう。 ――そんなに寝たつもりはなかったのに……結局お風呂にも入れなかったし。こたつに入る前までの自分の行動に若干後悔してしまう翔香。 ご飯をこたつで食べて、後片付けを済ませたのまではよかった。だが、その後にこたつに入って携帯を触っていたらいつの間にか気を失っていたのだ。 顔に当たる空気がとにかく冷たい。ストーブは点いているものの、どうやら燃料切れのようで炎がか細くなっている。ひんやりとした空気の中、顔だけでも寒いのに、まして身体を出すなど無茶だ。 それでも翔香はもぞもぞとこたつから這い出そうとしてみたが、やはりなかなか出られない。まあこのまま寝てしまってもいいんじゃないか、と半分自分でも諦め始めたその時。 ふと翔香の耳に入ったのはうなり声、だろうか。何か苦しんでいるような声にも聞こえる。それも近くからだ。決して窓の外からではない。――一体どこからこんな声が? 翔香はその音の聞こえる方へ目を向けると、そこには&ruby(うな){魘};されている様子のディリムが。目は&ruby(つぶ){瞑};っているから何か嫌な夢でも見ているのか。 怖い夢を見てこんな反応をするなんて、意外とディリムも子供っぽいところがあるじゃないか、などと思ってしまったが、翔香はあることに気づく。 苦しみ方が尋常ではないのだ。流石に心配になって、あれほど寒くて出られなかったこたつからさっと抜け出てディリムの元へ駆け寄る。 「……お……は…………じて……に……」 近づいて改めてディリムの様子が分かった。もしもディリムが人間だとしたら冷や汗をかいているのではないか。そう思うほどにディリムは夢の中の何かに怯えているように見えた。 普通の悪夢なら此処まで苦しそうな表情をするだろうか。まるで今にも息絶えそうなほどか細く、荒い息を繰り返すディリム。 &ruby(ためら){躊躇};ってもいられない。ディリムのこの状態を何とかする方法は一つしか思いつけなかった。翔香はディリムの身体を両手で大きく揺すり声を掛ける。 「ちょっとディリム! 大丈夫?!」 ゆさゆさと揺す振られるディリムの身体。その刺激にようやく脳が動いたのか、彼はふらりと瞼を開ける。瞬間的にディリムは翔香の手を撥ね除けて距離を取り、威嚇の体勢に。 ばちり、と軽く響いた音、そして走った閃光は紛れも無く電撃。あと少しで翔香の手に当たるのでは、と言うほどまでに近くを掠め、それは床に小さな焦げ跡を作った。 急な攻撃に翔香は何も反応できず、ただ呆然とその様子を他人事のように眺めるばかり。電撃の恐ろしさ以上に、翔香はディリムの様子に驚きを隠せないでいた。 「翔香…………」 寝惚け眼で彼は翔香を確認する。まだ自分でも状況が確認できていないのか、時折辺りの僅かな音に反応してびくりと身体を震わせている。辺りを見回すその仕草は間違いなく警戒そのものだ。 あまりにもいつもと違うその様子に流石の翔香も心配になる。しかしいつもの意地っ張りな性格が邪魔をして、なかなかディリムに対して思いやりのある言葉が出てこない。 普段なら先ほどの電撃に対して文句の一言でも付けてやろうか、と言った勢いなのだが、どう考えてもディリムの様子が普通じゃない。いくら翔香とはいえ、攻撃されたことは無かったのだから。 優しい言葉を掛けるべきだろうな、と思ってそういう言葉を探してみるが、やっぱり普段掛け慣れていないせいかぱっと出てこない。もどかしさが募るばかりだ。 ――こういう時、素直に喋れたらどんなに楽だろう。 「……なんでもない」 そうやって翔香が戸惑っていると、先にディリムの方から返事が来た。けれどその声は震えていて、誰が見ても明らかに強がりでしかない。 いつもはぴんと立っている尻尾も心&ruby(な){做};しか萎れているように見える。元気な時のディリムと違って、いつもの強気な態度が一切感じられないのだ。 明らかなその違いに翔香は&ruby(うろた){狼狽};える。――どうしよう、何か出来ることを探さないといけない。このままでは駄目だと翔香は直感していた。 「そんな風には見えなかったけど……何かあったんじゃ」 暫く考えて、まずはディリムの口から何とかしてその理由を聞き出してみることに。夢を見たのだとしたら、その夢の内容だけでも聞ければ何かしらの解決法が見つかるのではないかという思いからだ。 預かっている手前、ディリムの身に何かあったら大変だという責任感を感じて、翔香は必要以上に心配をしていた。 「何でもないっ! ……余計なお世話だ」 しかし当のディリムはその言葉を払い退けてしまい、部屋の隅へと歩いていって再び寝そべった。翔香と反対方向を向いたまま、どうやら再び眠りに入ろうとしているようだ。 翔香はその態度に怒りを隠せない、のだが。同時に変な安心感を感じてしまっていた。いつものディリムが少し垣間見えた気がしたのだ。 この返事こそ、ディリムがとりあえず大丈夫だという一番の証拠だ、と翔香も頭の中で理解をした。それだけで済めばよかったのだが。 「何よ……人がせっかく心配してるって言うのに。少しは感謝しなさいっての!」 生憎翔香はそれを受け入れるだけの大らかな器量は持ち合わせていない。案の定かんかんに怒って思わず怒鳴ってしまう。 はっと思って時計を見るとまだ時計の針は四時過ぎを指したまま。起きてからそれほど時間は経っていない。人が寝静まったこの住宅街でこんな大きな声を出したら怒られるかもしれない。 ――流石にこれ以上、此処で喧嘩しちゃ不味いよね。翔香としては非常に口惜しかったが、今回は完全に翔香に分が悪かった。 心配して損した、と軽く悪態を付きながら翔香は荒い足取りでこたつに潜り込む。二階にある自分の部屋に戻ろうとしないのは、単にこたつが暖かいからなのか、それともディリムを心配してなのか。 翔香は自分でも分からなかった。ただ何となく戻る気にはなれなかったのだ。こたつも暖かいし問題はない。このまま楽に寝られるだろう。 こたつの暖かさに少しほっとしながら、横目でディリムを見やる。先ほどまでの荒い息ではなく、今度は落ち着いて寝ているみたいだ。 一応ディリムの方を気遣いつつ、翔香は座布団を折り曲げ、枕代わりにしてそのまま目を閉じる。もう朝は近かったが、幸いにして今日は休みだ。 このまま昼まで寝てしまおうと心の中で決め、翔香も目を瞑って少し考え事をしつつ、うとうとと寝始めるのだった。 「翔香、おい翔香?」 「何よ、まだ寝てたって罰は当たらないでしょ」、と不機嫌そうに返事をして寝返りを一回。こたつのほのかな暖かさに捕まったまま、翔香は一向にそこから抜け出せていない。 「あのな、もう夕方だぞ」 がばっ、と布団で寝ている時と同じように起き上がろうとしてこたつの中で膝を、こたつの縁で胸を打つ。その痛みに耐えながら今度は注意深くこたつから這い出して辺りを見回す。 壁に掛けられた時計は四時を指している。電池が切れているかも知れない、と今度は机の上に散らばった雑誌をどける翔香。そして取り出したのは携帯だ。開いて時刻を確認すると、案の定。 「四時、ね。……午後の」 ――不味い、幾ら何でも寝過ぎた。本当はお昼の内に買い物を済ませて置くつもりだったのに、と翔香は今更後悔する。 今から着替えて準備して、となると日が傾いた寒空の中買い物に行くことになる。帰りは真っ暗で、もちろんのこと寒いだろう。 翔香は買い物に行くことをすんなりと諦めて、ゆっくりと居間へ戻ってきた。ディリムはストーブの前を陣取って座ったまま、不思議そうに翔香の顔を覗きこんでいる。 「ね、あれから私、少し考えたんだけど」 ディリムの隣にしゃがみ込んで、ディリムの方へ顔だけ向ける。ディリムは全くこっちを向いてはくれないが、話は聞いているようだ。 ふらふら揺れる尻尾の動きを伺いながら、どう話を切り出したものかと翔香は一人考える。――ああもう、喧嘩なら直ぐに出来るのに。 翔香が昨日の夜、寝るときにずっと考えていたこと。ディリムのことがやっぱり心配で、何かあるのではないかとずっと考えていたのだ。 あの様子は尋常じゃない。それは誰が見ても明らかだった。一緒に居た中では何も問題がなかったはずだ。ディリムに怖い思いをさせた覚えはない。 とすれば自然と話は過去へさかのぼる。そこまで思考が辿り着いた昨夜、翔香はあることに気づいたのだった。 「あんた、編集長に拾われてくるまで何してたの?」 素朴な疑問のつもりで聞いたのだが、これが案外ディリムを大きく困惑させてしまったようだ。黙りこくってしまったディリムに、翔香はもう一度聞いてみる。 「ね、あんたの事、もう少し詳しく教えてくれない?」 僅か一日一緒に居ただけとはいえ。もちろん仕事場ではさんざん喧嘩をしてきたが、此処までディリムに接近したのは初めてだった。 