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温泉リフレッシュ! の履歴(No.1)


温泉リフレッシュ! [#5X30Pgu]


【Ⅰ】

 四月十三日、塾の一室。
「よしいいか、今日の内容をまとめるぞ? 農業には、暖かいところと寒いところで、それぞれ特色があるんだな! いくつか聞くから、思い出してくれよ!」
 授業終盤、俺はチョークを片手に、板書に大きくマルをつける。ただいま仕事先、塾の一室。中学校セカンドクラスを担当中。今日の単元は社会の地理「農業その1」だ。中学校では試験の単元として頻出なものだから、俄然授業にも力が入る。俺の授業は一方通行で語りまくる部分もあるが、まとめの部分では生徒にバシバシ聞いていく。ずっと聞いているだけじゃあ、頭がぼーっとして覚えられる量も減ってしまうからな。
「じゃあ聞くぜ! 暖かいところでは、ビニールハウスなんかも利用して、野菜を早く作る農業があったな。これを何て言ったっけ、ゼット!」
「促成栽培!」
「よし正解! 逆にキャベツやはくさいなんかは、涼しいところで作られるんだな。こっちは抑制栽培なんて言われることもあるけど、俺はこっちの言葉でやったよな! スノウ!」
「高冷地農業!」
「その通り! スノウ、答える早さが上がってきたな! 最後に、気候と関係なく、大都市の近くで大都市向けに作るって農業があったはずだ! これを……よし、行けるか、リル!」
「近郊農業です!」
「素晴らしい、よく聞いてた! あとは近郊農業のいい点を教えてくれ! カイル!」
「ええっと、大都市の近くで作るから、新鮮な野菜を早く届けられて、運賃も安いから値段も抑えられるところ!」
「おっけい、いいだろう! そしたら、今日の授業は終了だ! 次回は農業の抱える課題についてやるからな、是非、これからも一緒に頑張っていこう! それじゃあエナ、終了の号令かけてくれ!」
「きをつけーっ!」
「れーっ!」
「ありがとうございましたーっ!」
「おう、こちらこそありがとうございましたーっ!!」
 ――授業、終了。勢いよく頭を下げると、黒板横の棚の上から、水色の塊が飛び降りてきた。授業中は行儀よく「おすわり」の体勢を取っていた、俺の相棒・グレイシアのクレアだ。生徒たちのマスコットでもあるし、授業中は居眠りした生徒に冷たい息をぶっかけて叩き起こしてくれるのだ。セクハラだなんだとうるさい時代だが、クレアは♀なので問題ない。もっとも、俺の授業で寝るなんて奴は早々いないが。
「先生のグレイシア、今日も可愛いー!」
「っぱあ?」
「セツ先生、今日の授業で分からないところがあるんですけど……」
「あ、私も教えてほしいところが……」
「おう、ちょっと待ってろ、すぐ行くからな。……リル、どうだった、今日の授業は?」
 男子生徒・ゼットと、女子生徒・スノウからの質問にステイをかけ、俺は一人の女子生徒のところへと向かう。今日が初めての授業である、リルという女の子だ。わけあって今日からが体験入塾となっていて、今週一週間の授業を踏まえて、正式に入塾するかどうかを決める手はずだ。この子の体験入塾までには、俺も一枚噛んでいるため、どうしても気にかけざるを得ない。リルは俺の問いかけに対し、笑顔を浮かべて答えてくれた。
「はい、とても楽しかったです。セツ先生の社会は面白かったですし、ジェット先生の理科も分かりやすかったです!」
「それはよかった! 何か分からないことがあったら、なんでも聞いてくれ。エナ、リルはまだ慣れていないと思うけど、いろいろ頼むな」
「はいはーい」
「よし、そしたらゼット、スノウ、お待たせ。ええっと、一体どこをやればいいんだ?」
 リルというこの生徒は、エナという生徒と仲良しらしい。教師に対するものとはビミョーに思えない返事をしたエナに苦笑し、俺はゼットとスノウの質問対応をするのであった。


「……というわけだ、分かったか?」
「はい!」
「ありがとうございます!」
「いやいや、どうってことないよ。また何かあったら、いつでも質問に来るんだぞ」
「はーい!」
 元気な返事をして、質問に残った生徒二人が帰り支度をする。それを見て、俺の隣にやってきたクレアに、ゼットがかがんで声をかけた。
「今日もクレアは可愛いなあ。俺もイーブイを捕まえて、グレイシアにしようかな?」
「っぱあ」
「ははは、進化はポケモンの意思に任せるべきだよ。俺からすりゃあ、ゼットのビブラーバもなかなかイケメンだと思うぜ」
「先生、私のブースターは?」
「ああ、かっこいいし可愛いよな」
 やいのやいのとやりあいながら、生徒の帰り支度は完了。玄関先で「さよーならー」と見送って、今日の仕事は一丁上がり。黒板を消して清掃して、俺は塾長のところへと向かう。
「塾長、生徒全員帰りました」
「ああ、セツ君。今日もありがとうな」
「いえいえ。リルさんの調子はどうですか?」
「なかなか良好だぞ。セツ君の紹介してくれた生徒だから、悪い子ではないと思っていたが、礼儀正しいし、ジェット君の理科も気に入ったようだ。君たち二人が授業に入ってくれたから、きっと入塾してくれ、学力を伸ばしてくれるだろう」
「それはよかった。明後日は塾長の数学ですよね」
「おう、任せておけ」
 数学は塾長の十八番で、俺も後ろから授業を見学した時には「すげえ」と感動したものだ。この塾長、授業はできるしスポーツもできるし、なかなかハイスペックな人である。
 ……顔だけフツーだけど。いや、俺が言えるセリフじゃないけど。
 ともすれ、俺はこの塾長が経営している学習塾で、大学で学業に勤しむ傍ら、社会の講師をやっている。アルバイトといえばアルバイトなのだが、未来溢れる生徒たちの将来に、多少なりとも手助けをして関わっていく仕事である。生徒たちの人生にも影響していく以上、アルバイトという簡単な言葉で片づけたくはなかった。ちなみに、今日のセカンドクラスの授業科目は理科と社会。一方の理科をやってくれたジェット先生は、俺と同じ大学生で。俺とは逆に「いや、所詮バイトだし」とか裏では言いまくっているのだが「バイトだろうがなんだろうが先生であることには変わりねえ」と、授業の準備は超真面目にやるという、やる気があんのかないのかよく分からない男である。そしてビミョーにムカつくのが、結構なイケメンで彼女持ち。ついでに言うと、女子生徒の数名が彼目当てだとか。ちくしょう羨ましい。中学生にモテてる方じゃなくて、彼女持ちな方にだが。
「じゃあ塾長、今日はこれで」
「失礼します」
「ああ、二人ともありがとうな」
 帰り支度をして、俺はクレアと共に帰路に就くことになるのだった。
「ジェット、メシ食ってかねえ? 裏のラーメン・アライブとか」
「おっ、いいねえ」
 んでもって、そんなジェットと俺は結構仲がいいんだなコレが。


「きったくー」
「っぱあー」
 晩飯を食って鍵を開け、俺は六畳一間の自分の部屋へと帰ってくる。大学生の一人暮らし、グレイシアもいるので一人と一匹暮らし。一応基本はモンスターボールに入っているけど、ヌマクローのジェフリーもいるので一人と二匹暮らしである。服を脱ぎ、風呂に飛び込み、クレアとジェフリーはこおりタイプ&みずタイプなので水風呂に突っ込み、今日はこれで完全オフ。
「ああぁぁあ、くっそ疲れたぁ……」
 どたーん、とベッドに倒れ込んで、うあぁああー、という謎の呻き声。やっぱり週末までガンガン大学+仕事を入れるとなかなかきつい。特にこの一週間は、通常仕事を入れている日はもちろん、休みの日までも、風邪で倒れた別の講師のピンチヒッターとして急な出勤二連発が入り、ノンストップで仕事をしていたのだ。明日・明後日の二連休がマジで嬉しい。
「あー、明日どうしようかなぁ。家で寝腐ってようかなぁ……」
「っぱー……」
 後ろ向きな検討をしている俺に、クレアが一鳴き、しかもジト目。んなこと言ったって仕方ねえだろ、ここ一週間の忙しさはお前だって知っているだろうが。そりゃ、お前たちをどこかに連れて行ってやらなきゃなあとは思っちゃいるけど……
「……ん?」
 と、そんなことを考えていた俺の脳裏をよぎったのは、数日前の光景だった。今日担当した生徒・リルと知り合った、一連の騒動。あそこで俺は、三十万ものお金をいただいてしまったわけで……
「まあ、世の中何が起こるか分からないから、基本は貯金しようと思うが……全額貯金しておくのもつまらんしな……」
 明日・明後日は丸二日休み。しかも特に予定はなし。この三十万のお金は、クレアが頑張ってくれたからこそというところもあるわけだし……
「…………」
 パソコンを起動し、近場の情報をポチポチ検索。お、近くの山に温泉あるの?
「まあ、家でだらだらしてても仕方がないし、温泉にでも行こうかねえ」
「っぱあ!」
「え?」
「ぱあ、ぱあ!!」
「わ、分かったよ! いっちょリフレッシュしてくるか!!」
 目を輝かせて何やらぱあぱあ訴えるクレアのミョーな迫力に、若干怯みながら承諾する。てか、温泉って、こおりタイプのクレアが行って楽しいもんなの? 疑問に思って調べてみたら、湧き出た水の温度が二十五度を上回っていれば温泉らしい。へー。
「とはいえ、午前中は遅くまで寝腐るからな。出発は昼にするぞ」
「っぱー……」
 駄目です。譲れません。

