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軋む逆鱗に触れる夜 の履歴(No.1)


この作品は成人向け描写、BL要素を含みます。

軋む逆鱗に触れる夜


 椅子が軋む音、机に乱暴に腕を乗せる音。いまだ夜が明けぬ気配を見せぬ長夜の中、少し老朽化した部屋の中心に座っているポケモンが、うるさく音を立てていた。
「……潮時、か」
 腕と机に挟まれた隙間から小さく見える、新聞の端っこに書かれた見出し。それを見て、そのポケモン、ガブリアスはボソリと呟いた。別に、ガブリアスは新聞を毎日読むほどに活字に飢えてもおらず、ただ惰性で新聞を取り続けており、部屋の隅にはシワひとつないピンとした新聞紙が大量に積まれている。だが、この新聞だけは今日の日付が書かれているのにも関わらずシワシワになっていた。はぁ、とため息をついて席を立ち、グルグルと机の周りを歩き、また席について新聞を読み直す。内容は、変わらぬと言うのに。そうやって時間を浪費しても、朝だと囀る鳥ポケモンたちはまだまだ目覚めなかった。
「おい、ガブリアスのおっさん」
 そんな静寂の中、ゴォン、と金属製のドアが乱雑に開かれた音が鳴り、露骨にガブリアスは不愉快そうな顔をする。うるさくするなとか、もっと丁寧に開けろとか、言いたいことはたくさんあるはずなのに、そんなことよりもその相手の口ぶりがガブリアスには鼻についていた。
「誰がおっさんだ、ガキ」
 そうガブリアスが乱暴に言い放った相手は、灰色ベースの鱗に黄色の鎧のような大鱗が彩られた、同居しているポケモンのジャラランガだった。ふんわりとしたシャンプーの香りが漂っているが、それでも隠しきれない複数匹分の雄の匂いが微かに匂っていた。それもそのはず、ジャラランガは男娼であり、毎晩見知らぬ雄に身体を捧げていたのだ。今日も朝帰りなのは、そういった事情があってのことだ。
「おっさんはおっさんだろ。オレより十も歳上のくせに」
 追撃するようにそう言うジャラランガ。なんだかんだでガブリアスとジャラランガは長い付き合いな上、元々から強気な性格だったジャラランガにはガブリアスの荒れた態度程度では怯むはずもなかった。ガブリアスは否定することを諦めて、目を細めて要件を問う。
「はぁ……。で、用件はなんだ、クソガキ」
「いやぁ、最近調子悪いみたいじゃん? しけたこと考えてるだろうから、このオレがわざわざ励ましの言葉を準備してきたわけ。感謝してくれよな」
 臆することなく、さらにおちょくるようにわざと声のトーンを上げてそう話し始めるジャラランガ。わざわざ逆鱗に触れるように、嬉々として話してる様は恐れ知らずと言うだけでは足りない。黙って俯いているガブリアスを横目に、ジャラランガは気分良さげに話していた。
「で、実際どうなのさ、『元』チャンプ?」
 ニタリ、とわざと『元』と強調して言い、顔を歪める確信犯。その様子に、ガブリアスはとうとう堪忍袋の緒が切れた。ドガッと腕に組みつき引っ張ってソファに向けてジャラランガをこかし、僅かに怯んだ隙に馬乗りするように乗り上げる。そんな状況でも、ジャラランガはへ、と声に出しながら、トーンを変えずにガブリアスに問いかける。
「どうしたんだ、久しぶりにオレで性処理するつもりになったか?」
「あぁ、そうだ。それがお前の望みだったろ、大人しく俺に使われてろ」
 細目になりながら、ガブリアスは凄みをきかせるように睨みつける。最近はご無沙汰だったこともあるが、コイツを黙らせたいと言う思いが強かった。故に、怒りが滲み出ており、今から情事にいそしみたいとは全く見えない《こわいかお》をしている。だが、ジャラランガは毅然とした態度で、逆に顔を近づけてこう言った。
