&size(20){''ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語''}; 作者 [[火車風]] まとめページは[[こちら>ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語]] 第二十二話 熱水の洞窟 ソウマの相談事 後編 「お~い!」 どこからか声がした。 見ると、向こうからソウヤとゴロスケが走ってきた。 「おお。とりあえずは無事みたいやな。よかったよかった~。」 カメキチはほうっとため息をついた。 「大丈夫じゃないよ~・・・。敵がわんさか出てきて大変だったんだから~・・・。」 二人はその場に座り込んでしまった。 オレンで体力を回復したとはいえ、やっぱり疲れていたのだ。 「今のうちにしっかり休んでおきな。そういや、ソウイチ達はどうした?」 ソウマは二人に聞いた。 二人は、道が3つに分かれていたので、それぞれ3組に分かれて探索したことを話した。 「そうか・・・。まあ、あいつらのことだから心配はないと思うけどな。」 ソウマは若干不安だったが、それでもソウイチ達のことを信じていた。 それから数十分後、今度はシリウスたちが合流した。 「いや~、何度も同じとこぐるぐる周って時間食ってよ~・・・。」 シリウスは困った顔で頭をかいた。 「それにしても、ソウイチ達遅いね・・・。何かあったのかな・・・?」 ゴロスケは心配だった。 あの二人なら、ここまで時間がかかるとは思えなかったのだ。 「(嫌な予感がするな・・・。)ちょっと探してくる。お前らはここで待っててくれ。」 そう言うと、ソウマはソウイチとモリゾーを探しに出かけた。 もしかしたら、ここへ来る途中で何か大変なことがあったのではないかと思ったのだ。 「クソッ!人間の時の体重より全然軽いのになんで重いんだよ!!お前の筋肉がないからだろうが!!人のせいにしやがって!!」 いたるところに八つ当たりをするソウイチ。 石を壁に投げつけたり岩にけりを入れたり、もう半分暴走しかけていた。 敵ポケモンはそんな様子を見て恐れをなしたのか、一向に出て行こうとしなかった。 中には無謀にも出て行ったやつもいるが・・・。 「なんだお前ら!!こっちは機嫌が悪いんだよ!!」 すぐにソウイチにぼこぼこにされてしまい、即効で八つ当たりの道具になってしまった。 一方モリゾーも、身勝手な言い分のソウイチに腹を立てていた。 「自分勝手にもほどがあるよ!!せっかくオイラが助けようとしたのに、だったら自力で出て来いよって話だよ、もう!!」 あまり目立ったことはしていないものの、かなりいらいらしていた。 目の前にある小石を蹴ったり、壁を殴ったり、どこかソウイチと似ているところがある。 ところが・・・。 「オイラ、言い過ぎたかな・・・。大事なパートナーなのに、一人でいたほうが楽だなんて言っちゃったし・・・。でも、ソウイチに悪い所が無いわけじゃない・・・。ソウイチが謝るまで、オイラは絶対に謝らない・・・!」 若干後悔はしているようだが、それでも怒りはおさまっていないようだった。 そしてソウイチは・・・。 「くっそお!!イライラがおさまらなくてしょうがねえ!!」 なおも八つ当たりをし続けているのであった。 「おい!そこのお前!!ここがどこだか分かってるのか!?」 突然声がした。 「ああ!?どこのどいつだ!!こんなときに!!」 ソウイチは辺りを見回した。 声の主は、その一帯を縄張りにしているマグマッグだった。 「人の縄張りを荒らしておいて、ただで済むと思うなよ!!」 マグマッグはひのこをくりだしたが、ソウイチはそれをかえんほうしゃで粉砕した。 「それはこっちのセリフだ!!ぼこぼこにしてやる!!」 「ちょ、ちょっとま・・・。ぎゃああああああ!!!!」 言葉どおり、ソウイチはマグマッグにとびかかり素手で殴ってのしてしまった。 さすが、人間のときに不良を相手に戦っただけのことはある。 