【Ⅱ】

 そして、翌日。
 朝十時まで爆睡し、起き出してから財布と携帯電話をリュックに入れ、腰にモンスターボールを付けて出発。ジェフリーはボールの中で、クレアは連れて。俺らのいつものスタイルだ。
 今回の目的地はグルース温泉。俺の家から電車でおよそ一時間、バスでさらに三十分の温泉街だ。一泊二日で帰ってくるには、ちょうどいい距離である。調べてみたら、なんとポケモン二匹を放し飼い付きで、朝夕二食付きで一万三千円の格安の部屋が開いていた。食事もちゃんと人間と同じもの、あるいはそれに近いものを付けてくれるらしいという、かなり破格の条件である。なんか予約メールに「ときどき何かが出ることがありますが、危害を加えられた報告はないのでご安心ください」とかなんとか書いてあったような気もするが、きっと気のせいだろう。なお、予約の際には食事のメニューを確認し、手持ちのポケモンが食べられるかどうかを調べてから、予約を確定させていくのがトレーナーとしてのマナーである。もちろん俺も、クレアとジェフリーに食べられるかどうかを確認した。基本こいつらは雑食な上にアレルギーもないので、割とイケるのがありがたい。
「ふもとに釣り堀があるから、そこでイワナとニジマスが釣れるらしいぜ。そこで昼飯をとって、後は軽くトレッキングがてら山を突っ切って宿に行こう」
「っぱあ」
 小さな山を挟んだ反対側に、釣り堀と宿屋がある立地。回り込んでいってもいいし、路線バスも出ているが、どうせなら山を突っ切ってやろう。帰りはさすがにバスに乗って帰ってくるが。
 最初の電車から、バスに揺られて四十分。温泉街を通り過ぎ、少し行った先が釣り堀だ。バス停を降りて、歩くこと十分。川沿いに建っている、でっかい庭付きのコテージみたいな建物の敷地に足を踏み入れ、俺はぐるりと周囲を見渡す。入口と思しき場所に、立てかけてある釣竿が数本。ざっと見、客は三、四組。腰のボールからジェフリーを出すと、俺は二匹に問いかけた。
「さて、着いたぞ。俺は自分で釣り上げるけど、クレアとジェフリーはどうするよ?」
 看板によると、本来は新鮮な魚の塩焼きと唐揚げを出す店で、酒も飲むことができるらしい。その魚は店員に注文してもいいし、自分で釣り堀で釣り上げてもいいとのこと。昼間っから酒は嗜まんが、俺はこういうものがあった場合、絶対自分で釣り上げたいタイプである。
「っぱあ」
「マクロー」
「ほいほい」
 どうやら二匹とも、自分で釣り上げてみたいらしい。いや、それはいいけど、ポケモンに釣りってできるのか? 疑問を覚えないでもないが、まずは受付をしてもらい、釣竿とエサを貸してもらう。地味にエサ代を百円取られた。こればっかりはしょうがない。
「てか、自分で労働して釣り上げる方が金がかかるってどういうことよ」
「マクロー?」
「……まあ、娯楽面も強いし、気にしたら負けか」
「っぱあ」
 頷くクレアを尻目に、俺は人間用の釣り堀へ。エサをつけ、釣り堀の中へ放り込む。元々あまり広くない堀に結構放流してあるので、割と簡単にアタリが来る。なるべくならでっかいやつを釣り上げたいが、気にしすぎたら負けだよな。小さいやつじゃなければいいや。衛生上、釣り上げた魚は買い取らなければ(=食べなければ)いけないようで、フィッシングを楽しむあまり片っ端からぽんぽんと釣ったり、小さかったからといって逃がしたりはできないようだ。
「!!」
 ウキが沈んだ。素早く竿を上に跳ね上げ、食いついたニジマスに合わせていく。
「よし、かかった!」
 びんびんと唸る竿を手前にたぐり、ニジマスを手前に引き寄せようと格闘する。もちろんニジマスもそう簡単に釣られたくはないだろうし、そもそもエサを食べたら勢いよく針をひっかけられたという状態だしで、驚きと生存本能とで暴れまわる。足を少し大きめに開き、暴れるときは魚に任せ、勢いが弱まったら引き寄せて――って、いきなり暴れんじゃねえ!
「くぅーっ、やるねぇ!」
 魚に言っても通じないだろうに、俺は思わず声を上げる。心の底からニジマスに敬意と、獰猛な笑みが漏れるのが分かる。クレアとジェフリーが俺の顔と水面を交互に見つめた。
「マクロ、マクロー」
「っぱあ、ぱあ!」
「あったりめーだ、命のやり取りしてんだぞ!」
 いや、まあ、多分俺は死なないけどさ。ジェフリーとクレアが何を言いたいかを本能的に察した俺は、姿勢を低くしながら返す。片膝をついて網を取り、手前に引き寄せたニジマスを掬い上げる。陸地に揚げて針を取り、びくの中へと放り込んだ。
「っしゃ、二匹目行くか!!」
 針先に再びエサをつけ、俺は再び釣り堀の中へと放り込んだ。待つこと一分、再びウキが勢いよく沈み――
「うりゃあぁぁっ!」
 合わせた俺は、再びニジマスと格闘することになるのだった。


「大漁、大漁」
 ニジマスの堀とイワナの堀で二匹ずつ魚を釣り上げた俺は、びくを持って立ち上がった。さて、クレア達は……
「……あれ、どこ行った?」
 きょろきょろと周囲を探してみると、二匹揃って座っていた。少し離れた場所で、俺のことを待っている。イワナは結構敏感な魚で、ちょっとした刺激にも逃げてしまうという。それをクレア達に話したところ、余計なショックを与えないようにと少し離れてくれたらしい。
「ありがとな、クレア、ジェフリー。そうしたら、お前たちの魚も手に入れなきゃな」
 俺がこの二匹の分まで釣り上げてもいいのだが、クレア達の楽しみを奪ってはいけない。ポケモン用の釣り堀に入ると、これまた何匹かのポケモンがニジマス・イワナを釣っていた。ポケモンによって捕獲方法はまちまちらしく、捕まえ方は釣竿に限らない。ゴーリキーが真面目に釣り糸を垂れている横で、ウッウが上空から突っ込んでいって丸呑みしている。その隣ではなんかバリヤードが念力じみたことをやってニジマスを引き上げたけどいいのかアレ。
「っぱあ、ぱあ」
「え、ポケモンの場合はシャワーを浴びるの?」
 クレアが指差した場所には、簡易式のシャワー室が二つ。そうか、さっきウッウも突っ込んでたけど、人間と違って自分の体を直接魚のいる堀の中へと飛び込ませることもあるわけだから、汚れた体だったら衛生的にやばいもんな。クレアの体をよく洗い、ジェフリーの体も超絶丁寧によく洗う。ヌマクローは地上でも生活できるように体の表面を薄い粘膜が包んでおり、下手して粘膜にくっついていた雑菌のせいで釣り堀の魚が全滅しましたなんてことになったら笑えない。逆に洗い落としすぎてジェフリーの抵抗力が下がっても困るが。
「……とりあえず、ジェフリーは昼飯食ったらボールに戻ることも視野に入れたほうがよさそうだな」
「マクロ」
 この辺が難しいので、ジェフリーはどうしてもボールの中に入ることが多くなる。もっとも、ジェフリー自身も外に出るのももちろん好きだが、ボールの中も好きらしいので、この辺はいろいろありがたい。ちなみにクレアはボールの中はあまり好きではないらしく、基本的に俺と一緒に外にいることを好んでいる。ポケモンにも個人差(個体差?)があるのだろう。
「まあ、とりあえず一丁上がりだ。ニジマスを出血させるのは衛生上問題があるのでNGらしいから、それだけ気をつけるんだぞ」
「っぱあ」
「マクロー」
「よし、それじゃあ……行って来い!」
「グレイィッ!」
「マクローッ!」
 二匹の体を洗い終え、看板に書いてあった注意書きを伝え、俺はクレア達にゴーサインを出す。さて、クレアとジェフリーはどうやって魚を捕まえるのかな?
「マー、クローッ!」
 まず、ジェフリー。果敢に池の中に飛び込み、すいすいと泳いで直接ニジマスを捕獲する。水の中を泳ぐより泥の中を進むほうが断然速く移動できるというヌマクローだが、それでも彼はみずタイプ。「ぬまうおポケモン」の名は伊達ではない。あっという間にニジマスを捕まえ、陸地に掻き上げるように放り出した。ぬるぬるするニジマスの体も、同じ粘膜が包んでいる者同士、勝手が分かるのか簡単に抱え込んでびくへと入れる。隣のイワナの堀へ潜ると、さすがにニジマスよりは苦戦したものの、これまたあっさり捕まえて帰ってきた。
「っぱあぁぁー……!」
 一方のクレアは、姿勢を低くして唸り声を上げる。なんだなんだ? 見ていると、クレアの全身が尖り始めた。
「あれは……」
 数は少ないが、見たことはある。グレイシアは体温を自在にコントロールする力を持ち、全身の体毛を凍らせて針のように鋭く尖らせることができるという。これで敵から身を守ったり、獲物めがけてタックルしたり、自由自在に飛ばしたりする姿も確認されており、かなり器用に使いこなしているらしい。
「っぱあぁぁーーーっ!!」
 飛んだ。何がって体毛が。ニジマスの泳いでいる周囲を、円を描くように氷の体毛がドドドドドッと飛び込んで行き、いきなり泳ぎ先に障害物が突っ込んできたニジマスたちが泡を食って混乱する。飛び込んだクレアはまごまごしているニジマス一匹を掬い上げ、もう一匹をくわえて上がってきた。隣のイワナの堀も同様の手段で攻略すると、ぶるるるっと全身を震わせて体の水を弾き飛ばす。
 捕獲結果は、全員イワナとニジマスが二匹ずつ。イワナが一匹四百円、ニジマスが一匹三百円。調理もしてもらうと一匹あたりプラス百円。十匹を超えると一割引にしてもらえるらしい。俺は腹が減っているから、全部調理してもらうつもりだが……
「……お前ら、食えるの?」
「レイ」
「マクロ」
 食えるらしい。てーことは、全員合わせてどっちも六匹ずつ、それに調理もしてもらうわけだから、調理代込みで五百円プラス四百円、掛けることの六。五千四百円か。一割引なので、四千円台に抑えられる。俺一人だけならこの三分の一なんだけど、こればっかりはしょうがない。
 ポケモントレーナーにとって、食費は大きな問題である。ポケモンによって食べる量が違うので、一匹あたりの負担はなんとも言えないが、そうほいほいとポケモンを捕まえるわけにはいかないのだ。フルバトルにはあこがれるけど、俺の経済力では六匹を飼うことはできないだろう。補助金込みでもあと二匹が限度である。もちろん、小食な種であればそれに限った話ではないが、逆にカビゴンなんぞを飼おうものなら我が家の財政は壊滅的被害を被るだろう。まとめ売りされているポケモンフーズなら安上がりだが、四六時中それだけというわけにも行かないわけで。ま、こういう時は思いっきり自然の恵みを食わせてやるのが一番だろう。
 釣竿を片付け、受付に戻る。どう調理する? と問いかけるおばちゃんに、塩焼きと唐揚げを一品ずつ注文。びくを渡すと「大きいの釣ったね」と笑ってくれた。言うほど大きなものではないが、なんとなく嬉しい気分になった。
「っぱあ、ぱあ」
「ん? なんじゃ?」
「マクロ」
「え?」
「マクロ」
「っぱあ」
「なに? お前らも塩焼きにするの?」


