&size(20){''ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語''};
作者 [[火車風]]
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第十二話 けんかするほど仲がいい? 道を分かれて固まる絆
「こっちだ!!」
「いやこっちだよ!!」
「絶対こっちであってるよ!!」
「こっちのほうが近道だって!!」
今回の依頼はソウマ達と別行動。
アドバンズのAメンバーだ。
しかし、依頼を終えた帰り道、途中の分かれ道でかなりもめているようだ。
バッジを使えばすぐに出られるのだが、運悪くギルドに忘れてきてしまったのだ。
「こっちだって言ったらこっちだよ!!リーダーのオレが言ってんだぞ!?」
ソウイチは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「そう言っていつも失敗してるのは誰さ!!こっちのほうが近いよ!!」
ソウヤも反論する。
「たまには僕たちの意見も聞いてよ!!こっちだったら!!」
ゴロスケもがんとして譲らない。
「絶対にこっちが近い!!」
モリゾーも考えを変える気はないようだ。
「ああそうか!!じゃあもう勝手にしろ!!オレはこっちに行くからな!!」
ソウイチは怒ってすたすたと歩いて行ってしまった。
「このわからず屋!!じゃあ僕はこっちに行くよ!!」
そう言ってソウヤも歩き出した。
「二人とも自分勝手なんだから!!もういいよ!!」
ゴロスケもモリゾーも自分のさした分かれ道を進んでいった。
四人そろって自分勝手なのだが、みんな自分のことは棚に上げているようだ。
「くそお!!オレの言うことがそんなに信用できねえかよ!!ああ~腹立つ!!誰でもいいからぶっとばしてえ!!」
ソウイチはそこらじゅうに八つ当たりしながら先へ進んだ。
敵はやられるのがいやなので物陰に隠れていた。
それが気に入らないのか、いろいろな技をやけ気味に繰り出しながら意味不明な言葉を叫んでいた。
「まったく、ソウイチの言うことはほとんどあてにならないんだから!なんでああも自分勝手なんだよ!!」
ソウヤも石をけったり壁をけったりしながら先へと進む。
怒った時の行動の似具合はさすが兄弟といったところか。
「本当にソウイチもソウヤも!!なんでオイラの意見聞いてくれないんだよ!」
モリゾーもかなりイライラしている。
石をけったり壁をけったり、かなり怒りが収まっていないようだ。
「みんな自分勝手すぎるよ!僕の意見なんかほとんど聞いてもらえない!」
ゴロスケはほかのメンバーとは違い、ブツブツとつぶやいて怒りを口にするだけだった。
しかし、敵が出てくると容赦なく攻撃した。
しばらく歩いていると、ソウイチは広い空間に出た。
「やっぱりこっちであってるんじゃねえか。オレの言うことだってあてになるんだよ。」
まだイライラした感じでソウイチはつぶやいた。
どう考えても偶然としか思えない。
「あ、ソウイチ!」
「ん?」
なんと、向こう側にはモリゾーがいるではないか。
どうやら二人の選んだ道はこの部屋に通じていたらしい。
「何でお前がここにいるんだよ?」
「そっちこそなんでいるのさ?」
お互いに険悪な雰囲気が漂っていた。
さっきケンカしたばかりだから、当然といえば当然だろう。
「オレはただオレの選んだ道をひたすら歩いただけだ。」
ソウイチはぶっきらぼうに答えた。
「オイラもだよ。結局どっちを選んでもここに来たんだね・・・。」
「なんかバカみてえだな。これならわざわざケンカしなくてもよかったぜ。」
ことの発端はゾウイチなのだが、本人は完璧に忘れている。
「だよね。ここからは二人で一緒に行こう!」
仲直りができてモリゾーはうれしそうだ。
けんかして怒っていても、結局は仲直りしたいとどこかで思っていたのだ。
「じゃあ行くぜ!遅れずについて来いよ!」
「もちろん!」
二人はがっちり握手をすると、先へと進み始めた。
「ほんとみんな自分勝手だよ・・・。この道が絶対出口に通じてるのに・・・。」
ソウヤはまだイライラしていて、体からは電気がピリピリ流れていた。
しばらく進むと、道が何本か出ている部屋についた。
「ん?ソウヤ?」
「え?」
ソウヤが後ろを振り返ると、モリゾーとソウイチがいた。
ソウヤの選んだ道もソウイチ達の選んだ道につながっていたのだ。
「なんだよ、お前の選んだ道だってオレの道とつながってたんじゃねえか。」
「そっちのほうが僕の道につながってたんでしょ。」
「なにお!?」
「なんだよ!?」
一触即発の雰囲気。
「二人とも落ち着きなよ!どっちを選んでも結局1本道だったんだからいいじゃない!」
モリゾーは必死で二人をなだめた。
「まあ、そうだよな・・・。」
「確かにそうだよね・・・。結局は同じ道か・・・。」
ふと、二人の目があった。
それに気づくとすぐ目をそらしたが、心のどこかでは、意味のないけんかだったことを認めているようだ。
「とりあえず先へ進もうよ。もうそろそろ出口だと思うよ。」
モリゾーは二人を促した。
「だな・・・。」
「うん・・・。」
三人は再び歩き始めた。
そして、そろそろ出口の近くまできたであろうところで、ゴロスケと合流した。
「あ、ゴロスケ!!」
最初に気づいたのはソウヤだった。
「み、みんな・・・。」
ゴロスケはびっくりしていた。
なにしろ、自分以外の道で出口に通じる道はないと思っていたからだ。
「てことは、どれを選んでも良かったのか・・・。」
ソウイチが言った。
すると、みんなは笑い出した。
ケンカしたことが本当にバカらしく思えてきたのだ。
「結局、誰の道へ行っても同じだったんだね。」
モリゾーは言った。
「だよね。なのに自分のことばっかり考えちゃって・・・。ごめんね、ソウヤ・・・。」
ゴロスケはすまなそうにソウヤに謝った。
「気にしなくていいよ。僕だって意見を曲げようとしなかったんだし。僕のほうこそ自分勝手だったんだよ。」
ソウヤは優しく言った。
「オレだってそうさ。」
「オイラだって。」
どうやらみんな仲直りしたようだ。
「じゃあ行こうぜ!アニキ達も待ってるかも知れねえしよ!」
「だね!」
「うん!」
「行こう!」
こうしてまた、四人の絆が深まったようだ。
ケンカするほど仲がいいというのは、あり得ることなのかもしれない。
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