だからこそ翔香は普段全く気づかないようなことに気づいたのかも知れない。誰も知らない、ディリムのこれまで。 普段見ないようなディリムの様子を見て、翔香はディリムに興味を持ち始めていたのかもしれない。あるいはその興味は、最初に出会ったときからあったのか。 「…………嫌だ」 けれどもそんな翔香をディリムは突っぱねる。その顔にはいつもの冷たい顔ではなく、どこか怯えたような、焦ったような、そんな表情が浮かんでいた。 それでも翔香は諦めずにディリムを見つめる。ディリムはそんな翔香を横目で見て、しかしやはりそっぽを向いたまま。尻尾を僅かに揺らして暫く黙り込む。 そして今度は俯いて床と見つめ合うかのようにじっと止まっているディリム。翔香はまだディリムを見つめたままだ。そんな翔香に折れたのか、やがてディリムの口が僅かに動いた。 「……けど、翔香になら」 「私になら?」 素早い翔香の切り返しに、言ってしまった以上は後に引けない、とディリムも覚悟を決める。口の中に溜まった唾を飲み込んで、ふう、と息を吐き出して。 ディリムは一度前を向いて外の空を見る。茜色に染まった光が外を、そして窓辺を照らしていた。そんな空を見つめてディリムは何を思ったのか、それは分からないが。 「……話しても、いい」 ぼそりと呟いて、後はまたひたすら空を見続けていた。その様子に翔香は首をかしげながらも、幾分か満足したようだ。 「あんたの話はじゃあ……そうね、今日の夜。聞かせてもらうことにするわ」 なにやら不安げなディリムがやはり心配なのか、翔香は&ruby(ためら){躊躇};いを覚えつつも。しかしこれ以上ディリムを此処で追求するのは可哀想だ。 仕方ないか、と自分に言い聞かせて、翔香は昨日と同じく、早めの夕食の準備に取りかかろうとするのだった。が。 「あっちゃー……何もないわね。ピザでも適当に頼もうかしら、楽だし」 買い物に行かなかった所為で、ついに食材がほとんど底をついていた。これでは何も作れそうにない。がらーんとした冷蔵庫の中を見つめながら、ふとピザを注文しようと思い立つ。 典型的な駄目女だな、というディリムの憎まれ口を軽く受け流しながら、面倒な調理を飛ばせたことで上機嫌な翔香は電話とチラシを手にとってピザの注文をし始めた。 食事を終え、テレビのバラエティ番組を何とも無しに見ながら&ruby(くつろ){寛};いでいる翔香。夕方に約束したことをもう忘れているのか、とディリムは安心する。 しかし同時にどこか不満を拭えない。このチャンスを逃せば、本当にずっと自分はこの辛さから逃れられないのでは、と恐れてもいるのだ。 話してしまいたい気持ちと話したくない気持ちがディリムの中でずっと&ruby(せめ){鬩};ぎ合いを続けている。――決断したはず、だったのに。 先ほど心に誓ったときはまだ夕焼け空が見えていた窓からも、今や真っ黒な光しか入ってきていない。心の中にまでその光が届いて、黒く塗りつぶされていく感覚。 震えるほどの恐怖がディリムの決心を鈍らせていた。暗い、黒い、どこまでも深い闇。 「……心の準備、出来てる?」 ふと我に返ると、目の前では翔香がしゃがみ込んでディリムの顔を覗いている。ディリムの頬を撫でるその手の温かさに、震えが止まる。 黒い光が溶けていく。差し込む光は紛れも無く翔香の温もり。どうやらディリムの決心は今度こそ固まったようだ。ディリムがゆっくりと口を開ける。 「……夢を、見るんだ。俺が生きてきた、これまでの事の夢を。 前の主人のところで、俺はタマゴから孵された。他にも俺の兄弟はたくさんいたよ。でも、その中で俺だけ特別だった。 青い身体をした、色違いのラクライ。それだけで俺は、前の主人にずっと可愛がられてきたんだ。 もちろん俺は嬉しかったさ。優しく、大切に接してくれる主人が大好きだった。一生付いて行こうと思った。 でもそのときから、俺は兄弟から煙たがられてたんだ。そりゃそうさ。俺だけずっと特別扱い、だったんだから。 全員に囲まれて蹴られて電撃を浴びて……その度に、俺は主人に助けてもらってた。それだけが俺の生きる支えになってた。 ……でも、その支えがある日、無くなったんだ。ライボルトに進化したあの日のこと、俺は、忘れられない。 進化した途端、主人は俺のこと、なんて言ったと思う? 『黒……汚らわしい、悪魔めっ!』 どうも主人はそういう宗教を信じていたみたいなんだ。黒は不吉な色、汚らわしい色、悪魔の色、って。 全員のいじめに耐えるのがやっとだった俺には、主人だけが頼りだった。主人と一緒に居たからずっと生きて来れた。 主人にも見捨てられて、相変わらず兄弟からはのけ者にされて……耐えきれなかった。耐えきれなかったんだ、俺。 全部消えてしまえばいいって思った。誰も信じない、誰も寄せ付けない。誰も要らないって思った。 あの時、俺は……全部まとめて、あいつらを、俺を認めなかった、あいつらを……あいつらをっ……! そのときの悲鳴が夢の中で聞こえてくるんだ。痛い、熱い、苦しい、――やめてくれ、って言葉が……ずっと聞こえる。 俺が俺に戻ったときは遅かった。もう何もかもが終わってた。俺の生まれた家は無残ながらくたに変わってたんだ。 夢中でそこから逃げて、俺は野性に還った。けど何も変わらなかった。誰かと接するのが怖かったんだ。また誰かに馬鹿にされたら、俺は……。 毎晩俺の夢にはあいつらが出てきた。俺を冷たい眼差しで見つめるあいつらが。最期まで俺を悪魔呼ばわりしたあいつが。 その声を、その幻を電撃で消しても次々に現れるんだ。俺のことを馬鹿にしていた頃のあいつらと、俺に恐怖するあいつら。そして、あいつらに止めを刺す……俺の姿が。 ……そのときの俺は紛れも無い悪魔だったよ。その姿を見る度に俺は怖くなった。俺があんなになるんだ、俺があんなことをしてしまうんだ――。 編集長と出会ったのは、俺がちょうど餌を漁りに街に降りた時だった。この辺り一帯は野性のポケモンが居ないだろ? だから俺が捨てられたポケモンだと思って追っかけて来たんだ。 当然逃げたさ。誰も信じたくなかったし、誰とも関わりたくなかった。これ以上俺は誰かを傷つけてしまいたくなかったから、な。 &ruby(ほらあな){洞穴};まで俺は逃げ切った、つもりだった。だけど編集長はそこまでずっと追いかけてきたんだ。息を切らしながら。 逃げ場を無くした俺は焦ったよ。『悪魔』って呼ばれる声が頭に響いて、怖くなって、また俺は暴れそうになった。 けど編集長は優しい顔でこう言ったんだ。『お腹が空いたんじゃないのかい?』ってな。わざわざ数十分追いかけ続けて、こんなこと言いに来る人間が居るなんて思わなかった。 黙ったままの俺にさ、『それじゃ、食べかけだけどこれはあげよう。また明日も餌を持ってくるから、待っててくれ』って言って、食べかけのお菓子を置いて帰ったんだ。 それから毎日同じ事が続いたよ。他の奴なんて信じない、って決めてた俺だけど……段々編集長のこと、信じるようになってた。 で、暫くして俺は編集長に言われるままあの仕事場まで来たんだ。何となく、また人間を信じてみようって思えるようになったから。 ……ただ、それでも俺はまだ誰かに触られるのは嫌だった。編集長だって俺のこと触ったこと無かったんだ。 知ってるか、翔香? 俺のこと初めて触ったの、翔香なんだぞ? 誰も今まで触ったこと無かったのに、って編集長も後でびっくりしてたんだからな。 翔香が来て、初めて喧嘩した時、俺は翔香の事、その……気に、入ったんだ。特別扱いしないでいてくれた最初の人、だったから。 編集長だって俺だけちょっと特別に扱ってくれたし、それを俺は当たり前のように思ってた。だけど翔香だけは違ったんだ。わがまま言うな、って言われたの、初めてだったよ。 それで初めて喧嘩して、その時頬をつねられたのが最初だった。翔香は覚えてないかも知れないけどな。あの時は夢中で気づかなかったけど、触られても、怖くなかった。 ……本当は俺、お前に嫌われるつもりだった。だって翔香の事が……嫌いじゃなかったから。だから……傷つけたく、なかったんだ。 翔香のおかげで俺はだいぶ心が落ち着いた、つもり、だった。でも翔香と家で過ごして、ついあの時のことが頭に浮かんできて……俺。 夜になって、翔香の、人間の匂いが隣にある中で寝てたら、また昔の夢を久しぶりに見たんだ。……怖かったんだ。 実は俺、もし完璧に過去が克服出来てたら、翔香のポケモンになろうって決めてたんだ。……でもやっぱり、俺には無理みたいだ。 またあの夢を見て、錯乱して、今度翔香にもしもの事があったら……。だから俺は、やっぱり誰かの側には居ない方が良いんだと思う。 