「マジか……」
 テーブルに連れられて待つこと十分。最初に出てきたニジマスの塩焼きを前にして、俺は思わずつぶやいていた。焼いたニジマスからいい香りが漂ってくること……に、対してではない。てっきり生で食べるのかと思っていたクレアとジェフリーが、やたらとわくわくした目で魚の塩焼きを見つめていることにである。いろいろと気になるところもあるのだが、とりあえずそれより前に焼きたての魚をいただくとしよう。
「いただきまーす!」
 手を合わせ、ニジマスの塩焼きに箸を入れる。塩の利いた皮ごと口の中に入れた俺は、あまりのウマさに天を仰いだ。
「うっ、めえぇぇ~~~~~っ!!」
 そりゃそうだ、ほんの十五分前までは生きていたんだ。命を頂く感謝と、恵みへの感謝。文明が発達し、スーパーなどで切り分けられた肉や魚ばかりを見ているとついつい忘れそうになるが、新鮮な命の恵みは本当にうまい。見ると、クレアとジェフリーもそれはそれは幸せそうな顔でニジマスの塩焼きを食べていた。ジェフリーなんぞ「マクロー!」と大きな声で言いながら手を上げて、店員を呼ぶとでっかいジョッキ入りのサイコソーダを注文。腰に手を当てて半分近くを一気に飲み干し、「クローッ!」とか言いながらジョッキをテーブルに置いて味わう姿は、完全におっさんのそれだった。お前は一体何歳なんだ。年食ったラグラージじゃあるまいし。
「ぱぁ、ぱぁ……」
「って、お前も何遠慮してんだ、好きなの飲め!」
 見ると、クレアも何か飲みたいのか、おずおずと上目遣いを向けてくる。俺も豪快にジョッキ入りのサイコソーダを注文し、クレアも同様にジョッキ入りのサイコソーダ。飲めるかどうか怪しかったので、深皿を持ってきてもらう。が、その心配は不要だった。クレアはいわゆる「おすわり」の体勢になると、ジョッキを両方の前足で支えて飲んでいく。ちなみに焼き魚は櫛を通してあるので、いつもの四足歩行の体勢に戻り、両前足で櫛を支えて、はぐはぐ食べる。
「っぱあっ!」
「うわっ、大丈夫かっ!?」
 サイコソーダと焼き魚を忙しく行ったり来たりしていたクレアだが、焼き魚を食べるときにおさげが魚に触れたらしい。元々こおりタイプで体温の低いクレアなので、俺たち人間よりも「熱い」と感じる温度が低いのだろう。だったら焼き魚なんて注文するなよと思わなくもないが、この前はラーメン食ってたし、それとこれとは別なのだろう。カレーも食べてたし。
 左のおさげを片方の前足で持ち上げて、ふぅふぅと冷たい息を吹きかけるクレア。やけどなおしはいるかと聞いてみたが、特に不要らしい。ちょっとだけほっとする。今はやけどなおしを持っていないので、この店で売ってもらえないかどうかを交渉したり、最悪持ってきたなんでもなおし(割高だが……)を使わなければならないところだった。まあ、財政的負担はちょっとあるが、もともと三十万もの臨時収入があったことだし、可愛い自分のポケモンへのケアに金を惜しんではいけないと思っているので、必要だと言われても即座に対応する予定だったが。
 が、さっきのサイコソーダの時もそうだが、クレア自身がひかえめな性格なのもあり、時たま我慢してしまうこともある。ちょっと失礼とおさげを持ち上げ、人差し指で突っついてみた。
「っぱあ……!」
 くすぐったそうに身をよじるが、確かにやけどまではいってなかった。一安心した俺は、一匹目のニジマスを食べ終える。今度はイワナの方を、塩焼きにして持ってきてもらうことにした。


