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たった一つの行路 №086 の変更点


 8

「……はぁはぁ……」

 飛行ポケモンを使わず、ライトは息を切らして自分の足で山を登っていた。
 彼女の傍らにはヤミラミがついて周囲を見張っている。
 そのヤミラミが鳴き声をあげた。

「ヤミラミ?……くっ!野生のポケモンね!?プクリン!!『サイコキネシス』!!」

 ドガーン!!

 確認をすると、即座に攻撃を放った。
 目の前に飛び出てきた数匹のリングマとドンファンにダメージを与える。
 だが、その攻撃で怯むことなく、野生のポケモンたちは反撃に出る。

「ゴルダック!!『水の波動』!!」

 新たに攻撃を繰り出すが、攻撃がなかなか決まらない。
 リングマたちも攻撃を仕掛けるが、こちらも負けじとぎりぎりでかわしていた。
 そんな折、いっせいにドンファンたちが『転がる』、リングマたちが『暴れる』攻撃で襲い掛かってきた。
 容赦のない連続攻撃に追い詰められていくライト。

「くっ!これならどうよ!!プクリン!ゴルダック!」

 プクリンが念じると、ドンファンやリングマたちは動きを封じ込められた。『金縛り』だ。
 さらに、ゴルダックのハイドロポンプがクリーンヒットして何とか倒すことができた。

「はぁはぁ……本当になんて場所なの……?」

 息を切らして、プクリンとゴルダックの二匹を戻す。
 改めてライトはオートン山のレベルを感じていた。
 ノースト地方で山といえば、かなりの数がある。
 中で一番修行に最適といわれる場所がオウギ山である。
 かつて、ノースト地方を冒険したヒロトもそこで己を鍛えていた。
 しかし、オートン山はそのオウギ山よりも過酷な場所だった。
 それはポケモンの強さだけではない。
 山の高さ、足場の悪さ、迷いやすさ、視界の悪さ……全てがトップクラスの山なのである。
 ゆえに、人は噂でその地に伝説のポケモン、あるいは幻のポケモンがいると噂されている山なのである。
 
「前と後ろ!?ヤミラミ!攻撃よ!!」

 前をヤミラミに任せて、後ろを振り向いてタテトプスを繰り出した。

「『アイアンヘッド』!!」

 しかし、攻撃は壁によって跳ね飛ばされた。
 タテトプスは転がるようにライトの足元に戻ってきた。

「ユンゲラーの『リフレクター』ね……『ロックブラスト』!!」

 だが、ユンゲラーはそれを巧みにかわす。
 そう、まるで楽しむように。
 すると、スプーンをライトの方へ向けた。

「プクリン!!」

 攻撃に気づいたライトはプクリンを繰り出して光の壁で攻撃を弾き飛ばす。

 ドガッ!!

「ヤミラミ!?」

 しかし、前の方を任せたはずのヤミラミが吹っ飛んできた。
 チラッと、そのポケモンを確認する。

「(ゴローンね……ヤミラミの攻撃じゃ、あの防御力は崩せないのね……)スイッチ!!」

 不利と判断したライトは、対戦させるポケモンを入れ替えた。
 ヤミラミが影に紛れて、ユンゲラーを一撃で倒すと、タテトプスはゴローンの岩攻撃をもろともせず、突っ込んで撃破した。
 野生のポケモンの気配が消えたとおもい、ライトはプクリンとタテトプスを戻した。

「ヤミラミの探知能力はさすがね。どんなに霧が濃くても相手を探ることが出来るし……。でも……ここの野生のポケモンは手ごわい……」

 ライトがぼやいていると、またヤミラミが騒ぎ始めた。
 ライトが見る先にいるのは、数十匹のヨマワルとサマヨールだった。

「(多い……)全てのポケモンに『みだれひっかき』よ!!」

 シュバシュバシュバ!!

