◇キャラクター紹介◇
○ライズ:ニンフィア♂
ランナベールの学園『セーラリュート』の高等部二年生。
三ヶ月の停学を経て復学した。
ファンクラブがあるほどの人気者だったが……
○フォール:ニャオニクス♂
ライズのクラスメイト。
友達以上親友未満。
○セルネーゼ:グレイシア♀
ライズの婚約者で、又従姉。
ライズへの異常な執着を見せる。
○ヤンレン:ヒヤッキー♀
ライズのクラスメイトで、友達以上恋人未満。
中等部時代からの熱狂的ファンでもある。
ライズの停学処分を機に体の関係がバレた。
○ロッコ:コジョンド♀
ライズのクラスメイトで、最初に関係を持ってしまった相手。
公的にはバレていないが周りにはわりとバレている。
ある意味で恋人以上親友以上。
etc.
セルネーゼがキルリアの橄欖を遣わして、ライズの意思を確認してから数日後。
ライズは父アパルと共にミルディフレイン家を訪れ、誠心誠意謝罪した。
やはり政略的に必要な婚姻であること、そして何よりセルネーゼ本人が望まないことから、婚約破棄は取り消されることとなった。謝罪金として金銭のやり取りもあったようで、父には迷惑をかけっぱなしだ。
「まったく。ミルディフレイン家の温情に感謝するんだな……」
屋敷に帰宅する頃には、父は疲れきった表情をしていた。シャワーズのヒレにも目に見えてツヤがない。
「二度とこのようなことのないように気を引き締めろ。騎士としての自覚を持て」
「はい……」
到底、自信を持って返事なんかできなかった。半ば襲われた形とはいえ、視察中にあんなことがあったばかりだ。
もしバレたら今度こそただでは済まない。
自分で自分を信用できないくらいだ。当然、ミルディフレイン家のひとたちにしても、父にしても、ライズを全面的に信用するなんてことはあり得ないわけで。
婚約を破棄しない代わりに、ミルディフレイン家からは、とある
その条件が何なのか知らないまま、あっという間に三ヶ月が過ぎた。
その間、父の秘書カーラの図らいもあって領主の仕事を学ぶことになり、無為に時を過ごすことはなかった。
そして、復学の日。
五月から三ヶ月の停学で、夏休みが終わり秋の学期が始まる前日の夕方、ライズはランナベールヘ戻ってきた。
風紀委員ではなくなってしまったので、個室ではなく再び皆と同じ寮に入ることになる。
ライズは割り当てられた自室のドアをノックした。部屋割の名簿でルームメイトの名を見たとき、驚き半分、安心半分といったところだったが――
「よっ、ライズ! おかえり!」
ドアを開けて出てきたのは、ライズがよく知るニャオニクスだった。
「フォール……きみがルームメイトなんだね」
「おうよ! すげえ偶然だな!」
おおかたの事情を知るフォールがルームメイトなら、妙に気を遣うことも遣われることもない。
ライズは自分用のスペースに荷物を置くと、教科書や参考書を本棚に立てていく。フォールも手伝ってくれて、ひとまず明日から戻る学園生活の準備はすぐに終わった。
「ライズ、晩メシはもう食ったか?」
「まだだよ」
「よーし、じゃ、カフェテリアに行こうぜ! お前の友達も呼んでさ!」
友達。ロッコとヤンレンの顔が思い浮かんだが、正直、どんな顔をして会えばいいのか、まだ心の整理がついていない。
あれから二匹はどうしているのか。ライズをどう思っているのか。
「や、今日は二匹で……」
「えっ!? なんだライズ、オレとデートしたいのか……?」
「ちがうよ。僕が停学になったあとのみんなのこと……先にフォールに聞いておきたいと思ってさ」
「なんだ、そういうことか」
フォールは腕組みをしてウンウンと頷いた。
「オマエ、けっこう繊細だもんな! いいぜ、オレでよけりゃなんでも聞いてやる!」
そんなこんなで、カフェテリアでフォールと二匹、テーブルを挟むことになった。
「ヤンレンさんは謹慎処分のあと、生徒会に戻って変わらずやってるぜ。副会長から格下げにはなったが、要領のいい子だからうまくやってるみたいだ」
「クラスではどんな感じ?」
「オマエの停学と同時に謹慎処分だからなあ。相手がヤンレンさんだってことは、みんなにバレてるぜ。嫌なことを言うヤツもいるけど、どっちかっつーと、あのライズを落としたってんで、一目置かれてるって風にオレは見えるね」
「あー……そっか、もう秘密の関係じゃなくなったんだよね……。でも、いじめられたりしていなくて良かった」
ヤンレンの無事を知って安心したが、自分自身はどうなのだろう。
戻ったときに、周りからどう見られるのか。冷やかされるのか、あるいは白い目で見られるのか――。
「そう心配すんなって。ヤンレンさん、ライズ様は悪くないって言い続けてるから、オマエが嫌われることはなさそうだぜ」
表情から心を読み取られたか、フォールにそう付け加えられた。
「なんか、ヤンレンさんに悪いな。……僕は何を言われても仕方ないのに」
「べつにオレはいいと思うぜ? ライズを好きな子が大勢いて、オマエは一匹だろ。できるだけたくさん相手してやった方が喜ぶじゃん? 相手が望んでんなら、誰も不幸にはなんないじゃんか」
フォールは屈託のない笑顔を浮かべて、とんでもないことを言ってのける。
けれど、欲に負けて関係を持った挙げ句に罪悪感を抱えるくらいなら、彼くらい開き直った方がいいのかもしれない。
「みんながきみと同じ価値観だったらいいんだけどね……」
フォールには中等部の頃からつきまとう女子三匹組がいる。トリミアンのレミィ、エンブオーのヒルダ、ハピナスのナーシス。聞くのが怖くて、彼女たちとの関係性を聞いたことはないが、やっぱりそういう関係なのか。
「ま、でもやっぱりオマエのファンクラブはだいぶ数が減ったみたいだぜ」
「それは……そうなるよね」
自分に憧れていたポケモンたちを裏切ってしまったことに申し訳ない気持ちはあるが、少し肩の荷が下りた気分でもあった。
だって、みんなの憧れる『ライズ様』の姿は幻想でしかないんだから。
「ロッコさんも抜けたってよ。ま、相変わらずオマエのことは大好きみたいだけどなっ。今日のことが知られたら、なんで呼ばなかったってオレがどやされるぜ」
ロッコのことを語るフォールはやけに楽しそうだった。
まあ、紆余曲折あった全てを、フォールには知られているのだ。からかいたくもなるのだろう。
「ロッコさんは……うん。もう、僕のファンじゃないよね。今度こそ対等な友達として――」
「友達? フレンド? それもセッのつくやつだろー?」
「ちょっ、こ、声が大きいよ!」
とはいえ、さすがに夕食時のカフェテリアでは度が過ぎている。
穏便に復学しようとしているのに、これではまた余計な噂が立ちかねない。
「……停学になったばかりだし。僕には婚約者もいて……もう、そういう関係は……」
「べつに風紀委員でもなくなったんだし、固いことはいーじゃんか。この学園じゃみんなそんなもんだぜ」
「そうだとしても、だよ。僕だって停学の間に、反省したんだから」
正直、フォールの軽口を強く否定できない。
襲われた形とはいえ、停学中にさえ別の相手と関係を持ってしまったのだから。
それに再会したロッコやヤンレンが、もしまたそういうことに誘ってきたら。
――断れる自信がない。
「反省、ねえ? やっぱりオマエ、根っこのところは優等生なんだよな」
「……それはどうかな」
父に叩き込まれた騎士道精神が、表層の意識を塗り固めているだけで。
その奥には心が弱くて、気持ちのいいことが好きで、簡単に欲望に負けてしまう自分がいる。
しばらくの沈黙。
「ちょっと、お手洗いに行ってくるね」
少し気まずくなったところで、トイレを口実に一度席を離れることにした。
「おー。待ってるぜ」
本当にトイレには行きたかったのではあるが。
ところが、トイレの前まで来たところで、二匹の女学生に声を掛けられた。
「ライズ様、帰ってきてたのね!」
声をかけてきたのは、ゴーゴートとパーモットの二匹組だった。
面識はない気がするが、どこかの授業で一緒だったかもしれないし、確証は持てない。
「私はトーコ、でこっちが」
ゴーゴートはライズの戸惑う様子を見て、自己紹介を切り出した。
「ポーマだよ。ふたりともライズ様ファンクラブのメンバーなの」
次いで、パーモットの方が自分たちの素性を明かす。
ファンクラブはかなり縮小したと聞いたばかりだ。
今でもついてきてくれる数少ないファンは、大切にしなくちゃ。
でも、中等部の頃に仲良くなったロッコたち三匹は別として、FCのメンバーに直接話しかけられることなんてこれまでなかったのに。
「あ、あの、お出迎えはすごく嬉しいんだけど……」
しかも、話しかけられるにはすごくタイミングが悪い。
「僕、お手洗いに行くところで……」
そこを退いてほしい、とリボンの触角で軽くジェスチャーをすると、ゴーゴートのトーコとパーモットのポーマはうんうんと頷いて顔を見合わせた。
「だからここで待ってたのよ」
そして、トーコは妖しげに微笑み――
「えっ、待ってたって……?」
「ライズ様、ちょっと来て!」
かと思った次の瞬間、ポーマがライズを抱え上げてトーコの背中に乗せる。
「えっ、ちょっ――どういうこと?」
理解が追いつく前に、ライズは人気のない建物の裏側に連れて行かれた。
そこで地面に下ろされたはいいが、二匹がずいっと顔を近づけて迫ってくる。
「トイレで男の子を待ち伏せする女の子……っていえば、決まってるじゃない?」
「あたし達が、抜いてあげる」
二匹は顔を赤らめた笑顔で、とんでもないことを言い出した。
「はぁっ……!? ほ、本気で言ってる?」
予想外の展開に驚きつつも、安心しきっていた地元でキルリアの橄欖に襲われたときほどの衝撃ではない。
ここは自由奔放なランナベールの学園。こんなことがあってもおかしくはない。
けれど、復学早々にまた、こんな話に乗るわけには。
「いいよー? 遠慮しなくても」
ポーマはパーモット特有の真ん丸な目を輝かせて、ペロリと舌なめずりをしながらライズを見つめる。
「ライズ様も好きなんでしょ? 他のファンの子たちと、こういうコトしてたんだよね!」
「……停学になるくらいだもの。ヤンレンさんだけじゃないわよね」
トーコの方は少し落ち着いている、というか緊張しているのか。ポーマよりも一歩後ろで、目を泳がせていた。
どちらにしても彼女たちは、ライズが不純異性交遊で停学になったことに対し、嫉妬でも幻滅でもなく、それなら自分もやれる、と考えたのだ。
今もファンとして残っているのは、何があってもライズを信じ続ける『信者』――そんな
「ね、停学の間で溜まってるんじゃない~?」
ポーマは物怖じすることなく近寄ってきて、ライズの背中を撫でた。
「や、それは……んぁっ……」
体を触られて、ぞくりとした。欲望に抗えない自分がいる。
三ヶ月の反省の日々は、一体なんだったのか。
「ぁっ、ふぁああっ……そ、それより、おしっこ……」
しかし、頭で考える余裕もなく、尿意の方が先に限界を迎えそうだ。
震えるライズの様子を見て、ポーマは今気がついたとばかりに、ぽかんと口を開けた。
「そ、そっか……先におしっこしたいよね……」
そしてポーマとトーコは顔を見合わせて、何やら相談を始めた。
「こういうシチュって……えっと、おしっこもさせたげるんだっけ……」
「私が読んだ漫画ではそうだったわよ……」
「ど、どうしよう。どっちが先にする……?」
「私は後で……ライズ様におしっこさせるより、イかせてあげたいし」
「あんたそのヒヅメじゃ口しかできないじゃん。あたしは手も使えるから、あたしの方が気持ちいいよきっと」
「決めつけないでよ。私だってすごく練習したのよ」
相談しているかと思えば、次第に順番を決める争いに発展してきた。
「あ、あのっ……もう我慢できないよぉ……」
早く決めてほしい。そう思って、つい声をかけてしまった。
言ってから、自覚してしまった。