今日は玄関で寝るよ。明日には仕事場で寝られるし。俺のことなら心配――っ?!」 「……馬鹿」 ディリムの視界が暗くなる。僅かに入り込む光が照らし出す輪郭は翔香の顔。額と額を合わせたまま、頬をそっと撫でる翔香。 ふと、ディリムは頬が濡れる感触を覚えた。流れていく水は翔香の流した物、だろうか。しかし翔香もまた、翔香の頬が濡れる感覚を感じていた。 ディリムの目からは、気づかないうちに滴が零れていたのだ。どうして、とディリムが声にならない声を吐き出す。 「今此処には私しかいないんだから。……強がってたんだよね、頑張ってたんだよね。……もう我慢しなくてもいいの。……私がいるから」 嗚咽に混じった聞き取りづらい言葉。しかし耳元でささやかれたその言葉が、ディリムの心に深く届いた。 ずっと&ruby(せ){堰};き止めていたはずの寂しさ。ずっと隠してきたはずの弱さ。それをぶつけられる場所が此処なんだ、とディリムが思った瞬間、全てが一遍に溢れ出した。 「俺、……俺、寂しかった。……ずっと、ずっと……でも、怖かったんだ。……俺、お……れっ……」 よしよし、と子供を撫でるように優しく、翔香はディリムの顔を胸に抱き寄せる。ディリムは驚きで一瞬動きを止める。ただ、溢れる涙だけは止められそうにもなかった。 「うっ……ああっ……うあああああああん!!」 喧嘩ばっかりしていたけれど、ディリムの事、やっぱり私は……と心の整理をしながら、翔香はディリムが泣き止むまで、ずっとディリムを抱いていた。 「ね、ディリム。その……さっき、言ってたけど」 落ち着いた様子のディリム。畳の上に寝そべるその背中を撫でながら、翔香は先ほどの話を頭の中で反芻していた。 辛そうなディリムの姿ばかりが気になって、全くそんなことを考える余裕はなかった。泣きたいのを堪えて必死で話を聞いていたのだから。 ――翔香の事、その……気に、入ったんだ。 その言葉ばかりがさっきからぐるぐると巡っている。――この言葉の意味は、いや、でもそんなはずない。 喧嘩ばかりだったのは確か。だが翔香は決してディリムを嫌いだった訳じゃない。寧ろ好きだった、と言えるだろう。 しかしそれはあくまでも「好き」という感情で、愛だとか恋だとかとは全くの別物、のつもりだったのだ。 先ほどの言葉がまた脳裏を過ぎる。直接的に言った訳ではないし、自分の勘違いかも知れない。ただ翔香はその言葉を付け加えるディリムの顔が、僅かに照れるのを見逃していなかった。 そういった状況を考慮に入れて、改めて分析してみると、翔香は一つの結論に至るしか他に無かったのだ。 だとしたら、と翔香は思う。単に「好き」とは違う、この心がぞわぞわするような、変な感覚はまさか。 それでも翔香は分からなかった。なぜなら翔香は&ruby(いま){未};だかつてそういった感情を他の男性に抱いたことは無かったから。 ところが今、翔香は恐らくそれに似た感情を、あろう事かポケモンの雄に抱いている。そんな気がしたのだ。となればやはり、確かめてみるしかない。 ディリムの気持ちを。そして翔香自身の気持ちを。 「『気に入った』って、どういう意味、なの?」 遠回しにディリムの様子を伺ってみる。けれどもディリムはこちらを向いてくれない。足を投げ出して座っている翔香の方は見ようともしないどころか、反対側を向く始末。 翔香はそれでも返事を待ってみる。ディリムの毛並みを自分の手に感じながら、暫くの時間が過ぎていく。 カチ、コチ、と時計の秒針が時を刻む。その音が妙に大きく、ゆっくりに聞こえた。会話がすっかり止まってしまった、かと思った瞬間。 「……駄目だってのは分かってる、つもりだ。けど、やっぱり俺」 ディリムが急に立ち上がった。それと同時に背中を撫でていた手が自然と離れる。そしてディリムは翔香の目の前へ。 ごくり、と唾を飲み込む音は翔香のものか、それともディリムの物なのか。あるいはどちらもがそうしたのか。 互いの緊張が、互いのドキドキが目に見えて恥ずかしくなる。翔香はその恥ずかしさで顔を伏せてしまったが、ディリムはそれでも翔香をじっと見据える。 「翔香の事、好きだ。……恋する相手、として」 真っ直ぐな眼差しを翔香は顔を上げて受け止めた。ディリムのその真剣な表情に迷いは感じられなかった。 疑問が確信へと変わる。――やっぱり私、ディリムに……恋、してるんだ。 私はどうすれば良いんだろう、どう答えれば良いんだろう、とあれだけ迷っていた自分のことが、今ではとても馬鹿馬鹿しく思えた。 ――そんなの、とっくに決まってるじゃない。 「駄目な訳ない。……だって、私もディリムのこと、好き、だから」 見つめ合ったまま時間が止まる。恥ずかしい気持ち以上に、このままでいたいという気持ちの方が心の中に溢れかえっていた。 自然と互いの顔が近づく。心の距離もそれに比例して近づくかのよう。ゆっくり、ゆっくりと、目を閉じながらさらに近づいて――。 ディリムの口の先端が、翔香の唇に軽く触れた。翔香の温度がディリムに伝わり、ディリムの温度が翔香に伝わり。 まるで心さえもがそこから伝わり、混ざり合うかのような奇妙な心地よさを覚えるその口づけは、僅かな時間であったけれども永遠のように感じられた。 混ざり合うことで温度は平行を保つ、どころかますます上がり。それはおそらく付けっぱなしのストーブの所為、だけではないのだろう。 抑えきれない衝動が、制御しきれない本能がディリムを突き動かし、かけた。が、そうなる前に翔香はディリムから離れてしまっていた。 「……さ、今日は早いけど寝ましょ。お風呂入れてなかったけど……ディリムも洗わなきゃいけないし、私もシャワーだけでも浴びないとね。昨日もすっぽかしたし」 ディリムが期待した通りには行かず、少し呆気にとられるものの、考えてみれば当然だ、と先ほどの煩悩を振り払う。――ポケモンと人間は違うんだ。例えそうしなくても、気持ちが一緒なんだからそれでいいんだ。 すっかり暑く感じられた部屋から、翔香に誘導されるがまま一歩外へ。途端に外の寒さを感じて、ディリムは軽く身震いする。 吐いた息が白くなるほど寒いわけではなかったのだが、やはり元の部屋の温度とはかけ離れていて、すぐには身体が慣れてくれない。 出来ることなら今すぐ部屋に戻ってストーブの前で寝っ転がりたい、と翔香もディリムも思った。だがそういう訳にもいかない。 寒い寒い、と呟きつつ、これまた一人で住むには広すぎる気がする脱衣所へ。そこはディリムと翔香が一遍に入っても悠々動けるスペースがあった。 昨日はディリムが散々苦戦した、あのドアノブと同じものが付いているそのドアを翔香は奥へと開く。中にはこれまた二、三人は悠々入れそうな風呂場が。編集長が普段ディリムを洗ってくれる風呂場の二倍はあろうかという広さ。 「じゃあまずディリムを洗うから、少し待ってて」 そう言って、翔香はディリムを中へ入れると、再び風呂場のドアが勢いよく閉めてしまった。 編集長がディリムを洗うときは、いかにも男らしい、大雑把な洗い方しかしていなかった。ディリムはそれに別段文句を付けたい訳ではなかったにせよ、満足していたわけでもない。 仕方がないのだ、とディリム自身諦めていた。編集長の奥さんが自分たちの風呂場を使われるのを嫌がったため、仕事場備え付けの風呂場しか使わせてもらえなかったのだから。 編集長が濡れてもいい服に着替え、それでもなるべく濡れないように、背中をわしゃわしゃと洗うだけ。お腹側までやると足が邪魔で濡れざるを得ない。それが大雑把な洗い方に繋がっていたのだ。 その点今日はどうなるだろうか。翔香は翔香で大雑把なところが多い。それどころか、むしろ編集長よりも酷いところがある。ディリムもそれをよく知っていた。 翔香はきっと濡れるのを嫌がるに違いない。下手するとお湯で流して終わり、なんてことも十分に考えられる……と、急にディリムは不安になった。 たまには綺麗にして欲しい。だがそんなお願いをするのはやや恥ずかしい。そんなことを気にする女々しい雄、と見られるのもディリムは嫌だった。 しかし。風呂場のドアが再び開いたとき、そんな考えを根底から吹き飛ばすような状態で翔香は現れたのだ。 「お待たせ、ディリム。さーて、どうやって洗えばいいのかしら」 綺麗ですらっとした、丸っこい身体。白に近いその肌はさすが女性、といったところか。などと冷静にディリムが分析できるはずもなく。 「ばっ……翔香、はだっ」 服と呼べる服を着ていない、どころか。普通隠すべきであろう胸や下半身でさえ、一糸纏わぬ姿で存在しているのだ。 一応恋人である翔香のあられもない姿に、ディリムが自然と意識してしまうのは当たり前の反応で。 