 死角から死角へ移動して、的確に攻撃を命中させていく。
 だが……

「(倒れない!?)」

 ヨマワル、サマヨールたちはダメージを負ったものの、まだまだ余裕だった。

「(くっ……せめて、ヨマワルだけは倒せると思ったのに……)」

 すると、ヨマワル、サマヨールが力を集中し始めた。

「(まずい……アレは……!!)」

 シャドーボールの集中砲火だった。

「……こんなところで……負けられないのよ!!」

 ドガーン!!ドガーン!!

 オートン山の中腹で爆発が響き渡った。



 たった一つの行路 №086



 9

「ライトちゃん……大丈夫かな……?」

 グラサンの男……トキオがポツリと言葉を零す。

「あら、トキオ。あの子が心配なの?」

 セーラー服を着ている女性、ユウコは意外そうな顔でトキオをみる。
 彼らはライトが通っているオートン山の下のオートントンネルを通っていた。
 ここはポケモンは比較的に少なく、楽に進むことが出来た。

「ライトちゃんはエースのこととなると、無茶をするからね……。誰かが彼女が無茶をするのを止めてあげないといけないんだよ」

 トキオの横顔をまじまじと見るユウコ。
 それに気がついて彼女を見ようとした瞬間に、頭を触られる感触がした。

「えっ?何?」
「そこまで他人のことを心配できるなんてトキオは思いやりのある子なのね。エライ~エライ~」

 爪先立ちで、トキオの頭を撫で撫でするユウコ。
 それに複雑な顔のトキオ。

「からかってます?」
「何言っているのよ。褒めているのよ♪きっと、トキオの彼女になる人は幸せ者ね!」

 そうユウコに言われて俯くトキオ。

「あっ!思い出した。エースってあの子ね」

 ポンッ!と手を叩いてユウコは言った。

「えっ?ユウコさんはエースに会った事あるんですか?」
「ええ、一度だけね。あれはもう7年ほど前かしらね。今思うと、彼は照れ顔がとっても可愛い少年だったわ。今はどんな姿になっているのかしらね?」
「もしかして……狙ってます?」

 トキオは恐る恐るユウコに尋ねる。

「別にィ。私は好きな人はもう決まっているもの」
「えっ―――!?そうなんですか!?」

 トンネルが響くほど、大きな声で驚くトキオ。 

「そこまで驚かなくてもいいじゃない」 
「ごめんなさい」
「きっと、いつか白馬に乗って私のところへ迎えに来てくれると信じているの!」
「(ユウコさんにそんな乙女チックな考えがあったとは……)」 

 改めてユウコの思想を知ったトキオだった。

「あっ!抜けたわよ♪」
「本当だ!オートンシティも見えた!」

 オートンシティが見えて、トキオは走り出した。

「迎えに来なくても……私が迎えに行くわよ……」

 ユウコはポツリとトキオに聞こえない声でそういった。



 街中に入り、彼らは周りを見ながら歩いていた。

「オートンシティ……何年振りかしら……」
「ユウコさんはここにあまり来ないんですか?」
「最近まで私はカントー地方に住んでいたからね。あまり田舎<ここ>に来ることないのよ」
「“田舎”って書いて“ここ”って読みましたね?」
「だって、本当のことじゃない」

 ユウコの言うことも一理ある。
 山と山の栄え目にあったり、農耕が中心だったりと、ノースト地方はそんな町が多いので、田舎町に見られるところが多い。
 ちなみに、一番栄えているのはノースト地方の南東で海沿いのジョウチュシティで、船が出ていたり、企業が栄えていたり、成金が住んでいたりと大きいのである。
 だけど、やはりジョウトやカントーの中心街のコガネシティやタマムシシティには劣るのである。

「ところで……あれ何やっているのかしら?」

 ユウコが指を指した先をトキオは見た。
 すると、ジバコイルの上に乗って、マイクを持ち、何かを喋っている男がいた。

“えーオートンシティの皆様。この度、3度目の市長立候補のクラキチです!どうか、皆様の清き一票をこの私、クラキチ……クラキチにお入れください!!”