「今の悲鳴は・・・?まさか・・・。」 ソウマの頭を不安がよぎった。 あわてて声のした方へ走り出し、角を曲がったとたんに何かと衝突した。 「いてててて・・・。」 「いててて・・・。だれだよ!!ったく!!」 ソウイチが前を見ると、なんとソウマだった。 「あ、アニキ!?何でこんなところにいるんだよ!?」 ソウイチはすごくびっくりした。 「お前らが来るのが遅いから、心配して探しに来たんだよ。けがとかはないか?」 ソウマはソウイチの体を調べた。 「どこもねえよ。じゃあ行こうぜ。」 ソウイチはソウマの横を通り抜け先へ進もうとした。 「ちょっと待て。モリゾーはどこだ?」 ソウマはモリゾーの姿が見えないので不思議に思った。 「あんなやつほっとけよ。さっさと行こうぜ。」 「どういうことだ?なんでモリゾーと一緒じゃないんだ?」 ソウマはソウイチを問い詰めた。 そして、ソウイチはモリゾーとけんかしたことをソウマに話した。 「探しに行くぞ。」 それを聞いて、ソウマは眉間にしわを寄せ、一言だけ言った。 「ええ!?な、なんでだよ!!あんなやつ別に・・・。」 「いいからとっととこい!!」 ソウマは嫌がるソウイチの首根っこをつかむと、そのままずるずると引きずっていった。 ソウイチは激しく抵抗したが、ソウマのほうが力は上だった。 ソウイチはなすがままに、ソウマに引きずられていった。 「やっぱり・・・、言い過ぎたのかな~・・・。」 モリゾーの怒りは時間が経つごとに収まり、そして後悔の念がだんだんと現れてきた。 「確かにソウイチの言ったことは自分勝手だよ。でも、ソウイチが体重のことを気にしてたんなら、やっぱり怒るよね・・・。はあ~・・・、どうしたらいいんだろ・・・。」 モリゾーは岩の上に座り込んであれこれ考え始めた。 しばらく考え込んでいると、ふいに何かの足音がした。 顔を上げると、そこにいたのはソウイチとソウマだった。 モリゾーが何か言おうとすると、ソウマはそれを押しとどめてソウイチに言った。 「ソウイチ、モリゾーに謝れ。」 当然ソウイチは自分が悪いとは思っていないので猛反発。 「はあ!?何でオレが謝んなきゃなんないんだよ!!」 ソウイチはキッとソウマをにらみつけた。 「話を聞く限りじゃ全部お前が悪い。モリゾーは出れないお前を助けようとしてくれたんだぞ?不注意で穴に落ちたお前を、一生懸命助けようとしたんだ。その行為を感謝するどころか、引っ張りあげられないほうが悪いって言うのは間違ってないか?」 ソウマはソウイチの目をじっと見ていった。 その目には何かしらの説得力があった。 「でも、あいつがオレのこと重いって・・・。」 「そりゃあ、引っ張りあげるときは誰だって重いさ。逆に、お前がモリゾーの立場だったら、一発で何も言わずに引っ張りあげられるか?」 「う・・・。」 ソウイチは返す言葉がなかった。 ソウイチも、逆の立場でできるかどうか自信はなかった。 「お前が自分の体重を気にしてたのは知ってる。でも、モリゾーは悪気があって言ったわけじゃない。知らなかったんだからな。それにだれだって、ああいう状態なら重いって言うと思うぜ?」 「・・・・・・。」 ソウイチはもう言葉が浮かんでこなかった。 何もかもソウマの言うとおりだった。 自分が落ちたことが情けなくて、その怒りをモリゾーにぶつけていただけだと分かったのだ。 「モリゾーだってそりゃあ言い返したくもなるさ。せっかく自分が苦労して助けたのにってな。何でここまで悪口言われなきゃいけないんだって。でも、モリゾーも忘れちゃいけないぜ。」 ソウマは突然モリゾーに話をふった。 「え?」 モリゾーは突然のことだったのでポカーンとしていた。 「誰かを助けるのは、見返りを期待して助けるわけじゃない。ただ助けたい、その思いで助けるんだ。例えお礼を言ってもらえなかったとしても、悪口を言われたとしても、相手はきっとどこかで感謝してる。わかるな?」 