この隙に逃げようと思えば逃げることもできたのに。
これから彼女たちにされることに、期待してしまっているんだってこと。
二匹ははっとしてライズに向き直るが、先に口を開いたのはポーマだった。
「ご、ごめん、ライズ様……。じゃ、いいよ、あたしが先で」
ポーマは四つん這いになって、ライズの後ろから股の間に顔を近づけてきた。
橄欖とのあの一夜の光景が思い出される。
あれ以来、真面目に心を入れ替えようと、一人ですることもなかった。
禁欲のつもりでそうしてきたのに、結果としては、ポーマの言う通りだ。誘われれば断れないくらいに、欲望を蓄積しただけ。
「ライズ様の……わぁ、こんなに綺麗なピンク色なんだぁ……」
ポーマに前足でモノの根本を軽く握られたとき、ぞわっとした快感が全身に走って、もう、真面目には戻れないと悟った。
「それじゃ……いただきますっ……」
自分の体が邪魔でよく見えないが、ライズのものを咥えようとポーマが口を開けたそのとき。生暖かい息が当たって、全身にまた震えが走る。
その瞬間、必死の力で締めていた栓が、ふっと緩んでしまった。
「にゃぁっ……」
迸る熱い水流が、水鉄砲のような勢いで放出される。
「ひゃぁぁっ!?」
間近で顔におしっこを浴びたポーマの驚いた声が聞こえた。
咥えられるまで我慢しようとも思ったけれど、できなかった。
お腹の奥から熱い感覚が勢いよく走って、性器の中を突き抜ける。同時に、パンパンに張って重くて苦しかった下腹部が、その苦しさから解き放たれていく。
「はぁぁぁ……」
ようやく尿意から解放された安堵と、性感帯のすぐ近くを、そしてその中を走り抜ける熱い奔流の快感で、多幸感に溢れたため息が漏れた。
「あわわ、ちょっと……! んっ、ぷはぁっ……ライズ様、一回止めて……!」
ポーマはライズのものを咥えようと頑張っているが、あまりの勢いで噴き出すおしっこに手を焼いて、うまくいっていない。口を近づけるたびに顔に水鉄砲を食らい、避けようと顔をそらしてを繰り返している。
「む、無理だよ、止まんないよぉ……」
自分が出したおしっこでポーマが濡れていく様子を見て、これまでの身体的な快感とは違う、感情的な快楽がこみ上げてきた。
その快楽さえなければ、頑張れば止められたかもしれない。
ジルベールで、橄欖に頼まれるがまま、おしっこをかけたときに感じた不思議な気持ち。今は、それがはっきり快楽だと感じられてしまう。
「で、でもこれじゃ……ひゃあぁっ……!」
「もう、見ていられないわ。下手くそじゃない」
うまくライズのものを咥えることができないポーマを後ろで見ていたトーコが割って入ってきて、ポーマを押しのけた。
「ちょっとぉ! 約束が違うよ、トーコ!」
「ライズ様、私に任せてね」
ポーマが不満を口にするが、トーコはそれを無視してライズの後足の間へ顔を差し入れてくる。
トーコはおしっこが顔にかかることにも一切物怖じすることなく、ライズのものを舌で包み込むようにぱくりと咥えた。
「ふぁあっ……!?」
ゴーゴートの、長くて分厚くて、ねっとりとした舌の感触に、ライズは思わず声を上げた。
「こく、ん……べろっ……ちゅぅ……んっ……」
トーコはライズのおしっこを飲みながら、器用に舌で肉棒を舐めてくる。
その刺激にまた別の快感を覚えて、自分のものがムクムクと大きくなっていくのがわかった。
「こく、こく……んっ……はぁ……」
トーコが口を離したときには、肉棒はすっかりと固く大きくなり、おしっこも止まっていた。
まだ残尿感はあるが、下腹部を圧迫していた重みはもうほとんどない。そうなると、おしっこよりも、もう一つの体液を出したい気持ちに駆られる。
「ライズ様……気持ちよかったかしら……?」
「う、うん……」
「でも、ここからが本番よ。私の舌、すごくいいでしょ?」
トーコは自信ありげに舌をペロペロと突き出して、ライズを挑発する。
「ちょっとトーコ! おしっこは横取りしたんだから、そっちはあたしがやるの!」
と思いきや、今度はポーマがトーコを押しのけた。
「ちぇっ……しょうがないわね……」
トーコが残念そうに引き下がるのを尻目に、ポーマはライズの体をそっと持ち上げる。
「わわっ!?」
そのままひっくり返され、ライズは仰向けで後足を開く格好になった。
「この方がやりやすいし、いいよね? ライズ様」
「えっ、と……この体勢はちょっと……」
「だいじょーぶ、今度は失敗しないから! ライズ様が汚れないようにうまくしてあげるよ!」
「や、そうじゃなくて……」
恥ずかしい、と言いかけて、やめた。
もはや快楽の奴隷になってしまった自分に、恥なんて主張する資格はないんだ。
「……ううん。す、好きにしてもらえれば……」
もうここまできたら、快楽に身を任せてしまいたい。
フォールの言う通り、彼女たちがそれを望んでいるのなら、悪く思う必要もない。
「えへへっ、じゃあ……」
ポーマはライズのモノを軽く握って、ゆっくりと手を上下させ始めた。
「ぁっ……、ふぁっ……!」
肉球と毛皮で擦られるその感触に、ライズは足を開いたままピクピクと痙攣しながら喘いだ。
「んっ……はぷ……」
ポーマは手コキを続けながら、さらにライズのモノの先端を咥えた。
「はわぅっ……」
温かく湿った口内の空気に、思わず声が漏れる。
さらには、ポーマは尿道口をチロチロと舌先でいじり始めた。
「れろ……ちゅぅ……んっ……」
「あっ、ぁ、そ、そんな……だめっ……! ぁああ!」
一番敏感なところを刺激される強い快感と、おしっこがしたくなるムズムズする感覚が同時に襲ってくる。
「ん、ふぅ……ライズ様……かわいい……んっ……ちゅぅ……」
ポーマはライズの反応にご満悦といった様子で、頬を紅潮させていた。
「あぅっ、ぁ、ぁ、ぁ……ひあぁっ……!」
尿道口へと与え続けられる舌先の刺激は強烈で、到底耐えられるものではなかった。刺激に呼応するように、ぴゅっ、ぴゅっ、と熱い液体が飛び出した。
「んんっ……ん……! ぷはぁ、ライズ様……何か、出てる……」
手と口の刺激と快感がごちゃまぜになって、おしっこなのか、先走り液なのか、自分でも何が出ているのかわからない。
ただ、そんなことはどうでもよくなるくらい気持ちが良かった。
「はぁ、ふぅ……ぼ、僕も……わかんないよ……」
「まだ……せーえきは出てない……よね……?」
ライズはこくこくと頷いた。
下半身のモノはまだ張り詰めるほどに大きく、今にも爆発しそうな感覚が残っている。
「じゃ、続けるよ……はむっ……」
そこから、ポーマの手と舌の動きが一段と激しくなった。
「ちゅっ、れろれろ……ぢゅぅぅぅっ……!」
「あぁっ、ふぁあっ……! ぁ、ぁっ……!」
放尿と射精の混じったような感覚が性器に走って、ライズは強い快感を覚えながら、ぷしゅぅぅぅ、とポーマの口の中へ熱いものを吐き出した。
「んんっ……! こく、んっ……ぷはぁ……」
ポーマはそれを飲み込むと、息つぎのために口を離した。
唾液が透明の糸を引いて、ひどく淫靡な光景だった。
「今のは……おしっこ……だよね……? さらさらしてるし……」
「はぁ、はぁ……そ、そう、かも……」
「うふふ……最後まで、してあげるからね……んっ……」
ポーマもいよいよ興奮が高まっているようで、そこからはもう、容赦がなかった。
「ちゅっ、れろ……ぢゅ……っ、ちゅぅぅぅぅっ……!」
「待っ、そ、そんな、強く……ふぁあっ、ぁ、あああああ~っ……!!」
根本から舐め上げられた挙げ句、鈴口を思いきり吸われて、いよいよそこに溜まっていたものが爆発した。
下半身に熱い感覚が広がって、まるで自分のモノが噴火したみたいに、ライズは精を吐き出した。
「んんんっ……んんっ……!!」
ポーマは歓喜の表情で、口内に注がれる熱くて粘性のある液を受け止めた。
「んっ、こく……んっ……」
そうして、ドクドクと断続的に吐き出される白濁の液を飲み込んでいく。
「んっ……はぁ……今度こそ……出たね……いっぱい……」
ポーマは一滴残らずライズの精を飲み干すと、満足そうに微笑んだ。
「あぁ……やっぱり私、そっちが良かったわ……」
横で見ていたトーコも興奮した様子で、はぁ、と熱いため息をつく。
ライズはそんな二匹を見ながら絶頂の余韻に浸っていた。
「でも、ライズ様が受け入れてくれるなら……今度は一匹で……」
「そだねー。二匹で拉致しなくてもいいかもー」
二匹は早くも次回の話を進めているが、こんなことをまたするつもりなのか。
――べつに、何度でも構わない。
一瞬、そう思ってしまった自分の思考が、信じられなかった。
ああそうだ。まだ消えない余韻が、そんな思考に繋がったんだ。
体は焼けるように熱くて、上も下もわからないふわふわした感覚が残っている。
「ていうか今回、あんたの方が楽しみすぎじゃない?」
「そ、そーかなー?」
「絶対そうよ! 割り込んだ私も悪かったけど……これじゃ、物足りない……」
トーコはそう言って、物欲しそうにこちらを一瞥した。
ライズは絶頂の余韻で震える後足が少し落ち着くのを待って、よろよろと立ち上がった。
そして、トーコとポーマにふらふらと近づいていく。
「あ、いや……べ、べつに、ライズ様は無理しなくていいのよ……? 私たちが勝手にしたことだし……」
「うん……でも、これで、よかったら……」
ライズはトーコとポーマにお尻を向けて、尻尾を立てた。
「ライズ様……?」
そして、あのとき橄欖にしたように、下半身にぐっと力を入れて、残った膀胱の中身を勢いよく放出した。
「きゃあぁっ!?」
「はわわっ……!?」
ぷしゃぁぁあ、と勢いよくおしっこを浴びせかけられた二匹は、驚いて声を上げる。
ライズはぶるぶると体を震わせながら、膀胱が空になるまで、二匹に向かって放尿を続けた。
「ら、ライズ様っ、こんな……!」
二匹の反応が驚きなのか悦びなのかわからなかったが、おしっこを出し切ると、これでようやく、体に残っていたものが全部空っぽになった開放感に満たされた。
「ん……ふぅ……はぁ…………」
そうして真っさらな心地で深く息を吐くと、少しずつ、ライズの頭に理性が戻ってきた。
「……も、物足りない、とは言ったけど……」
「ら、ライズ様なりのプレゼント……だよね……!」
二匹はライズが最後にした行為に、明らかに戸惑っていた。
それはそうだ。
自ら要求してきた橄欖が特殊なだけで、普通はこんなことをされても嬉しくないはずだ。
まあ、トイレで待ち伏せをするような二匹だから、すでに普通ではないのだが。
「……あ、えっと……ご、ごめん。嫌だった……?」
「ぜ、全然嫌じゃないよ! ライズ様にされるなら……! いい匂いもするし……」
「でも、そう……ちょっとびっくりはしたわね……」
なんだか、気まずい雰囲気になってきた。
どうしてそんなことをしてしまったのか、自分でもわからない。きっとあの夜、橄欖におかしなことばかりさせられたせいだ。
今度会ったら、ちょっとくらい抗議してもいいのではないか。
恥ずかしくて話題にすらできない気もするけど。
「……そ、それじゃ私達はこれで……!」
「あ、もちろん誰にも言わないよね? あたし達も秘密にするけど……」
「……言えるわけないよ。停学が明けたばかりなのに……」
「だよねー」
彼女達もライズの事情をわかりきって、こんなイタズラを仕掛けてきたのだ。
「……うん、それじゃ、またね!」
ポーマは明るく手を振り、トーコは俯いて何かを考え込む様子で、その場を去っていった。
「……ごめんなさい、セルネーゼさん……父上……。僕……もう、
なんの罪滅ぼしにもならないとわかっていながら、ライズは懺悔の言葉をつぶやいて、フォールの待つカフェテリアへ戻るのだった。
「遅かったじゃん。なんかあったのか?」
「ごめん、ファンの子に声をかけられて、話し込んじゃってさ」
フォールのところに戻り、まさか本当のことを言うわけにもいかず、嘘半分、本当半分で事情を説明した。