「どうやら、選挙みたいだな。確かあの人は現在の市長のクラキチ……」
「ふーん……オートンシティの市長の選挙ね。市長なんて何度やったって同じじゃない。きっと、あの人で決まりでしょ」
「そうかな?俺は新しい人に任せたほうがいいと思うけどな」
「トキオはそう思っていても、決めるのはこの住民たちよ。私たちには関係ないわ。行きましょう」
「そう言われちゃ元も子もないけど……」

 演説から遠ざかって、トキオとユウコは去っていった。



「どうしよう……。ライトちゃんを待とうか……?」

 トキオとユウコはとあるハンバーガーショップで食事をしていた。
 トキオがハンバーグ2つにレモンティ。
 ユウコはサンドウィッチにブレンドコーヒーを口にしていた。

「連絡してみたら?」
「オートン山は山の中だから繋がらないと思う。それでなくても、あそこはユンゲラーやらモココやら電波を狂わせるようなポケモンがいるからね」
「連絡とる方法ないじゃない」
「うん……」

 同じタイミングで、カップに口をつける。
 そして、ユウコがコトンとカップを置いた。

「聞いた話しだと、その『SHOP-GEAR』って所に行って情報を聞くだけなんでしょ?」
「そうだけど……」
「それなら、別にライトがいなくてもいいんじゃない?後で伝えればいいだけだし」
「う~ん……それもそうか」

 トキオは納得して、カップをコトンと置いた。

「じゃあ、行こうか。『SHOP-GEAR』に」



 ―――数十分後。

「ここだよ」
「えっ!?ここなの!?」

 ユウコはひどく驚いた。
 それもそのはず。
 『SHOP-GEAR』と聞いたからにはもっと、大きくて立派なものだと彼女は想像していたのだ。
 だが実際は、レンガ造りが基本で、一部鉄板やら銅やらで舗装したのが目立つだけの一軒家だった。
 そして、玄関の前には“SHOP-GEAR”とデガデカと書かれていた。

「情報を聞くって言っていたよね?」
「そうですけど……?」
「どう見てもただの風変わりな一軒家じゃない!」

 当然の反応のユウコ。

「実はここは本来メカニックショップなんですよ。でも、裏で情報屋をやっているんです」
「メカニックショップ?」
「つまり、壊れた電機家具を直したり、パソコンを直したりする店なんだ」
「それが何で情報屋を……?」
「そこまでは分からないよ……。まぁ、とにかく中に入ろう。こんにちはー!!トキオです!!」

 入り口をを開けてズカズカと入るトキオ。
 ユウコもトキオにつられて、同じように入って行った。

「ここ……本当にショップなの?」

 ユウコの質問に答えずトキオは廊下を進む。

「あ、いた!」

 そう。トキオが探していた人物は頭がぼさぼさで、黒のランニング姿で、グリーンのジャージズボンを履いていた。
 そして……

「スピー……zzz……スピー……zzz……」

 寝ていた。

「この人……昼から酒飲んでいるの!?」

 ユウコはその男の隣にある酒ビンを手に取って見た。
 ラベルには『特製50℃酒(ライズ産)』と書かれていた。

「トキオ……本当にこの人?」
「そう。この人が『SHOP-GEAR』のオーナー:フウトさんだ」
「この、飲んだくれのオッサン臭いお兄さんが!?」

 ユウコは目を丸くして酔って寝ているフウトを見た。
 ユウコは22歳である。だけど、セーラー服を着ているためにきっと年齢よりも若く見られる。
 そしてこの、飲んだくれているお兄さんのフウトは26歳である。
 つまり、たった4歳差なので、お兄さんと呼んでも差し支えないのである。
 ちなみに、ヒロトの姉のルーカスは、フウトとタメである。

「あ、トキオさん!」
「よっ!リク!久し振り!」

 後ろから、トキオに声をかけてきたのは、黒いランニングにダブダブのズボンを履いて白いタオルを頭に巻いたリクというやや幼い少年である。
 大体、13~14歳というところだろう。

「今日はどうしたんですか!?どこか壊れたんですか??」
「あっ!そうだ!P☆DAの修理も頼まないといけなかったな……。ラジオの機能が壊れちゃったから、頼む」
「分かりました。預かりますのでちょっと待って下さいね」