翔香の大胆で大雑把な性格を分かっていたつもり、だったディリムにとっても、これは予想も付かなかったのだ。 しかし当の翔香は何も気にする様子がない。シャワーからお湯が出てくるのを確認してから、自身の身体に、そしてディリムの身体を満遍なく濡らす。 「シャンプー……の方がいいわよね」 湯気が立ちこめる風呂場。寒さ対策にシャワーを出しっぱなしにしつつ、シャンプーを手に取る翔香。だがディリムは決して翔香の方を見ない。 万が一翔香の方を向こうものなら、間違いなくその魅力的な身体を、それなりに実った胸を、そして雌として最も大事な器官を見てしまうのは間違いない。 そうなったとき、自分はどうすればいいのか。仮にも翔香に恋心を抱く身。興奮も自然現象も隠せるはずがない、そうディリムは確信していた。 そして翔香の手がディリムの背中に触れる。びくり、と過剰に反応してしまうのはやはり様々な妄想の所為なのだろうか。 そんなディリムの様子をよそに、翔香は丁寧にシャンプーを泡立て、背中を丁寧に、優しく掻くように洗っていく。もこもことした泡が背中中に広がり、元の黒い毛や黄色い毛をすっかり覆う。 続いて頭も泡だらけになり、緊張で少し垂れ下がった尾にも泡が纏わり付く。尻尾の付け根の部分にまで手が伸びたとき、ディリムは再び震えていた。 しかしここまで耐えきった。ディリムは少し安堵する。興奮を自らの精神力で押さえつけていたディリムに、他の可能性を考える余裕は全くなかった。 翔香は何もためらわず、ディリムの身体をひっくり返した。あまりにいきなりなその動作に、なすすべもなく身体を反転させられるディリム。 普段洗ってもらえなかったお腹側。今洗ってくれているのが編集長なら、ディリムもきっと喜んだことだろう。しかし今の状態ではいつ翔香の手があの部分に触れるか確認することが出来ない。見えないのだ。 そうこうしているうちに、今度はお腹に直接シャンプーを垂らしてくる翔香。冷たい粘液が流れる感覚にぞくり、とディリムは震えてしまった。 「ねえ、さっきから震えてるみたいだけど、大丈夫なの?」 再び丁寧にお腹を洗う翔香。前脚にも泡を纏わせ、足の裏、肉球まで余すところなく綺麗にしてくれている。 首元の黄色い毛にも泡がつき、たっぷりの毛に絡まった泡は空気と混ざってさらに増える。もこもこと細かな泡が一部千切れて宙を舞った。 「大丈夫……も、もう十分だ」 まるで焦らすかのように、後脚を洗っている翔香の手を振り切り、ディリムは立ち上がろうとした。が。 「まだ全部洗ってないからちょっと待って。すぐ終わるから」 とあっけなく押さえ込まれてしまう。あぅ、と情けない声を出して元通りになるディリム。焦りが顔にも表れていた。 そして自然と手はディリムの大事な部分へ。普段は毛に埋もれてあまり見えないその部分だが、雄であるからにはしっかりと存在している。 二つの球体に手が触れたとき、翔香はようやく理解した。ディリムが焦っていた理由が、そして自分が今どういう状態で、どういうことをしているのかを。 手を離そうとした翔香だったが、好奇心がそれを許さない。恥ずかしさと好奇心とで揺れ動く翔香。しかし既に恥ずかしいものは見られてしまっていたし、今更遅い。 あっという間に好奇心に身体を譲り渡す。そうして止まらない手は二つの球体を袋の上から優しくもみほぐしていた。 そうして泡を手に再び纏わせ、今度は筋の通った未だ柔らかい棒に手を出し、洗う。その動きにディリムは今度こそ悲鳴を上げた。 「我慢して、もう終わるから」 そう言ってディリムを&ruby(たしな){窘};めつつ、翔香はその形を、大きさを、手の感触で確かめていた。――これが雄の、ねえ……。 しかしあまり長く続けるのも可愛そうだ、とディリムをようやく解放する。ディリムが荒い息を吐いたのは暑さから、ではないのだろう。 今度はシャワーの温水がもこもことした泡を流していく。毛がぴったりと身体に纏わり付いて、ディリムは少し気色悪そうな顔をする。 お腹側を綺麗に流し終えたとき、翔香は僅かに膨らみ、覆いから顔を出していたピンク色のそれを見つけて、軽く息を呑んでいた。 ――……決めた。 ディリムに立つように指示をして、今度は背中側の泡を流していく。そして目をつぶるように言ってから、ディリムの顔も手とお湯で軽く洗った。 「……よし、綺麗になった。私も身体洗うから、終わるまでそこで待ってて」 翔香は自身の短めの髪をシャワーで流す。一般の女性よりも少し短めなその髪の毛の理由が、洗うのが面倒、なのだから呆れてしまう。 だが言うだけあって割と早く髪を洗い終えてしまった。ディリムを待たせてはいけない、と早めに終わらせたのもあるのだろうが。 今度は垢擦りタオルに液体石鹸をよく擦り込み、泡立てる。そして優しく身体を擦る、のだが。 「あ、ディリム」 と、悪戯っぽくディリムに声をかけてみる。恥ずかしさはどこへやら、ディリムの挙動をいちいち楽しもうという悪戯心だけが翔香を突き動かしていた。 案の定つい振り向いてしまうディリム。その目線の高さには、ちょうど翔香の大事な部分が。毛に覆われた割れ目がくっきりと見えてしまう。 泡が身体の所々を覆っていて、言いようもなく淫猥なその姿に少しの間目が釘付けになるディリム、だったが。 もう少しで飛びかかってしまいそうなほどの色欲を無理矢理押さえつけて、再び反対側を向く。その焦る姿がなんだか初々しくて、翔香はクスリと笑った。 それっきり何も言わず、翔香は身体をてきぱきと、しかししっかりと丁寧に洗う。それもこれも全ては決断したことの為、なのだ。 シャワーでしっかりと泡を落とし、ディリムの身体に飛んでしまった泡も綺麗に流し終え。ディリムはようやく終わった、と安堵のため息を漏らす。 シャワーを止め、ガチャリとドアを開いて脱衣所へと飛び出る翔香。かと思えばタオルを手にあっという間に戻ってくる。 一瞬脱衣所から流れ込んできた冷たい空気。やはり外で身体を拭くのは寒いのだろうか、翔香は風呂場の中で身体を拭いている。 「ディリムも拭いてあげるから、少しじっとしてて」 身体を拭き終えた翔香は、裸のままディリムの身体をタオルで擦っていく。水分を失った毛は四方八方へと撥ねてぼさぼさに。乱れた毛並みを見るとディリムが毛の固まりのように見えてくる。 あらかたの水分を拭き取れたことを確認して、ようやく翔香は風呂場のドアを開けた。途端に流れてくる寒さ。身体が冷えていく感じをディリムも翔香も感じていた。 「さ、早く着いてきて。あーもう寒い寒い」 と言うが早いか翔香は裸のまま廊下を駆ける。それまで翔香とは反対方向を向いていたディリムはついうっかり出遅れてしまう。 しかし追いかけようとしたディリムが見たのは翔香の後ろ姿。当然裸で、要するに淫らな体躯を見て落ち着いていた興奮がまた身体中に駆け巡る。 勢い余って翔香を押し倒さないようにだけ注意をしながら、ディリムは翔香の後を追って部屋へと駆け込んだ。 部屋に準備してあった下着と寝間着を翔香が着たのを確認して、ようやくディリムは翔香の方を向くことが出来た。 そして翔香はこれまた用意してあった櫛でディリムの毛を丁寧に整えていく。つやつやと輝くような毛並みは、今までのディリムとはまるで違う。 「……どう? 綺麗になったでしょ」 そう得意げになって翔香は鏡でディリムにその毛並みを確認させる。確かに今までとは違い、綺麗に整ったその姿はいつも以上にかっこいい、のかもしれないと少しディリムも嬉しそうだ。 しかしストーブが付けっぱなしになっていた部屋は、先ほどまでシャワーを浴びていたディリムにとってはやや暑すぎる。舌を出して温度調節しなければ倒れそうなほど。 「なあ、翔香……暑くないのか?」 部屋に入るなり翔香はストーブをさらに強くしていた。いくら寝る時にはストーブを消すから、といっても暑すぎるほどの温度。 こたつを横にどけて大きな敷き布団を敷いた翔香は、その上に仰向けに寝っ転がって、ディリムの話を聞き流していた。テレビも付けず、ただぼーっと中空を見つめるばかり。 「……翔香?」 何か様子がおかしい。ひょっとしてこの部屋の温度でのぼせたのか、と心配になってディリムは翔香に近づく。二人が楽々寝られそうな布団に足を踏み入れて、ディリムは翔香の頭を前足で小突こうとした、はずだった。 視界が回る。四肢は横に投げ出されていて、背中には翔香の身体が、そしてそこから回された手はしっかりとディリムを抱きかかえていて。 「ディリム……私、ね」 翔香のやや小さな胸の膨らみ、その感触がディリムの背中に当たる。互いの鼓動が早まるのが、互いに伝わっていた。 そして翔香の片手がディリムの股の部分を探り、雄の証を掴む。