モリゾーはこくっとうなずいた。 「今回はソウイチが全面的に悪い。けど、モリゾーも、お礼を言われて当たり前と思っちゃいけない。助けることに大事なのは、『助かってよかった』と自分で思えることだ。全力でやったなら、きっとそう思えるはずだ。だろ?」 ソウマの言うことに、二人ともしっかりとうなずいた。 「よし。ならソウイチ、どうすればいいか分かるよな?」 ソウマはまっすぐソウイチを見た。 「分かってるよ・・・。モリゾー、ひどいこと言って悪かったな・・・。オレのどじで迷惑かけたのに、助けてくれてありがとな・・・。」 ソウイチはモリゾーの目を見てすまなそうに謝った。 「オイラも言いすぎたよ・・・。ソウイチが体重気にしてること知らなくて・・・。オイラのほうこそごめんね・・・。」 モリゾーも心の底から謝った。 「もういいよ。オレが悪いんだからさ。」 ソウイチは恥ずかしそうに笑った。 それを見て、モリゾーもちょっと笑顔になった。 「よし!これで問題解決だな。早くみんなのところへ戻ろうぜ。首を長くして・・・。」 ソウマが言いかけたとたん・・・。 グオオオオオオオォォォォォォ・・・・・・! 突然、何かのうなり声のようなものが聞こえた。 「な、なんだ!?今の声は!?」 「わかんねえ、とりあえずみんなのいるところに戻るぞ!!」 ソウマは二人を両脇に抱え、全速力で走り出した。 ソウイチ達より、ソウマのほうが走るスピードは圧倒的に速かったからだ。 二人はあまりの速さにぎゃーぎゃー悲鳴を上げていた。 一方、こちらは待機組。 みんな3人の到着を待っていた。 「にしても、先輩遅いですね・・・。ソウイチさん達が見つからないんでしょうか・・・。それとも・・・。」 ドンペイはソウマ達の身を案じていた。 ほかのみんなも同じだった。 「もう待ってられねえ!!オレも探しに・・・。」 「アホ!これ以上おらんなったら面倒やろうが!」 痺れを切らしたシリウスをカメキチが一喝した。 そのとき・・・。 グオオオオオオオォォォォォォ・・・・・・! うなり声を聞いてみんな騒然となった。 「なんなの・・・?あの不気味なうなり声は・・・。」 ゴロスケは少しおびえていた。 「わからん・・・。もしかしたら、この上になんかおるんか・・・?」 カメキチは天井を見上げた。 「お~い!!」 みんなが声のしたほうを見ると、ソウマが二人を抱えて全速力で走ってくるのが見えた。 「わりいわりい・・・。ちょっと探すのに手間取って・・・。それより、さっきのうなり声・・・。」 「うん、聞こえたよ。あれってなんなんだろう・・・。」 みんな首をひねっていた。 少しの沈黙の後、ソウイチが口を開いた。 「行くしかねえな。あとちょっと頑張れば最上階だ!」 ソウイチはみんなに言った。 「そうだね!この先に何が待ち受けてるのか分からないけど、勇気を出して進まなくっちゃ!」 モリゾーもゴロスケも、さっきのおびえは吹き飛び、自信に満ちていた。 「その意気だぜ!あ、それと、みんなにちょっと話すことがあるんだ・・・。」 ソウイチは、みんなに、ここに来る前に感じたことを話した。 「ベースキャンプについたときから、なぜかここを知っている気がしたんだって?」 「ああ。オレもソウヤも、なんでかわかんねえけどここを知ってる。」 「もしかしたら、以前ここに来たことがあって、ユクシーに記憶を消されたんじゃないかと思ってるんだ。」 ソウイチもソウヤも、みんなに心のうちを語った。 みんなはその話を真剣に聞いていた。 「(こいつらもオレと同じ事を考えていたのか・・・。さすが兄弟ってところだな・・・。)」 ソウマは何も言わなかったが、自分と同じ事を二人が考えていたので正直驚いていた。 「ほしたら、なおさら先進まんとな。」 「ユクシーに会えば、記憶を失う前のこととかも全部分かるかも知れねえしな。」 カメキチとシリウスは言った。 「行こう!ソウイチ、ソウヤ!」 モリゾーとゴロスケは二人を促した。 「ああ!」 