「嫌だね。いくらおっさんでも今のオレの身体をタダで売るわけねぇだろ。条件さえのんでくれりゃ話は別だけどな」
「……はっ、口ばっかりは達者だな。で、何が欲しいんだ。言うだけ言ってみろよ、気分次第でやってやんよ」
 あいも変わらず生意気な口ぶりのジャラランガ。だが、ガブリアスはどこか違和感を覚える。いつもならどんな口調で頼もうが意外とすんなり了承するし、嫌な時は気分が乗らない、金払えと一蹴するものだが、そこまでして何かが必要なのだろうか。そう考えていると、彼は真剣な顔を浮かべて、ジャラランガは近くの新聞を手に取って、とある見出しを指差してこう言った。
「引退、すんなよ。何ちょっと衰え感じただけでへこたれてんだよ、らしくねぇ」
 それは、先ほどまでガブリアスが読んでいた、昨日の試合結果の記事だった。小さく、隅っこに書かれたその記事は、ガブリアスが一度も勝てずに大会に敗れたことが書かれている。そのジャラランガの行動は、ただバカにしているわけではない、とガブリアスも表情から分かっている。だが、それでも見たくない事実を突きつけられ、まるで自分の考えを見通されたかのように言い当てられたガブリアスは、ワナワナと震え始めた。
「……ガキのくせに分かったような口きいてんじゃねぇよ」
「あん?なんだ、ボソボソと言われたら聞こえねぇよ」
 そうジャラランガが言った時。彼の首の横にドスン、と爪を刺す。あわや首筋が切れるんじゃないか、と言うようなその攻撃に、ジャラランガはヒュー、と言ってわざとらしく驚いて見せた。そんな彼が更に気に入らず、舌打ちをしながら自分のスリットを爪で乱雑にこじ開け、中のモノを無理やり外へと掻き出した。
「テメェをブチ犯す。拒否権もねぇからな」
「ハハ、おっさんのくせに細客なんだな。たった一つ条件を飲めばいいだけだぜ」
 余裕なくブチギレて襲いかかるガブリアスを見てもなお、ジャラランガは冗談を言いながら笑う。なおも煽る余裕があるのは胆力があるというべきかなんなのか。とにかく、まだまだ火に油を注ぐつもりであるようだった。
「いいから黙って舐めろよ、俺の性玩具がよ。テメェに技仕込んだのは誰だか、わかってんだろ」
「へーへー」
 どんどん不機嫌さを前面に押し出しながら、ジャラランガの顔に股座をガブリアスは押しつける。ジャラランガは仕方なしという口ぶりでガブリアスのモノに顔を近づける。すると、先ほどまでのジャラランガから一転して、妖艶な雰囲気を溢れさせる。
「さてじゃあ……ご奉仕致しますよ、ご主人」
「……っ!? くうっ、おわっ……!?」
 わざとらしく下手に出る口ぶりだけを見せると、ジャラランガの唇がちんぽの先端に触れたかと思うと、キスをするようにチューッと吸い上げて先端に刺激を与える。その刺激に驚いていると、すかさず裏筋をレロォと舐められ、ガブリアスは背筋がゾクゾクした感触を覚えさせられる。
「な、お前、がっつきすぎ……!? ふうっ……!?」
「おっと、おっさんには刺激が強すぎたか?ま、誰かさんの教育の賜物でオレのフェラはどんなオスも五分あれば腰砕けにしちまうからな」
 目を白黒とさせながら、熱い吐息が漏れ出すガブリアス。客にはこんな本気ださねぇけどな、と付け加えながら、ジャラランガは大きい動きでちんぽを舐めながら得意げな顔をする。それがどれだけ気持ちいいかは、硬くなっていくガブリアスのちんぽが雄弁に語っていた。
「どうする? このまましゃぶらせて口の中に出したいか?それとも……」
「くっ……! 言うまでもないだろ。ケツ出せよ!」
「もちろん。久々にアンタのちんぽをオレにくれよ」