くにくにとやさしく、しかし着実に伝わる刺激にディリムはか細く息を漏らした。 「ディリムと一つになりたい。……駄目?」 その間も手の動きは留まるところを知らず、それどころかますます激しくなる。扱くような動きが加わったとき、ディリムの身体がびくんと跳ねた。 ディリムはその言葉の意味が理解できないまま暫く呆気にとられていたが、ようやくその言葉を飲み込んで、少しの&ruby(ためら){躊躇};いを押しのけて。 「……俺も、翔香と……したい、な」 自然と荒くなる息。翔香の温かな手がディリムの雄を刺激し続ける。そしてディリムの興奮に比例してか、ディリムの雄は一気に太く、大きくなっていた。 覆いを押しのけ、盛大に誇張しているその肉棒は刺激を求めてさらに揺れる。その形を手で確認するようになぞる翔香。 ディリムはその緩慢な刺激に不満を覚える。理性が溶け、本能のままに雄として暴れたくなる衝動。先ほどまで押さえ込まれていたその感情が、ついにはじけて溢れ出してしまう。 翔香の手をはねのけ、素早く立ち上がるディリム。荒い息のまま、翔香を睨んで立ち尽くす。しかしここで暴れてはいけないと、再びディリムは落ち着いて呼吸を整えていた。 「翔香……このままじゃ俺、我慢出来なくて……服、破いちゃいそうだから……早く脱いでくれ」 「……ええ」 あらかじめストーブの温度を上げておいてよかった、と思いつつ、翔香は寝間着を、そして下着さえも床に放り投げる。 それでもまだ暑いくらいだ。こみ上げる熱は下半身に溜まり、いつの間にかそこをじんわりと湿らせていた。 一糸纏わぬ姿になって、翔香は布団の上で仰向けになる。布団の繊維が直に肌に触れて、ひんやりとしていて気持ちよかった。 するとディリムが足早に翔香にまたがり、股にぶら下がる雄を翔香の口元へと持ってきた。待ちきれない、とばかりに揺れているそれは、先ほどよりもさらに大きく見える。 そして翔香の秘部にざらざらとした、湿った感触が這う。初めての感覚に翔香はあっ、と声を漏らした。 ディリムの攻めは遠慮を知らず、まるで食らいつくかのように執拗に舌を這わせ続ける。その動きが翔香自身の本能も呼び起こしていく。 目の前で揺れる肉棒を手で握り、前後に扱く。それだけでは物足りなくなった翔香はそれに舌を這わせる。シャンプーの香り、そしてディリムの雄の香りが翔香の理性をかき消して。 ディリムの動きはさらに加速していく。いつの間にか秘部からは液体が絶え間なく溢れ出し、ディリムの舌にその味を刻んでいた。 翔香の味。翔香の香り。それを味わうために舌をさらに蜜壺の奥へと突き込み、その外壁を這わせて蜜を絡め取る。 下半身に走る快感の渦に溺れながら、翔香もディリムの雄からねっとりとした粘液があふれ出すのを楽しげに見つめていた。 手に絡んだそれは潤滑液の代わりに、舌に絡まるそれは媚薬の代わりに。舐めるだけでは足りなくなり、いよいよ翔香はその雄を咥えた。 口内の熱さに肉棒が暴れ回る。舌が肉棒を這うたびに快感が脳を揺り動かす。ディリムは少しでも快感を得ようと、腰を振って口内の肉棒にさらなる刺激を与えていた。 一方の翔香も秘部を這う舌の動きに合わせて腰を動かし、さらに大きな刺激を得ようと本能のままに行動していた。しかしまだ刺激が足りない。 片手で自身の秘部へと手を伸ばし、放置されている出っ張りを手でかき回す。その刺激の強さに翔香は自ら声を上げた。 「はっ……あぁ……んあ……あ、ん……」 その声がディリムの獣を呼び起こした。舌の動きがその出っ張りに集中し始める。舌は先ほどまでとは比較にならないほど早く、荒く動かされている。 翔香は身体を震わせてそれに答える。しかしディリムの棒への刺激は忘れず、手で扱きながら舌を動かし、さらには吸い付く動きも始めた。 「うっ……はぁ……ぅぁ……しょう……かぁっ!」 その新たな刺激に、荒い息を吐くばかりだったディリムもついに嬌声を上げる。ただこみ上げる熱を翔香の口の中に叩き付けるように腰を振る。 いつしかディリムも翔香も激しく動いており、互いの動きが上手く合わさって最も大きな動きになるように自然と息を合わせている。 理性など&ruby(と){疾};うに壊れている。有るのは獣の本能だけ。翔香とディリムは自分の、そして相手の快感を求めて必死だった。 しかし最も大事なことは忘れていない。必要なのはこんな前戯ではないということも、そして今快感を爆発させてはいけないのだということも。 お互いの限界を感じ、お互いにその行動を一度止める。ディリムは一度翔香の上から離れて、向かい合って座る。快感が、熱が静まったところでようやく理性が僅かに戻ってきた。 翔香の蜜壺は粘液を吐き出し続けている。ねっとりとしたそれは秘部の周りの毛に、そして布団にまで垂れていて、翔香が軽く身体を動かすと銀色の糸でそれを布団に繋ぎ止めようと僅かに抵抗していた。 ディリムの雄も収まる鞘を探して暴れ回っている。翔香の唾液、そして自身が吐き出している先走りで光を反射する様子は見ていても卑猥だ。 「ごめん、……ちょっとやりすぎた。俺、初めてだから……加減出来なくて」 ディリムは自分の行為を改めて見返し、翔香のその部分がどろどろに解れるほどの激しさを認めて謝った。 いくら初めてとはいえ、これがやり過ぎなのは見ても明らか。翔香も初めてだと言っていたし、もう少しゆっくりやるべきだった、と今更ディリムは後悔していた。 「いいの。……気持ちよかったし。ところで、やっぱりディリムも初めてだったのね」 その問いかけにディリムは答えない。恥ずかしそうに爪で布団をいじくりまわしている。そんな反応が翔香にはいちいち可愛く見えて仕方なかった。 そういえば確かに初めてじゃない、という話は聞いたことがない。モテたモテなかったは別として、ディリムも初めてだったんだ……と翔香は少し安心する。 「そ、そんなことより……ごめん、やっぱりもっとゆっくりやろう」 息が上がるほど激しく動いて、ふと我に返ればディリムは途轍もなく疲れてしまっていた。翔香との時間はもっと大切に、ゆっくりとしたい。そうディリムは思っていたのだ。 翔香も頷いて、一度大きく呼吸をする。火照った身体は依然として快感を求めており、秘部は僅かに収縮を繰り返している。 まずは、とディリムが顔を秘部近くにうずめてきた。今度は視線を遮る物は何もない。手で支えつつ上半身を上げれば、自分の秘所も、ディリムがそれを舐める様子も丸見えだ。 そんな様子に恥ずかしさを覚えながらも、翔香はディリムのその姿に釘付けになっていた。 ひくひくと動くその割れ目をディリムはまじまじと見つめる。未だ溢れるその蜜を右前足に絡め、爪を立てないように気をつけながら筋に沿って這わせる。 「ん……っ」 くぐもった声を上げる翔香。それは決して辛い声ではなく、寧ろ快感から来た物なのは明らか。ディリムはその様子に少し満足げで。 もう一度、肉球の柔らかい部分で筋を撫でる。今度は少し強く押し当てて、しっかりと刺激が伝わるように。 ぬるりとした粘液が刺激を弱めてはいるものの、それでも翔香に伝わる刺激は相当なもの。今度は全身を震わせてそれに応えた。 そして快感に顔を綻ばせる翔香をちらりと見て、ディリムは筋を撫でる動きを連続させ始めた。上から下へ、下から上へ。 その何の変哲もない動きは翔香にとって効果抜群、だったようで。ゆっくりな動きに不満を持っているかのように自ら秘部を前足に擦り付ける。 翔香には当然自分の行動も見えている。当然恥ずかしかったはずなのだが、やはりそれ以上に快感を欲していたのだろうか。動きが止む気配はない。 それをディリムも確認して、今度もまた舌をその部分に近づけ、這わせる。蜜がねっとりとディリムの舌に纏わりつき、味が全体に広がって。 その味をもう一度、とやはり舌を這わせ続ける。そのざらざらした舌の感触が翔香に十分すぎるほどの快感を与えるのだ。 さらにディリムは軽く舌から電気を流し始めた。ぴりぴりとした刺激が翔香の秘部を伝わって、敏感に反応してしまう翔香。 「あ、あっ……ん……ぅあっ」 必死で耐えてはいるものの、翔香はどうにも身体の動きが止められないでいた。耐えようとする自分の意志に反して、快感を求めて勝手に動く。 翔香の上げる声がディリムには可愛く、愛おしく聞こえていた。顔を赤らめ、息を荒げて行為に溺れる翔香。――そんな翔香をどこまでも愛したい。 出来ることならこのまま翔香をさらに攻め立てて、もっといい声を、いい顔を見たいとディリムの本能が告げている。しかし逸る気持ちをディリムは押さえ続けていた。 僅かばかり溢れた気持ちは舌を突き込むことで何とか収める。激しすぎず、それでいて大胆なディリムの動きに、翔香は些かの燻りと不満を感じてはいたが。 