「ふーん……ま、いいや。そろそろ遅いし、寮に戻ろうぜ」
フォールが答えるのに、間があった。一瞬、訝しむ表情をしたのもライズは見逃さなかった。
けれど、敢えて聞かないことにしたらしい。
付き合いも長いから、ライズが話したくない何かを隠していると察したのだろう。
寮に戻る道すがら、フォールは気まずい沈黙を破るべく、話題を切り替えた。
「そーいや、ライズんとこの二年四組、担任変わるんだってよ」
「えっ、秋学期から急に? ベルティ先生、何かあったのかな」
もともと二年四組の担任は、マルヤクデのベルティ先生だった。
政治学を教えるベテラン女性教師で、学園の流儀に従い、ほとんど生徒に干渉してこない。
「さーな。政治学の担当は変わってねーから辞めるわけじゃねーみたいだけど。でも、オマエにとっちゃいいんじゃないか? 心機一転っつーかさ」
「……それは、そうかもね」
元・優等生として扱われるよりも、停学から帰ってきた不良として見られる方が気楽だ。
ついさっきあんなことがあったばかりだが、こうして理性的でいられるときは、まだ心を入れ替えることを諦めていない自分がいる。環境が変われば、まだチャンスはあるかもしれない。
――そんなチャンスが、予想の斜め上からやってくるとは、まだこのときは知る由もなかった。
◇
翌朝。フォールと共に寮を出て、学園セーラリュートの円形の廊下を歩く。
高等部の校舎の前まで来たところで、また待ち伏せにあった。
「……やっと来た」
無愛想なコジョンドの女の子と、
「やっほー! おかえりっ、ライズ様!」
元気なヒヤッキーの女の子。
なんだか昨夜の組み合わせと似ているような、似ていないような。
――なんて考えるのは彼女たちに失礼だと、ライズはぶんぶんと首を振って昨日の記憶をかき消した。
「あ、えと……」
どう声をかけたらいいものか戸惑っていると、コジョンドのロッコが俊敏な動きで急接近してきた。反応もできない間に、ふぁさ、と長い体毛に体を包みこまれた。
「ライズ……!」
ふさふさで暖かい感覚が、とても懐かしくて、じわりと涙がこみ上げてくる。
「あー! ロッコずるい!」
「ヒューヒュー。ロッコさん、熱いねー」
ヤンレンの怒りと、フォールが冷やかす声が聞こえる。
そんなやり取りを聞いて、ようやく、学園に帰ってきたんだと、実感が湧いてきた。
「……ロッコさん、ただいま」
「おかえり」
言葉が少ないところも、彼女らしい。
自分はもうだめだと思ったけど、こうして抱きしめられても、もう変な気持ちにはならなかった。
昨日はどうかしていたんだ。
大丈夫。また彼女とは『友達』として、やっていける。
感傷に浸っていたら、急に後ろから脇の下に手を入れられ、抱き上げられた。
「わぁっ!?」
「もー、ロッコばっかり! ライズ様、私ともおかえりのキスしよ!」
「へ?」
有無を言わせず振り向かされ、ちゅ、と軽いキスをされた。
つややかな唇の感触と、水タイプらしい清潔感のある香りがふわりと鼻をくすぐった。
しかし、公衆の面前である。
「にへへ……久しぶりだなぁ、この味……」
「あ、あの、ヤンレンさん……みんなの前ではちょっと……」
「だいじょぶだよ? 私とライズ様のこと、もうみーんな知ってるし」
キスくらいで今さら騒ぐつもりはないのだが、バレたからといって開き直りが過ぎるのも問題だ。
「ヤンレン、何やってる! だいたい、『私と
ロッコが怒って、ヤンレンの腕からライズをひったくる。
「え? してないの? ロッコの前足の毛でライズ様の顔見えなかったからさ、てっきり……」
「あなたと一緒にしないでくれる?」
こんなヤンレンとロッコの争いも、また懐かしい。
停学になる前には大喧嘩もしたけど、そもそもライズが一線を超えなければ、このくらいで済んでいたんだ。
「ライズもライズで何? みんなの前じゃなかったらするの?」
「いや、それは、ええと……ごめん」
素直に謝るよりほかになかった。
この関係を壊さないためにも、本当に、これ以上はやめておこう。
今度こそ、そう肝に命じていたら、見覚えのあるパーモットとゴーゴートが通りかかった。
「あ、おはよー、ライズ様ー。また会ったねー」
「お、おはよう……」
ポーマが手を振ってきたのでライズは挨拶を返したが、トーコの方は気まずそうに目をそらして通り過ぎた。
「……また?」
ロッコが怪訝な顔で首を傾げた。
「昨日、カフェテリアで話しかけられて、ちょっとね」
「私知ってるよ? 三年生のポーマ先輩とトーコ先輩だよね。こないだFCの集会でお話したよ」
どうやら、ヤンレンとは面識があったらしい。
集会で何の話をしたのかわからないが、彼女たちの昨夜の行動を考えるとろくなことではないだろう。
「ライズ、気をつけたほうがいい。今もFCに残ってるやつなんて、まともじゃない」
ロッコの忠告は的を射ているが、いかんせん、聞くのが遅かった。
もし昨日の夕食にロッコも呼んでいれば、あんなことにはならなかったかもしれない。
「ロッコ、それどーゆー意味? 私も残ってるんだけど」
しかし、ヤンレンからするとロッコの言葉は聞き捨てならなかったらしい。
「あなたは自分がまともだと思ってるの?」
「FCを抜けたくせにライズ様につきまとってるロッコよりはね?」
「わたしはそういう輩からライズを守るためにいる」
「出たー。そんなこと言って、私より先にライズ様とイイコトしてたんじゃん」
「……いや、それは、昔の話で……」
傍で聞いていると、色んなことを思い出して、恥ずかしくなってくる。
それに、一度ジルベールに帰って戻ってきたからわかる。
まるでよくある日常みたいだけれど、それはこの国の、この学園の自由すぎる風土が生み出した、普通ではありえない関係性なのだと。
「まーまー二匹とも、その辺にしとけって。ライズ本人の前で争うことないだろ?」
フォールが二匹を
時間も時間なので、クラスに分かれて、教室へと向かうことにした。
三匹のうち、ライズと同じクラスなのはヤンレンだけだ。
「そういえばヤンレンさん、担任の先生が変わるって本当? フォールから聞いたんだけど」
「そーらしいよ! 新任の先生が来るんだって」
「新任? じゃあ、ほんとに知らないひとなんだ……」
「優しい先生だといいね!」
ヤンレンと二匹、会話をしながら教室に入ると、クラスメイト達が一瞬、どよめいた。
「やっぱり、マジでライズと付き合ってたんだ」
「早速一緒に登校なんて、仲がいいねえ」
クラスメイトの冷やかしに、ヤンレンはふぅ、とため息をついた。
「だから、ずっと言ってんじゃん? 付き合ってるわけじゃなくて、私がお願いしただけで……」
「もう、いいじゃない。ライズ君はもう、普通の男の子なんだし」
話しかけてきたのは、ムーランドのアイナだ。
彼女は中等部の頃に同じクラスだったことがあり、ライズのファンの一匹だった、はずだ。
キャスのいじめに加担していたことは忘れもしないが、それはさておき。
普通の男の子、という響きは、悪くないなと思った。
「色々あったんでしょうけど、普通はそれを付き合ってるっていうのよ」
「ライズ様もそんなつもりないと思うけどなあ。ね、ライズ様?」
「それは……ええと……」
そんなやり取りの途中で、チャイムが鳴り響いた。
仕方なく会話を切り上げて、自分の席につく。
担任の先生が変更になるとは聞いていたが、まず教室に入ってきたのは、元の担任、マルヤクデのベルティ先生だった。
「えー、皆さん、おはようございます。知っている方も多いと思いますが、秋学期からこの四組の担任が変わります。新任の先生なので皆さん、優しくしてあげてくださいね」
ベテランの先生らしく、新しい先生を気遣う素振りを見せたあと、入口に向かって無数の手足で手(?)招きをする。
「では、どうぞお入りください」
このときの光景を、ライズはおそらく一生忘れることはないだろう。
前のドアから、教室に入ってきたその姿を目にした瞬間、ライズは椅子から転げ落ちた。
「わたくし、この学園に新しく赴任いたしました――」
気の強さを宿した瞳、気高さが滲み出る凛とした声。
ライズは前足で目を擦って、見間違いではないかと、教壇に立つその姿をもう一度確認する。
「――セルネーゼ・ミルディフレインと申します。皆さん、よろしくお願いいたしますわ」
透き通った氷のような美しい毛並みを持つそのグレイシアは、ライズの婚約者その人だった。
時は遡る。
橄欖に依頼してライズの意思を受け取ったセルネーゼは、婚約破棄を取り消すよう直談判するため、実家のミルディフレイン家へと帰省していた。
「ならん! ネール、お前は我がミルディフレイン家の大切な一人娘なのだぞ。クレスターニ家が厳格な騎士の家系だからこそ、信用していたというのに……」
父、ルーセルは、黄昏の姿という少しめずらしい、美しい毛並みを持つルガルガンだ。
セルネーゼが婚約破棄の取り消しを要求すると、ルーセルはその美しい毛並みが燃えているかと思うくらい、烈火のごとく怒った。
「お言葉ですがお父様。わたくしはお父様の所有物ではございませんことよ」
しかしその怒りに臆することなく、セルネーゼは毅然と反論した。
「貴方の娘である前に、わたくしは一匹の大人です。わたくしの意思を尊重せずして、『大切な一人娘』などとおっしゃいますか?」
こちらは最後の手段として、駆け落ちまで考えているのだ。
一歩も引くつもりはない。
「私はお前のためを思って言っているんだ! ミルディフレイン家の利得だけを考えれば、破棄する理由はないのだ、そうだろう?」
「わたくしのためを思うなら、尚更です。他でもないわたくしが、あの子を……ライズを手放したくはないと言っているのですよ。ならば、誰も望まぬ選択ではありませんか」
「……くっ。娘にそう言われてはな……」
最初は頭に血が上っていたルーセルだが、決して話のわからない父ではない。
セルネーゼの主張に、少しずつ耳を傾け始めた。
「だがなぜ、お前というものがありながら、軽率に他の相手と関係を持つような……あのクレスターニ家の嫡子を、許せるというのだ……?」
「……それは誤解ですわ、お父様。わたくしは、許すとは一言も言っておりませんわよ」
そう、ライズを失いたくない気持ちに嘘はない。
他の全てを失ってでも優先したいほどの激情が、この胸に渦巻いている。
けれど――
「今後は、徹底的にわたくしの監視下に置きます。わたくし直々に、この手で更生させてやりますわ」
◇
それから、ライズの停学が明ける三ヶ月の間に、準備を進めることとなった。
こんなこともあろうかと、セーラリュートでランナベールの教員免許を取得しておいて良かった。
法のない国ではあるが、一応教員には資格が必要らしい。
リカルディの護衛業務を下りることにはなったが、ハイアットがすでに後進の育成を進めていたこともあって、引き継ぎも無事に済ませることができた。
あとは、セーラリュートに採用されてライズのクラスの担任につくだけ。
セーラリュートは、金が物を言うランナベールというお国柄の、国立の学園だ。
婚約を維持する条件として、主にクレスターニ家の出費で根回しのための資金を用意。セルネーゼが王の側近であったこともあり、セーラリュートにはこちらの出した条件をほぼ全て呑んでもらった。
そして現在。
全ては、計画通り。
秋学期の始まる九月一日、朝のホームルームの時間。
セルネーゼは、ライズの所属する高等部二年四組の教壇に立っていた。
「担当科目はバトルの実戦……特に、要人の護衛術が専門ですわ」
自己紹介もそこそこに、腰を抜かして椅子から転げ落ちたライズを一瞥する。
「おや? そこのニンフィアさん……」
セルネーゼはライズと面識がないフリをして、名簿に目をやった。
「お名前は……ライズさん、ですわね。どうかされまして?」
そうして、にっこりと微笑みかけた。
「えっ、い、いや、あの……ええっ!? ど、どうして……」