 焦った様子でそう命令するも、ジャラランガは笑みを浮かべて、尻を広げガブリアスを煽るようにポーズを取る。その煽りに、今のガブリアスは耐えられるはずもなく、ガバリと身体を重ねた。
「命令するんじゃねぇ性玩具が、よ!!」
 慣らしもせずに、ジャラランガの雄穴にズポッと突き入れるガブリアス。ガブリアスのモノは平均と比べて少し大きめのサイズ。なのに慣らすこと無しに挿入れるなんて、中が切れてしまったっておかしくない。しかし、何の苦痛もなしにジャラランガは受け入れる。それだけでなく、静かにキュッとお尻を締めて反撃するジャラランガ。その刺激に声を漏らすと、フッと笑ってジャラランガはガブリアスを見やる。
「どうした? ただ穴に棒が入っただけで俺が動じると思ってんのか?」
「うるせぇな……! テメェはオレのちんぽで喘いでたらいいんだよ!」
 そう罵りながら、ジャラランガを押さえる力を強めながら、バシバシと強い音を立てて乱暴に犯す。まるでそれは、レイプのような光景であった。それでも変わらず余裕を見せるように笑みを浮かべるジャラランガは異彩を放っていた。くそっ、どうして。自分が愉しめればいい、気が紛れればいいと考えて始めた性行為なのに、全く動じることのないジャラランガに強い不快感を覚えさせられる。まるで、最近のバトルで負けている時のような手応えのなさ。それに似た感覚に、ガブリアスは苛立っていた。昔なら、こうやってしていれば勝手に喘ぎちらすような奴だったはずなのに。どうしてこんなに、思い通りにならない……! そう思った瞬間だった。
「なぁ、ガブリアス。いつになったらオレを見るんだよ」
 ジャラランガから、静かに声をかけられる。聞きたくない、と初めはシカトしていたが、余裕綽々とした態度を崩していなかったジャラランガが、少し低い声でもう一度こう言った。
「オレをイかせたいんだろ? だったら、いつになったら『相手』を見るんだっつってんの」
 そう言われて、ハッとしてジャラランガを見る。ジャラランガは確かに揶揄うような表情を浮かべていたような気がしていた。だが、いつの間にかこちらを心配しているかのような表情に変わっているように見える。一体、いつから、そんな顔をしていたんだ? しかし、ジャラランガの顔から目を背けていたガブリアスには、どんな顔をしていたか思い出すことは叶わない。
「ダセェんだよ、ずっと負けばっか気にして。そんな奴にオレがイカされると思うか?」
 怒りからか、それとも悲しみからか。強い語気でガブリアスに問いかける。確かに昔はジャラランガはいつも何をしても自分の下で気分良く啼いてくれていた。それは、まだ経験が少なかったから、新鮮な刺激でシンプルに楽しめていたのだろう。だが、今はどうだ? もうジャラランガは立派な大人になった。多くの経験を積んで、成長していたのだ。ジャラランガは大きく変わっていたのに、こうだと決めつけて見ようともしなかった。ジャラランガが愉しめてないことにも、その理由にも。じっとガブリアスがジャラランガの顔を、目を見つめ直した時、彼は漸く朗らかな笑みを浮かべた。
「へへ、やっとアンタと見つめあえた」
 心底嬉しそうな声。久しぶりに聴いたような気がするその声を聴くと、ガブリアスも自然と笑みが溢れた。そして、ふぅと息をついて、今度はゆっくりと腰を動かし始める。じっくり、ジャラランガの中の様子を伺うような攻め。ちんぽに、肉壁が絡みつく感覚がはっきり分かる。自分は、コイツに求められていると、今更理解する。
「うっ、くっ……へっ、悪くねぇじゃん」
 コツン、ととある部分をノックすると、ジャラランガの笑みが一瞬快楽に崩れる。そう言えば、コイツはここを突くといい顔をするんだった。昔は一回突くだけで舌をだらしなく垂らして、高い声でよがっていたが、今回は平静を保つことができている。だが、一度漏れた熱い吐息から、気持ちいいということは変わらぬようだった。