「いやー、食った食ったー」
「ぱー」
「マクロー」
 ニジマスとイワナ二匹ずつを食べ終え、俺は水を飲みながら食休みしていた。見ると、クレアにジェフリーもたらふく食べて食休み中。というか、俺でさえ結構腹が苦しいのに、この二匹は一体どこに入るんだろう。もっとも、グレイシアもヌマクローも、人間と同レベルに食べることは知られているので、驚くことではないのかもしれないが。
 川のせせらぎに耳を澄ますこと数分。なにもせず、ただ自然に身を任せた時間を過ごし、俺はよっこいしょと立ち上がった。
「そろそろ行くか?」
「っぱあ」
「マクロ」
 同様に食休みを終えた二匹を連れ、俺は会計を済ませる。サイコソーダ三杯を合わせ、五千六百五十円。気が付いたら五千円を超えてしまったが、これだけうまい魚をたくさん食べられたのなら十分だろう。
「しっかし、めっちゃくちゃ食っちまったなぁ。クレア、俺は食後の運動がてら、山を越えて旅館に行くけど、クレアはどうする?」
「っぱあ、ぱあ!」
「一緒に来るのね、了解」
「マクロー!」
「……いや、ジェフリーは乾燥怖いからそろそろ戻すつもりだったんだけど」
「マクロ!?」
 マクロじゃねーよ、何驚いてんだ!? さっき言ったし、お前も返事してたよね!? ヌマクローって、乾燥すると弱っちまうじゃねえか!
 ――とは思ったが、たくさん食べた上にボールの中でのんびりしては、無駄太りする恐れもある。結構バトルもしてるから、エネルギーは使っているだろうけど、俺らと一緒に山歩きをするなら運動と健康にはいいだろう。
「……まあ、乾燥しなければいいわけだし、そこの川にでも浸かってくるか?」
「マクロー!」
 ヌマクローにとっては、本当は泥遊びでもするのが理想形なんだが、この川、河原も川底も砂利だらけだし、泥遊びはちょっと無理そうだ。が、表面の粘膜を濡らし、うるおいを補給する意味では決して悪くはないだろう。
 ジェフリーは川へと降りていくと、そのまま水中に潜っていく。三秒後、水面に顔だけ出してきた。二、三分そのまま川の中に入っていたジェフリーだったが、やがて川から上がってくると、元気に右手を上げてみせた。
「マクロー!」
「よし、行こうか」
「っぱあ」
 山の方へと歩いていくと、入り口には赤く塗られた小さな社が。鳥居も何もない、本当に小さなお社様だが、きっと登山者の安全を祈願して建てられたものなのだろう。俺はしゃがみこみ、鳥居に手を合わせて安全を祈る。立ち上がると、猪などが下りてくることを防ぐためのフェンスを開け、クレア・ジェフリーも通り抜けてからきっちり閉める。ぐるりと腕を回すと、俺たちは山を登り始めた。
「んしょっ、んしょっ、んしょっ……」
 最初こそ登山者向けに丸太で階段のようなものが作られていたが、すぐになくなる。木の根っこなどの間に足を下ろしながら、小高い山を越えていく。しまったなあ、トレッキングシューズでも履いてくればよかった。まあ、頑張ればスニーカーでも大丈夫そうだ。十分ほど歩くと、登山道が二手に分かれていた。左手に向かえば旅館近くの登山口に出てくるが、このまままっすぐ行けば山頂らしい。そんなに遠くでもなさそうなので、運動がてら山頂へ。
「お、先客か?」
 茶色いチョッキを着た、太ったおっさん。ゴローンとゴーリキーを連れている。短めの杖を片手に持っているところを見ると、自分でこの山を登ってきたのだろう。この規模の山に来る割には随分と重装備であるが、普段着にスニーカーという、下手すりゃ山舐めてんじゃないかというほどの軽装をしている俺が言える立場じゃない。
 邪魔にならない程度の距離を保ち、俺は山頂から周囲を見る。あまり高くない山とはいえ、山は山。結構な眺望が広がっていた。自宅から二時間程度のところに、こんなにいい場所があるなんて。
「こりゃ、来てよかったわ」
「っぱあ、ぱあ」
「マクロー」
 クレアとジェフリーも景色を見て、笑顔で鳴き声を上げている。少し休憩しようかな、と、山頂の切り株に座ろうとすると、先のおっさんと目が合った。
「おう、少年! 少年もこの山を登って来たのか!」
「ええ、正確には突っ切るだけなんですけど、折角なら山頂まで来ようかと」
 気さくに話しかけてくるおっさんに、俺も笑顔で返していく。おっさんはそうかそうかと頷くと、やはり山は空気がうまいよなと話を続ける。
「オレは、やまおとこのスレーバ! 少年よ、ちょうど二匹のポケモンを連れているな! 折角の山頂ですばらしい景色だ、ここは二対二でバトルをしないか?」
「おっ。望むところです! いいよな、クレア、ジェフリー!」
「っぱあ!」
「マクロー!」
「俺は、塾講師のセツといいます! 山頂で場所もそんなに広々としているわけではありませんので、シングルバトルでどうですか?」
「よかろう! では、ゆくぞ!!」
「ええ!!」
 売られた勝負はもちろん買うぜ! やまおとこのスレーバが勝負を仕掛けてきて、俺は先発のポケモンを選ぶ。スレーバの先発はゴローン、俺の先発はジェフリーだ。
「ゆくぞ、ゴローン! きあいパンチだ!」
「ジェフリー、マッドショット!」
 ゴローンが開幕早々大技を仕掛けてきて、俺はそれをマッドショットで迎撃させる。泥の弾丸がゴローンを襲い、きあいパンチを繰り出そうと正面から突っ込んできたゴローンにダメージを与えた。
「やるな、セツ! ゴローン、じならし攻撃!」
「ジェフリー、跳んでかわせ!!」
「逃がすな! きあいパンチだ!!」
「迎え撃つぜ、れいとうパンチ!!」
 追いかけてきたゴローンの左拳が白く光り、迎え撃つジェフリーの右拳が青く光る。激突した二つの技は、ゴローンが勝った。地面に打ち付けられたジェフリーに、ゴローンはスレーバの指示でころがる攻撃。こちらはマッドショットを放たせ、ゴローンは回転の勢いで泥の弾丸をぶち破る。
 ひゅう、結構やるじゃねえか。なら……
「ジェフリー、ゴローンを飛び越えろ!」
「マクロー!」
「なにっ!? だがころがるは、使えば使うほどに威力が上がるぞ! ゴローン、ころがり続けてヌマクローを倒せ!!」
「向きを変えたところにマッドショット!!」
 迫ってくるゴローンを、ジェフリーは前方へのジャンプで飛び越える。回転力も加わる突撃に、正面から攻撃したって効果は薄い。それは先ほどのマッドショットが破られたことでも証明済みだ。だが、この転がるの向きを変えたところに、横殴りで攻撃を食らわせれば――!!
「クロー!!」
 ジェフリーは俺の意図を正確に読み取り、追いかけるために回り込んで向きを変えているゴローンに、強烈なマッドショットを叩き込んだ。泥の弾丸の直撃を受けたゴローンは、別の方向に転がっていき、ぶっとい木の根っこに挟まって止まった。目を回している姿は、誰が見ても戦闘不能だ。
「うおお、お前のヌマクローは強いな! 戻れ、ゴローン!」
「ありがとうございます! さあ、二匹目はなんですか?」
「知っているだろう! 頼むぞ、ゴーリキー!」
「よぉし、戻ってこい、ジェフリー!」
「マクロー!」
 モンスターボールにゴローンを戻したスレーバは、続いてゴーリキーを繰り出した。
「ジェフリー、よくやったぞ。クレア、行けるな?」
「っぱあ!」
 ゴーリキーの力はすさまじい。疲れることのない強靭な肉体を持ち、日ごろから人間の重労働を手伝って体を鍛えまくったり、野山で体を鍛えまくったり、とにかく鍛えに鍛えているポケモンだ。俺も以前、一人暮らしの家に引っ越す際に使った引っ越し屋の名前が「ゴーリキー引越センター」であった(んでもって実際にゴーリキーがめちゃくちゃ働いていた)のもあって、その力強さはよく知っている。こおりタイプのクレアがゴーリキーのパワフルな格闘技をまともに食らえば、一発で戦闘不能になったっておかしくなかった。
「ゴーリキー、メガトンパンチ!」
「クレア、れいとうビーム!」
 ゴーリキーは一直線に突っ込んできて、右の拳で強烈なパンチを放とうとする。対するクレアがぶっ放したれいとうビームもろとも、ゴーリキーはメガトンパンチで打ち破ろうと突進した。さすが全身が筋肉でできており、体力もあるパワフルなゴーリキー。クレアのれいとうビームを、己の拳でぶち破りながら突撃してくる。
……が。
「リ……キイィーッ!」
「あぁっ、ゴーリキー!」
 グレイシアの特殊攻撃力を、甘く見てもらっちゃ困る。しばらく鮮やかな突撃を見せたゴーリキーだったが、クレアのれいとうビームの威力に押され、突撃の速度がどんどん落ちる。最終的には止まることになってしまい、そのまま返り討ちに遭って吹き飛ばされた。硬い岩盤に叩きつけられ、地面へと両手をつくゴーリキー。しかし、あの鋭い眼光は、まだ戦いを続ける目だ。
「ゴーリキー、距離を詰めてローキック!」
「引きつけろ、クレア!」
 ローキックは相手の脚部を狙った、鋭い下段回し蹴りを放つかくとう技だ。下手な迎撃をして、捌かれて蹴り飛ばされたら大ダメージは免れないし、スピードも殺されてしまう。
 なら、ギリギリまでひきつけて、直前で攻撃するのみ――!
「よし、軽く跳んでふぶき!」
「レイ、アァァーーーッ!!」
「ゴ、ゴーリキー、じごくぐる――」
 その声は、最後まで続かなかった。ローキックの体勢から、じごくぐるまを放つのはかなり無理がある。一旦体勢を立て直すまでのラグの間に、クレアのふぶきが炸裂した。地面に叩きつけられたゴーリキーが、縫い付けられるように凍りつかされ――
「リ、キイィー……」
 ――ふぶきが消えた後には、仰向けに倒れているゴーリキーがいた。
「ノーッ! ゴーリキーッ!!」
「よっしゃあ! やったな、クレア!!」
「レイ、アー!」
 勝利宣言をするように高らかに鳴いたクレアの頭を、俺はわしゃわしゃと撫でるのであった。
 ちなみに。
 その後、やまおとこのスレーバから、賞金千二百円をいただいた俺は。上機嫌で山を下りる最中、調子に乗って足を踏み外し。

 ぐきっ

「いっだあぁぁーーーーーっ!!」
 左の足首を、めちゃめちゃ捻挫することになるのであった。

【Ⅲ】

「すみませーん。予約をしていたセツという者ですがー」
「はーい」
 足首を捻挫して傷めたものの、なんとか山を下りてきた俺は、無事に(?)旅館へのチェックイン手続きを済ませていた。料金は先払い制なので、ポケモン二匹分も合わせた一万三千円をお支払い。鍵を貰い、宿泊部屋へと通される。部屋の造りはやや古いが、こういうのも風情があっていいだろう。最近は温泉地にも「なんちゃら温泉、なんちゃらホテル」とかいうのがよくあるが、温泉と来れば、やっぱり旅館ではあるまいか。
 と、ジジ臭いことを思う俺だが、部屋は八畳間でなかなかの広さ。眺望も決して悪くない。部屋の位置の都合か、やや光が当たらなくて薄暗い場所もあるのだが、別に気になるほどでもない。これで二食温泉付き、ポケモン二匹連れで一万三千って、相当安いのではなかろうか。
「なんてったって、普通の部屋の半額だしな」
「っぱあ」
 掃除も行き届いているし、古くはあるがなかなか綺麗。安い理由は、ときどき何か出るかららしいが……
「ま、俺はその辺気にしないから余裕だし!」
 ことん。
「よよよ余裕だし!」
「ぱー……」
 タイミングよく鳴った物音にビビりまくる俺に、クレアがでっかいため息をついた。う、うるせえ、決してびびっているわけではねえ。しかしなんだ、さっきの音はテレビの裏かな? ま、まあ、何かが落ちただけだろう。
「さ、さーて、温泉にでも行こうかなー。クレアはどうする?」
「グレイ」
 ついてくるらしい。浴衣と替えの下着を持って、俺は温泉へと出発した。階段を下りて廊下を渡り、温泉の入り口へ。注意書きを読むと、安全のため、ポケモンは人間と一緒に入り、人間はビニール袋の中に入れたモンスターボールを持っていく必要があるらしい。いざというときはボールの中に戻せるようにということだろう。温泉の効能は疲労回復、ひび、あかぎれ、腫れ、リウマチ、切れ痔……へえ、結構いろいろ効くんだな。
 源泉の温度は二十七度。人間の入浴に適するように加温されているらしい。確かに二十七度じゃあ、俺たち人間は冷たいからな。そのくらいの温度なら加温する必要があるだろう。みずタイプのポケモンや、体温の低いこおりタイプのポケモンにも適するように、ポケモンには人間と同じ浴槽に加え、「冷やし」「源泉」「超加温」「熱湯」の五段階が用意されている至れり尽くせりな状態。ちなみに「超加温」と「熱湯」の場所だけ仕切り板が作られていて、人間が火傷しないようになっている。
「出てこい、ジェフリー!」
「マクロー!」
 ボールを投げ上げると、ヌマクローのジェフリーが飛び出してくる。
「温泉着いたぜ、入ろうか」
「マクロー!」
「で……クレアはこれ、どうするんだ? 連れてきたのはいいものの、ここ、男湯だし……お前にゃ悪いが、留守番か?」
「っぱあ!? ぱあ、ぱあぱあっ!!」
「マジですか……」