しかしまだこれは本番、ではないのだ。ここで体力を使い果たしてしまっては元も子もない。ディリムの気遣いには感謝しないと、と快感に埋もれた意識の中で翔香は思う。 舌はいつしかさらに奥に入り込んでいて、出し入れだけではなく、周りの肉壁をなめ回す動き、そして蜜を掻き出す動きが加わっていた。 これほどの快感を与えられてもなお、翔香は絶頂へはたどり着けない。受け継がれた本能とでも言うべきか、ディリムの攻めは初めてのものとは思えないほど的確だった。 達することは出来ないぎりぎりの攻めを続けられて、翔香はただただ早く絶頂に達したい、そう思うようになっていた。そんな翔香の気持ちを何となく感じて、ディリムは一度顔を秘部から離す。 鼻にもべっとりと付いた翔香の愛液が糸を紡ぎ、壊れて布団を少し汚す。ディリムはその残った蜜を舌で舐めとってから、ようやく立ち上がった。 しかしこんな時でも翔香に対しての些細な意地悪は忘れない。傷を付けないように注意して、軽く翔香の秘豆を右前足で弾いた。 「きゃぁっ……あぁっ……はっ……ディ……リムっ……」 へへ、と少しばかり得意げにへらつくディリム。翔香は予想外の攻撃に支えていた手を緩めてしまい、あえなく布団に仰向けに倒れてしまっていた。 だが次の瞬間、翔香はあっという間に起き上がると、ディリムの身体を捕まえて仰向けにひっくり返す。当然股の部分には先走りを垂らして誇張するディリムの雄槍が。 「ぐあっ……しょ……駄目、だっ……てぇぇっ!」 その肉棒を遠慮なく掴まれ、強い力で扱かれたのだから堪ったものではない。速い動きではなかったが、ディリムはあまりの快感に悲鳴を上げた。 自業自得でしょ、と翔香は呟いてさらに手の動きを加速させた。空いたもう片方の手ではディリムの胸辺りを探り、僅かな出っ張りを探って擦る。 雄のそれは雌のものほど敏感、とは言い難いのだが。それでも先ほどから十分すぎるほどの快感とお預けを喰らっていたディリムにはその刺激が何倍にも感じられていて。 官能小説家は伊達じゃないんだな、とディリムは今更悔やむ。自分が悪いのだから仕方ないのだが、それでもこの先に待っていることを想像して恐怖してしまう。 案の定翔香は肉棒が震えだした辺りで扱く動きを一度やめ、二つの球を手でころころと弄んできた。しかし胸への刺激は止むことがない。 その生ぬるい快感では全く足りず、何とか快感を得ようと努力してみるが、翔香に押さえられていて立ち上がれそうにはない。 暫くもすればまた肉棒は少しだけ元気をなくして縮こまる。それを翔香は見逃さずに、また強い前後運動が始められるのだ。 その動きに合わせてディリムも腰を振ってしまうのはやはり獣の血か。自分の肉棒をこの体勢では見ることも出来ず、翔香が何を企んでいるのかも見ることが出来ない。 次はいつ攻めてくるのか、いつ止められてしまうのかも分からずに、ディリムは翔香に良いように弄られるしかなかったのだ。 二度目の休止は思った以上に短く、三度目の休止は先ほどまでより長く。そうやってタイミングをずらして刺激を送られ続けるディリムは、いつしか涙目に。 「俺っ……れが悪、かっ……たあっ……からっ、ごめ……ごめんっ、な……さいっ!」 情けなく翔香に嘆願してみるが、四度目の攻めは留まるところを知らなかった。先走りが溢れて、胸の辺りまでべとべとに。それが胸の愛撫をなめらかにする役割を果たして、ますますディリムに不利な状況を作っていた。 しかしその声を聞いてようやく翔香もディリムを離す。お腹周りは見るも無惨な状況で、先ほど綺麗だった部分まで毛並みはばらばら。 ぼんやりと天井を見つめて快感の余韻をひくひくと味わっているディリムを起こして、軽く唇をディリムのほほに付ける。 ようやく状況を飲み込んだディリムもまた、翔香の唇にこつり、と口を当てて、舌で優しく周りを撫でた。 口の構造上、深いキスはし難いだろうとお互い分かっていた。それでも翔香はディリムの舌を自身の舌で絡め取って自身の口内へ誘う。 入った舌の先端をディリムは必死に暴れさせる。内壁を僅かに撫でるその動きが、翔香には心地よかった。 一度舌を離して、乾いた舌をディリムは再び唾液で濡らし、再度翔香の中へ。纏った唾液が翔香の舌で取り去られ、後に残るのは翔香の唾液。 お互いの味をそこに感じて、翔香もディリムも満足げに口を離した。銀色の橋が口元に架けられ、しかしあっという間に崩れ去る。 「なあ。……もうそろそろ、いい、よな。……四つん這いになって、後ろ、向いてくれ」 ディリムが言いたいことを翔香も理解して、こくりと頷く。言われた通りの恰好をとるが、翔香はやはり恥ずかしさを隠せない。 そんな翔香に催促するかのように、ディリムは晒されていた翔香の秘部を一舐めした。ぴくん、と僅かに翔香の身体が跳ねる。解れきって、蜜を垂らすそこはディリムの雄を待ちわびてしきりに脈動している。 翔香は顎を大きく引いて、繋がりが見えるような体勢に。翔香の中の不安と期待が、行為を見る恥ずかしさを大きく上回っていた。 「……ゆっくり、ね?」 ああ、とディリムが言ったのを信じて。翔香は秘部に触れる肉槍の大きさを感じながら、一度目を瞑る。 愛液と先走りがぐちゅり、と馴染み。ディリムは先端をゆっくりと、そして確実に、自身の雄を翔香の中へと突き立てた。 解れているとはいえ、未だ一度もそのような太い物を入れた経験はない翔香の秘所は、入ってきた異物を押し出そうと固く閉じている。 翔香の緊張をそこに感じたディリムは、翔香に大丈夫だから、と声を掛ける。それでも心配な翔香だったが、幾分か気持ちは楽になって。 ふっと少しだけ緩んだその肉壁をゆっくりとこじ開けつつディリムは雄を沈めていく。断続的に内壁を擦られるその快感に思わず翔香は喘ぐ。 「あっ……つぅ……うぁ……」 ディリムは翔香の中で肉棒が溶けるのではないかと思った。それほどその中は熱く感じられるのだろう。同時に内壁がディリムの雄をきつく締め付けてきて、さらなる快感を呼ぶ。 このまま果ててしまうのではないかという悦楽。しかしながらここで達してしまっては雄としても非常に情けない。喘ぎも刺激も我慢して、まずは翔香の最奥を目指す。 くちゅり、くちゃりと入っていくディリムの肉棒。繋がりの部分からは翔香の愛液がぽたぽたと滴り落ちる。その様子を翔香は恥ずかしいと思いつつも目が離せない。 自身の割れ目が愛する雄を受け入れている。それだけでも十分すぎるほどの喜び。それを目でも確認して、翔香は一層嬉しく思う。 依然として閉ざされた翔香の中。ディリムは翔香へとゆっくり電気を流す。いわゆる電磁波の要領だ。途端に身体が痺れる感覚を翔香は覚えた。 すると固く閉じていたそこもぴくりと動き出して隙が出来る。その動きに合わせてさらに深く、ディリムは自分の棒を差し込んで行く。 やがて薄い皮膜にディリムの雄がぶつかる感触。それは翔香の初めての証。ディリムは一度動きを止め、翔香に問いかけた。 「なあ、翔香……本当の本当に、俺で……いいん、だよな?」 多少の不安はまだ残っている。これから来る痛みも恐ろしい。だけどそれ以上に、ディリムに愛して欲しい。翔香の気持ちは変わらない。ふっと微笑んでディリムに返事をする。 「ええ。……ディリム、お願い」 ぐっと後脚に力を入れ、ディリムは一気に腰を突き立てた。聞こえないほどの音と共にその膜は破れ、ディリムの雄がついに中の壁を突いた。 痛みに顔を歪める翔香だったが、何よりもディリムが入ってきた喜びの方が大きかった。最後まで貫かれた感触を確認して、自然と翔香は微笑んだ。 軽く震える翔香の後脚。ディリムはその様子を見逃さず、まずは翔香が落ち着くのを待った。中ではディリムの怒張がはち切れんばかりに脈動している。けれども大切なのは翔香の事。 大丈夫か、と気遣いながら、ディリムは翔香の身体の緊張が解けるのをじっと待っていた。二、三回大きく息を整えて、大丈夫、と翔香は返す。 「動く、ぞ」 ぐちゅ、と激しい水音を立てながら引き抜かれるディリムの雄。愛液と先走りでドロドロに濡れたそれが、部屋の電灯の光を反射してきらりと眩しい。 ディリムには見えないのだろうが、翔香にはそれがしっかりと見えて。あんなのが入ってるんだ……と思わず感心してしまう。 そうやって油断していると、いきなりディリムが腰を一気に埋めてきた。内壁が擦られ、ひときわ大きな声を上げて翔香は悶える。 「はっ……ああっ!」 その声に気をよくしたのか、ディリムは再び腰を引き、また突き立てる。同じような声が翔香の口から漏れ出すのはもちろんのことで。 初めての快感、おまけに身体の痺れの所為か至る所が敏感に。身体に触れるディリムの毛でさえも快感に感じられる。