「強がりやがって、啼かしてやっから、なっ!!」
 イタズラじみた顔を浮かべながら、ガブリアスは腰を大きく、同時に精細な動きで攻め立てる。それにジャラランガは熱い息を漏らしながらも、愉快そうに笑みを浮かべる。
「オレを啼かせるなんて、強く出たなぁアンタ!でもアンタはそうじゃなくっちゃ!」
 ジャラランガは強がる様子を見せてはいるが、今なら、よく見える。ジャラランガの顔、身体、ちんぽの様子をしっかりと見ているから、この交尾を楽しんでくれていることが分かる。何より、ジャラランガがこんなに熱っぽい視線で自分のことを見てくれていたことに気づき、ガブリアスは高揚感が止められずにいた。
「ふぅっ、んおぉっ……」
「はぁっ、はぁっ……! 気持ち、いいだろ……!」
「……あぁ、認めてやるよ! だがまだまだだ、もっとくれよ!!」
「言われなくてもっ!! おらぁっ!!」
 彼は気持ちよくない交尾を不満に思っていたのではない。いつまでも腐ってばかりで、自分のことしか見えてないガブリアスが気に入らなかったのだ。そういう奴だったな、とガブリアスはジャラランガを見て口角が上がる。
「んっ、くっ、いいっ、いいぜっ、ガブリアスっ!! もっと、もっとアンタをくれっ!!」
 眼をトロンとさせながら、大きな声でガブリアスにねだるジャラランガ。その言葉通り、彼の中はガブリアスのちんぽを歓迎し、逃さないと言わんばかりにギュウギュウと締め付ける。そしてそれは、ガブリアスに極上の快楽を与えた。
「あぁっ、くそっ、イク、イっちまう……!」
 しかし、それがガブリアスに限界を迎えさせた。ちんぽが怒張し、ジャラランガの中で大きく張り詰める。イクなら、ジャラと一緒に……!だが、もう身体は放出の準備を整えてしまい。カクカクと腰を動かし、そして決壊してしまった。
「すまん、限界だっ……! グオオオオオォッ!!」
「くあっ、くっ、んっ……」
 せめて少しでも気持ちよくしてやりたいと、腰をグイッと突き出して最奥をぐりぐりとさせながら、ガブリアスは雄叫びを上げて果てた。ジャラランガも目をつぶって注がれるガブリアスの精を堪能する。ドクン、ドクンという音が二匹の間で大きく鳴り響き、充足感が彼らを満たす。しばらくの間、うっとりとした表情をお互い浮かべていた。
「はぁ、はぁ……くそっ」
 だが、ガブリアスは快楽の余韻が抜けると、悔しさを顔に溢れさせる。コイツをイかせられず、果ててしまった。久しぶりに集中できた感覚があったが、結果がついてこないのは負け続きの現状と被ってしまい、ガブリアスは自分自身への怒りを隠せなかった。
「……なんだよ、もう終わるのか?」
 そんな時にまたジャラランガは挑発を仕掛ける。……してる時は可愛げがあるのに、やっぱ普段はムカつく野郎だな。そうガブリアスはハァとため息をついて、目を細める。
「んだよ、もう勃たねぇよ」
 ガブリアスはジャラランガの上でグッタリとしながらそう言うと、ジャラランガはチッチッチッと舌を鳴らして、そのままガブリアスの口に軽くキスをする。
「ほら。口あんのに、オレをイかせんの諦めんのか?」
 優しい声で、ジャラランガは下から見上げながらガブリアスに問いかける。挑発的な口ぶりながらもジャラランガらしいねだり方に、ガブリアスはフッと笑う。
「……けっ、そこまでご所望ならやってやんよ」
 不機嫌そうな口ぶりで言いつつも、すぐさま身体を下の方へずらし、目の前にジャラランガのちんぽを見据える。片手でその根元を優しく握り、迷いなくパクと咥えた。
「お、やべ……! すっげ、アンタの口の中っ……!」