 とか、なんとかあったものの。
「うあ~、やっぱり風呂は命の洗濯だよな~」
「ぱー……」
「マクロー……」
 俺らは三人(一人と二匹?)、温泉で思いっきりくつろいでいた。俺はもちろん人間用、ジェフリーは源泉、クレアは冷やしの温泉である。
「それにしても、温泉で日頃の疲れを癒すつもりが、湯治になっちまったぜ」
「ぱー……?」
 一応、ポケモン用のいいキズぐすりを捻挫した足首に使ってみた。違和感なく動かせるようにはなっているので、多分効いているとは思うが、この温泉も効能があるのなら、浸かっておくに越したことはない。いや、捻挫があろうとなかろうと浸かるけど。
 俺はのんびりお風呂に浸かりたい派なので、先に体を洗っている。クレアやジェフリーの体も丸洗い。特に四足歩行をするクレアにとって、頭や首の裏はなかなか洗えないところである。さすがに前は自分で洗ってもらうが、この辺のケアもトレーナーとしてはやっておくべきだろう。洗うだけ洗うと、ヒノキ湯の露天風呂をいざ堪能。ってかクレアちゃん、客がほとんどいないとはいえ、アナタここ男湯だっていうのにあんまり気にしてませんよね。まあ、人間とポケモンは違う生き物だから、手を出すような奴は……
「……いや、普通にいたわ」
 ポケモンと付き合う人間の特番が組まれることもあるし、ポケモンに対する集団レイプみたいな事件も時々世間を騒がせる。人懐っこい性格のポケモンとか、大人しいポケモンとかは被害に遭いやすいらしい。とはいえ、そういう狼藉者はだいたいポケモンの怒りを買うことになるわけだが。以前ニュースでケモナーとロリコンをこじらせた奴がそこらのロコンに手を出して、ほのおのうずでアレを丸ごと燃やされた挙句、親のキュウコンに祟られたらしい。合掌。
 まあ、そういう一部の狼藉者はともかく、深い絆で結ばれ、人間とポケモンが愛を育むこと自体は珍しくない。遥か北のシンオウ地方では、「人と結婚したポケモンがいたし、ポケモンと結婚した人もいた。昔は人もポケモンも同じだったのだから、普通のことだった」と、そう神話に語られている。厳密な文章は違ったと思うが、ともかく、それほどまでに人間とポケモンの関係は深くなることだってあるのだ。
 なお、俺とクレアは、どっちかというと相棒関係。俺が一番可愛がっていて、かつ頼りにしているポケモンであり、クレアも全幅の信頼を置いてくれている。ちなみに、恋愛関係はない。俺の好みは自分より一歳か二歳年下の、可愛くて優しい、料理上手な人間の女の子だからである。一人称が「ボク」だと二重丸。最後が若干業の深い一面な気がしなくもない。
 まあ、生まれてこの方、女の子と付き合ったことなんてないけど。あー、彼女ほしー。一度でいいから女の子に告白されてみてー。
「ぱー、ぱー」
「マクロー」
「お前ら何かを察した顔で首を振るのやめてもらっていいですか!?」
 てか、エスパータイプでもねーのにムダな読心術発揮してんじゃねー!!


「いやー、風呂は最高だった! でもって食事もウマかった!」
「グレイ!」
「マクロー!」
 お風呂を終え、食事を終え、俺らは部屋へと戻っていた。猪鍋をはじめとした和食メニューは、実に素晴らしい味であった。周囲の客が夫婦一組とカップル一組、男二人連れが一組で、一人旅をしていた人もポケモンと一緒に食べていた人もいなかった。そんな中、グレイシアとヌマクローとで食事をとっていた俺は浮いていた気もするが、全力で無視。今度から部屋食ありの宿屋を検討したい。
「我ながら今日の旅行は当たりだと思うぜ。来てよかったよ」
「っぱあ」
「マクロー」
 電車に揺られて、釣り堀に行って釣りをした。山登りをして景色も見たし、ポケモンバトルも楽しんだ。風呂はよかったし、食事もうまい。宿屋の自販機に売っていたサイコソーダを開けながら、充実した今日の一日を、俺はクレアやジェフリーと一緒にあれこれ話す。といっても、グレイシアやヌマクローの言葉は分からないから、鳴き声と仕草と反応で見ていくしかないのだが。
「マクロ、マクロー」
「悪かったなあ、捻挫してよー」
 ジェフリーが左足を温泉の湯の注ぎ口に当てるしぐさをして、俺は微苦笑と共に返す。キズぐすりと温泉とで大分良くなったが、念のため足を酷使するのは避けたいところだ。
「山登りした時の景色さ、あれよかったよな。バトルも爽快に勝ったしさ」
「グレイ!」
「ゴーリキーを出された時さ、そのままジェフリーで戦おうかとも思ったんだけど……」

 ――ことん。

「うおわ!?」
 テレビの後ろから物音がして、俺は思わず飛び上がる。「ときどき何か出ます」なんて言われてしまったので、なんてことない物音がすげえ怖い。ちくしょう、これは高いお金を払ってでもちゃんとした部屋に泊まるべきだったか。恐る恐るテレビの方を見てみると……
「キュー……」
「うおっ、なんだっ!?」
 いつからいたのか、テレビの陰から小さなポケモンが歩み出てきた。二つの耳、赤いほっぺ、黄色い体、尻尾。ピカチュウ……じゃねえ。こいつはたしか……
「……ミミッキュか」
 近づいてきたミミッキュだが、一定の間を取って立ち止まる。黒色の大きな目……は、擬態しているんだっけ? お腹の部分に少しだけ穴が開いているが、確かこっちが目なんだっけか。ミミッキュ種は数が少なく、生息区域も限定されているそうで、かなり珍しいポケモンである。俺もたまに耳にするが、実際に見たのは初めてだった。
「キュキュッキュ」
 見つめ合うと、ほんの少しだけ近づいてきた。そういえば、ミミッキュは種として全体的に寂しがり屋で、ピカチュウの格好をしているのも、この姿なら人間と仲良くなれると考えたかららしい。楽しい話をしていたから、混ざりたくて出てきたのか?
 ……とりあえず、話しかけてみよう。
「ミミッキュ、こんにちは。俺は社会科講師のセツ。こっちは俺のポケモンの、グレイシアのクレアと、ヌマクローのジェフリーだ」
「っぱあ」
「マクロー」
「キュキュ、ミミッキュ!」
 クレアとジェフリーも挨拶をすると、ミミッキュは体を左右に振るわせて、少し高めの声で返してきた。近づいてくると、両手を出して一鳴きする。友好的な奴だ。
「俺たちは、この近くからちょっとした旅行でここに来たんだ。お前はここに住んでいるのか?」
「ミミッキュ!」
 そうらしい。
「てことは、ここにはいろんなゴーストポケモンが住んでいるとか?」
「キュキュッキュ」
 首を振った。違うらしい。出るっていうのはこいつだろうか? だとするならとっても可愛い幽霊さんだ。いや、幽霊じゃないか。ポケモンか。
「そうなのか……。いや、実はな? この部屋には何か出るって言われててさ。幽霊的なアレとかいるかもしれないって思ってはいたんだが……そういうのはこの部屋にいるの?」
「ミミッキュ」
 違うらしい。というか、ゴーストタイプのポケモンって、幽霊見えるのか? うーむ、分からん。サイコソーダを口に運ぼうとして、ふと思った。
「お前も飲むか?」
「キュキュ!?」
「俺もクレアもジェフリーも、サイコソーダ飲んでるからさ。良かったらいるかって」
「ミミッキュ!!」
「はは、そうかそうか。じゃあ、ちょっと待ってろよ……」
 俺は立ち上がると、財布を片手に席を立った。部屋外の自動販売機に向かうと、クレアとジェフリー、ミミッキュまでもがついてきた。やれやれ、誰か一匹に留守番しておいてほしかったが……まあ、目と鼻の距離だし、別にいいか。
「おいしいみず、サイコソーダ、ミックスオレ……モーモーミルクもあるけど、どれがいい?」
「キュキュキュ!」
「サイコソーダか、うまいよな。俺たちもこれが一番好きなんだ」
 多少割高だが、心を落ち着かせる効果や、どういう原理になっているのか傷を癒す効果もある。キズぐすりの代わりにもなるし、のんびり語ったり勉強したりのお供にも最適。俺もコーヒーとよく使い分けている。
「っぱあ」
「マクロー」
「え、お前らも欲しいの? ……ったく、今日は旅行だから特別だぜ」
「っぱあ!」
「マクロー!」
「ミミッキュ!」
 ついでに俺ももう一本。合計四本も買って部屋に戻ることになるのであった。


「やっべ、もうこんな時間か」
 部屋から出てきたミミッキュも加え、語り合うこと一時間。言葉が通じないため、ときどき絵を描かせてみたりもしながら楽しく語っていた俺らだったが、だんだん夜も更けてきた。さーて、そろそろ寝るかな……サイコソーダの空き缶をゴミ箱に放り込み、歯を磨いて寝る体制。俺は洗面台に立ち、ジェフリーはその洗面台の隅に置いてあった台を持ってきて、その上に立って高さを補う。クレアは壁に寄りかかり、前足を使って器用に歯ブラシを使っている。ミミッキュは……お、手が伸びてきた。
「キュ」
 歯ブラシを取って、そのまま歯ブラシごと布の中に消えて……え、磨いてるのか? うーむ、シャカシャカ音がしているから磨いてはいるのか。中でどうなっているのか見たくなったが、確か迂闊にミミッキュの布の中を見ると死ぬこともある(しかも苦しみもがいて)らしく、さすがに興味本位で自分の命まで賭けたくない。
 俺たちが歯磨きを終えると、ミミッキュも洗面台の上に飛び乗って「ぺっ」と吐き出す。布の下から出てきた。洗面器に水を張ると、その洗面器の上に覆いかぶさるようにして口(?)をゆすぐ。どういう体の構造をしてるんだろう。クレアも首をかしげている。
 これが終わると、とりあえずジェフリーの保湿である。洗面器をいったん洗い、体が乾かないようにジェフリーの体に水をどんどんかけていく。寝ている間に体が乾いてしまうので、寝るときは基本的にボールに戻すが、今日はクレアやミミッキュと話していたせいでボールの外にいる時間が長かったんだ。いつもより水分はなくなってしまっているだろう。
「よし、こんなもんかな。戻るぞ、ジェフリー」
「マクロ」
「っぱあ」
「ミミッキュ」
「うん。おやすみ、ジェフリー」
「マクロー」
 おやすみのあいさつをして、ジェフリーはボールへと戻っていく。ジェフリーを戻したボールを持ち、部屋へと戻る。布団は既に敷いてあり、クレア用のバスケットも置いてあった。バスケットの中にはふかふかの毛布が置いてあり、これは快適に眠れそうだ。
「……それはいいけど、ミミッキュどうしよう。クレアを戻してミミッキュに毛布を渡す……のは、さすがになしだな。この毛布、クレアのだし」
「っぱあ」
「ミミッキュ」
「っぱあ、ぱあ」
「え?」
「グレイ」
「……マジ?」