「うん!」 二人はうなずき、みんなはひたすら最上階を目指した。 そして、最上階に到着した一行は、何か不穏な空気を感じた。 「何か、妙な感じがするわ・・・。」 ライナは正体の分からない不安に駆られていた。 「張り詰めた感じというか・・・、体中の毛が逆立つというか・・・。」 ドンペイも体中で何かを感じていた。 「とてつもなく、危険な予感がします・・・。」 コンがそう言ったとたん・・・。 グオオオオオオォォォォォーーッ!! 突然大きな唸り声が聞こえみんなびっくりした。 「い、今の聞いた!?」 モリゾーはソウイチに言った。 「聞こえねえわけねえって!!なんだよあれ!?」 「あれきっと何かの鳴き声だよ!!」 ソウヤが言った。 「何かって、なんのさ!?」 ゴロスケがソウヤに聞くと・・・。 グオオオオオオォォォォォーーッ!! ドシン・・・!ドシン・・!ドシン・!ドシン! ものすごく大きな足音が響いてきた。 「な、なんかこっちきよるぞ!!」 足音はどんどん大きくなり、そして、姿が肉眼で見えるまでになった。 グオオオオオオォォォォォーーッ!! その足音の主は、あの石像のポケモン、グラードンだった。 「わあああああああああ!!」 みんな思わず後ずさりした。 あまりにも体が大きかったからだ。 「お前達!ここを荒らしに来たのか!!帰れ!!」 グラードンは腹のそこに響く大声で怒鳴った。 「ち、違うよ!!オイラ達はただ霧の湖に行きたくて・・・。」 「何!?霧の湖だと!?侵入者は生きては返さん!!」 グラードンは全く話を聞く気がない。 「違うって言ってるでしょ!!」 「私たちはそんなことしに来たんじゃありません!」 「そうですよ!!」 ライナたちが反論したが・・・。 「黙れ!!侵入者の言うことなど聞くものか!!」 そして、しっぽを思いっきり振った。 「危ない!!伏せろ!!」 ソウマが叫んだが、ライナ、ドンペイ、コン、ゴロスケは吹き飛ばされてしまった。 「きゃあああああああ!!」 「わああああああああ!!」 ドスン!! 4人は思いっきり岩壁に叩きつけられた。 「ライナ!!ドンペイ!!」 「ゴロスケ!!」 「コン!!」 みんなは仲間の下へ駆け寄った。 幸い、ゴロスケは軽症ですんだが、他の3人は打ち所が悪く、とても戦える状態ではなかった。 「ライナ、ドンペイ、コン、お前たちはここで休んでろ。これ以上、けががひどくなったら大変だからな。」 「ごめんね、ソウマ・・・。」 「すみません・・・、先輩・・・。」 三人はソウマに謝った。 「謝ることなんかねえよ。あいつ、絶対にゆるさねえ・・・!!」 「その通りだ!!なんてやつなんだ!!」 みんなはグラードンをにらみつけた。 「お前たちもあんなふうになりたくなかったらとっとと帰れ!!」 グラードンはまた怒鳴った。 「ふざけんじゃねえ!!仲間傷つけられて帰れるか!!」 シリウスからはバチバチと激しく電気が流れていた。 ソウイチの背中からは大きな火柱が上がっていた。 「よくも大事な友達を・・・!!」 モリゾーとソウヤの目も怒りに燃えていた。 「よくもライナやドンペイに手を出したな・・・。」 ソウマの怒りは、とうとう本気の領域に達した。 マントをその場に脱ぎ捨てると、背中からほのおを噴き出した。 そのほのおは、今まで誰も見たことがないほど大きな火柱だった。 ソウマは、本気のときしか火柱を出さないのだ。 「お前みたいな野郎は・・・、オレが絶対にゆるさねえ!!!!」 ソウマは、幼いドンペイと想いをよせているライナを傷つけられ激しく怒っていた。 「いいだろう!覚悟するがいい!!」 グラードンも戦闘体制に入った。 いよいよ、アドバンズVSグラードンの火蓋が切って落とされようとしていた。 ---- [[アドバンズ物語第二十三話]] ---- ここまで読んでくださってありがとうございました。 誤字脱字の報告、感想、アドバイスなどもお待ちしてます。 #pcomment(above)