ひっくり返ったままで目を丸くするライズに、つかつかと歩み寄っていく。
前足を差し伸べて、体を起こすフリをしながら、耳元に顔を近づけた。
「……久しぶりですわね、ライズ。今後一切、貴方に自由はないものと思いなさい」
他の生徒に聞こえないように、囁く。
そうして、ライズの体を起こして、四足歩行ポケモン用の低い椅子に座らせた。
「ライズさん、お怪我はなくて?」
「……は、はい……」
ライズは引きつった顔で、まるで機械みたいにこくこくと頷いた。
「先生、やさしー」
「怖いひとかと思ったけど、そうでもないみたい?」
教室がざわついたが、気にとめる必要もない。
セルネーゼは教員をやりたくてここに来たわけではないのだ。
波風立てず、ライズとの関係は隠して、優しい先生を演じておくほうが都合がいい。
セルネーゼは教壇に戻って、ふたたびクラスのポケモンたちを見回す。
「新任ゆえ、授業は至らぬところがあるかとは思いますが、ご容赦くださると嬉しいですわ。その代わりと言ってはなんですが……わたくしも皆さんと同じこの学園の出身ですから、先生であると同時に、先輩でもあります。先輩として頼っていただいても構いませんわ」
「セルネーゼ……先輩……あれ?」
先輩、という言葉に、ヒヤッキーの女子が首を傾げた。
「あー! 思い出した! シオン様の隣にいたグレイシア!」
うっかりしていた。この学園は高等部二年生だから、セルネーゼが卒業した四年前、一年だけ在学期間が重複している。
卒業してからの日々が濃すぎて、ずいぶんと長い時間が流れたように思い込んでいた。
セーラリュートは中等部が三年、高等部が三年、その上に他国の短期大学相当の『錬成部』が二年間あるが、単位制で飛び級が可能だ。
セルネーゼも成績優秀な方ではあったが、飛び級には至らなかった。
「……おや。わたくしはシオンさんの影に隠れて目立たないはずでしたが……」
その飛び級制度で、学園史上で最も早く、高等部二年のうちに卒業したのが、当時風紀委員長だったエーフィのシオンだ。
ライズもそれに近い優等生だったが、此度の停学で一学期の単位取得がほとんどできず、少なくとも三年生まで残ることが確定したらしい。
ともあれ、あの頃は色々と尖っていたので、当時を知る者がいるのは少し気恥ずかしい。
「……中等部の一年間だけで、よくわたくしのことを覚えていましたわね」
「まー私は入学してすぐにシオン様のファンクラブに入ったからねっ」
ヒヤッキーの馴れ馴れしさに正直、辟易したが、思い返せば、セーラリュートの生徒なんてこんなものだ。先生にきちんと敬語を使う生徒のほうが珍しいくらいだった。
「シオンさんのついでということでしたら、納得ですわ。えー、貴女のお名前は……」
名前を確認した瞬間、体温が一度ほど急上昇するのを感じた。
ヒヤッキーの名は、ヤンレン。
事前の根回しで、ライズと一緒に停学、謹慎処分になった生徒のリストは手に入れていた。
ということは、このヒヤッキーが問題のライズの相手に違いない。
「ヤンレンさん……ですか」
感情を表に出すまいとしたが、声が震えてしまった。
「そだよ! よろしくね、先生!」
ヤンレンにはまったく気づかれなかったようだが、ライズの方をちらと見ると、青い顔をしていた。
セルネーゼを良く知るライズには伝わってしまったか。
さすがに笑顔で返事をすることはできず、どうしたものかと時計を見ると、ちょうどチャイムが鳴る直前だった。
「……朝のホームルームはここまでですわ。また授業で会いましょう」
セルネーゼはそこで話を打ち切り、一礼をしてスタスタと教室を後にした。
「まずは
ライズが関係を持った相手は一匹だけではないらしいが、担任の立場なら、いつでもライズを呼び出して話を聞くことができる。焦る必要はない。
「ふふ……ライズ……もう逃がしませんわよ……」
一限目のポケモン生態学の講義を、ライズはクラスメイトと分かれて一匹、講義を受けていた。
高等部までの生物学を基礎として、様々なポケモンの生態に深く踏み入った学問だ。
しかし、朝の衝撃があまりに大きく、講義に全く集中できなかった。
気がつけば一限目が終わって、二限目のバトル学・実戦Ⅲ。
実戦講義は同じ学年でも強さにバラつきがあるが、一応、高等部三年生相当で、学園では上から三つ目のクラスだ。
二限が始まるまでにまだ時間はあるが、早めに訓練場に入ると、同じ講義を受けているロッコも来ていた。
「……ライズ? 顔色が悪いけど、どうかした?」
ロッコにはひと目で、様子がおかしいことを見抜かれてしまった。
まだほとんど学生は来ていないが、あまり他人に聞かれたくないので、ロッコに手招きして訓練場の端まで移動する。
「それがさ……新しく来た担任の先生が――」
ロッコには、婚約者であるセルネーゼについて話したことがある。
その婚約者が、新任教師として担任となったことを説明すると、さすがのロッコも驚いて目を丸くした。
「そんな偶然、ある?」
「や、ぜったい偶然じゃないよ。停学のことはもちろん、セルネーゼさんにも知られているんだ。だからきっと、裏で手を回して――」
「あら、ライズさん。セルネーゼ
突然の背後からの声に、ライズは飛び上がった。
「ひゃぁぁっ!?」
「……あらあら。そんなに驚いて、どうしたのですか」
振り向くと、セルネーゼは笑顔を浮かべていたが、ライズにはわかる。
心の底から笑っていない。
これはきっと、ライズと、その周りの
「……そ、そっか、バトル学だから……セルネーゼさんの担当授業なんですね」
「学園では先生と呼びなさい?」
「せ、セルネーゼ……先生……」
言われるままに口に出してはみたが、どうしても違和感が拭えない。
だが、セルネーゼとの本当の関係性を学園の皆に知られると、更に面倒なことになりそうだ。
とはいえ、すでに知る者もいるわけで。
「あなたが、ライズの婚約者……」
隣にいたロッコが二匹のやり取りを見て、つぶやく。
セルネーゼはすぅっと目を細めてロッコを一瞥した。
「貴女、お名前は?」
「ロッコ」
二匹がついに会話を始めたので、ライズは気が気でなかった。
いつかこの時が来るかもしれないとは思っていたけれど、こんなに早く訪れるなんて。
セルネーゼとロッコが顔を合わせる瞬間が。
「ロッコさん、ですか。随分ライズと親密そうですわね」
ロッコとの関係は公にはなっていないが、セルネーゼは明らかに怪しんでいる。
この先、隠し通すことなんてできるのか。
「べつに……今はただの友達」
「
できるわけがなかった。
ロッコはこういう場面で空気を読んでくれる性格じゃない。
「……なるほど。貴方の名も覚えておきますわ」
ヤンレンに向けたのと同じ、冷たい視線。
恐ろしさを感じずにはいられない。
セルネーゼがロッコやヤンレンに危害を加えることはないにしても、心中穏やかでないのは否が応でも伝わってくる。
そんなやり取りをするうち、次の授業のために学生が集まり始めた。
「ライズ。話は放課後に、ゆっくり聞かせてもらいますわね」
「ええっ、いきなり呼び出し……?」
「あら。先生の言うことが聞けなくて? 今のわたくしには、貴方に懲罰を与える権限もありましてよ」
セルネーゼは有無を言わせぬ口調で、ずいっとライズに顔を近づけてくる。
ライズは思わず身を引いて、隣にいるロッコに視線で助けを求めた。
「そ、そんな……ねえ、ロッコ……」
「わたしもライズも、怒られて当然。……本当に反省している。わたしはどんな罰も受け入れる」
が、ロッコの方はもう、腹を括っていた。
ロッコはセルネーゼを怒らせたときの怖さを知らない故かもしれないが、ここへきてまだ逃げようとした自分が情けない。
「物わかりは良いようですね。ですが、わたくしは優しくはありませんわよ。貴女にもいずれ、報いは受けていただきますわ」
セルネーゼは最後に冷たい声で言い放ち、集まってきた学生の方へと歩いていった。
そこからは新任の先生の顔に戻り、バトルの指導が始まる。
授業を受ける学生の中にポーマとトーコの姿も見かけてヒヤヒヤしたが、互いに話す機会もなく、セルネーゼによる初授業は平和に終わった。
セルネーゼの指導は丁寧で的確で、授業は学生たちには好評だった。
ライズとロッコにだけ、やけに指導が厳しかった気もするが、まあそれはご愛嬌ということで。
◇
一日が終わり、自分の教室に戻って夕方のホームルームの時間。
セルネーゼは淡々と連絡事項を済ませて、ぐるりと教室を見回した。
「……わたくしからの連絡は以上です。皆さんからは何かありますか?」
赴任初日、まだ一日が終わっただけなのに、すっかり慣れた様子だった。
学園まで乗り込んでくる破天荒っぷりには驚いたが、さすがに優秀なひとだけあって、先生としての仕事は卒なくこなせるようだ。
「では、本日の終礼はこれまでといたしますわ」
思えば、これまでプライベートの姿しか知らなかったので、仕事をしているセルネーゼを見られるのも新鮮だ。
また違った一面を知ることができて嬉しいかもしれない。
「……ライズさん。少し残っていただけるかしら」
などと呑気なことを考えていたら、セルネーゼの一言で現実に引き戻される。
席を立って帰る途中の学生たちがざわつく。
「おいおい、いきなり呼び出しかよ。何やったんだ?」
ヤンレンもライズのところへ来て、疑問を口にする。
「ライズ様、なんかあったの?」
「や……停学のことでちょっとね……」
「あ、そっか! 先生も事情は知っておきたいよねー」
ヤンレンはまだライズの婚約者がセルネーゼだと知らないので、そう言って屈託のない笑顔を浮かべた。
「まー私は全然悪者にされてもいいし、いい感じに使ってくれたらいいよ!」
おまけに、声がでかい。セルネーゼにも丸聞こえだ。
「い、いや……そんな小細工が通用する相手じゃ……」
ライズが否定する間に、セルネーゼはつかつかと歩み寄ってきた。
「わたくしはライズさんとお話があるのです。帰りなさい」
明らかに不機嫌そうな低い声だったが、鈍感なヤンレンは動じることもなく、
「……はーい。またあとでね、ライズ様! センセーもさよなら!」
と手を振って、教室を出ていった。
教室に残されたのは、ライズとセルネーゼの二匹。
「さて……すぐにでも聞きたいことが山ほどありますが」
ライズに向き直ったセルネーゼは、もう先生の顔をしていなかった。
「ここで話すのは危険ですわ。使用されていない空き教室を押さえてありますから、移動しましょう」
そうして連れてこられたのは、絶対に誰も来ない校舎の端の空き教室だった。
部屋に入ると、セルネーゼはドアに鍵までかけて、万全の状況を整える。さすがに用意周到だ。
「……まったく。手を焼かせるフィアンセですわね」
いよいよ怒られるかと思ったら、セルネーゼはやれやれといった表情で、ため息をついた。
「ごめんなさい……」
「もう、謝罪の言葉は聞き飽きました。貴方のお父様にも、何度頭を下げられたことでしょう」
ひとまず謝りはしたが、返す言葉がなくなった。
父が何度もミルディフレイン家まで出向いていたのをライズも知っているし、心が痛い。
「反省は言葉より、これからの行動で示してもらいたいところですが……」
セルネーゼは、サディスティックな笑みをニタリと浮かべた。
「……してしまったことには、お仕置きが必要ですわ」
「うぅっ。そうなります、よね……」
絶対に逃げられないことを悟って、ライズは覚悟を決めた。
「では……停学の理由は聞いては大方聞いてはおりますが……いったい何匹の相手と、誰と不純な交遊をして停学に至ったのか……貴方の口から聞かせてちょうだい、ライズ」
もしここで嘘をついたら、裏切りに裏切りを重ねることになる。そんなことはできない。
ライズは、停学に至るまでの経緯を包み隠さず話した。