 唾液を舌の上に乗せるようにし、ジュル、ジュルルと音を立ててちんぽに奉仕をすると、ジャラランガは身体を震えさせて悦ぶ。しかし、早くもしょっぱい味がするな、と顔全体を動かしていると。
「イク、イクぜ……っ! うおおっ、ぐうっ!!」
「んむっ!? けほっ、げほっ!」
 なんと、僅か数ストロークでジャラランガはイってしまう。唐突な射精に反応することができず、思わずむせてガブリアスは口からちんぽを放してしまう。そのまま射精はしばらく続き、ガブリアスの顔にポタポタとかけられた。
「なんだよ、すぐイキやがって……」
 顔にかかった精液を舐め取りながら興醒めだ、という風に言うと、息を整えてから仕方ねぇじゃん、と言うようにジャラランガは首を横に振った。
「そりゃあアンタとのセックスが良かったからに決まってんだろ。アンタ、思ってるほど『身体』は鈍ってねぇぜ」
 そう、鍛え抜かれた本職から言われるシンプルな言葉。ガブリアスは狐に摘まれた顔をしてしまうが、それがスッと胸を軽くした。ガブリアスは照れ臭く笑いながらジャラランガに向き直った。
「……ケッ、素直じゃねぇな、テメェは」
「誰かさんがそう育てたんだろ? 悪いのはソイツだよ、ソイツ」
「元からだろ、責任転嫁するんじゃねぇ」
 ガブリアスの指摘をからかいながら笑うジャラランガ。いつも通り喧嘩腰に言い合いながらも、ガブリアスはつられて笑う。長い長い夜が明け、朝日が二匹の笑顔を照らす。冬の気候の中でも、ちゅん、ちゅんと小さく鳥ポケモンの声が聞こえ始めた。

 ****

 あれから、何ヶ月かたった後。ジャラランガの顔に朝焼けが差し込み、迷惑そうな顔をしてゆっくりと目を覚ます。いつもより早い時間に目覚めてしまった、と大きな欠伸をしながらも、ノソノソと起き上がる。折角朝早く起きたのだからとさっさと二匹分の朝ご飯を作り始めようとして、まだガブリアスが帰ってきていないことに気づく。そう言えば、明日帰ってくるんだったな。となると、アレは今日だったか。何かを思い出したジャラランガはテレビをつける。そこにはテレビ中継で映る、ガブリアスの姿があった。
『ガブリアス選手、追いつきました! ピンチに陥っても立ち上がる、あの漢がついに復活か!? 泣いても笑っても最後の一本、一秒たりとも眼を離せません!!』
 そう、今日はガブリアスが参加していた遠くの地方のバトル大会の決勝戦。この勝負の行方を決めるセットを前にして、ガブリアスは相手をジッと見つめながら、にぃっと笑う姿がテレビに大きく映し出されていた。あれから、ガブリアスは予定していた引退を取りやめ、トレーニングにより励むようになっていた。参加数を減らしていた大会にも積極的に出るようになり、そして毎度安定してベスト8に入る強豪選手に返り咲き。メキメキと最盛期に戻る、いや今こそ最盛期だと言わんばかりの盛り返しを見せていた。
 そのせいでどんな時よりも彼が家にいる時間は減ってしまったが、ジャラランガにはそんなことよりも、テレビで映る彼を、ピンチになればなるほど不敵な笑みを浮かべる彼を、無くしたくはなかった。なぜなら、その時ほどガブリアスが楽しそうにしていて、カッコいい瞬間は無いから。
『ガブリアス、ダメ押しの《スケイルショット》が決まり、優勝ーっ!! ファンが待ち望んでいた、悲願の復活だーっ!!』
「ふん、当然だろ。このオレの義父さん(・・・・)なんだからな」
 そのアナウンスを聞くや否や、乱暴にテレビの電源を消して、ジャラランガはもう一眠りとソファで横になる。カラカラと尻尾の鱗が揺れる音が、小気味よく部屋の中で反響していた。

書:烙雷

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