とすればもうただひたすら翔香は喘ぐしかない。 翔香の嬌声がディリムの本能を刺激する。腰の振りはますます激しく、大きな物へ。ぐちゅぐちゃとかき回される翔香の蜜壺からは、蜜が絶えず掻き出されていく。 零れた愛液は布団の上に染みを作っていく。その染みでも吸収しきれなくなるほどの愛液がさらに零れだして、いよいよ水溜まりを作り出していた。 快感が一気に増えたことで、翔香の秘所もびくびくと絞るような動きを始めていた。その動きがディリムには堪らない。突き立てる度に雄を扱かれる感覚。 「あっ……はぅっ……がっ……くぁぁっ……ぁぁ」 突いては戻し、突いては戻し。さらに激しさを増す行為は留まることを知らない。半分理性が飛びかけていたディリムは、繋がりを保ったまま翔香をひっくり返した。 あまりにも突然の出来事に翔香は対応も出来ずに仰向けに。ディリムは腰を低くして、入れにくそうにしながらも雄を埋める作業を再開した。 それだけでは飽き足らず、翔香の胸の出っ張りを舌で転がし始めたから翔香は堪らず声を上げた。ざらざらとした舌が敏感になった乳頭をこねくり回す。 敏感になった胸に、あろうことか電気が流れた足が触れる。胸だけでも達せそうなほどの快感に翔香は悲鳴のような声を上げている。 それなりの大きさの胸を舐めつつ、もう片方は足で擦る。足で触れることでディリムはその柔らかさを改めて実感していた。それを見つつも雄を突き立てる行為は怠らない。 「きゃああっ……ディ、リ……あっ……ム……だめっ……!」 ぺちゃぺちゃと胸を舐めるディリムはその行為に夢中になっている。そして&ruby(とど){止};めとばかりに口を使ってそこを吸い上げる。 「やぁぁぁぁっ! ディリムっ……きもちいいっ……こわれ、ちゃうってっ……!」 口では拒否をしつつも身体は正直に反応してしまう。痺れと快感が体中を駆け巡る。しかしまだ後一歩が足りない。 ディリムの腰の動きに合わせて自身ももぞもぞと動いてみる。大きく動く腰の動きに合わせて動けば、擦られる悦楽はより大きく量を増す。 「しょ……うかっ……あっ……ぐっ……はあぅ……っ!」 翔香は無意識のうちに繋がりの部分に手を延ばしていた。そして触られていなかった自身の豆に指を当て、後一歩を埋めようと小刻みに動かす。 「ひゃぁぁぁぁぁっ!! ああっ! ぁっ!!」 ぷしゃり、と勢いよく潮を吹く翔香の蜜壺。さらりとしたその液がディリムの腹の部分を満遍なく濡らす。そして何よりも、その蜜壺自体が大きく脈動を始める。 絶頂とも少し異なった快感。そのままディリムが腰を動かし続けたことで、溜まった熱が一気に秘所に留まって。 「でぃ、りむっ……わたし……もううっ……だめえっ……あっあ……」 食らいつくように腰をぶつけるディリム。ぢゅぷりぐちゅりと淫らな音が鳴り響く。ディリム自身ももう限界に近かった。 だからこそ絶頂のためのラストスパートをかける。加速する腰の動き。肉棒と肉壁が擦れ合い、お互いの快感が混ざり合う。 「翔香っ……お……れもっ……だめだぁっ……」 翔香の手が豆をこねくり回し続ける中、ディリムの肉棒が最奥を突く。ぐちゅ、という音がそこで止まり、ディリムは吠えた。 「がっ……うああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 「やああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 ぷしゅっ、と翔香の蜜壺が蜜を吐き出す。それと同時にディリムの肉棒が内部で跳ね、熱い粘液を吐き出し続ける。 入りきらないほど溜まったそれが今度は愛液と共にどろりと吐き出される。初めての証を破った時の血もそれに混ざり、ピンク色となって壺を覆う毛に絡まりながら、布団に零れた。 ディリムが雄を引き抜くと、翔香の秘所からはさらに大量の液体が吐き出される。未だにひくつくそこはまだ快感を求めているのだろうか。 しかし翔香もディリムももはや限界だった。ディリムは精液と愛液でどろどろの、半勃ちの雄をぶら下げたまま翔香の上に倒れ込む。 翔香の胸に顔を置いてもう既に夢見心地のディリム。そんなディリムの顔を数度撫でると、ディリムは少し嬉しそうに微笑む。 翔香自身も少し微笑みながら、びしょびしょの秘所も気にせずに、ディリムを抱いてすーすーと寝息を立て始めていた。 胸に擦れるような刺激を覚えて翔香は目を覚ました。そこには裸の自分と、翔香の胸を枕代わりにぐっすりと寝ているディリム。 ポッポの囀りが窓を震わせている。ストーブが付けっぱなしで寒くはないが、時計を見る限りではまだ早朝だ。 翔香は昨日の出来事を寝惚けた頭で暫く考える。どうしてこういう状況になったのかを鮮明に思い出すにつれ、言いようのない恥ずかしさに駆られて翔香は顔を赤らめた。 大きく首を横に振って、翔香はそれ以上考えることをしなかった。考えるだけで身体が疼いてしまいそうだったのだ。 初めての経験と初めての快感に半分理性が吹き飛んで、ただただあの快楽を貪っていた自分を思い出すのは、翔香にはこの上ない恥だった。 一度ディリムを起こそうと背中を数度叩いてみる。しかしどうもそう簡単に起きそうな様子はない。 ゆっくりとディリムの下から這い出すようにして、ようやく翔香は立ち上がった。自身の秘所に目をやれば、粘液が固まって毛はごわごわに、周りも汚れてしまっている。 腹部にもべっとりとそれが付いてしまっていて、手で強めに擦るとぽろぽろと乾いたそれが落ちていく。 外の廊下はおそらく朝の冷え込みで寒いだろう。しかし翔香は全裸のままそこを渡って風呂場へ行かなければならない。 ディリムを起こして一緒に行くことも考えたが、翔香はともかく一刻も早く身体を洗いたかったのでやめた。ディリムを起こすのは可哀想だ、と思ったのもあるが。 ディリムを横にどけて、汚れた布団を抱えて、勢いよく廊下へと飛び出す。ドアはきちんと閉めつつそのまま脱衣所へと駆け抜け洗濯機に布団を押し込む。さらに風呂場のドアを通り抜けて素早くシャワーの蛇口を捻った。 この間にも刺すような寒さが翔香の身体を襲う。シャワーからお湯が出るまでの間、翔香はその場で足踏みをし続けていた。 そしてようやくシャワーからはお湯が出てきて、一気に風呂場の温度が上がる。脚から秘所へ、腹部、胸と手で綺麗に粘液を落としていく翔香。 秘所に手をやればどろどろした粘液が毛に纏わり付いている。それも綺麗に落としながら、さらには中まで軽く手で擦る。 その快感に思わず翔香は溺れそうになるが、こんな所で一人自慰をしている暇はない。早朝とはいえさっさと準備しないと仕事がある。 昨日とは違い翔香の理性はしっかりと働いている。かすかに蜜壺がじっとりと液体を吐き出しているような気はしたが、それを無視してシャワーを済ませた。 脱衣所のタオルを取って、昨夜と同じく風呂場で身体を拭く。そして脱衣所にあった新しい下着を着けてから、翔香は居間へと戻った。 「おはようさん、翔香」 どうやらディリムも目を覚ましたようだ。まるで昨日のことがなかったかのように、起き上がっていつも通りの声で挨拶してくるディリム。しかし毛が所々ごわごわになっているのが目について仕方がない。 しかし翔香は自分のことで精一杯。ディリムの身体を洗うのは後にして、とりあえず仕事へ行く準備を済ませようと決めた。 「おはよう、ディリム。昨日はよく眠れた?」 ディリムに声を掛けつつ、忙しなく上下の服を部屋のタンスから取り出して着ていく翔香。ついでにテレビのリモコンの電源ボタンを一押し。もう朝のニュースの時間帯のようだ。 「ああ、おかげさまでな」 そっか、と翔香はにこやかに答えた。昨日の一件にはお互い触れていないが、それでも恥ずかしさからか口数は増えない。 会話が途絶えてしまうが、何を話せばいいのかお互いに分からなかった。何から話すべきか、何を話さないでいようか。 仕事に持っていくものを次々と探してはバッグに入れている翔香。忙しい振りをしてなるべく昨日の一件に話題がいかないようにしていたのだが、先に口を開いたのは翔香自身だった。 「ディリム、その……悪い夢、見てないの?」 昨日はぐっすり眠ってしまって、翔香はディリムを気にする余裕はなかった。しかし、もしかしたら昨日も苦しんでいたのかもしれない。 夜中に耐えていたのだとしたら、自分だけ寝ていたのだとしたら、と何となく翔香は申し訳なく思ってしまう。だがディリムはそんな翔香を見てふっと笑った。 「言ったろ? 『おかげさまで』ってな」 その言葉の意味をようやく理解して、翔香も思わず笑みを零す。ディリムの頭を少し撫でてやると、嫌がる仕草を見せるものの尻尾をゆらゆら揺らしていた。 