はじめは、中等部の頃にロッコを誘ったこと。それから高等部一年生のとき、キャミィに無理やり恋人にさせられていたこと。それから二年生、今度はヤンレンと関係を持ってしまい、キャミィがライズを奪い返そうと、ライズを狙う一年生と共謀してヤンレンを誘拐する事件が起こったこと。
その事件はライズを巡る争いだったこと、そして風紀委員であるライズが複数の異性と関係を持っていたことが明るみになり、停学処分が下されたこと。
セルネーゼは話を聞き終えると、前足を顎に当てて思案する仕草をした。
「……では、関係を持ったのは三匹。そのうち、無期停学中のペルシアンは脅されて仕方なくということですか」
「……はい。信じてもらえるか、わかりませんけど」
「まあ、いいでしょう。関係者に話を聞けばわかることですわ。ヒヤッキーのヤンレンさんには、嵌められたと見ることもできますが……断ることはできましたわね?」
「……はい」
セルネーゼの言うとおり、きっかけはヤンレンが仕掛けてきた悪戯だが、最終的には自分の意思で受け入れてしまったことは事実だ。
「二匹に関しては情状酌量の余地もないとは言えないでしょう。しかし、コジョンドのロッコさん……これは貴方から誘いましたのね?」
「……はい」
ひたすらに肯定の返事を繰り返すことしかできない。ロッコに関しては、もはや言い訳の余地が一ミリも存在しないのだ。
「ただ……中等部ですから、わたくしと再会する前ですわね。そこには一考の余地がありそうです……」
あれ。意外と、許してくれるのか。一瞬、期待してしまったが、そんな甘い話はなかった。
「……が! わたくしと再会した後も関係を切らず、あまつさえ在学中限定などと……相手の好意を利用し、都合のいい相手にしようとした……」
いよいよ怒気を孕んだ声色へと変わっていく。
「これは完・全・なる
「はい……その通りです……」
叱り飛ばされただけで本当に飛んでいきそうなぐらい、地面の感覚がなかった。体がここになくて、心だけが浮いているみたいだった。
「まだまだ問い質したいことはありますが……」
セルネーゼは、ちら、と時計を見た。
「貴方とお話をする機会は、この先いくらでも作れます。今日のところはこの辺にして……」
こっぴどく絞られたが、ようやく解放される。そう思ったのもつかの間。
「ここからはお仕置きの時間ですわ」
ライズはあっという間に床に組み敷かれていた。
「えっ、お仕置きって……」
ロッコのように力が強いわけではないので、後足と尻尾をばたつかせて脱出を試みるが、セルネーゼの一言で、抵抗の気力は一瞬で削がれることとなる。
「大人しくしないなら、凍らせるわよ。あの時みたいに」
セルネーゼの部屋に初めて泊まった朝の記憶が蘇って、あれだけはもう嫌だと、観念した。
「あぁ……この香り……肌触り……わたくしだけのものだと思っていたのに……」
怒りの色もまだ混じってはいたが、セルネーゼの目つきが、今までとは明らかに違う熱を帯びていた。
こうして体が触れ合うと、体表を覆うひんやりとした冷気の奥に、温かさを感じる。グレイシアはその気になれば体温を氷点下まで下げることができるというが、全身をめぐる血まで凍ってしまわないように、体内の熱は保たれているのだという。
「ね、ネールちゃん……」
その独特の感触で、一度体を重ねたときのことを思い出して、親愛の証である呼び名を、つい口にしてしまった。
「……っ」
セルネーゼが息を呑んで戸惑ったのは、一瞬だけ。
鼻先が触れ合う距離へ、ずいっと顔を近づけてきて、
「愛称で呼んでも、優しくはしてあげませんわよ。これはお仕置きなのですから」
そう囁くと、一歩下がって、ライズの後足を自分の前足で押さえつけた。
強制的に開脚させられ、股間を見下ろされている。さすがにこれは恥ずかしい。
「悪い子ね。お仕置きだと言っていますのに……」
これからされる仕打ちに期待して、下半身が軽く反応してしまっていた。
セルネーゼはそれを蔑むように目を細めると、おもむろに、半勃ちになったライズのモノに顔を近づけ、ペロリと舐めた。
「ひゃっ……!」
突然の刺激に、ビクン、と体が跳ねて、ライズは声を漏らした。
「今日の懲罰は……そうね、わたくしが満足するまで、その可愛い声を聞かせてもらおうかしら」
そして、セルネーゼはライズのものに顔を近づけてくる。
彼女が口を開けると、ひんやりと冷たい吐息がかかって、全身に震えが走った。
「ううぅっ」
この震えは、まずい。
おねしょしてお仕置きされたときは、死ぬ気で我慢したけど――
セルネーゼはそのままライズのものを咥えようとしたが、その舌が触れるか触れないかのところで、こみ上げてきた尿意を我慢することができなかった。
「ぁっ……」
力の抜けた声と一緒に、おしっこを漏らしてしまった。
「きゃぁ!?」
これは予想していなかったのか、至近距離で顔におしっこをかけられたセルネーゼは、今まで聞いたことがないような、素っ頓狂な悲鳴を上げた。
セルネーゼは目をつぶって顔をそらしたが、透明なアーチを描いた温水がその横顔にかかり、首をつたって胸や前足を濡らしていく。
「ちょっ、と……! ライズ……!」
その姿はひどく艶麗で、淫靡で。ゾクゾクとした快感が、体の奥底から湧き上がってくる。
しかし、昨日の二匹に襲われたときとは違った。その快楽に埋没しそうになったのも、ほんの数秒。そこで脳裏をよぎった恐怖の記憶が体を硬直させ、おしっこも止まってしまった。氷漬けにだけはされたくない。
「まだ、ひと舐めしただけですわよ? お漏らしするには早すぎませんの?」
絶対に怒られて、最悪氷漬けコースだと思ったのに、セルネーゼは呆れ顔でため息をついただけだった。
「ご、ごめん、なさい……セルネーゼさんの息が……冷たくて……その……」
「……まったく。前にも言いましたが、それはわたくしの体質上、仕方がありませんのよ。少しは耐えなさい」
額と左右に垂れる
意外と、満更でもなかったりするのか。
セルネーゼは一度ライズから距離を取ると、ぶんぶんと全身を振るわせて、体毛についた水を吹き飛ばした。
そして再び、こちらに近づいてくる。
「さて、お仕置きの続きを……おや?」
股間のモノを見下ろしたセルネーゼが、怪訝な顔をした。
「これはまあ、ずいぶんと元気になって……」
少し考え込む仕草をして、にっこりと微笑む。
ライズは知っている。これは、怖い方の笑顔だ。
「ライズ? 漏らしてしまうのはわかりますよ? ですが……おしっこで濡れたわたくしを見て、気持ちよくなっていませんこと? 以前は違ったわよね?」
「……えと、それは……」
気づかれてはいけないことに、気づかれてしまった。
「誰かが教えましたのね? わたくしのライズに……まだライズが知らぬ快楽を……!」
怒りのベクトルは予想とは違ったが、他の雌の影がちらついたことで、セルネーゼは怒り心頭だった。
こうなると、どうあがいても誤魔化せない。
「わたくしとの再会の後ですから、二匹のどちらかですわね?」
ライズは何も答えることができなかった。
二匹のどちらでもなく、セルネーゼが派遣した橄欖のせいだなんて、言えるわけがない。
「ま……それは追い追い問い詰めるとして……今は、お仕置きが先です」
一旦先送りになったことでこの場は助かったが、それはそれで後が怖い。
セルネーゼは会話の間にいくらか縮んでしまったライズのものへ、今度は素早く顔を近づけて、ぱくりと咥えこんだ。
「はぅぅ……!」
あまりに急だったので驚いたが、おかげで冷たい吐息がかかることはなかった。
セルネーゼなりに考えてのことだったのかもしれない。
「んっ……ちゅぅ……」
しかし、セルネーゼの口内はふつうのポケモンよりは冷たくて、そのくせ性器をねぶる舌は温かく、温度差で熱いくらいで。
「ぁ、ぁっ、ぁ……!」
舌の動きで愛撫されたモノはまたすぐに大きくなっていく。
セルネーゼが口から垂れそうになった唾液と先走り液をじゅるる、と吸ったときには、電撃を浴びたような快感が全身を走った。
「ん……ぷはぁ……そうです……その声を……もっと聞かせなさい……はんっ……」
「ふぇえっ……ぁ、っああ……!」
息継ぎのためにセルネーゼが口を離したとき、また冷たい息がかかって、すぐにもう一度口の中で温かくなって。
下腹部とお尻の周りがびくん、と収縮して、膀胱から性器の中を通って、熱い感覚が走り抜けていく。
「んっ、ちゅ……んんんんっ……!!?」
セルネーゼは一瞬驚いた素振りを見せたが、今度は予想していたからか、慌てることなく口内に出されたおしっこを飲み込んだ。
「ああっ、ぁ……! だめぇ、止まんないよぉ……!」
しかし、下腹部の断続的な収縮は止まらなかった。びくん、びくん、とまるで射精するときみたいに、ライズは勢い良く放尿を繰り返す。
「んっ、んん……!! こくっ、ん……! んんんっ……!」
セルネーゼは決して口を離さず、その全てを受け止めて、嚥下していく。
彼女も興奮しているようで、水色の薄い被毛が桃色に見えてしまうくらい、顔が紅潮していた。
その姿にライズの興奮もさらに昂ぶって、快感が下腹部から全身へと大きく膨れ上がっていく。
「んぁっ、あっ、ぁ、ぁ……にゃあああぁ……!」
それから何度目かの放尿で、収縮の間隔がビクビクと急激に早くなった。爆発的な快感も伴っていて、頭が真っ白になりそうだ。
「んん……!! んっ、ん……!」
射精していると気がついたのは、セルネーゼの表情が変わったのを見たときだった。
急に味も粘性も違う白濁の液を口内に出されて、それでもセルネーゼは零すことなく、ごくり、とそれを飲み込んだ。
「んっ……、ぷはぁ……! はぁ、ふぅ……ライズ……出しすぎ、ですわ……」
ライズの体から出るものを全て、ほとんど息継ぎなしに飲んでいたのだ。ようやく口を離すと、セルネーゼは息も絶え絶えだった。
「はぁ、はぁ……セルネーゼさんの、お口……気持ち、よすぎて……」
ライズの方も、快感に喘いで荒くなった呼吸を整えるのに必死だった。
息を整えながら、ライズはゆっくりと体を起こす。
学園の教室でお仕置きと称され、セルネーゼに性的な悪戯をされた……なんて、まだ悪い夢でも見ているみたいで、現実感がない。
けれど、体に残る快楽の余韻も、目の前に立っているセルネーゼも、紛うことなき現実で。
そうしてセルネーゼと無言で見つめ合うこと、数秒。
互いに理性を取り戻すにつれ恥ずかしくなって、どちらともなく目をそらした。
「……今日のお仕置きはここまでです。もう、帰りなさい」
「……はい、
現実逃避のためにそう呼んでみたけど、かえって背徳感が増すばかりで、余計に気まずくなる。
ライズは逃げるように、空き教室を後にするのだった。
ライズが空き教室から出た頃にはもう夕食時、カフェテリアの混み合う時間帯になっていた。
風紀委員も罷免され、課外活動もしていないので、この先は余った時間をどうしようかと思っていたところだったが、初日は思わぬ形で放課後の時間を消費してしまった。
ひとまず夕食を食べて落ち着こうと、カフェテリアに入った直後、待ち構えていたようなタイミングでコジョンドの女の子が現れる。
「……やっと来た」
いや実際、ずっと待っていたのだろう。
ロッコはライズの姿を目にするや否や、駆け寄ってきた。
「先生に呼び出されて、何をされてたの? ずいぶん長かったけど」
「えー……いや、それは……」
もちろん、言えるわけはないが、勘の鋭いロッコを誤魔化しきれる気はしない。
「……ま、話はあとで聞けばいいか。ヤンレンもそろそろ来るはず」
「ヤンレンさんも?」
「先生――というか、あなたの婚約者について。ヤンレンにも話しておいた方がいいでしょ」
「……たしかに」
直接の関係者である以上、情報は共有しておいたほうがいい。
それからヤンレンと合流して、三匹で夕食を共にすることになった。久しぶりの楽しい夕食会になるはずが、この状況では口を開くのも重い。