「…………」
 明かりを消した中、俺は内心頭を抱えていた。クレアはとても心優しく、ミミッキュにバスケットごと毛布を渡してしまった。それはいいのだが、こいつは何を思ったのか、部屋の隅で丸くなりやがったのだ。いくらなんでも畳の上じゃあ寝心地は悪いし、察したミミッキュも全力で毛布を返そうとしてきた。が、クレアは笑顔で首を振り、さすがに見過ごせなかった俺は布団をクレアに譲ろうとしたが、それはそれで全力で止められ……すったもんだの末、俺はクレアと一緒に寝ることになってしまったのだ。
 人間の体温なのだから、彼女にとっては熱くないのか。つーか、そもそもボールに戻してしまえばよかったような。いやまあ、考えなかったわけではないが、せっかくクレア用にバスケットと毛布のセットも頼んだので、何かしらそれに準ずるもので寝かせてやりたかったんだ。が、いくら自分の相棒たるポケモンといえど「なら、俺と一緒に寝るか?」なんて女の子に聞くかフツー。そしてクレアも頷くかフツー。あと、ちょっと恥ずかしそうにするの止めてもらっていいですか。ついでに擦り寄ってくるの止めてもらっていいですか。
 とかなんとか思いながら、頭を撫でている俺はいろいろ末期なのかもしれない。えーい、ままよ。若干やけくそになってクレアを抱きしめてみると、「ぱー」と鳴きながら擦り寄ってきた。
「…………」
 安心しきったような顔を見て、俺はふと我に返った。まったく、グレイシア相手に何を焦ってるんだ。大事な大事なポケモンだけど、焦るほどのことでもないだろう。もっとも、昔は人とポケモンでの婚姻関係も成立していたとは言うし、今でもポケモンと恋愛関係を結ぶ人はそれなりにいるが、生憎と俺の好みは一つか二つ年下の、人間の女の子なもんで。
「おやすみ、クレア」
「ぱー」
 胸に顔を埋めてくるクレアの頭を撫でながら、グレイシア独特のひんやりした感触に笑みを漏らす俺だった。

【Ⅳ】

「ん……」
 窓から差し込む朝日に顔面を照らされて、俺は眠りから目を覚ます。見慣れない天井に一瞬疑問を覚えるが、すぐに旅行に来ていたことを思い出した。腕の中にはクレアがいて、くぅくぅと可愛らしい寝息を立てている。本来彼女が寝るはずだったバスケットには、ミミッキュが毛布を体中に巻き付けて眠っていた。寝苦しくないのだろうかと思ったが、布の中身が見えないようにするための眠り方なのだろうと、勝手に解釈して納得する。
「ぱぁ……?」
 と、俺が動いたからだろう、クレアが体を動かした。目が覚めたのか、ぽうっとこちらを見つめてくる。「ぱー」と熱に浮かされたような声で鳴くと、ふらふらと部屋の備え付けの冷蔵庫へと向かっていく。前足を使って戸を開けると、開かれた冷蔵庫から出てきた冷気に「ぱー」と幸せそうに一声鳴いた。
 あーそうか、暑かったのか。そりゃそうだな、人間である俺の体温は、グレイシアであるクレアよりも高いんだ。そんなのと一晩一緒に寝たら、暑くなるに決まってる。
 ……若干ふらついていたけど、大丈夫かな? 脱水症状とか、起こしていなければいいのだが。
 とりあえず部屋の外に出て、自動販売機で「おいしいみず」を購入。冷たい水をあげておけば、ひとまず回復はするだろう。水を持って部屋に戻ると、クレアはまだ冷蔵庫の前。ミミッキュも目を覚ましたらしく、のそのそと毛布から出てきた。ミミッキュはそのまま、暗めの物陰に移動していく。日光は得意ではないのだろう。
「ミミッキュ、おはよう」
「キュキュッキュ」
「っぱあ」
「キュキュッ」
 ぴょんぴょんと軽く跳んで挨拶をするミミッキュに、俺は片手を挙げて返す。リュックから底の深い紙皿を取り出すと、水を入れてクレアに渡した。
「おーい、クレアー。冷たい水持ってきたぞー」
「っぱあ!」
 とりあえず、これをあげれば大丈夫だろう。火傷になっていないかどうかだけ確認し、俺は窓を開けて朝の新鮮な空気を部屋の中へと入れるのだった。


「さてと……そろそろチェックアウトの時間だな」
 クレアを回復させ、朝食を取り、部屋へと戻って。小休止した俺は、腕時計を見て立ち上がった。
 駅の方面へと向かうバスは、一時間に一本しか出ていない。このバスを逃せば、また一時間待つことになる。荷物を持ち上げた俺たちに、ミミッキュは部屋の入り口近くのところにある、物陰となっている場所に移動した。見送ってくれるのだろうか。
「じゃあ、またな」
「ミミッキュ」
 手を上げた俺に、ミミッキュも黒い手を出して振り返してくれる。クレアも左の前足をミミッキュに軽く振ったのを見て、俺はジェフリーをボールから出した。
「ジェフリー、ミミッキュに挨拶しな」
「マクロ。マクロ、マクロー」
「ミミッキュ、ミミッキュ……」
「っぱあ、ぱあ」
「ミミッキュ……」
 ジェフリーとクレアの挨拶に、ミミッキュも挨拶を返してくれる。だが、その声は心なしか小さくなり、黒い手も床へと垂れ、上げても振ってもくれなくなった。
「…………」
「……っぱあ」
 ミミッキュの手が引っ込められるまで、俺は彼の姿を見守る。そんな俺に、クレアが小さく一鳴きした。少し考えた俺の前に、ジェフリーが出てきてゆっくりと頷く。
「マクロ」
「……うん。そうだよな」
 俺たちは旅行をしていてたまたまこの部屋に泊まっただけで、ミミッキュは元からこの部屋にいたのだ。俺たちが出会ったのは、ほんの偶然。だけど……
「キュ……」
「…………」
「……ミミッキュ」
 元気に見送ろうとしてくれているのだろう。そんな彼の健気な姿に、答えは決まった。
「なあ、ミミッキュ」
「キュ……?」
 何かを察したのか、ミミッキュは体を伸ばし、左右にぷるぷると奮わせる。そんなミミッキュに、俺は目線を合わせて手を出した。
「もしよかったら、俺たちと一緒に来てみないか?」
「キュ……?」
 一瞬だけ、ミミッキュが小さな鳴き声を返す。次の瞬間、お腹に空いた覗き穴のような部分から、涙がぽろぽろとこぼれてきた。
「キュー……!」
「うおっ!」
 小さな体が、俺のほうへと飛び込んでくる。彼の姿を受け止めると、やっぱりとても軽かった。キューキュー鳴いて甘える姿は、よほど友達が欲しかったのだろう。ひとしきり甘えると、クレアとジェフリーにもぴょんぴょん跳ねて喜びの仕草を伝えてくる。二匹も同じ考えなのか、鳴き声を返したり笑顔を見せたりしてくれた。
「よし、そしたらお前のことを、ちゃんと受付の人に伝えないとな」
「ミミッキュ」


「そうだったんですか、ミミッキュが?」
「ええ。というか、他の人は姿を見なかったんですか?」
 旅館の受付でチェックアウトの手続きをしながら、俺は部屋にミミッキュがいたことと、昨晩あったことを伝えた。宿屋の人は「そうでしたか」と頷くと、あの部屋のことを教えてくれる。
「あの部屋は、泊まった人から、電気を消したときの暗闇で何かが光ったり、物音が聞こえたりという現象を報告されていたんです。私たちも調査したかったのですが、どうにも怖くてですね……しかし、ミミッキュがいたのなら納得です。きっと彼なりに、人間に近づきたかったんでしょうね」
「そうでしたか……それで、よろしければこのミミッキュを、私のポケモンにしたいのですが……」
「ええ、そういうことなら、どうぞお連れ帰りください。我々もミミッキュがいたことは知らなかったですし、どうやらそのミミッキュも、あなたたちといい友達になれたようです。よかったら、そのミミッキュをもらってやってくれませんか」
「キュキュッキュ!」
 受付の人の言葉に、ミミッキュが嬉しそうに鳴き声を上げる。
「ありがとうございます! よかったな、ミミッキュ!!」
「キュキュッ!」
 ぴょこん、とミミッキュが飛び上がる。着地すると、俺の服のすそを引っ張った。俺から一歩分ほど離れた場所に立つと、両手を出して一鳴き。
「ミミッキュ!」
 わくわくした目で見つめてくる、友達になったミミッキュ。何が言いたいのかも、なんとなく分かる。
「だが、その前に」
「キュキュッ?」
「俺はバトルも結構好きでな。どのくらいの実力があるのか、見せてくれないか?」
「ミミッキュ!」
 左手でガッツポーズをするように握り拳を作ると、ミミッキュは黒い両手を上げ、元気に一鳴きしてみせた。とはいえ、旅館でバトルをするわけにもいかない。山の中に少しだけ開けた場所があったのを思い出すと、俺はそこにミミッキュを誘った。