「さあ、仕事に行きましょうか。ご飯は向こう行けばあると思うけど……」 ハンドバッグの中を漁って忘れ物がないかを確かめる翔香。バッグを閉じてテレビを消し、ストーブを消して戸締まりの確認。 時計をちらりと見て、まだ余裕があることを知って一安心する。コートを羽織っていよいよ居間から出ていこうとした翔香をディリムが引き留めた。 「あ、翔香。その……」 いつもの威勢はどこへやら、どうやらディリムは自分の気持ちを正直に伝えるのが苦手らしい。口ごもって言葉にならない音を発しているだけ。 そんなディリムのことはとっくに分かっている翔香。何より自分自身も同じなのだからその気持ちはよく知っていた。 「はい。……ディリムのトレーナーになるからには、ね」 手に持っていたのは赤と白のボール。中身の入っていないそれをディリムの目の前に差し出す。今までさんざん怖がっていた、モンスターボールに入ること。 そのボールをまじまじと見つめていたディリムだったが、ようやく決心が付いたようで。――もう、怖くなんかないさ。 自らそのボールに手を触れると即座にその身体が中へと吸い込まれていく。数度ボールが揺れた後、それはぴたりと動かなくなった。 ボールの中に見えるディリムの顔を覗いて、翔香は一人頷く。それはこれからディリムと共に頑張ろうという意思の表れ。 もちろんこれからも、まだまだ喧嘩は絶えることがないのだろう。暫くはいつも通りの賑やかな仕事場になりそうだな、と翔香は自分とディリムが喧嘩する様子を想像して苦笑した。 けれども、どれだけ喧嘩したとしても、翔香はディリムの「本&ruby(・){根};」を知っている。言の葉に隠れて光が届かなかったその気持ちも、今なら見える気がした。 そしてディリムも翔香の「本&ruby(・){根};」を知っている。身体を重ねて、心が通じ合って、言わなくても相手の気持ちは分かっている。 そうだよね、と心の中で翔香は呟いて。玄関のドアを開ければ朝の日差しが眩しい。ディリムの心と、そして翔香の心と同じ、雲一つない晴天。 跳ねるように歩きながら、翔香は元気よくいつものバス停へと向かおうとした、のだが。 「……ディリム洗うの忘れてたっ!」 素早く家へと入って風呂場でディリムをボールから出す。出てきたディリムは呆れ顔で、わざとらしく大げさなため息をついている。 実はディリム自身も忘れていたのだが、それは棚に上げておいてとりあえずいつもの皮肉めいた口調で翔香を&ruby(なじ){詰};る。 「ったく、早速これか。翔香はやっぱり翔香なんだな」 「ディリム、五月蠅い。そもそもあんたが自分で気づかないから悪いのよ。私はあんたの&ruby(みなり){身形};なんていちいち気にしてられるほど暇じゃないの」 「へえ、じゃあこのまま行ってもよかったんだな?」 「えーえー、別に良いわよ? ただあんたが『オトコノコにとって大切なこと』してた、とでも言えば済むんだからねー」 「へー、髪の毛に白いの付けておいてそんなことよく言えたもんだ」 「っ……何よ」 「……何だよ」 居間の時計はまもなく九時。大抵の仕事が始まる時間だ。未だに風呂場では騒ぐ声が響き続けている。 そんな言い争いを続けつつも、何故だかお互いに満足していた。それはどちらもが本当の気持ちを分かっているから。 喧嘩するほど仲が良い、とはよく言ったもの。翔香もディリムも、言葉には決して表さないが。この気持ちだけはいつまでもずっと、心の根っこに持ち続けるのだろう。 ――大好きだよ、ディリム。 ――大好きだ、翔香。 その後、とある官能小説家が新しい恋の形を描き、一部の人に大ヒット、やがて一部の界隈で有名な小説家になっていくのだが……それはまた別のお話なのだ。 ***あとがき [#ib4bf794] 珍しく……というわけでもないですが、純愛エロです。非エロがあんなお話だったので、お口直しの意味も込めて。 実はこんなに長く書いたのは初めてだったりします。書きためるのが苦手な自分にとっては辛いことの連続でしたが。 それでも何とか仕上げられてよかったです。行頭下げを入れて、ようやく完成したのは提出期限のほんの少し前に。ぎりぎりでした。 ちなみに「本根」は敢えて漢字をこう当ててあります。 女性の身体を書くことが普段なかなか無いので、今回は少し頑張ってみました。 ちなみに書こうと思ったきっかけは色違いのライボルトが出したかったからです。非エロと同じ理由ですね。 こちらで非エロ……は思いつかなかったのでこういった形に。話自体は割と前から考えていましたが。 書いている最中は楽しかったんですが、どうも途中で投稿したくなって仕方ありませんでした。これがとっても辛かったです。 そうしてやっとの思いで全部仕上げて、推敲しようと思っていたらいつの間にか最終日。 やっぱり文章を書きためるのは苦手です。もう少し余裕もって投稿するはずだったんですが。 肝心の官能シーンについては余り多くは触れません。楽しんでいただけたなら幸いです。 色々と書くのが気恥ずかしかったりもしましたが。やっぱり女性の身体書くのは苦手。 そして何と言ってもブランクが酷くて大変でした。継続は力なり、ですね。これから頑張ります。 それでは、投票時のコメントへの返信を。 >最後まで喧嘩の耐えない二人でしたね。 >読んでいる側としても、微笑ましいです。 >それにしても、昼寝で12時間寝れる翔香はすごい。 (2010/03/22(月) 02:48) 喧嘩ばっかりですが、決して仲が悪い訳じゃ無い。こういう関係もいいものですよね。 朝四時から夕方四時まで。寝ようと思えば寝られ……難しいですね。きっと彼女の才能です( >虜になりました。 (2010/03/22(月) 14:36) どうもありがとうございます。翔香とディリム、気に入っていただけましたでしょうか? >よんでいて面白かったです。 (2010/03/23(火) 12:05) 嬉しい限りです。これからも面白い小説が書けたらな、と思いますので応援よろしくです。 >お互いにいがみ合いながらも根っこの部分では愛し合っているふたりの関係に魅入ってしまいました。 (2010/03/23(火) 14:56) 翔香とディリム、性格上衝突しがち……なんですが、喧嘩するほど仲が良いのです。きっと上手くやっていけるんじゃないかな、と。 >素直になりきれない一人と一匹。でもその実、心の奥ではきちんと通じ合っていそう。 >少し先、喧嘩しながらも幸せに過ごしていく彼女達の姿が、簡単に想像できました。やっぱり愛だよね! (2010/03/24(水) 20:59) まさにその通りだと思います。素直に話せなくても、通じ合えるって良いことですよね。 きっとこれからもなんだかんだで上手くやっていくんだと思います。やっぱり愛し合っているのが一番です。 >喧嘩するほど仲が良いって事なんでしょうか?w >二人の愛が伝わってきて、読後優しい気持ちになれました。 (2010/03/24(水) 21:49) そういうことです。嫌よ嫌よも好きのうち、とも言えますw 気分よく読んでいただけたなら幸いです。愛って大切ですよね。 >本当は相手のことが大切なのに、素直になりきれない二人が微笑ましかったです。 >あたたかい気持ちになれました。(2010/04/02(金) 18:04) どちらも不器用ではあるんですが、それでもお互いのことが好きで好きで仕方ないんです。 そんな彼らのお話、温かく読んでもらえてよかったです。 >二匹のやりとりが面白かった。 (2010/04/03(土) 09:17) 実はやりとりって結構苦手だったりします。どうもありがとうございますです。 >気の強い翔香とディラム。二つの思いが伝わりますよね。 (2010/04/03(土) 14:37) お互い気は強いんですが、きちんと想いは伝わったと思います。これから幸せに暮らしていくんじゃないかな、と。 なんと九票も頂きました。皆様の投票に感謝感謝です。 作品が執筆途中で完全に止まってしまっていますが、これから執筆再開していきたいと思います。 それでは、読んで下さった皆様も、どうもありがとうございました。 ノベルチェッカーの結果↓ 【作品名】 コトバとホンネ 【原稿用紙(20×20行)】 105.7(枚) 【総文字数】 35454(字) 【行数】 669(行) 【台詞:地の文】 16:83(%)|5820:29634(字) 【漢字:かな:カナ:他】 34:59:5:0(%)|12141:21078:2118:117(字) ***コメント [#x02618fc] #pcomment(コトバとホンネ/コメントログ)