「でさー、ルウェナ会長に私だけ残されてさぁ。ライズ様が帰ってきたからってまた変なことしたら今度こそ生徒会をやめさせるって脅すんだよ」
何も知らないヤンレンだけはいつもの調子だ。
生徒会長のアマージョ、ルウェナも確かに怖い存在ではあるが、それどころではないロッコとライズからすれば、それすらも生優しく思える。
「……どーしたのよ、
ヤンレンはフライドポテトをバクバクと食べながら、ライズとロッコの顔を交互に見た。
「あ、そーだライズ様、先生に呼び出されてたよね! やっぱり停学のことだったの?」
「ま、まあね……
「べつに私はいいけどさー。ライズ様、怒られてない? 大丈夫?」
「や、それは……」
ライズが肝心の事実を伝えられないでいると、ロッコが横から割り込んだ。
「セルネーゼ先生は、ライズの婚約者」
「……へ?」
ヤンレンは手に持ったポテトをポトリと取り落とした。
「えええーー!? なんで? どうして? そ、それじゃ、ライズ様とイチャイチャできなくなる……?」
「できるわけがない。こうして一緒に食事をするのも、許してもらえるかどうか」
「ごはん食べるくらいはいでしょ? ライズ様と私たち、お友達なんだし」
授業でセルネーゼの本性の片鱗を垣間見たロッコと違って、ヤンレンはまだ彼女を優しい新任の先生としか認識していないのだ。
ことの重大さがわかっていないらしい。
「いや、あの……セルネーゼさんには逆らわないほうがいいよ……」
「えー……そんなに怖いひとなの……?」
ライズが忠告すると、さすがのヤンレンも少し怯えた顔をした。
「ごめん。きっとヤンレンさんもロッコさんも、ただで済むことはないと思う……」
セルネーゼはきっと、ライズに対しては本気で怒りきれないところがある。
それでも怖いくらいなのに、二匹に対する容赦のない怒りがどれほどの恐ろしさなのか、想像がつかない。
「やばーい! ねえロッコ、どうしよう!? 私セルネーゼ先生のクラスなんだよ? 逃げ場がないよ!」
「今さら焦ってどうするの。わたしたち、ライズに婚約者がいることは知ってたでしょ。受けるべき罰を受けるときが来た。それだけ」
それから、三匹とも黙ってしまって、解散する頃には、食事の味も覚えていないくらいだった。
「ま、こーなったら罰でもなんでも受けてやんよ!」
ヤンレンだけは開き直っていたが。
◇
教師として初出勤の日の夜、帰宅したセルネーゼは、今日の出来事を思い返していた。
ライズへの
異性を虜にするニンフィアのフェロモンの匂いは強力だ。ライズを呼び出した後に体からニンフィアの匂いをさせていたら、良からぬ噂が立ってしまう。
職員室へ戻った際に特に誰にも変な反応はされなかったから、大丈夫だとは思いたいが、初日からリスクの高いお仕置きをしてしまったものだ。
しかし、単純な体罰や叱責ではセルネーゼ自身が満足できない。
セルネーゼは引っ越しの片付けが済んだばかりの部屋に荷物を置き、シャワールームへ入った。
シャワーを浴びながら目を閉じると、ライズの反応、表情、声、それから匂いまで、あのときの光景が鮮明に思い出される。
「あぁ、ライズ……」
体温が低いぶん、シャワーの温度はぬるめに設定しているのだが、ライズのことを思い返すと、体の奥が熱くなってきて、セルネーゼは水温の設定をさらに下げた。
ほぼ水になったシャワーを浴びると、いくらか冷静になることができた。
学園でライズと話すことも、空き教室での密会――もとい懲罰も、ただの一日。これからは日常のエピソードに過ぎない。
明日も明後日もライズに会えるのだから、いちいち過去の回想にふける必要はないのだ。
それよりも、次はどんなお仕置きをするか考える方が気分が高揚するというもの。
「ふふふ……次は、ライズに手を出した二匹……貴女達に、わからせる必要がありますわね……」
ライズの相手の雌をどうするか悩んでいたが、我ながらいいことを閃いた。
教師の立場を利用して、ただ闇雲に意地悪や嫌がらせをするなどというのは、まるで小物の所業だ。
自分を落としてまでそんなことをするつもりはない。
一日見ただけで、ヒヤッキーのヤンレンもコジョンドのロッコも、未だライズに対してただならぬ想いを抱えているのは丸わかりだ。
だから、罰として一番効く方法は、これで間違いない――
翌々日。二日連続での呼び出しは怪しまれるので、一日空けて、今度は秘密裏に、ライズ、ロッコ、ヤンレンの三匹を空き教室へと呼び出した。
周りに知られぬよう、皆の前で呼び出すことはせず、授業の合間にこっそりと、放課後空き教室に来るよう伝え、終礼のときもセルネーゼは何も言わず先に教室を出た。
一昨日と同じ教室で、今日の懲罰のために部屋の真ん中に椅子を一つ、それからその椅子と向かい合わせにして、少し離れた位置に椅子を二つ置いた。
セット完了から五分ほど待ったところで、三匹はおずおずと部屋に入ってきた。
呼び出しを伝えたとき、ロッコは異様に落ち着いていて、覚悟を決めた目をしていた。一方でヤンレンはわかりやすいくらいに怯えており、指示通りやってくるかどうか怪しかったが、様子を見るに、どうやらライズとロッコの二匹が無理やり連れてきたらしい。
「ひええ……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
思えば昨日からセルネーゼと目を合わせなかったあたり、すでにライズかロッコからセルネーゼの正体を聞いたのだろう。
「こっ……このとおりですっ!!」
ヤンレンは教室に入るなりセルネーゼに向かってジャンピング土下座をした。
真面目なのかふざけているのかわからない。一体どういう神経をしているのか。
怒りよりも、こんな変な子にライズが身を許したことを信じたくない気持ちが
「貴女がた二匹はそこに座りなさい。ライズはこちらへ」
ロッコとヤンレンを二つ並べた椅子に座らせ、ライズはセルネーゼの隣へと並ばせた。
「さて……念のため、事実確認をさせていただきましょう。貴女がた二匹が、わたくしの婚約者であるライズと肉体関係を持ったというのは本当ですか」
「本当。わたしはライズとは、二度」
「わ、わわ私もえーっと……二回襲っちゃったかな……」
二匹はあっさりと認めた。今もライズと交流があるのだから、もう逃げられないことはライズから事情を聞いてわかっているのだろう。
「なるほど。一夜の過ちですらないと……」
隣にいるライズの頭に、ぽん、と前足を置いた。
ライズはびくりと身をすくませたが、今日の懲罰はライズが対象ではない。
「ライズが復学したら、あわよくばもう一度……そんなことも考えていそうですわね」
黙ってしまった二匹を交互に
しかし、たとえ平静を装っていようと、ライズに向けるその視線に込められた熱を、セルネーゼは見逃さない。
「ですが」
冷凍ビームでロッコを、フリーズドライでヤンレンを、手足を狙って一瞬で氷漬けにする。
「うっ……」
「ひゃああ!?」
そして、氷で椅子に縛り付けられる格好となった二匹に言い放つ。
「その願いは二度と叶うことはありません」
「セルネーゼさん……!?」
「ご安心なさい。少しの間であれば、大事には至りませんわ。軽い凍傷にはなるかもしれませんが……」
ライズは二匹を心配しているようだ。
この期に及んで二匹にライズの情が向けられていることも腹立たしいが、それもここまでだ。
――すぐに、わたくしのことしか考えられなくしてあげましょう。
「ねえ、ライズ。もっと近くに来なさい」
「えっ……は、はい……」
ライズが戸惑いながら近づいてきたところで、素早くライズの下に頭を潜り込ませ、その体を持ち上げた。
「わぁっ!?」
そのまま、部屋の真ん中に置いた椅子に、後足を開く格好で座らせる。
この罰には、少し高さがあったほうがいい。
「ライズ様……!」
「ほら、心配されていますわよ、ライズ」
セルネーゼはライズの姿が二匹によく見えるように、自分の立ち位置を少し横にずらした。
「せ、セルネーゼさん……いったい何を……」
「決まっているでしょう。今日は貴方ではなく、彼女たちへのお仕置きをするのです」
まだ流れを掴めていないライズに前足を伸ばし、その腿の内側に、ぺたん、と肉球を押し付ける。
「ぁうっ……」
ライズの体に震えが走ったのが、前足を通して伝わってきた。
「わたくし、考えましたの。彼女たちに相応しい懲罰は何か――それはやはり、わたくしと同じ気持ちを味わっていただくこと……ライズが誰のものか、目の前ではっきりさせることですわ」
こうして近くにいるだけでも、ライズの体からは甘い香りの花のような、それでいて蠱惑的な、ニンフィア特有のフェロモンの匂いが漂ってくる。
それに、一昨日のお仕置きで、気がついてしまった。セルネーゼもすでに、その香りの虜になっている。
ライズがおもらしをしたとき、そのフェロモンの香りに、危うく我を忘れそうになった。あくまでこれはお仕置きなのだと言い聞かせ、ライズへの愛情が爆発して甘々の行為に走ることは抑えたが、今日も抑えられるかどうかはわからない。
いや、今日は抑える必要もないのかもしれない。
セルネーゼは上体を伸ばし、ライズの肩に前足を回して、軽いキスをした。
「ん……」
今すぐに舌を入れて、もっとディープなキスをしたい衝動に駆られたが、そこで一度止めてちらと背後を確認する。
ヤンレンはすでに顔を赤くしていて、ロッコは悔しげに俯いていた。
「セルネーゼさん……そんな……
軽く唇を重ねただけなのに、ライズの体からは力が抜けていた。口では二匹を気にしているが、早くも受け入れ態勢だ。
「これがロッコさんとヤンレンさんへのお仕置きなのですから、当然ですわ」
ここからはもう、敢えてライズの誘惑に身を任せる方がうまくいくかもしれない。
セルネーゼはもう一度、ライズにキスをした。今度は舌を入れて、ねっとりと絡め合う。
「んっ……ちゅっ……ふぅ……んん……」
「んぁっ、んっ……はぁっ……ん……!」
ライズの舌も、セルネーゼの動きについてくる。口の中から後頭部へ、それから首筋に突き抜けて、そこから快感がブワッと全身に広がっていく。
興奮して体の中は熱くなる一方で、体表は冷気を纏って、急激に温度が下がるのが自分でも感じられた。
「ひゃぅうっ……!」
ライズは口を離して、その寒さに全身をぶるると震わせた。
「ぷはぁ……ごめんなさい、ライズ……寒かったかしら……?」
息を整え、強すぎた冷気をコントロールして、体表の温度を上げる。
「うぅ……セルネーゼさん……」
だが、キスでふにゃふにゃになって、とろけた表情を見せるライズの姿に、心の昂ぶりを抑えることができなかった。
「ライズっ……!」
そのピンクと白の体を、ぎゅっと抱きしめる。
「ひゃあっ……つ、冷たいよぉ……うぅうっ……だ、だめぇ……」
ライズの体がまたしても震えた。同時に、少し大きくなってお腹に当たっているライズのものが、びくびくと動いているのがわかった。
「ふふ……ライズ……漏れそうなのですか……?」
あの日の夜と一昨日の懲罰で、ライズの反応がわかってきていた。今のはきっと、おしっこが漏れそうなのを、止めようとする動きだ。
「ゃ……そ、それはっ……」
「構いませんわよ? 今日は貴方へのお仕置きではないのです……我慢しない方が気持ち良いのではなくて?」
「で、でもこのままじゃ……セルネーゼさんに……ふぁあっ……!」
キスの快感とセルネーゼの冷気に当てられて、今にも漏れそうなおしっこを我慢しているライズの表情があまりに淫靡で、もう少しこのまま見ていたくなる。
「はぁ、はぁ……いつまで耐えられるかしら、ライズ……?」
興奮もそのままに、ライズの耳元で囁いた。自分の体温がまた下がったせいか、抱きしめたライズの温もりを、熱いくらいに感じる。
「は、うぅぅっ……」
また冷気に包まれて、いよいよ限界が近づいてきたのか、ライズは後足をぎゅっと閉じて、体をくねらせ始めた。