【Ⅴ】

「ミミッキュ!」
 山の中で、俺たちは一定の距離を取って向かい合う。バトルコートよりはやや狭いが、野良バトルするには十分だ。一旦クレアとジェフリーをボールに戻した俺の前で、ミミッキュは元気に鳴き声を上げる。準備はOKみたいだ。
「よし……」
 腰のボールに、手を当てる。真ん中のボタンを押してポケモンを出せる体制にすると、俺はボールを投擲した。
「行け、クレア!」
「っぱあぁあ!!」
 元気に飛び出してきたクレアは、しなやかに着地して鳴き声を上げる。俺は大きく息を吸い込み、クレアに最初の指示を出した。
「クレア、れいとうビーム!」
 まずは俺たちの得意技で攻撃だ! 凍えるビームを打ち出したクレアだが、ミミッキュはそれを俊敏に回避。返す刀でミミッキュの瞳がきらりと輝き、左腕を振るって攻撃してきた。
「飛んでかわすんだ!」
 斜め下から振るわれる腕を、クレアは跳躍して回避した。今度はふぶきを撃たせるが、ミミッキュは地面をすべるように移動しながらふぶきを避けると、クレアが着地するタイミングに合わせて飛び掛ってきた。ぼかぼか殴られたクレアがよろめくと同時、飛び退いたミミッキュは再び腕を斜め下から撃ち上げる。回避も間に合わず、吹き飛ばされたクレアだが、やられっぱなしでいるわけにもいかない。立て続けに指示を出しかけたが踏みとどまり、一秒の間を置いてクレアに叫ぶ。
「もう一発、れいとうビームだ!」
 ミミッキュの瞳がわずかに光るその刹那、俺はクレアに指示を出す。息を吸い込んで放たれたれいとうビームが、シャドークローを撃ちかけたミミッキュに炸裂した。クロスカウンター気味に突き刺さったんだ、あれは大ダメージだろう。
 ……だが。
「キュキュッキュー!」
「グレイィッ……!」
「――えっ、嘘だろっ!?」
 押し殺したような声と共に上空に再度吹き飛ばされたクレアを見て、俺は思わず声を上げる。完全に隙だらけになった俺だったが、バトルにおいて目の前のパートナーから目を逸らすことはしちゃいけない。呆然となりかけた思考を無理矢理押し込め、大声でクレアの名を呼んだ。
 ミミッキュからの追撃はないが、れいとうビームの直撃を受けたにもかかわらず、まともに効いた様子がない。あえて言うなら「カコン」だろうか。それとも「パコン」だろうか。独特の音と共に、ミミッキュの着ぐるみ部分の首(?)がへし折れる。いっそ、ちょっと間の抜けているとさえ思えるその音で、俺は何が起こったのかを理解した。
 ミミッキュはクレアのれいとうビームを着ぐるみ部分で受け流し、予定通りシャドークローを撃ち込んできたのだ。クロスカウンター気味に突き刺さったのは、ミミッキュじゃなくてクレアのほう。
「グ、レイ……レイ、イッ……!」
「クレア、無理するな!」
「グレ、イィッ……」
 どぅっと地面に墜落し、それでもなんとか立ち上がったクレアだが、息は荒く、既に限界なのが分かる。やはり、前足を崩し、地面に滑り込むように倒れてしまった。多分、最初に食らった技はじゃれつくだろう。その上シャドークローを二発も打ち込まれ、うち一発はカウンター気味に決められたのだ。
「強いな、お前……!」
 俺の相棒たるクレアを、ほぼノーダメージで戦闘不能に追い込みやがったこいつの戦闘力に驚嘆しつつ、俺はクレアをボールに戻す。ゆっくり休んでくれ。そう言ってボールを腰のベルトに戻した俺だが、ミミッキュとのバトルを望んだのも俺だ。ここはなんとしても勝って俺と俺のポケモンの強さを見せておかないと、ミミッキュだって果たしてトレーナーが俺で大丈夫かと不安に思うことだろう。バトルが好きだなんて言ったのだからなおさらだ。
「頼むぜ、ジェフリー!」
 俺の二番手は、ジェフリー。戦闘体勢に入るジェフリーに、ミミッキュは静かに構え直した。着ぐるみを剥がしたとはいえ、ほぼノーダメージのミミッキュ相手にどう立ち回るか……クレアは俺の作戦ミスもあって惨敗してしまったが、あれでだいたいこいつの戦い方が分かってきた。
「マッドショット!」
 口から吐き出した泥の弾丸を、ミミッキュは右方向に回避した。それと同時、俺はジェフリーを突っ込ませる。一瞬遅れて相手のシャドークローが襲い掛かったが、懐に飛び込んだジェフリーにはかすりもしない。クレアにやられた攻撃を、そう何度も食らってたまるか。
「れいとうパンチ!」
「マー、クロー!」
 ジェフリーの右拳が冷たく輝き、氷の力を宿した右腕がミミッキュを正面から殴りつける。戦いが始まってから初めての有効打に、俺は間髪入れずに二発目のれいとうパンチの指示を出す。今度は左拳がアッパーカット気味に炸裂し、吹っ飛ばされたミミッキュ相手にマッドショットで追い打ちをかけた。
 が。
「キュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュ!!」
「げっ……!」
 自由にならない体勢だというのに、ミミッキュはシャドークローを繰り出して器用に操り、マッドショットの弾丸を凄まじい勢いで斬り飛ばした。着地したミミッキュはシャドークローもじゃれつくも繰り出さず、態勢を整えるのかと思いきや、ジェフリーの後ろが黒くなった。
「やばい、ジェフリー!」
 声を上げるも、既に遅し。ミミッキュは体勢を立て直しながら、長い影を伸ばして後方からジェフリーを自分方向に殴りつけたのだ。ジェフリーがよろめき、既にミミッキュは攻撃態勢。今度はこっちの番だと言わんばかりに右腕を伸ばすと、ジェフリーをその強烈なシャドークローで突き上げた。
「くっ――!!」
 クレアの時もそうだったが、こいつは相手の隙を突く能力がおそろしく高い。そして、攻撃を食らって怯んだ隙にも、こいつは追撃を重ねてくる上、着ぐるみまで着ているものだから、相手の攻撃の一発かそこらなど全く気にせずに攻め立ててくる。おかげでクレアはじゃれつくの後、吹き飛ばされたところにシャドークローを食らう憂き目に遭ってしまい、大ダメージを受けてしまった。着ぐるみを剥がされてのジェフリー戦も、かげうちからのシャドークローに見事こいつは繋いでみせる。
「ジェフリー、聞こえるか!?」
 空中に突き上げられたその姿は、そのままジェフリーにとって隙になってしまう。そうなったら、ミミッキュの追撃の、格好の餌食だ。確かクレアの時は、吹き飛ばされた後シャドークローを叩き込まれた。なら、上か下かに技を打って、作用・反作用の法則で強引に移動し、奴の追撃圏から脱出する。一瞬で戦闘の判断を汲み上げると同時、ミミッキュが追い打ちを仕掛けてきた。シャドークロー……ではない。飛びかかってくる――じゃれつくだ。
「!!」
 クレア戦の時には、最初に撃たれたれいとうビームをかわしてのシャドークローを見事に決めた。ジェフリーの時には、同様の手段を取ったら距離を詰められ、れいとうパンチを食らったことで学習したのだ。同様の戦法は何度も通じる相手ではなく、なんらかの対策を取られることを。だからこそこいつは、空中に吹き飛ばした相手への追い打ちをシャドークローではなくじゃれつくに変えた。それを察した俺の口に、抑えきれない笑みが漏れる。
「くうぅ、やっぱ強いな、お前!!」
 ……だが。
「ジェフリー、がんばってくれ! まもる!!」
「マー、クロー!」
 空中で腕を交差したジェフリーの前に、緑色の壁が出現する。ミミッキュの攻撃はその壁に阻まれるが、突破しようとギリギリと力ずくで壁を押してくる。そんなミミッキュの体を、壁越しに睨みつけるジェフリーの体に――
「あれは……」
 ――蒼い光が揺らめくように立ち上がった。
「げきりゅう……!」
 ヌマクローやアシレーヌ、メッソンなどが持つ、己の体力が減ると水技の威力が上がる、激流の特性。ジェフリーが交差した腕をほどくと同時、緑色の壁も消滅し、ちょっとした衝撃がミミッキュを軽く仰け反らせる。
 ――この強敵を倒す隙は、今しかない。
「行いぃっけえぇ、ハイドロポンプーーーーーッ!!」
「クロー、オオォォォーーーーーーーーーーーッ!!」
「キュ――」
 凄まじい勢いで大量の水をぶっ放され、ミミッキュは水流と共に勢いよく地面に叩きつけられる。反動でジェフリー自身も大きく空中に打ち上げられ、数秒の間を置いて着地した。肩で息をするジェフリーだが、戦いの意思はなお衰えず、ミミッキュを鋭く睨みつけた。ミミッキュもミミッキュで、あれだけの大技をまともに食らったのに、まだ戦闘続行の意思を見せてくる。
「キュー!」
 先に動いたのは、ミミッキュの方。正面から突撃してくるその姿には、最後まで決着をつけようとする姿が見える。ジェフリーも拳を握り締めるのを見て、俺は何をしたいか悟った。
 ――なら。
「これで決めてやる! れいとうパンチ!!」
「クロオォーッ!」
「キューッ!!」
 ジェフリーのれいとうパンチと、ミミッキュのじゃれつく。炸裂したのは――わずかにジェフリーの方が速い。ジェフリーの腕が振り抜かれると同時、ミミッキュは錐揉みしながら吹っ飛んで、地面へと仰向けにぶっ倒れる。
「キュー……」
 それでも起き上がり、シャドークローを放つ黒い腕を着ぐるみの中からにゅぅっと出してきたミミッキュだったが……
「ミミッキュ……」
 黒い腕が、地面に力なく倒れ込んだ。
「マク、ロー」
 ……なんとか、勝った。ヌマクローのサムズアップが、妙に人間臭かった。