 すると、リクは別の部屋に消えていった。

「あの子は?」
「あいつはリクといって、2~3年前からここで働き始めた子さ。ノースト大会でいい線まで行ったんだけど、フウトさんの腕に惚れて弟子入りしたんだ」
「あの男に……?」

 ユウコはチラッと見る。

「(どう見ても凄い人には見えないけどね……)」

 すると、リクが戻ってきた。

「P☆DA預かりましたよ。少し時間くださいね。ところでトキオさん……隣のそのきれいな女性はトキオさんの彼女ですか?」
「いや、違うけど……」 「うん。違うわよ」

 二人とも、同時に否定する。

「でも、私の魅力が分かるなんて、いい子じゃない」

 と、ユウコは屈んでその子の頬にキスをした。
 すると、リクは顔を赤くする。

「///」
「ふふっ。赤くなっちゃって可愛い♪」
「(さすがユウコさん……)」

 リクはメロメロ状態になった。

「ウィ~リク?……酒は!?」
「あ!フウト師匠!お客さんですよ!トキオさんとジムリーダーが来てますよ」

 はっと我を取り戻してフウトに伝言するリク。
 フウトは起き上がりながらボリボリとお腹を掻いていた。
 そして寝ぼけた目でトキオを見る。

「ウィ~トキオじゃないか!久し振り♪」
「いい加減、酒はほどほどにしたほうがいいんじゃないですか?」
「酒をやめたら~フウトが廃るんだよ~!」

 意味不明……とここにいる誰もがそう思った。

「あれっ?リク?今、ジムリーダーが来ているって言わなかったか?」

 トキオはリクに聞き返した。

「はい。こちらにいます」

 すると、イマドキでゆったりとした服装の少女が出てきた。

「こんにちは。トキオ君!!」
「やあ!ナルミさん!元気にしてた!?」

 会うなり、握手をするトキオ。
 ナルミはオートンシティのジムリーダーである。
 昔、トキオとヒロトは彼女と戦ったこともある。
 そのときのオートンジムは岩のフィールドでナルミは鋼と電気タイプでトキオたちを苦しめたものだった。
 現在も彼女はジムリーダーとしてここにいた。

「……ちょっと」
「うん?」

 ぐいぐいとナルミがトキオを引っ張る。

「あの人……何者なの?トキオ君の彼女じゃないなら、一体どんな人なの?」

 興味心身に彼女は聞いてくる。
 どうやら、先ほどのユウコとリクのやり取りを聞いていたらしい。

「う~ん、ちょっとした事情で同行しているんだ」
「そう」
「そういうナルミさんこそ、リクのこと好きなんじゃないの?だからここに来たんでしょ!?」
「リクくん……?」

 ナルミはふと彼を見た。
 当のリクはフウトに酒をねだれられているが、「今日はもう止めて下さい」とビシッと言っていた。

「タイプから逸脱しているわけじゃないけど、私には別に気になる人がいるの!」
「えっ!?そうなの!?誰なの!?てっきり、俺が来るとナルミさんがいるからフウトさんかリクが好きなんだと思ったよ。いったい誰?」

 コホンと、ナルミは咳払いをしていった。

「ラグナさん」
「ら、ラグナだって!?よりによってなんであいつなの!?」
「だって、かっこいいじゃない!」

 ラグナとは元ロケット団のルーキーズとして活躍していた少年である。
 しかし、ロケット団の謀だと気づいた彼は、ロケット団を裏切り、エースたちと協力して、ダークスターもろともぶっ潰したのである。
 後に彼はここを拠点として様々な依頼をこなしているらしい。
 トキオもたまにここに来ているために、何度か合う機会はあったらしい。