「おやおや。わたくしの体をそのように挟まれては、逃げられませんわ。悪い子ですわね」
「で、でもっ、もう……離したら……出ちゃうよっ……」
セルネーゼの手で愛撫やキスをされて漏らしてしまうライズも可愛いけれど、このまま物理的な刺激をせずに、言葉責めだけして観察しているのも、ゾクゾクする。
後ろを見ると、ロッコとヤンレンの視線はやはりライズに釘付けだった。ロッコはセルネーゼが確認したのに気がついて目を逸らしたが、ヤンレンは息も荒く、隠す気すらないようだ。
「ふふ……貴女たちは見るだけ……ライズに触れることはおろか、動くことさえできないのです」
「うぅ、ライズ様ぁ……」
「わたしは、べつに……なんとも思わないし……」
ヤンレンはわかりやすいし、ロッコは素直ではないが悶々としているのが伝わってくる。
やはり、この罰は効く。
そう確信して視線を戻すと、いよいよ切羽詰まった表情でライズは震えていた。
お腹に押し付けられたモノと一緒に、下腹部全体がビクビクと痙攣している。さっきからセルネーゼを挟んでいる後足にはぎゅっと力が込められて、必死で我慢しているのが伝わってくる。
「ぁ、ぁっ……!」
そうしていよいよ、ライズが切ない声を上げたとき、セルネーゼのお腹に、じわっ、と熱い液体が染み出したのを感じた。
「あぁ……ライズ、なんだかお腹が熱いですわよ……? 漏らしましたのね?」
「ぅうう……」
もう答える余裕もないのか、ライズは苦しそうに唸るばかりだ。
そしてついに、ライズの我慢の限界が訪れた。
「ネールちゃん……離れてぇっ……!」
ライズの後足から力が抜けて、セルネーゼの体が開放される。
「ふぁぁあぁっ……」
しかし同時にライズのものから、ものすごい勢いで透明な温水が吹き出した。
急に離れろと言われても無理な話で、セルネーゼは真正面から体で受け止めることとなった。
「ああっ……なんて、熱い……」
ライズのものが半勃ちになっているせいか、ぷしゅぅぅぅ、と音を立てて放出されるおしっこの勢いは凄まじく、水流が当たっているお腹は少し痛いくらいだった。
爆発的に広がったフェロモンの香りに頭をやられて、それすらも快感だと錯覚してしまいそうになる。
いや、それは良くない。
このわたくしに向かっておしっこをかけるなんて、罵倒してやらなければならない行為だ。
「ライズったら、本当に悪い子……! わたくしは……はぁ、はぁ……氷タイプですのよ? 融けてしまいますわ……!」
しかし、興奮そのままに口から出た言葉は、罵倒になっていたのかどうか怪しかった。
「んぅぅ……」
羞恥と快感が混ざりあった表情で頬を染めるライズは、こちらの反応をどう思っているのか。
少なくとも、セルネーゼはおしっこをかけられて悦ぶようなM気質ではないし、そう思われたくはない。このまま動かないわけにはいかない。
しかし、椅子に座らせたライズに体を伸ばして抱きついていたので、このまま後退して離れようとすれば、今度は顔に浴びてしまう。
ならば横に避けようかと思ったが、そうすると後ろで見ているロッコとヤンレンにかかってしまう。二匹のどちらかがライズに良からぬ快楽を教えたのだとしたら、二匹を悦ばせてしまう可能性が高い。
「仕方ありませんわね……」
このまま動かなければ、変な勘違いをされる。やむを得ず、セルネーゼは後退して、椅子から降りた。
「くっ……!」
胸から首、そして顔へと順におしっこがかかったが、この際、気にしていられない。
後ろにいる彼女たちは見るだけ、匂いを嗅ぐだけで、何もすることができない。そんな生殺しのお仕置きなのだ。少しでも悦ばせるわけにはいかない。
セルネーゼは目を閉じて、おしっこを顔に浴びせられるのも厭わず、ライズのものへ口を近づけていく。
飲んでしまうのが一番、被害が少ない。
「ネ……ネールちゃん……?」
未だ放尿を続けるライズのものを咥えようとしたが、目を閉じていてはなかなかうまくいかなかった。
「はっ、んっ……もう……!」
もどかしく、ぱくぱくと口を空振りする間に、おしっこの勢いが弱まってきた。
結果的に、おしっこの出てくるところへ自分から顔を近づけるだけになってしまい、これでは何をやっているのかわからない。
勢いも弱まってきて、もう終わりかと、目を開けたとき。
ライズと目が合った。
そして。
「ふぅ……っ、ぁあ……!」
「きゃぁっ!」
びしゅぅ、と鋭い水流に打たれて、危うく目に入りそうになった。
最後まで出し切るための放尿は何度か繰り返されて、ぴしゃっ、ぴしゃっ、と顔にかかる。結局最後まで目を開けられず、セルネーゼはされるがままだった。
「はぁ、はぁ……ご、ごめん、なさい……」
再び目を開けると、ライズは気まずそうに謝ったが、その前の、さっき目が合ったときのライズの表情が信じられなかった。
あれは、悦に入った微笑み――ライズは愉しんでいた。漏らす前は、セルネーゼにかかってしまわないように気づかう素振りを見せていたのに。最後は気づかいどころか、そこにセルネーゼの顔があるとわかっていながら、一滴残らず出してしまいたい、という欲望が見えた。
可愛くて純真で、わたくしにされるがままのライズが、あんな表情で、こんなことをするなんて。見間違いであってほしい。
「先生っ……! 私も! 私も混ぜてよぉ……!」
混乱の最中、背後からの声に我を取り戻した。
フェロモンの匂いに興奮して顔を紅潮させたヤンレンが、じたばたともがきながら訴えかけてくる。
「……何を馬鹿げたことを。ライスはわたくしただ
「うぅ……こんなのひどいよぉ……体が疼いて……なのに動けなくて……」
「酷いのはどちらですか。聞けば、貴女がたは二匹とも、ライズに婚約者がいると知って手を出したのでしょう。この程度の懲罰で済んでいることをありがたく思いなさい」
隣のロッコは無言だったが、離れていてもわかるほど、呼吸が早くなっている。これだけニンフィアの、ライズのフェロモンの匂いが立ち込めている中で、正気でいられるはずはないのだ。
一度でも体を重ねてその味を知っているのなら、なおさらのこと。
それにしても、全身の体毛からポタポタとライズのおしっこを滴らせたままでは示しがつかない。
しかし二匹にはライズの毛一本、体液の一滴まで触れさせたくないので、一昨日のように体をふるって吹き飛ばすこともできない。
「ライズ、少し寒いかもしれませんが、耐えなさい」
「ふぇ……?」
グレイシアには、その気になれば空気中の水分すらも一瞬で凍らせる能力がある。
セルネーゼは体温を下げ、体毛が吸ってしまったおしっこを一気に凍結させた。
「ひゃぁっ!?」
ライズが寒さに震えるのを尻目に、体毛を逆立て、全身についた氷をふるい落とす。凍ってしまったことでフェロモンの匂いが一気に薄れてしまったが、今回はやむなしだ。
「ふぅ……」
香りが薄れると、いくらか興奮も収まり、一つ深呼吸をした。
目の前には、ニンフィアの桃色の体毛よりも濃い、血の通ったピンク色をした肉棒が、すっかり首を起こして立派にそそり立っている。
それを自分の中へ入れたくてたまらない、体はそんな欲望を訴えかけてくるが、これまでの前戯ですら冷静さを失いつつあったのに、いざ本番行為に移れば、自我を保っていられる自信がない。
最大限の罰を与えるならば、ライズが本命の相手と繋がって、本物の愛の快感に喘ぐ姿を見せてやりたい。が、ライズを求めて善がる自分の姿は別だ。ライズ以外の相手には決して見られたくないものだ。
考えが浅かったと言わざるを得ない。常に自分が冷静でいられる前提で計画してしまったのは、明らかなミスだった。
「まったく、こんなに大きくして……そんなに気持ちが良かったのですか?」
こうなったら、自分の欲望は我慢するしかない。セルネーゼは前足でライズの後足をぐっと開いて、椅子の上へと首を伸ばした。ライズの下腹部周りはまだ濡れていて、顔を近づけるとまた、濃いフェロモンの香りが鼻腔を刺激して興奮を高めた。
舌を出して、ぺろり、とライズのものを根本から舐め上げる。
「ぁんっ……!」
「いい反応をするではありませんか」
続いて、おしっこと先走り液が混じってぬらりと鈍く光る先端部分を、かぷりと咥えた。
匂いは甘ったるいのに、舐めるとほんの少ししょっぱくて、口の中が変な心地だ。
舌を絡みつかせながら、ぢゅうぅ、と吸う動作を繰り返していくと、先端からじわじわと、少し粘性のある液体が染み出してきた。今度はしょっぱいよりも、ほんのりと苦みを感じる。
「ぁっ、あ、あっ……そ、そんなに吸っちゃ……ゃっ……!」
ライズは期待通りの反応で、セルネーゼを楽しませてくれる。肉棒は口の中でビクビクと痙攣するように動いていて、早くも絶頂を迎えそうだった。
「あっ、あ……ひああぁぁぁっ………!!」
ライズがひときわ大きな喘ぎ声を上げたのと同時に、甘くて苦くて熱い液体が、口の中に広がった。どくん、どくん、と脈打ちながら断続的に放出される精液を飲み込んでいく。
「んっ……ん、く……ぷはぁ……ずいぶんと早かったですわね……?」
「はぁ、はぁ……セルネーゼさんが……上手だから……」
「……本当ですか?」
本番行為に至らなかった分、せめて言葉でライズを責めたい。そんな欲求が湧いてきていた。
「わたくしが口でする前からはち切れそうなくらいでしたわよ」
「うぅ、それは……」
「お漏らしであんなにも感じてしまうのですね、ライズは」
「だ、だって……同じところから出るもん……」
「男の子の体の感覚はわたくしにはわかりませんが、その理屈であれば……ライズは、おしっこをするたびに感じて……」
「そんなことはないよっ」
「へぇ……でしたら」
セルネーゼは、体を伸ばしてずいっとライズに顔を近づけた。
「わたくしに見られて、興奮してしまったのですか?」
「そ……そんなの……答えなきゃダメ……?」
こうして羞恥に顔を赤くするライズを見ていると、ゾクゾクする。逆にライズが見られて喜んでいるのなら、互いの欲求が満たされてなお良いのだが。
けれど、ライズがしたことと、あの表情を思えば、きっとそれだけではない。
「それとも……わたくしが貴方のおしっこで濡れた姿を見て、ですか?」
「う……」
言えば怒られると思っているのか、それとも後ろの二匹に聞かれたくないのか、ライズは答えない。
「いいでしょう。ここからは彼女たちに聞かせる必要もありません」
後ろの二匹へと向き直る。
そして、ロッコとヤンレンへ送っていた氷の力を止めた。
「これで貴女がたを縛るのはただの氷です。時間が経てば融けますし、力で割ることもできるでしょう」
まずはロッコが、バキン、と音を立てて、力ずくで氷を割って椅子から立ち上がった。ヤンレンは水を操る力で熱湯を吐き出し、氷を融かす。
「貴女がた二匹への懲罰はここまでです。帰りなさい」
「……うぅ、ライズ様ぁ……」
ヤンレンは熱っぽい視線をライズから外すことなく、しぶしぶと教室から出ていった。
こうまで予想通りの反応だと、してやったりの笑みが溢れてしまう。
――二度と取り戻せないライズとの関係を夢想し、悶々としたまま日々を過ごすが良いですわ。
「……これだけでいいの?」
対するロッコは、あろうことか挑戦的な質問をしてきた。
「貴女が望むのであれば、懲罰を追加しますが?」
「罰はいくらでも受け入れるけど、そうじゃない。ライズのことで知りたいことがあるなら、わたしはなんでも答えるけど? あなたの知らないことも」
ロッコの言葉に、思わず渾身の吹雪を発生させるところだった。
泥棒
「余計なお世話とはこのことですわね。わたくしとライズの関係はこの先、永遠……貴女などに聞かずとも、わたくしがライズを知る時間はいくらでもありますわ」
「……そう。ライズが話してくれるといいけど」
ロッコはそう言い残して、教室を去っていった。
その背を見送りながら、セルネーゼは一つ深呼吸をして、怒りの感情をしまい込んだ。