「ジェフリー、クレア、お疲れ様。ありがとうな」
「マクロ」
「っぱあ」
 バトルを終え、頑張ってくれた二匹をボールから出して祝福する。すごいキズぐすりと、健闘をたたえてサイコソーダ。傷をいやし、おいしそうに飲んでいく二匹の頭を、俺は両手でわしゃわしゃ撫でた。
 今回の戦いで、主に相手にダメージを与えてくれたのはジェフリーだが、クレアも相手の着ぐるみをはがし、かつ相手の戦い方を身をもって知り、俺に教えてくれたからこそ得られた勝利だ。
 そして……
「ミミッキュ。バトルをしてくれてありがとう。キズぐすり、使っていいか?」
「キュ」
 答えてくれたミミッキュに、俺はすごいキズぐすりを惜しまず使う。その後、サイコソーダも渡してみたが、どうやら好みに合ったようだ。一足先に飲みきったクレアとジェフリーがやってくると、俺は改めて片膝をつき、ミミッキュになるべく目線を合わせて聞いた。
「ミミッキュ」
「キュ?」
「改めて、よろしくな。俺たちと一緒に、来てくれるか?」
「ミミッキュ!!」
 両手を上げて快諾してくれるミミッキュに、俺は空のモンスターボールを取り出した。目の前のミミッキュにぽんっと投げると、赤いオーラがミミッキュを覆い、地面へと落ちる。三回ほど地面で揺れると、小さな音と光と共に、捕獲に成功した音がした。
「出てこい、ミミッキュ!!」
 異常がないかを確かめるためと、新しい仲間を祝福するため。俺はボールを投げ上げる。出てきたミミッキュは、俺らの前に立ってぴょんぴょんと跳んだ。
「キュー!」
「ぱあ、っぱあ!」
「マクロー!」
 新しく仲間になってくれたミミッキュは、クレアやジェフリーと挨拶をすると、何やら楽しそうに話し始める。しばらくその様子を見守っていた俺だったが、ミミッキュが俺の方を振り向くと、小さく声を上げた。
「キュキュッキュ」
「ん?」
「ミミッキュ」
「なんだ?」
 クレアを指さす。自分を指さす。ジェフリーを指さす。自分を指さす。なんだ? 仲間にはもうなっているはずだが……
「どうした、ミミッキュ?」
「キュキュッキュ」
 なんか、全力で首を振っている。
「……ああ、そういうことか!」
 ぽんと手を叩き、俺は彼が言いたいことを悟る。
「お前、名前つけてほしいのか!」
「ミミッキュ!」
 我が意を得たり、という風に大きく両腕をVサインのように上げるミミッキュに、俺はそうだなと考える。
 どの道、名前は付けるつもりだったが……
「……セイル。うん、セイルなんていうのはどうだ?」
「ミミッキュ!!」
 名前が気に入ったのか、ミミッキュはぴょんぴょんと飛び跳ねた。その姿に笑みを漏らし、俺は腕時計を確認する。
「よし、そしたらバスに乗って、帰るとしますか……って、時間過ぎてんじゃん!!」
「っぱあ?」
「……やれやれ、しょうがねえなあ。さっきの温泉宿にもう一回戻って、事情を話して少し時間を潰させてもらうか。セイル、お前の着ぐるみ、直してやろうか」
「キュキュッ!? キュキュッキュ、キュキュッキュ!!」
 自分を指さし、繕う仕草をし、また自分を指さした。どうやら、自分で繕いたいらしい。
「了解。じゃ、折角だし、終わるまで待ってるよ」
「ミミッキュ!」
 体を震わせたセイルに、俺はよっこいしょと立ち上がる。
「そしたら、いったん宿屋に戻りますか。んで、セイルが着ぐるみを縫い終わったら、帰るとするか!!」
「っぱあ!」
「マクロー!」
「ミミッキュ!」
 相棒クレアと、ジェフリーと。新しく仲間になった寂しがり屋のセイルを連れて、俺たちは山を下りるのだった。





Fin

後書き

お久しぶりでございます。夏氷でございます。
セツとクレアの物語、第三幕として投稿しました。
今回のテーマは「温泉旅行」。実は第一幕の「氷動クライシス」でちょっとだけ出てきた、ヌマクローのジェフリーも今回はちゃんと登場させました。
私は第七世代はやっておらず、第六世代の次はソード・シールドの第八世代をプレイしているのですが……まあ、ミミッキュ、強いですよね。可愛さとダークさが両立した設定と、戦闘能力の高さ。是非仲間にしたくて、ミミッキュ一匹を仲間にするのにまるごと一幕使ってしまいました。
相変わらず「セツ」と「クレア」は、ソードシールドのフリー対戦によく潜っておりますので、もしマッチングすることがあったら、対戦相手としても味方としても、楽しく戦っていきましょう! バトルの申し込み鋭意受付中でございます。
何かございましたら、なんなりとお寄せくださいませ。いただいているコメントが、執筆の励みになっております。
それでは、今回もお目汚し、失礼いたしました。


【バトルデータ】

セツのグレイシア
名前・クレア Lv.40 性格・ひかえめ
技・れいとうビーム/ふぶき/みずのはどう/ミラーコート
HP・109(15) 攻撃・50(8) 防御・105(31) 特攻・143(31) 特防・92(28) 素早さ・69(31)
努力値・HP12、特攻88、素早さ4

≪ゴーリキーとの戦闘時に食らった技≫
なし(ノーダメージで撃破しているため、無傷)

≪セイルとの戦闘時に食らった技≫
◎通常時
○セイルのシャドークロー ダメージ・39~46 35.8%~42.2%
○セイルのじゃれつく ダメージ・51~60 46.8%~55.0%
合計ダメージ・90~106

◎決着時
○セイルのシャドークロー ダメージ・58~69 53.2%~63.3%
(クロスカウンター気味に直撃を食らったため、急所ダメージで計算)
合計ダメージ・138~175


セツのヌマクロー
名前・ジェフリー Lv.39 性格・ゆうかん
技・ハイドロポンプ/マッドショット/れいとうパンチ/まもる
HP・116(31) 攻撃・93(31) 防御・65(14) 特攻・63(31) 特防・65(14) 素早さ・45(19)
努力値・HP12、攻撃20、特攻20

≪ゴローンとの戦闘時に食らった技≫
○ゴローンのきあいパンチ ダメージ・21~25 18.7%~21.3%
(れいとうパンチとぶつかり合って威力が減衰しているため、ダメージを半分にして計算)

≪セイルとの戦闘時に食らった技≫
○セイルのかげうち ダメージ・36~43 30.0%~35.8%
○セイルのシャドークロー ダメージ・63~75 54.8%~65.2%
合計ダメージ・99~118
(この2発を食らっても戦闘続行が可能だったため、実際に受けたダメージは115以下)


セツが捕まえたミミッキュ
名前・セイル Lv.46 性格・さみしがり
技・シャドークロー/じゃれつく/かげうち/つめとぎ
HP・115(20) 攻撃・112(31) 防御・82(31) 特攻・52(3) 特防・105(9) 素早さ・107(31)

≪クレア・ジェフリーとの戦闘時に食らった技≫
○クレアのれいとうビーム ダメージ・14(ばけのかわが身代わりになった) 12.4%
○ジェフリーのれいとうパンチ ダメージ・25~30 21.7%~26.3%
○ジェフリーのれいとうパンチ ダメージ・25~30 21.7%~26.3%
○ジェフリーのハイドロポンプ ダメージ・45~54 39.1%~47.0%
合計ダメージ・109~128
(戦闘続行が可能だったため、実際に受けたダメージは114以下)

◎決着時
○ジェフリーのれいとうパンチ ダメージ・25~30 21.7%~26.3%
合計ダメージ・134~144


スレーバのゴローン
名前・ゴローン Lv.32 性格・なまいき
技・きあいパンチ/ころがる/じならし/ロックブラスト
HP・85(25) 攻撃・75(29) 防御・80(5) 特攻・35(6) 特防・40(12) 素早さ・24(1)

≪ジェフリーとの戦闘時に食らった技≫
○ジェフリーのマッドショット ダメージ・80~96 94.1%~112.9%
(戦闘続行が可能だったため、実際に受けたダメージは84以下)

◎決着時
○ジェフリーのマッドショット ダメージ・80~96 94.1%~112.9%
合計ダメージ・160~180


スレーバのゴーリキー
名前・ゴローン Lv.34 性格・わんぱく
技・メガトンパンチ/からてチョップ/ローキック/じごくぐるま
HP・105(22) 攻撃・80(23) 防御・63(17) 特攻・36(7) 特防・47(5) 素早さ・39(10)

≪クレアとの戦闘時に食らった技≫
○クレアのれいとうビーム ダメージ・77~91 73.3%~86.7%
(メガトンパンチとぶつかり合って威力が減衰しているため、ダメージを半分にして計算)

◎決着時
○クレアのふぶき ダメージ・189~223 180.0%~212.4%
合計ダメージ・266~314

なんでもお気軽にお寄せください!

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