「だって……目つきは怖いけれど……強くて逞しくて……それでもって大胆なところが素敵じゃない!」
「そ、そうなの……?(大胆って覗きのことか……?)」

 トキオは苦笑いをするしかなかった。

「(そうか……ナルミさんがいつもここに来るのはラグナに会いに来るためだったのか……)」
「トキオ、私たち一体ここへ何しに来たんだっけ?」

 ゴホンと咳払いをしてユウコが改めてここに来た目的を聞いた。

「あ、忘れるところだった……」

 ナルミと喋っているうちに本来の目的を忘れるトキオだった。

「フウトさん!情報が欲しいんだ!」
「ウィ~今回は条件があるんだ。ウィ~」
「条件?」
「そのジムリーダーの彼女の相談に乗ってやってくれ。ウィ~」

 どんっ!っと机を叩いたのはユウコだった。

「ジムリーダーはあんたに相談しに来たんでしょ!あんたが受けなさいよ!」
「いやー最近どうも眠くてな……。トキオ君。後は頼むよ」
「ちょっと!あんた!」

 ユウコが文句を言うが、フウトは寝た後だった。

「ダメだこりゃ」
「ダメですね」
「はぁ……」

 トキオ、リク、ユウコは呆れてしまった。

「仕方がない……。ナルミさん……相談って何ですか?」
「実は……この街の選挙のことなんです」
「選挙?そういえば、そんなのやっていたわね」

 ユウコが呟く。

「実は……お兄ちゃんがその選挙に立候補しているんです」
「え!?ナルトさんが!?」

 トキオが意外そうに声を上げる。

「へぇ、お兄さんがいるんだ」
「はい。9つ年上のお兄さんなんです」
「ずいぶん離れているのね」
「実はその選挙で、最近、トラブルが続くようになったのです」
「トラブル?」
「そうなんです。新品の機材が壊れたり、選挙のお手伝いをしているポケモンたちがケガをしたり……とにかくトラブル続きなんです」
「そんなの、機材が不良品だったのと、ポケモンたちは単なるドジなだけじゃないの?」

 ユウコがさらりと言う。

「そう言われてしまうと、そこまでなんですけど……。だけど、他の人が邪魔をしているという可能性があるんです」
「邪魔って……選挙妨害のこと?」
「はい。そして、恐らくやっているのはクラキチだと思われるのです」

 ナルミに代わって、リクが喋った。

「クラキチ……?」

 トキオとユウコはジバコイルに乗って演説をしていた男の姿を思い出していた。

「何で?」
「お兄ちゃんがこの選挙に出るきっかけになったのは、リクくんの情報がきっかけなの」
「どんな情報?」
「裏で何かを密輸して売り捌いているという情報です。でも、これはまだ明確な情報じゃないので、伏せていたのですが、ナルトさんがそれを見つけてしまって……」
「正義感が人一倍強いお兄ちゃんは自分が市長になると言い出して……それで……」
「なるほど……」

 頷くトキオ。

「バカじゃない?クラキチという男は2回連続で市長に選ばれている奴なんでしょ?新参者が勝てるわけないじゃない!選挙はそんなに甘くないわよ!」

 と、ユウコ。

「いや、ユウコさん。一見そう思われがちなんだけど、この街でナルトさんの名前を知らない人はいないくらいなんだ。恐らく、人気はオートンシティの中でも上位に食い込むほどだよ。もともとジムリーダーもしていたし」

 たまにオートンシティに遊びに来るトキオはそう言った。

「ふうん……つまり、クラキチはナルトの人気を恐れているというわけね。それで、手の込んだ嫌がらせをしているというわけね」
「いや、そういう情報があるってだけですよ。まだ決まったわけじゃないです」

 と、リク。

「つまり……ナルミさんはどんな依頼を頼むつもりだったんですか?」
「お兄ちゃんを守って!という依頼を……」
「護衛か……ところで選挙まで後どれくらいなんですか?」
「……後1週間ほどです」

 ふと、トキオは考える。
 すると、ユウコがトキオに小声で言う。

「トキオ……一週間もここに留まる気?私は別にかまわないけど、ライトはなんていうかしら?」
「……わかった。とりあえず、ライトが来るまでだな」

 と、トキオはナルミにそういった。

「お願いします。……本当ならラグナさんに頼みたかったんですけど、今日はいないみたいですし」
「……そうなんですか」

 ラグナってそういう地味な依頼は引き受けるのか?いや、受けないな。
 と、トキオはそう思ったという。



 後編へつづく

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