振り返ると、椅子から降りたライズが、少し気まずそうな表情で佇んでいた。
あられもない格好で座らせたライズも官能的ではあったが、やはり立ち姿も美しく、愛らしい。
「では、質問の続きを。
「それは……」
セルネーゼはまだ身構えているライズの緊張を解こうと、甘い声のトーンに切り替えた。
「わたくしは優しいですからね、ライズ。貴方の喜ぶことをしてあげたいのです。正直に答えなさい? わたくしに見られて興奮したのか、それとも――」
ライズへの愛情は、何にも代えられない。
だから彼がどんな性癖を持っていようが、よほど自分が嫌なことでなければ、受け入れるつもりではある。
「……りょ……両方……かな……」
声色を変えたのが功を奏して、ライズはようやく答えた。
「よろしい。では……」
しかし、受け入れるからといって、何も言わないわけではない。
「……最後はわざとしましたね? わたくしの顔に向かって」
「残ってると気持ち悪くて……」
「ライズ? 正直に答えなさいと言いましたよ。漏らす直前は、離れろと叫びましたよね? でもあのときは、その忠告もありませんでしたわ」
「は、はい……」
ライズは一層顔を赤くして、ぎゅっと目をつぶった。
「セルネーゼさんの反応を見てたら……その……気持ちよくなっちゃって……! セルネーゼさんは……嫌がると思っていたのに……なんか……満更でもなさそうで……」
「そ、それは……!」
見透かされていたというのか。
「だから……ごめんなさい……! 全部、かけちゃいたいって……思って……」
屈辱的な行為であるはずなのに、頭がくらくらするほどの魅惑的な香りに情欲を刺激されたせいか、名状しがたい快感を覚えてしまっていた。
セルネーゼがそんな反応を見せたら、ライズがそう思ってしまうのも理解できなくはない。
「や、やっぱり……怒る、よね……?」
怒りたいのに、怒れない。あの日再会したときから、ずっとそうだ。
いや。ライズが気持ち良くなって、こちらも嫌ではないなら、怒る必要があるのか。いっそ認めてしまった方が良いのではないか。
「怒りませんわよ」
「えっ……」
「わたくしが嫌がっていたらやめるつもりだったのでしょう? 貴方の言う通り、わたくしも……ライズの……であれば……」
ライズに詰め寄っていたのに、何故か、自分が恥ずかしいことを口にする展開になってしまった。
「い、嫌では……ありませんから……」
言ってしまってから、慌てて付け加える。
「ですが! わたくしはおしっこをかけられて喜ぶマゾヒストではありませんことよ! ライズがあまりに官能的な香りをさせるからですわ!」
「そ、それは勘違いしないよ……。セルネーゼさん、攻めてるときの方が楽しそうだし」
思った以上に、ライズはセルネーゼのことをよく見ている。悔しいが、今ではその理由も納得できる。この年ですでに複数の相手と経験があったのだから。
「そうですわ。これからもリードするのはわたくしでしてよ」
だから口にしたのは、願望でしかなかったのだが。
「うん……!」
しかし、ライズは妙に嬉しそうだった。やっぱり、昔からセルネーゼに甘えたいのは変わらないのだ。
「では……今日のところは、もう時間ですから……」
「ま、待って、ネールちゃん」
帰寮を促そうとしたところで、ライズに止められた。しかも、愛称で呼ぶなんて。
「なんですか? わたくしの可愛いライズ?」
自然とこちらも甘い声になってしまう。
しかしライズはもじもじと体をくねらせながら、とんでもないおねだりをしてきた。
「あの……またおしっこしたくなっちゃって……ネールちゃんにかけていいっ?」
「なっ……!?」
さすがにこれは予想外で、セルネーゼは固まってしまった。
「嫌じゃないなら……」
ライズは頬を紅潮させて近づいてくる。その姿はあまりに婉麗だが、これからしようとしていることはかなりアブノーマルだ。
「い、嫌ではありませんが……先程したばかりではありませんの?」
「そうなんだけど……
「男の子の体って……不思議ですのね……」
納得して、受け入れそうになっている自分がいる。リードするとは何だったのか。振り回されっ放しだ。
でも、可愛いライズに振り回されるなら、それも悪くないか。なんて、思ってしまう。
――いえ。それはいけませんわ。
一方的に受け入れてライズの言いなりになって、自分の要求を通せなくなるのは本意ではない。
……自分の要求。
そうだ。ヤンレンとロッコに見られているから、諦めたのだ。
本当はライズと繋がりたくて仕方がなかった。
まだ、下半身が疼いている。
「でしたら……わたくしの
「えっ、ネールちゃんの……?」
口をついて出てしまった提案を、もう引っ込めることはできない。
「わ、わたくしの頼みは聞けないと言うのですか?」
「や、そんなことはないけど……」
お互いに引くに引けないところまできてから恥ずかしくなって、遠慮がちなやり取りをしてしまう。
しかし、もうゆっくりしている時間がない。職員室に戻るのがあまりに遅くなると、何をしていたのかと怪しまれてしまう。事が済んだら、清掃して証拠隠滅もしなければならないし。
セルネーゼは四肢を折り畳んで、伏せの姿勢になった。
「ほら……来なさい、ライズ……」
「……う、うん」
ライズが後ろから、背中に乗ってくる。温かくてふわふわな感触と少しの重みを感じたのもつかの間、弾力のあるモノが入口に触れた。
「はぁ……んっ……」
欲しかったものがやっと自分の中に入ってきて、思わず小さな声を上げた。
その喜びに浸っていると、ライズが耳元で囁く。
「ネールちゃん、やっぱり中はあったかい……ふぁ……」
そんな甘い声に癒やされる間もなく、ライズの体がぶるっと震えたかと思いきや、体の中に、熱いものが一気に流し込まれた。
「はうぅっ!? ぁっ、ああぁっ……!」
熱い奔流はお腹の奥まで到達して、水圧で中から広げられていく。思いのほか刺激が強くて、初めて味わう快感に、矯声を上げてしまう。
「ふあぁ……」
すぐ耳元で聞こえるはずの、恍惚としたライズの声も遠くなっていく。
「あああぁっ……! ラ……ライズっ……! ま、待っ……ゃぁああっ……!」
まるで自分の声とは思えないような声に自分で驚いた。しかし、全身を駆け抜ける激しすぎる快感は、それがすぐに気にならなくなるほどだった。
視界が真っ白になって、意識を失いそうになったところで、ライズの声に引き戻された。
「――ルちゃん、ネールちゃん……!」
「……はっ……ライズ……?」
気がつけば、ライズはセルネーゼの背中から降りていて、すぐ目の前にいた。
「だ、大丈夫……? 気絶してたみたいだけど……」
「気絶……ですって……?」
ふと自分の体を認識すると、伏せの姿勢だったはずが、床に横たわっていた。お尻と後足はびっしょりと濡れて、その周りには水たまりもできている。
すでにお腹の中が張った感覚もない。外へ流れ出してしまったのか。
そこで理解した。意識を失いそうになったのではなく、失っていたのだ。
「わたくしとしたことが……こんな……」
セルネーゼはよろよろと立ち上がった。
が、思うように足に力が入らず、バランスを崩して倒れそうになったところをライズに支えられた。
「大丈夫です。ひとりで立つくらいできますわ!」
まさか自分が失神してしまうとは夢にも思わなかった。それでライズに気遣われていることが恥ずかしくて、つい強い口調になってしまう。
「……今度こそ、これで帰りなさい。寮の門限もあるでしょう」
「でも、ネールちゃん……ほんとに大丈夫……?」
「わたくしの心配はいいのです! とにかく、また明日です! 明日も会えるのですから、もういいでしょう!」
「え、ええっ……?」
ライズは戸惑った様子を見せたが、しばらくの後、こくりと頷いた。
「わ、わかったよ……また明日……」
教室を去るライズの背を見送ったあと、セルネーゼはひとつ大きなため息をついた。
すぐにライズを帰らせたのは、気持ちの整理をする時間がほしかったからだ。自分から始めたお仕置きではあったが、あまりにも色々ありすぎた。
とにかく、それは一度考えの外に置いて、無心で教室の後始末をした。
清掃が終わって職員室に戻る頃にはすっかり日も落ちて、教師はほとんど残っていなかった。
誰かに話しかけられる前にと、セルネーゼは荷物を素早くまとめて退勤した。
自分の部屋に帰宅した瞬間、今日の出来事が一気にフラッシュバックした。
「あああ……! 何故わたくしはライズにあんなことをお願いしたのかしら……!!」
セルネーゼはガンガンとベッドに頭突きを繰り返した。
流れのままとはいえ、自分の中でおしっこをさせて、その上、快感のあまりに失神するなんて。
これでは完全に変態ではないか。いったいライズにどう思われているのか。
こんなはずではなかった。
わたくしの手でライズを可愛がって、快感に身を悶えさせるライズをもっと見たい。
わたくしの愛撫で我慢できずにおもらししてしまうライズも愛らしいし、その様子をわたくしに見られてライズが恥ずかしがるのも最高だ。
けれど、セルネーゼにおしっこをかけて喜ぶライズの姿はあまり見たくなかった。
それでもライズが気持ち良くなってくれるなら、と思っての行動が、あんな提案に繋がってしまったのだ。
しかしライズのフェロモンの香りに魅了されて、興奮させられてしまったのも事実。全く求めていなかったかといえば嘘になる。
失神するほどの快感も、悪いものではなかった。
が、セルネーゼが本当に望むことは、ただ自身の肉体的快楽に埋没することではないのだ。
再会したあの夜のように、愛に溢れた営みをもう一度。
いや。それも、本当の、心の奥底にある望みではない。
そう、本当は――
「わたくしは、ライズを……」
ライズのためなら、全てを受け入れたい気持ちもある。自分の雌の体が望む欲望も、確かに存在する。本能が感じる魅惑の香りにも、興奮してしまう。
けれど、セルネーゼが望むのは、精神的な快楽。逆に、ライズを快楽で支配して、ライズを自分のものにしたい。
もしもそこに、肉体の縛りがなかったとしたら。
「ライズを……抱きたい……?」
口にすると、妙な納得感と心地よさがあった。もし、その瞬間だけ、体を入れ替えることができたなら。きっと、これほど心が満たされることはないだろう。
「……ふふ。無理な相談ですわね。わたくしは女で、ライズは男の子ですのに」
セルネーゼはベッドに寝転がって、天井を見つめながら独りごちた。
べつに自分の性別に違和感があるわけではないし、これまで好意を抱いた相手も、二匹だけとはいえ両方男の子だ。
だから、こんな望みが自分の中にあるなんて気がつかなかった。
でも、思えばライズもシオンも、それぞれ別のところで、どこか男の子らしさが欠けているという共通点がある。もし自分がそこに惹かれているのだとしたら。
「はぁ。さすがに言えませんわ……」
自分の中で合点はいったが、それをライズに話すとなれば別だ。
考えてみれば、まだライズとの関係は始まったばかりなのだ。今日のアレはちょっとアレだったので除外するとして、ライズと一つになったのも、再会の日の一度だけ。
それなのに今日はとんでもないことを提案して、失神までしてしまった。これ以上、普通ではないことを要求したら今度こそ引かれてしまうかもしれない。
それに、婚約者ではあっても、表向きは教師と学生。
連日、懲罰と称して性的な行為を繰り返すのはさすがに危険だ。
しばらくは先生と生徒以上の関係を持つことは控えておくほうがいいだろう。
少しずつ冷静になって、そんなことを考えるうち、どっと疲れが出て、セルネーゼはそのまま眠りに落ちてしまった。
To be continued...
ハッピーエンドには向かわせたいです。
なんでも感想お待ちしております!
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